私たちのヒミツ事情 第5巻

著:小島美帆子 先生

なんとか言いくるめて麗花を家から
帰らせることに成功した桐生さん。
でもその直後チャイムが鳴ってまた
戻ってきたのかと思った桐生さんは

「二ノ宮また戻ってきたのか---」

なんて叫ぶも、そこにいたのは
ロスから帰国した菜子だった。
兄が恋をしたと聞いて、どんな
子なのか会ってみたいとわざわざ
仕事を休んで帰ってきたらしい。

麗花について何も答えたがらない
兄に、せめてどこで知り合ったかと
下の名前くらい教えてと騒ぎ立てる。

「…同じ会社の……”麗花”…………。」

渋々答えた桐生さん、下の名前なんて
呼んだこともなかったろうから、変に
意識して顔を真っ赤にしてしまってた。

それ以上何も聞かないとは言ってたけど、
何もせずにロスに帰る妹ではなかった 笑

菜子が家に来た時に兄が呼んだ二ノ宮と
言う苗字、部屋にあった口紅のついた
グラス‥休日に家に上げるような存在は
高確率で兄の想い人=名は二ノ宮麗花。

と推理した探偵菜子恐るべしです 笑
兄の会社までわざわざやってきて
麗花を呼び出してしまったんです。

‥一先ずこんなお姉さまです、菜子。
過去に何かがあったとか全然想像も
出来ないほど、明るく元気な女性。

仕事がお昼休みに入ってから、麗花は
菜子と話しに食事できる場所に移動。

イマイチ状況が掴みきれていない高塔
さんは一先ずその状況を桐生さんに伝え‥

桐生さんは急いで駆けつけたかったと
思うんだけど、高塔さんはそれを止めた。

菜子が妹だと知ったのはつい先程、
妹にそこまで執着するのはなぜ?
なぜ菜子が麗花に会いに来たの?

そんな問いかけに桐生さんが返した
のは、高塔さんの気持ちへの答え。

「俺やっぱりあなたの気持ちは受け取れ
ないです。少し前までは本当にただ受け
取れなかっただけなんだけど--…。今
は好きな人ができたから受け取れない。」

二ノ宮のこと?と尋ねる彼女にうんと頷く。

菜子への執着の理由は大切な妹だから、
好きな人がいることを菜子に話した
から今の状況になっているとも伝えた。

高塔さん‥きつかったろうな。

「もう二度とあなたに告白しない、
から…お願いだから先に去って。」

少しして、慌ててやってきた早乙女くん。
もしかしたら、菜子のもとに麗花が行って
しまったことで連絡を入れてたのかも。

でもそこにいたのは放心状態の高塔さん。
自分の思いや行動が何一つ桐生さんには
届いてなかった、響いてなかったんだと
気付かされて、自分のことを無様だとか
全然ダメだったとかかっこ悪いとか‥

これまでもいっぱいいっぱいで頑張って
恋してきたのかもしれない‥ついにその
想いが全部溢れてしまったんだろう。

そんな彼女を‥早乙女くんは背中から
抱きしめると、一生懸命に言葉を伝える。
高塔さんはかっこよかったって、自分
をそんなふうに否定しないでって。

散々言いたいこと言った後になって
正気に戻った彼は、慌てて彼女を腕の
中から解放すると遠く離れて土下座 笑

自分を責めて辛そうにしていた高塔さんは
彼の言葉で涙を拭いながら笑顔で言った。

「はっ、この私が早乙女に
なぐさめられるなんてね。」

早乙女くん、いい子なのは知ってる。
でも最近なんだから少しずつ‥
高塔さんに対する気持ちが変化
してってるきがしなくもない 笑

最初は苦手な先輩って感じだったもの。
恋になるのかならないのかはわからない。
でも‥今早乙女くんがいたから彼女は
笑顔になれたし前に進める気がした。

お昼休みの時間を使って菜子と食事
しながら話した時間は楽しかった。
ただ、偶然男性とぶつかった麗花を
見て菜子が麗花の男性恐怖症だと
気付いたの表情が引っかかってた。

いろんなすっきりしない不安を抱えた
まま、仕事を終えた頃桐生さんは菜子
のことで麗花を引き止め、そこに偶然
か‥菜子も現れこの状況に至った。

「陸は麗花ちゃんが男性
ダメなこと知ってたの?」

菜子のその質問に桐生さんが答える。
するとまた、あの時の陰った表情‥

そして、唐突に告げられた言葉。
あなただけは、と言われたんだ。

何も知らないまま、ただ反対
されてしまうって辛すぎるよね。

麗花だけだめな理由‥それを話すために
菜子は桐生さん宅に麗花を連れて行く。

そこで菜子から聞かされたのは10年前の夏、
まだ菜子が中3桐生さんが高2だった頃の話。

夜の10時前、塾を終えた後菜子は兄に
迎えに来てくれるようお願いの連絡を
入れるが兄はめんどくせーと拒否した。

その後‥11時前になっても菜子は帰宅
せず、母親が帰宅した頃家に電話が入る。

それは警察からで、菜子が強姦被害に
遭い病院に搬送されたという連絡だった。
病院には傷だらけで酷く怯えた様子の妹。

「陸の……せいだ……陸が…っ、ちゃんと
迎えに来てくれなかったからっ!!」

家に帰ってからも悪夢にうなされて
陸を責めたてることも幾度も続いた。
そんなある時悪夢にうなされ震える
妹を見て夢だと言って起こした時、

「死んじゃいたいよ……っ、陸…っ。」

そう言いながら、震え続けていた
菜子‥その様子を見てからだった。
陸が女性に触れることすら怖いと
感じるようになってしまったのは。

女性は弱い、そんなか弱い存在に男で
ある自分が触れてはいけないみたいな。
壊してしまうかもしれないといった不安
が芽生えてしまったのかもしれないね。

これが、陸の女性恐怖症の原因だ。

当時は耐えられず中学を卒業後海外へ
行くことにした菜子も、ここ数年で兄と
笑い合えるように兄妹関係も落ち着いた。

やっと兄の幸せを願えるようになった今、
これ以上兄が苦しむようなことは嫌だ。

その気持ちはもちろん理解できるつもりだ。
過去のことなんて忘れさせてあげたいのに
似た経験をした麗花がそばにいたら嫌でも
思い出してしまう、忘れることが出来ない。

だから‥というのが反対の理由だった。
明かされた過去、桐生さんのヒミツ。

今回伝えられたのはあくまで菜子の思い。
桐生さんから何か言われたわけではない。

でもこの時の麗花は、菜子や家族の
辛かった思い、まだそれを引きずった
まま苦しみ続けている桐生さんの思い。

自分と出逢って‥桐生さんは本当は
辛かったんじゃないか‥そう考えると
いろんな思いが溢れて桐生さんを直視
出来ず、家から逃げてきてしまった。

その後‥菜子はまた麗花に会いに来た。
でも今度はずいぶん辛そうな表情で。

当時は、本当は兄のせいなんかじゃ
ないのに兄を責めることでしか自分を
保てなくて甘えてしまっていたという
自分を、きっと後悔しているんだろう。

ただそれでも兄のおかげで今自分は
ここに立っていられるから、今度は
自分が兄を助けてあげたい。何も
考えず思い切り抱きしめてあげられる
そんな人と出逢えた時は‥今度こそ
全力で応援してあげたいと思ってる。

だから諦めて‥菜子の考えはそう。
結論は変わらなかったけど、ただ
兄に対する思いの強さはわかった。

もちろん、菜子の思い=桐生さんの
気持ちというわけではないだろう。
麗花はどうするつもりだろうか。

何にしても、きちんと桐生さんと
話をする時間が必要な気がした。

早乙女くんの中で何が行動に出る
きっかけになったかはわからない。

でも、きちんと告白しようと決意
したようだった‥麗花を呼び出し
思いを伝える。びっくりしながらも
好きな人がいると断る麗花に対して
彼はどこまでも優しい表情を見せた。

本当に‥麗花が大好きなんだね。
元彼から突然知らされた過去を
桐生さん以外には決して話さず
1人麗花を思い続けてきたんだ。

いい子過ぎて泣けてきますよ‥

もう‥早乙女くんにも幸せに
なってほしいと心から願った。

こんな彼の思いや言葉に、麗花は感謝の
気持ちを持つと共に、何より桐生さん
の幸せを願っていたいと思った。

菜子の思いは聞いた。でも桐生さんの
思いはちゃんと確認できていなかった。
だから、桐生さんのもとへ話しに行く。

カウンセリング会は麗花に菜子を
重ねて同情から始めたことだった。

「菜子が心から愛せる人に出会うまで
俺は幸せにならない。そう、自分の
中でけじめとして課したんだ。」

これが誰とも付き合わない、麗花を
好きなのに付き合えない理由だった。

最後に…きっと勇気がいっただろう。
とぎれとぎれに言葉を繋いで尋ねた。

この質問への答えは、彼女にとって
何よりの救いだったんじゃないかと思う。

「私桐生さんの意志を尊重します。
だけど、私にも待たせて下さい。
私はあなたがい---んです。」

「男の人が怖くなくなる日が
来ても他の誰かじゃなくて
桐生陸斗さんがいいんです。
何十年後でも構わないから。」

そう、目をうるませながらも
精一杯の笑顔で言ってみせた。

何よりも、桐生さんの幸せを願って。
辛いかもしれない、苦しいかもしれない、
それでも大好きな人の幸せをただ願って
想い続けることが出来るというのはきっと
彼女にとって今何より幸せなことだろう。

菜子の思いは、桐生さんも聞いていた。
でも桐生さんの思いは菜子は知らずに
いて、麗花の口から聞くことになる。

麗花はただ想い続けることを認めて
ほしいという話をしただけだった。
でもその時に、桐生さんが自分に
課したことの話にも触れていて‥
菜子はそこで初めて兄の思いを知る。

兄の思いを知って‥きっといろいろ
思うことはあったのかもしれない。
ただ菜子は自分のせいで兄がそんな
ことを課して前に進めなくなって
いるのは嫌だったんだろうと思う。

「ここで断ち切ろう、陸っ。
私はっ、今死ぬ程幸せだから。」

菜子がこんなふうに思えたのはきっと
兄の思いを知ったからだけではない。
麗花の思いを知ったのももあるだろう。

「彼女はとっても!あったかい人だと
思う。麗花ちゃんに酷い理由で反対
してごめんねって伝えといて!」

そう言って、菜子は兄の背中を押した。
今度こそ兄の思いを知った上で、
兄の本当の幸せを願っての行動。

そのまま菜子はロスに帰っていった。
そして桐生さんは麗花に会いに行く。

~ひとこと~

さてさてさて‥どうなるんでしょう。
気になるところで終わる5巻です 笑

でもこの流れだったら続きは明るい
お話が待ってるんじゃないかと思います。

‥というわけで、続けて6巻レビュー
させて頂きますので、よかったら
お付き合い頂けたら嬉しいです ♪