私たちのヒミツ事情 第4巻

著:小島美帆子 先生

結局あのキスしそうになってたのは
菜子からの電話で未遂に終わった。

「…俺はこんなことできる…
資格ないんだったな…。」

電話の後そう言っていて、桐生さんの
中で気持ちは動き始めてるのに自分には
その資格が無いって無理やりストップを
かけてしまっているような感じがした。

その翌日、修太郎は麗花の過去のことを
早乙女くんにガッツリ話したことが判明。
でもそれを言いふらすようなことは一切
しなくて‥ただ男性恐怖症なのに桐生さん
に対しては怖がる素振りを見せないことに
少し疑問を持っての行動だったろう。

「あなたは知ってたんですか?
二ノ宮さんのヒミツを………。」

そう、桐生さんを問い詰めに来た。
でもきっとこの質問に答えてくれるか
は大して重要ではなかったと思う。

好きな子のことなのに、何も知らずに
逆に怖い思いをさせてしまった自分に
対して、桐生さんは知ってて彼女を
守ろうとしてきたんだとしたらって
考えて悔しくなったんじゃないかな。

ほんと、早乙女くんいい子なんだよ。
彼の言葉を聞いて、もちろん麗花の
個人情報について話すことはなかった
桐生さんだけど、安心したような‥
でも少し寂しそうな顔をした気がした。

(--大丈夫、二ノ宮を守って
くれる奴が他にいてくれる--)

今のままじゃ、本当は麗花を守らなきゃ
いけないのに逆に怖い思いをさせてしまう
ことになるかもしれない‥もしかしたら
そういう考えもあったんじゃないかな。

麗花からしたら、そんなこときっとない。
桐生さんがそばにいれば安心だったろう。
それとは違うドキドキはあるかもだけど 笑

先走ってこじれてしまわなければいいけど‥

早乙女くんと話をしてから、桐生さんは
麗花に何の相談もなしにカウンセリング会
を決行した。麗花と桐生さんお互いになら
触れることも出来るくらいになったけど、
それが他の人にも通用するか検証したい。

そう言って、桐生さんは高塔さんからの
誘いに乗って2人で飲みに行くことにした。
不安がりながらも、麗花も早乙女くんが
教えてくれたパンケーキ屋さんに2人で
行くことを決意。麗花の方は早乙女くん
がいろいろ気をつけてくれることもあり
平和で楽しいランチ時間だったと思う。

それに早乙女くんが桐生さんと同じ
ように怖くない人で、自分を理解して
くれるかもしれない人っていうのは
きっと麗花自身気がついているだろう。

そんな中、高塔さんからある話を聞いた。
それは2人で飲みに行った時にされた話。

「今はどんなことより誰より
菜子の幸せを願ってる。」

だから自分が幸せになるのはずっと先、
今は誰とも付き合うとか出来ないって。

高塔さんからしたら、自分が入るスキなんて
まったくないんだと落ち込んだ話だった。

でも麗花には違った。実はあのキス未遂、
途中から目を覚ましていて麗花はキス
されそうに鳴ってたことに気付いてた。
菜子を誰よりも大切に想ってて、それ
ならなんであんなことしようとしたの?

もやもやしてしまって仕方がない、もう
本人に直接聞こうと動いた麗花だけど‥

「め、目やに…でっかい目やに!が付いてて。」

なんとも酷い言い訳でごまかしてきた 苦笑

「…そんな俺との変な妄想してる
ヒマあるなら…早乙女とかとリアル
にデートでもしてろよっ。」

いや~ひどい男ですねほんと。
多分この人、ひどいって自覚あって
こんなこと言ってる気がする。

麗花も売り言葉に買い言葉状態で…彼の
最後の言葉はさすがにきつかったみたい。

好きだからこそ傷つく言葉だろう。
彼の言葉に涙を流し、麗花は
その場から逃げてしまった。

そんなこと無いって、もしかしたら
今まで否定してきた想いだったかも
しれない、善意の優しさを勘違いしちゃ
行けないって思ってたのかもしれない。

でももう、抑えられないくらいに
好きになってしまったんだものね。

泣きながらも仕事に戻った麗花。
1人で資料整理でもしてたのかな?

「よりによって…桐生さん
を好きになんて…っ。」

脚立に乗って、先程のことや自分の
気持ちへの後悔やら‥口に出して
愚痴のようにこぼしていたら背後、
いつの間にか高塔さんが立っていた。

聞かれてしまったと焦って、麗花は
そのまま脚立から落ちてしまった。

‥というところからの今である。
捻挫してしまって支えがないと
歩くのも一苦労状態の彼女を病院
まで連れて行くためにと、早乙女
くんが桐生さんを呼んでくれたんだ。

ここまでの話もいろいろあるんだけど
そこは後ほど‥おぶって車まで運んで
もらう途中、心配してくれる桐生さんに
麗花の中で我慢が効かなくなったんだろう。

「…めんなさ…っ、私…桐生さんが好き…っ。
好きに…なっちゃったみたいです…っ。」

そのまま車に乗ってからも泣き
止まない麗花に、シートベルトを
締めようと近づくと、泣いて顔を
抑えていた手をぱっと離してじっ
と桐生さんを見つめてくる麗花。

桐生さんだって、きっといっぱい
いっぱいなんじゃないかな、もう。
抑えられる程度の気持ちじゃない。

キスされて、嬉しい反面菜子の問題が
何も解決していないと気がついた麗花。
そこで問い質すとようやく答えてくれた。

「”菜子”は俺の妹だよ。」

妹であって、彼女でも何でもない。
キスをしたのは、麗花に惹かれてるから
‥それでも付き合うことは出来ない。

麗花の前じゃ理性が働かなくなるから必要
以上に近づかないでなんて言ってきた。

麗花さん大混乱ですよね、大変 ww

菜子のこと、過去のこと、今はまだ
話したくないと言われてしまったけど

「いつかちゃんと説明する。
二ノ宮にはちゃんとするから。」

特別に想ってくれているとわかった。
でも付き合えないし、いつかは話して
くれることも今はまだ謎のままだ。

嬉しいような、何も変わらないような。
気持ちの面では両思いなのに決して
付き合えることはないんだと知った。

ある意味絶望なんだろうか。
ほんと、桐生さんもひどい人だな。
期待もたせたり突き放したりさ。

少しでも早く、彼の中のわだかまりが
きれいに解決してくれることを願う。

病院から帰ってきて、怪我をする寸前
にあった発言について問い質される。

「私も…っ、桐生さんを好きに
なってしまいました!!」

そこまではいい、問題はその後だ。
ひたすら謝り倒してくるんだよね。

ちょっと、正直、鬱陶しいと思った 笑
同じ人を好きになってしまったとか、
そりゃ気まずいことは多いだろうけど
謝るのって逆に失礼だと思うんだわ。

まあ、そういうの込で麗花なんだろうとは
思うけど(気の使う方向間違ってる) 苦笑

そんな麗花に対する高塔さんがね‥
かっこよかったんだよ、ほんと。

ライバルが出来た。見下すでもなく
怯むでもなく、正々堂々やり合おう
なんてさ‥かっこいいよ高塔さん。

世の中には、同じ人を好きになった
だけで逆ギレ起こす人もいるよね。
誰かを好きになるって気持ちはきっと
そうなってしまうほど難しい想いだ。

不安とかたくさんあるだろう‥でも
そこで高塔さんみたいに言えるの
ってほんとすごいって思うんだよ。

私は高塔さんのこういうところは、
わりと嫌いじゃない、結構好き。

同日、仕事を終え帰宅した桐生さんは
菜子に電話をかけた。他愛もない会話を
続けていた所、菜子からツッコミが入る。

「陸から連絡してくるなんて、いつも
何か私に報告がある時くらいじゃん。」

それをきっかけに、自分の気持ちを伝えた。
だからと言って何も変わらないのだけど。

陸の恋をした宣言に対し、彼女がどう
思ったかは読み取ることが出来なかった。

でもなんというか‥桐生さんが菜子に
伝えたっていうこと自体が、ちょっと
嬉しいことだよなって感じた。

その頃‥早乙女くんと高塔さんは2人で飲んで
いた。おそらく、高塔さんが半強制的に早乙女
くんを連行していったんだろうと思う 笑

麗花が怪我をした時、最初は支えてくれる人
ということで早乙女くんを呼んだんだよね。
高塔さんとしてはチャンスをあげたくらいの
話だったんだけど‥でも自分に対してまだ
怯えた様子を見せ触れられない麗花を見て、
早乙女くんが桐生さんを呼ぶことを提案。

もちろん、その後の高塔さんから早乙女
くんへの批判は凄まじいものだったけど。

「今の俺じゃ…力不足なんですよ……。
今は桐生さんしか…頼れないんです…!」

麗花の何かを知っててそういう行動に
出た早乙女くん、でもこのままでは
きっといい人で終わってしまうだろう。

その何かについて、高塔さんは問い詰める
ことはしなかった‥そういう所は大人だ。

ただ、このままでいいの?と疑問を述べた。
それに対して少ししゅんとしてみせた彼
だったけど、きっとこういう愛もあるよね。

改めて、すごく素敵な人だって思えた。
彼のこういう想いが麗花まで届かなくても
知っててくれる人がいるっていうのは救い。

いつかは、麗花相手では無理でも恋が
実って幸せになってほしいと願った。

たとえば‥高塔さんと、とかね 笑

疑問に思ったこと、すっきりしない
ままのこと‥今すぐは話せないこと。

そんなのがある中で、一先ずはいろいろ
話をしないと進まない、もやもやした
ままでいるのは辛いと思ったんだろう。

まだ怪我が完治していないくせに、
麗花はわざわざ桐生さんの家を訪ねた。

「ごめん、俺二ノ宮と付き合うことが
できないくせに二ノ宮に手ェ出した最低
なヤロウです。こんな無責任な男絶対
やめたほうがいい。それが俺の答えだ
からもうこれ以上ねばらないでほしい。」

桐生さんの言葉にも諦めずねばった。
麗花にとっては素直な気持ちだったろう。

そしてきっと桐生さんも応えたい
と思っているんじゃないだろうか。
腰に回された腕に手を伸ばしかけて
止めた。同じ想いなのに進めない。

きっとそれは菜子に関する話が理由。
まだそれは明かされないままだけど‥
きっとそれは近いうちに明らかになる。

~ひとこと~

菜子が日本に帰ってきたようです。
妹であることと電話での会話以外、
詳細不明だった菜子がようやく4巻
ラストで帰国シーンで出てきました。

「ただいま、日本の空よ♪」

5巻で一気に話が進む予定です。
謎も明かされていくことでしょう。

菜子という人、まだ掴めないけど
明るく活発そうな印象がありました。

そんな彼女と桐生さんの抱える恐怖症、
まだいまいち繋がってくれないけれど‥
また次巻よかったらお付き合い下さい。