水神の生贄 第6巻

著:藤間麗 先生

水神の生贄6-1

(何故、神様は救ってくださら
なかったの?すべてすべて枯らして
しまってから雨をくださった。)

過去にひもじい思いをして
家族を失った…これは、あの
巫女の過去なんだろうか??

水神の力を我が物にしようと
しているように思えていたけど、
きっと彼女にとってはそれだけ
ではない恨みみたいな思いまで
持っているような気がしてきた。

水神の生贄6-2

水神の力を手に入れるために、
有紗陽をまた狙う作戦を練る。

食事にこの毒を混ぜた…だが、
それを飲んだのは水神だった。
毒が入っていることを見抜いて
代わりに飲み干してしまったw

この作戦が失敗すると、今度は
人の姿をしている時の水神を狙う
等という方法を企ててきた巫女。

どれだけ水神が有紗陽の危険を
回避しようとし続けても、巫女
のこの企ては終わってはくれない。

一体どうすれば…

水神の生贄6-3

巫女の歪んだ悪意に触れ、土砂に
押し潰されそうになる水神を守ろう
とした有紗陽が大怪我を負った。
怪我は水神の力で治せたけれど…

(娘のうけた痛み、恐怖、向けられた
悪意が、憤ろしい。こんな世に置いて
おけるか、汚い人間に触れさせるか。)

(私と共にあればいい、痛みも、
苦しみも、恐怖もない、神の中に。)

有紗陽が目を覚ますと、そこは
見慣れた…でもとても懐かしい
幼いころまで自分がいた世界。

父も母もいて、学校に向かう。
一緒に学校に向かう翠葉流。
学校に行けば教壇には月彦先生。

水神の知る存在だけで構成
された、有紗陽が苦しむこと
のないふわふわした世界。

有紗陽が苦しまないためだけに
造られた水神様の力の中の世界。

(ふわふわする。なんだかすごく
心地良い……あったかい……。)

きっととても温かい幸せな
世界だったろうと思う。

つらいことは何もない世界。
でもそこに、水神の姿はない。

水神の生贄6-4

水神の目には、彼の力の中で
眠り続ける有紗陽が映っていた。
ある時、何かがおかしい…自分は
何か大事なことを忘れている…

そんな違和感に襲われて
有紗陽は表情を歪めた。

(認めよう、そなたがいないと退屈だ。
おまえが眉を動かしただけで疼くよう
な期待はなんだろう。おまえはどちら
がよかったのだろう。傷つき泣くこと
のあるこの世でもいいだろうか。)

水神には、気がつくと心があった。
有紗陽を大切に思い、大切な有紗陽を
傷付けるものを敵とみなし憤る心が。

そして自分に出来る方法で必死に
有紗陽を守ろうとした…それでも、
彼女の心を一番大切に思っている。
そんなふうに感じて取れた。

「おはよう、水神様。」

「……ああ、おはよう。」

水神の有紗陽への思いと、有紗陽の
水神への想いが彼女をまた水神の
元へ帰ってくる道を作ったのだろう。

傷付いても、辛くても…有紗陽は
これから先この世界で水神と共に
苦しみながらも生きてくんだろう。

水神の生贄6-5

水神は翠葉流や他の人々の記憶
から自分に関するものを抹消した。

そうすれば、有紗陽はただの少女、
水神の巫女として狙われるような
ことはなくなるだろうから、と。

「私は忘れないよ。」

そう言った有紗陽の記憶をも、
水神は消し去ってしまった。
水神は、有紗陽が溺れている
所を助けた青年ということに。

そんなふうに今までの記憶が消えて
しまっても、有紗陽は水神に今まで
と対して変わらず笑顔で接していた。

そんな彼女の表情に安堵する
水神。そして今の水神だから
気付けたことが多々あった。

あの時ああしていればもっと
おまえは安心しただろうに、
笑っただろうに…なんてこと。

そして水神の力のことなど
知らずにふとこぼした弱音。
それを聞いてしまったから…

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「ああ……私はまた間違ったのだ。」

あることをきっかけに、有紗陽は
水神のことを思い出してしまう。
そして水神は間違えたのだと気付く。

「知っていた。おまえの夢が見えた
から、ここではないどこか違う世界。
それがおまえの居場所なのだと、
そこから『直して』やらなかった
のは傍に居たかったからだ。」

彼が出した答えは有紗陽を
元の世界へ返すということ。

「さようなら。」

水神の生贄6-6

元の世界に戻ってくると、
有紗陽には弟が出来ていた。
歓迎されていない様子だった…
それでも、優しい子だった。

「私のことは好きじゃないけど
1人で行かせてお母さんたちを
心配させるのを心配してる。」

元の世界での生活に、まだ
慣れなく不安な姉を放って
おかずについて回ったのだ。

彼に手伝ってもらいながら、
有紗陽は図書館に行った。
水神を祀る祠にも行った。

(いない…ここにはいないんだ。)

随分前の話だ。水神様に、
かけがえなく思えたら、
私の願いをきいてくれる?
そう、言っていた有紗陽。

気づけば、水神にとって有紗陽は
かけがえのない存在になっていた。
そんな有紗陽が願いを口にしたから
水神はそれに応えてくれたんだろう。

(なんと残酷な願いだろう。
あんなに優しそうに、あんなに
悲しそうに私に心をくれたのに
置き去りにしてしまった。)

涙を流す有紗陽…すると雨が…
泣き止むとその雨も止んだ。

「まだ…繋がってる…!」

まだ…有紗陽とあの世界は
どこかで繋がっている。

水神の生贄6-7

置き去りにした心を取り戻そう
と、有紗陽はその日から必死に
関連しそうな情報を集めだした。

難しい内容で一見よくわからない
ような内容…それでも有紗陽には
覚えることが出来た。それは水神
の力なんだろうと有紗陽は思う。

調べごとをしていた時、突然
グラスの中の水が湧き上がった。
そして、どこから聴こえてくる声。

「……ひ…」

「有紗…陽」

声が聴こえてくる先には庭の池。
またこの池から戻れる…?そう
有紗陽は思ったのかもしれない。

それを引き止めたのは弟だった。
本当に戻れるかなんて、また
水神や翠葉流のいたあの世界に
行けるかなんてわからないだろう。

有紗陽は…またこの世界の家族を
捨てて戻れると言うんだろうか。

…どう、するんだろう。

~ひとこと~

いやはや…今回もやったら
お話深くて…一先ず泣いた。

いろいろありましたが、水神に
とっても有紗陽にとってもきっと
お互いがかけがえのない存在に
なってしまったんじゃないかな?

お互いにきっと優しくも切ない
想いを抱えているんだろう。

…どうなってしまうんだろうね。
きっと両方なんて選べるものでは
ないんだろうと思う。有紗陽が
元の世界かあの世界かどちらかを
選ぶことしか出来ないんじゃない?

簡単なものではないだろう…
また次巻…めっちゃ気になります。