著:嶋木あこ 先生

話は少し遡り、ヒロキがあやめを
連れてく途中…半ば助けて欲しいと
あやめをタクシーに乗せたヒロキは
河村が役を降ろされたことを話す。
そうすると、状況を掴みきれて
いなかったあやめはタクシーを
急がせるように声を上げていた。
(あやめちゃん、やっぱり
君の存在は邪魔だ……)
ヒロキの恭之助に対する執着は
異常に強い。そのきっかけが幼い
頃からの憧れだったり自分をこの世界
に引き釣りこんだきっかけだったり。
理由はいろいろあるだろうけど、
自分の中でも対処できていない
執着、いつのまにかあやめを
上回るほどの特別な存在になって
しまってきているのかもしれない。
それでも恭之助のためにはどうしても
あやめが必要になってくる時がある。
そういう、葛藤に苦しんでいるようだ。
こんな執着のせいでヒロキは犯罪
紛いなことをしてしまったわけだし。
完二郎を瓶で殴って気絶させ、
浴槽に縛って放置してました。
まあ、何で縛ったのか簡単に
抜け出せる状態でしたけど。
ヒロキの中のこの落ち着かない感じ、
一体どーしたらいいんだろうね。
このままじゃ、彼自身が不憫すぎる。

ヒロキが河村に執着するワケ。
今まで自分でも気付けずにいた
それに、やっと気付いたらしい。
河村に、自分を重ねている。
重ねているというより、河村の
ようになりたい、したいっていう
気持ちの現れなのかもしれない。
あやめを邪険にできないのも、
好きな人だったから。今はもう
諦めることにしたと言っても、
それでもあの頃の長年の思いが
そう簡単に消えるわけじゃない。
諦める決心をしたとしても、
心の何処かで彼女の存在は
残っているんじゃないだろうか。
きっと歌舞伎に関わっていく以上、
河村はもちろんあやめに対する
複雑な思いは消えてくれないだろう。

突然、以前ヒロキがひとり暮らしの
家に連れ込んでいた女性の話になる。
合コンで知り合った、髪の長い子。
その子を見て巨乳好きなんて言う
河村だったけど、それに対して
ヒロキはこんなことを言ってきた。
「彼女を選んだ理由はほかにある。」
権助と清玄についてあやめに言われた
ことを思い返しているうちに、権助と
ヒロキを重ねるとある仮説がたった。
もしかして、あやめの代わりに…?
それをヒロキに話したら簡単に
否定されてしまうが、逆にそれが
もし本当だったらどうすると
言われ、嬉しかったと答えた。
「ホントは僕…」
これに続く言葉は何だったろう。
河村の大暴走でこの先の言葉を
聞くことはできなかったが、
きっと彼らの不仲はここでもう
解消されたんじゃないかなって。

少しだけ、心が通じ合えたような
気がして温かい空気に包まれて
いた河村とヒロキ…だけど、して
しまったことは簡単に消えない。
完二郎を縛っておいた浴槽の
そばに、ヒロキは携帯電話を
落としてしまっていた。
これの持ち主が犯人だという
ことで、同期から考えてヒロキの
可能性が高いとふんだ完二郎は、
持ち主のハッキリしない携帯を
使ってカマをかけてきたのだ。
(―――し…しまった!!)
河村とのことがあった直後、
気が緩んでしまってたのかもな。
今回のことを通報しないことを
条件に、恭之助とのコンビを解消
して完二郎と組もうと言ってきた。
さてね…どうすんの。
やっちまったものはしょうがない。
謝って許されるものでもない。

公演のあと、家を出てしまっていた
あやめとお母様が偶然再会する。
「猛が舞台に上がれるよう助けて
くれたんですって?ありがとう。」
「一緒に帰りましょう。」
お母様、ほんと素敵な人だと思う。
そんなこんなであやめは河村の家に
戻ってまいりました…からの話。
偶然見つけた河村の幼い頃の写真、
初恋をした時の写真だと話す母様
だけど、その写真の表情は妙に
暗いというか…複雑な表情だった。
その理由…初恋の相手は4歳年上の
早川つかさちゃん…女か男かハッキリ
わからない名前に、女の子のような
服装…確かにかわいらしかったです。
でも…男の子だったんですよねw
同業者、米駒屋の恵太郎さん。
彼は河村にとって、結構大きな
トラウマになってるようですw

あやめ…いろいろ決心ついたみたいね。
これからも恭之助は良くも悪くも
目が離せない役者になると思う。
ずっと傍で支えてあげてほしいな。
あやめの言葉を偶然聞いていた母様…
少しだけだけど、寂しそうな表情に
見えた気がした。もしかしたら、過去の
自分と重ねてたりするのかな~なんて。
勝手な想像です。本当のことは謎w

いや~ヒロキもほんといろいろ
ズバッと言うようになったもんだ。
米駒屋の御曹司に喧嘩売ったよ。
まあ、カッとくるのもわかるが。
恭之助はきっとヒロキにとって光だ。
その光に並んで、本当の意味でコンビ
だと言われるように、誰にもオマケだ
なんて言わせないように…これからも
この歌舞伎界で戦っていくんだろう。
それにしても、完二郎さんとのこと
大丈夫かな…不安が絶えないわ。
ある意味1番見ててヒヤヒヤするよ。
~ひとこと~
はい~、10巻でした。一先ず
桜姫東文章おもしろかった。
舞台稽古にあまり参加していなかった
こともあり、恭之助がいろいろど忘れ
をしたりなんだり…いろいろハプニング
はあったけれど、全体としてはとても
いい出来だったんではないだろうか。
あやめと河村に関しては少しずつ
いい感じになってるなって思うし。
今回は蚊帳の外状態だった梢六と
優奈…そこに関してのヒロキの話。
こっちはどうなることやらですね。
あとは、一弥と恭之助の中がやっと
いい感じになってきた所への完二郎。
まあ、一弥の自業自得ではあるが、
ほんとどーするんだろうねそこ…。