ぴんとこな 第16巻【完】

著:嶋木あこ 先生

ぴんとこな16-1

河村と順調に思えたあやめ。
でも、あやめの中ではずっと
考えていたことがあった。

「大学入学を機に
出ていこうと思います。」

父親は行方知れずの怪しい苦学生。
自分の事をそう話し、そんな立場で
このままお世話になり続ける訳には
いかない。いつかは諦めないと…
なんてずっと思ってたのかな?

でも、そんなあやめの言葉にお母様の
反応はあまりに暖かすぎるものだった。

あやめの心へのビンタを、帰宅した
ばかりの河村がかわりにくらったw

こんなふうに言ってくれるのが
大好きな人のお母様だなんて、
こんなに嬉しいことはないよ。

「案外近くにいるかもしれないわよ。」

ほんと…案外近くに、ねw

ぴんとこな16-2

恵利左衛門の所に稽古を
付けてもらいに行った帰り。
偶然優奈と再会することに
なったヒロキ。優奈のお腹は
もう随分大きくなって、誰が
見ても妊婦さんな状態だった。

そんな彼女に対して、今までの
ことを心から詫びるような言葉を
並べたヒロキ。ほんと、いろいろ
反省はしてるんだろうなって思う。

好意につけこんで利用し裏切った。
それを丁寧に謝罪し、ひとつだけ、
と付け加えてヒロキはこう伝える。

「キミはもっと自分に
自信を持つべきだ。」

大事に思ってくれている人が
ちゃんといるんだということ。
師匠も、そして田辺も、そして
自分も…とても大切な存在だと
思って接していた時期はあった。
確かにあったんだ…あやめとの再会を
機にいろいろこじれてしまったけど。

「関係がこじれる前までは
お嬢さんと一緒にいてそれなり
に楽しかったと思うし。」

この言い方は素なんだろうか…w
「それなり」「楽しかったと思う」
そんな言葉にガーンとなる優奈w

これが何か考えての言葉だと
するなら、もう過去のことは
思い出にして前に進めるように、
ちゃんと踏み切れるようにと
いう思いがあったかもと思った。

そんな、一見和やかな会話。
それが終わった頃に偶然その場を
見てしまったのは田辺だった。

優奈は、ヒロキに頼ることは卒業して
子供のため、そして田辺のために1人で
頑張らなくちゃ、と決意していた所だ。

そんな中、こんな話の部分だけ聞いて
しまったものだからまた妙な誤解を…

ぴんとこな16-3

偶然優奈とヒロキがいる所を見て、
中途半端に話を聞いた田辺は、
自分は捨てられる…そんなふうに
思ってしまったようだった。実際は
そんなことはなかったのに、優奈が
中途半端なことをしてしまったのも
その原因になってるから仕方ない。

その結果、逃げ場として
頭に浮かんだのが木嶋屋…

「コイツ(恭之助)さえいなければ
木嶋屋は俺のモノになる。」

そう思って恭之助を刺そうとした。
…のを止めたのはなんとあやめの父!?

「ち…父です。」

なんてところでお父様出てきたww
彼なりに、仕事頑張っていたらしい。
歌舞伎の舞台になる会場の警備員。

あやめの子供の頃の様子を思い出す
と結構神経質なパパなイメージが
あったけど、随分ほわ~んとした人w

何年ぶりの再会かしらww

ぴんとこな16-4

連獅子の舞台当日まで、恭之助の
メンタルを心配し親父さんの体調
が良くないことを隠していた。

でも、本当はそれに気付いていた。
その上で、彼なりの覚悟を決めて
病院に行かずに稽古に集中した。

気持ちを高ぶらせて、平気だよって
自分に言い聞かせるようにして。

「親父への最後の舞台を
ちゃんと勤めるために。」

ほんと…こいつ成長したよな。
それでも不安になる時は相棒の
一弥が大丈夫だと言ってくれる。

この2人でならきっと、本当に
最高の舞台が出来上がるだろう。

ぴんとこな16-5

舞台当日、それもおそらく開演
までそこまで時間がない時に、
一弥が急にいい出したことがある。

「代役を降りると言ってるだけです。」

何を言い出すんだと大慌ての恭之助。
でもそれは降板ではない別の意味で…

本来は親獅子(一弥)と子獅子(恭之助)
の予定だったものを、子獅子を2人で
演じるということにしたのだそうだ。

親父さんが演じる予定だった親獅子
の席を空けての連獅子が始まった。

「ありがとな、親父の場所空けて
くれて。そのお陰か、さっき舞台
の上で親父に会えた気がしたよ。」

最後の最後まで、父親を思って、
木嶋屋を背負って、演じ続けた。

こうして親父さんは息を引き取った。
その瞬間、この日1番の拍手と大向こう
が恭之助と一弥の子獅子に贈られた。

ぴんとこな16-6

数年後、優奈の子は男の子、
じき4歳になる。名は優樹。

父親、田辺は例の殺傷未遂を不問に
する代わりに歌舞伎役者を辞め、
サラリーマンとして頑張ってる。

優樹、轟屋と木嶋屋の血を引いた
彼は、最近歌舞伎に興味を持った。

そんな勇気を轟屋の跡取りに…
なんて、最近ヒロキは密かに
考えているようだった。

これから先もずっと、歌舞伎役者の
血は受け継がれていくんだろうな。

ぴんとこな16-7

最後の最後は、新春公演の様子で
終わる。一弥は、琳史郎の襲名を
断ったのだそうだ、あれだけ執着
していたのに…変わるものだな。

一弥と恭之助、2人の進む道は別々
かもしれないけれど、それでも
これから先もずっと同じ光の元へ
向かって進み続けていくんだろう。

~ひとこと~

はい~!!ぴんとこな最終巻でした!!
どうでしたでしょうか!?個人的には
とても好きな作品だったと思います。

その後、あの人はどうなったろう
とかまだまだ気になるまま終わって
しまったところもありますが、
そこは想像で補うとしましょうw

全く知らなかった歌舞伎の世界。
とても素敵なものだと感じました。

それでは、また他の作品で。