私のオオカミくん 第2巻

著:野切耀子 先生

思いがそのまま出てしまっただけの
ような告白から…大神くんはこむぎの
答えを聞くこともなくそこを立ち去る。

次の日、どんな顔して会えば…なんて
構えるこむぎだったけれど、大神くん
の方はほんとうに何もなかったように
いつも通りの笑顔で話しかけてきた。

「意味なかったな。俺が釘
刺した意味。好きになるなって。」

「あいつが人間に優しくする
のは優しくされたいからだ。」

伏見くんの態度は怖かったけど、やっぱ
最初から、彼の言葉に込められた思いは
優しいものだったのかもしれないね。

告白そのものから逃げてしまおうと
した大神くんだったけど、それに
対してはっきりと答えを出すように
言ってくれたのは伏見くんだった。

「突き放すなら完膚
なきまでに叩きのめせ。」

なんて最後に言ってたけど、これも
彼なりの優しさだって思えた。

それを受けて、こむぎとちゃんと話を
しにきた大神くんは、自分の存在を、
生まれてはいけない命だって話した…。
自分の名の意味を狼と人間を結びつけた
存在で、最後(結末)の狼だと話した。

だから誰も好きにならないと言う。
大神くんの言葉を聞いたこむぎは、
直感だったのかもしれないけど、
離れてはいけないと思ったんだ。

人の心は移ろいやすい。だったら
自分の恋心だってそのうち変わって
いくかもしれない。だからそれを
信じて今は苦しくても彼のそばに。

大神くん達にセンセイと呼ばれる
彼。ヤタガラスらしいのだけど、
彼らとは比べ物にならない様な
強い力の持ち主のようです。

今回は催眠が効かないという
こむぎを見に来たみたいだった。

「見たところ普通のお嬢さんのよう
だけど、血筋の方に何かあるのかな?」

血筋…普通の一般人だと話すが、
ほんと…何で効かないのかは
今この話1番の謎ですよね。

「結のために気持ちをのみ込む?」

こんな思いから友達になることを
選んだこむぎに対して、バカだな
と言った伏見くんだったけど、そんな
彼の表情は随分と優しいものに思えた。

相変わらず大神くんは距離感が近い。
いろいろと、誤魔化すのも大変だ。
平気でくっついてくるし、それで
こむぎがどう思うかなんて考えて
ないのかもってレベルに…残酷よね。

大丈夫って言ったけどこれは大分
無理をしているんだろうと思う。

それでも大丈夫だって信じて、
自分に言い聞かせるように言った
言葉だったかもしれないよね。

「離れてほしくない。」

「こむぎちゃんと同じ気持ちは返せない
けど、こむぎちゃんが望むなら。」

こむぎが出した友達になるという選択は
そう簡単なものではない。無理して笑って
いろいろとごまかしながら生活していた。

大神くんへの気まずさもあってか、
意図的に一緒にいるわけでは勿論
なかったろうけど伏見くんと話す
機会も前に比べて増えてきていた。
それを見て大神くんは何を思った?

寂しさなのか、嫉妬に近いものか。
本当のところはよくわからない。

大神くんなりに、一生懸命に考えて
出した答えだったのかもしれない。
でも、そんなのはこむぎにはただ
ただ残酷なものでしかなかった。

「……そういうのは、いらない。
欲しくない……。」

恋してるのにそれは届かない。
同じ気持ちじゃないのに行為だけ
向けてくれるっていうのは…
随分寂しいものだろうと思う。

大神くんとの帰り道から、彼の
言葉で逃げ出してしまったこむぎ。
偶然にも泣きながら走っている所
伏見くんに見つかってしまった。

でもそれを見て伏見くんは、何か
きついことを言ったりはしなかった。

慌てた様子でこむぎを引き止めて、
抱きしめた。もうやめとけって。

最近、見てて思っていた。
大神くんがこむぎと伏見くんが
一緒にいるのを気にして見てた
ように、逆に大神くんとこむぎが
一緒にいる所を気にして見ている
ことが何度かあった伏見くん。

きっと今までずっと同族を、大神くん
を守るための行動が多かったろう。
でもそのうち、こむぎの存在が彼の
中で大切なものになっていた気がする。

それが恋なのか、まだそこまでは
いってないものなのかわからない。
でももうこれ以上、こむぎが涙する
姿を見ていられなかったんだろう。

~ひとこと~

大神くんの複雑な思い、こむぎの
必死の努力と葛藤、そんな2人を
見ていた伏見くんの思い…いろいろ
思うようにはいかないものです。

恋い慕う人と友達で居続ける。
想いを告げないままならそれも出来た
のかもしれない。でも思いを告げて、
同じ気持ちは返せないと言われた上で
友達で居続けるっていうのは苦しい。

人って弱いから…きっと伏見くんの
いうようにはっきりと拒絶を示して
くれたほうが良かったのかもね。
こむぎ、どうなっちゃうんだろう。