てをつなごうよ 第2巻

著:目黒あむ 先生

「柊くん意外と強がり少年だからなか
なか難しいかもしれないけどさ、誰かに
頼るのってたまには大事だと思うよ。」

そう、小豆は美月に言ったことがある。
でも実際、本当に自分で何でもやって
しまって人に頼ろうとしない、その上
自分のことは後回しにしてしまうような
性格をしているのは小豆の方だった。

ある時、熱を出して学校を休むこと
になった小豆。その熱の原因に、
美月は思い当たることがあった。

前日、家への帰り道突然雨に降られ
びしょ濡れになった小豆、大豆、
美月、流星の4人。家の鍵を持って
来るのを忘れたというドジを踏んだ
美月により、4人は一旦小豆の家に
上がってお風呂に浸かったり何だり‥

小豆は3人のことを最優先にして、
自分は一先ず着替えるだけで後は
他の家事やらなにやらを優先した。

‥きっとそのままお風呂でゆっくり
温まったりはしなかったんだろう。

いつもどおり平気そうに振る舞う
小豆の変化に気付いたのは千花。

千花より先に気付けなかった
悔しさもあってのことだろう。
千花は学校をサボって小豆の
看病をしに彼女の部屋へ行く。

少々強引なところもあったけど、
頼られたかったのかもしんない。
悔しさや意地もあったろうけど、
きっとそれ以上に‥彼女のために
なにかしたかったのかもと思う。

まだ恋と自覚していない思い。
そして彼の行動に‥ほんの少しだけ
変化しそうな予感がする小豆の思い。

‥可愛らしいな 笑
とっても微笑ましい気持ちになる。

ひょんなことから、家族の好きと
恋の好きの違いって何??という
話題になった‥結局その答えは
出ないままで終わったんだけど、
少なからず変化し始めている様子。

「…今もはじめて会った時と
変わらないですか?俺の事
気にかけてくれる理由って。」

そう、聞いてきたのは美月だ。
はじめましての頃、妙に美月に視線
を送っていた小豆がいたんだけど、
その理由はずいぶん小豆らしいこと。

「さらさらの黒髪が大豆に
そっくりだったからだよ?」

でも今はあの頃とは変わったみたい。
ほんの少しの変化かもしれないけど、
きっと大きな変化なんだろうと思う。

(…だけど本当はそれだけじゃないような。)

きっとまだ自分でもわからない
曖昧なままの気持ちが眠ってる。
それにいつ気付けるかはきっと
きっかけ次第なんだろうと思う。

恋に発展するのかしないのか、
まだわからないところだけど
このままこの2人がくっついたり
したら‥ずっと昔から思い続けた
千花はどうなってしまうんだろう。

ちゃんとお兄ちゃんしてる美月を
見て優しい表情を見せた小豆に、
戸惑った表情を見せた千花だった。

自分の気持ちには鈍感なままで
いっちょまえにヤキモチは妬く。

そんな美月を見てもそこまで
焦る様子を見せてこなかった
千花が、さすがにこの小豆には
焦りを覚えたのかもしれない。

鈍感な小豆だってきっかけがあれば
少しずつ変わっていくものだろう。
彼女がいつか美月を好きにならない
なんて‥そんなことわからないもの。

‥千花、どうするんだろう。

小豆が手に怪我をしているのを
見つけた美月は、手当てしようと
彼女の手をとった‥でも小豆は
それをぱしっと払ってしまう。

嫌だったと言うより、まるで
意識してしまって恥ずかしくて
払ってしまったかのような表情。

でもやっぱりその理由にあまり
気付けていない様子の小豆。
そんな様子にばっちり気付いて
しまった千花は‥きっついね。

ずっと大好きでい続けてる子が、
今ポッとでの男にかっさらわれ
そうになってる状況だものね。

小豆は変わらないよね?
きっと、そんなふうに思ってた。
だから大丈夫と高をくくってた。

でも確実に変わりだしてるよね。
‥なんか、美月と小豆sideから
見れば可愛らしい初恋の絵なのに、
千花の視点で見ると不安で心が
張り裂けそうになる思いだ。

ああ‥きっついなあ‥。

千花ってさ、小豆のこと大好きで
何より大切で‥だから鈍感な2人が
互いに意識してるの気付いちゃって
自分が1番邪魔だって感じ始めてる。

そんなふうに、思わせたくなかった。
でもそんなふうに思ってしまうくらい
本当に小豆のことが好きなんだろう。

いろいろ考えて落ち込んで悩んで‥
そんな様子に気付いていた小豆が
心配して外に出た千花を追った先
でのことだった。彼女の気持ちに、
優しさにキスしようとしかけて‥
必死にこらえた様子で抱き寄せた。

「寂しかったんだ。少しだけ。
俺の知らない所でいつの間にか
柊くんと仲良くなってるからさー
あー俺かわいそー。ただそれだけ。」

後付で、そんなことを言って
誤魔化した千花だったけど‥
きっともう今のままの関係で
いるには限界なんだろうな。

いやでも、変化してしまう
所まで来たのかもしれない。

話は数年前‥まだ千花が中学生
だった頃まで遡る。この頃には
もう完璧プレイボーイだった
千花だけど、相変わらず小豆の
存在は特別で唯一無二だった。

そんな時に、告白すればいいのに
って言われて‥千花にとってそれは
博打でしかないことだったみたい。

両親、離婚してるんだね。多分
母親の方に引き取られたんだろう。

そんな家庭環境で、恋愛をしても
いつかは終わってしまうものという
印象が強くなったのかもしれない。

だから、あんなに思い続けてるのに
気持ちを口にすることをしなかった。

‥そういうお話って結構これ
までも読んできた気がするけど、
そう思ってしまうことって随分
寂しいものだよなと感じる。

でも逆に、恋人関係になれたら
きっと幸せだと思うのに、それ
以前から終わりを不安になって
守りの体勢に入ってしまうほど
手放したくない大切な存在だと
思える人に出会えるのは、奇跡
みたいなものだと思うから‥

その奇跡を信じたくもなるんだ。
千花、一体どうする気なんだろう。

翌日、明らかに様子のおかしい小豆。
いつもなら1に大豆2に大豆のブラコン
なのに、今日はなんでか千花のそばを
一向に離れようとしないのだった。

誤魔化しに言った言葉や態度を
気にしてのことだろう。ついでに、
美月の様子も格段におかしかった。
実は美月、2人の様子を見てたんだ。

会話まで聞こえていたかは謎だけど
あの2人を見て何か思ったんだろう。

なるべく邪魔をしないようにと、
随分遠慮がちな態度をとってくる。
2人は付き合ってるのかなという
勘違いをした可能性すら想像出来た。

まあ一先ず美月のことは置いておいて、
(美月が見てたこと気付いてないから)
小豆の鈍感なりの気遣いに逆にしんどく
なってきた千花は、ある賭けに出た。

右手と左手、どっちに飴が入ってる?
千花が勝ったら自分の想いを伝える。
そして小豆が勝ったら‥

勝ったのは小豆だったみたい。
その後ちょっとした心理テストを
小豆と美月にとかせてみた千花。

「次の色でイメージする
人を紙に書いてください。」

よくある心理テストだった。
赤/白/緑

二人とも緑のイメージは千花。
小豆の好きな人が千花だったら
どんなに嬉しいことだったろう。

そんなふうに思いながらも、千花は
ウソの答えを2人に教えてみせた。
赤は家族、そして白は‥好きな人。
恋する相手だと教えた。あの賭け、
小豆が勝ったら2人の恋を応援する
っていうことでも決めたんだろうか。

千花の言う心理テストの意味に、
真っ赤にした顔を見合わせる2人。

(こいつらが自分の気持ちを
1ミリでも自覚してくれたら、
俺も少しは楽になれんのかな。)

そんな気持ちを込めて出た行動。
‥でもやっぱきっついよね。

~ひとこと~

いまいち感情の読みにくい小豆や美月より
クールぶってても1番感情がわかりやすい
千花につい気持ちを重ねて読んでしまう。

そうすると、終始心情が痛いしつらい。
この先一体どうなってしまうんでしょう。
個人的には小豆が誰を思うことになっても
千花が思いも告げずにこのまま気持ちを
抑えていくままってのは‥苦しすぎる。

すぱっと振られるでもいいから、
何かしらすっきりできたらいいと
願ってしまう。そしてあわよくば、
やっぱり千花とくっついて欲しい。

美月がなにか悪いというのはない。
ただ‥個人的には千花を応援したい。