ぴんとこな 第2巻

著:嶋木あこ 先生

ぴんとこな2-1

「僕はなんでも知ってて、なん
でもできる男になりたいんだ。」

幼い頃のヒロくんは、そんな
ことを言っているような子だった。

早くに父親を亡くしたのか…いや、
もしかしたら浮気でもしたのかな?
泣いている女の人を放っておいては
いけないなんて言ってた人だから。

それで母子家庭で育った彼は、それを
理由に周りに蔑まれるのは嫌だという
気持ちもきっと強かったんだろうな。

そんな、ちょっと周りを寄せ付けない
雰囲気すらまとったヒロくんに臆する
ことなく話しかけていったのはあやめ。
当時はまだお嬢様だったあやめだ。

『1年生を迎える会』とやらの出し物に
歌舞伎、その主役をヒロくんがやると
突然の提案をしてきたあやめに対して
即答で却下するヒロくんだったけど…

「それってできないってこと?」

あやめの言葉にムキになったヒロくんは
歌舞伎の主役を引き受けることにする。
これが、ヒロくんと歌舞伎の出会いだ。

ヒロくんが演じるのは女形。クラスの
子達にはオカマだの何だの批判される。
でもヒロくんはそんなこと全く気にする
素振りも見せず、黙々と歌舞伎に関して
の勉強をし続けている様子だった。

あやめは昔っからあやめだな~w
それでも、最初はこんな感じから
始まったあやめとヒロくんだった。

ぴんとこな2-2

あやめの笑顔の奥には、たまに
陰りが見えることがあると感じて
いたヒロくん。その正体はきっと
家のことなんだろうってことも、
ヒロくんは気付いたのかもしれない。

あやめの家は父子家庭らしい。
でもそんな父親も、忙しい人で
あやめにはあまり構う暇が無い
人だったのかもしれないね。

そんなあやめを少しずつ知って、
気付いた頃には好きになって
しまっていたのかもしれないな。

(僕はやっぱり、あのコが
苦手…見てると心臓の辺りが
ちょっと痛くなるから。)

ある時あやめに連れられて本物の
歌舞伎を見に行ったことがある。
そこでヒロくんが演じる役を演じて
いたのが幼き頃の河村。恭之助だ。

それを見て、それを褒めるあやめを
取られたくない…無意識にそんな
気持ちを抱いたのかもしれない。

迎える会当日、高熱を出したヒロくん
はふらつく足取りで学校に来た。

到底かなわない…そう思っていても、
体調不良を言い訳にやらなくていい
なんて思ったりもしたけれど、あやめが
寂しさを隠したような笑顔を見せるから
耐えられなかったのかもしれないな。

あやめは、一体何を思ったろう。
お嬢様で、悩みなんかなさそうで。
ヒロくんからの最初のイメージは
そんなだったあやめ。きっと周りに
弱みを見せまいと頑張っていたんだ。

それに気付いて、こんなふうに言って
くれた人が今までいただろうか。

ぴんとこな2-3

あやめとヒロキの約束の言葉。
あやめに恋したヒロキがあやめの
ために人生を捧げようとした誓い。

でも、この約束からしばらくして
あやめはヒロくんの前から姿を
消してしまうことになる。
おそらく家の問題でっていう
ことなんだろうけど、そこの
詳細はまだ明かされてません。

ぴんとこな2-4

あれから4年。

それからのヒロくんは、あやめとの
繋がりは歌舞伎だけなのだと小5から
弟子入りして師匠の家に住んでいる。

あの頃あやめが付けた『一弥』と
いう名を名乗って、日々精進。
きっと、あやめのことだけを思って
毎日頑張っていたんだろうな。

それでも中々いい役を貰えずに、
あやめは自分の存在に気付いてる
のか、そんな不安が彼を焦らせた。

その師匠の家の娘さんが、ヒロくんが
「お嬢さん」と呼ぶ澤山優奈って子。
身体が弱いのかな?ヒロくんは師匠から
様子を見るようにと言われているらしい。

そんな彼女は…ヒロくんのことが
好きなのかな~って思うとこ。

ぴんとこな2-5

お金持ちの娘…でも多分気が強い
タイプではなかったから、お金を
タカられることもあったようだ。
それに従うしか出来ない優奈の
前に立ってそれを阻止したのが、
まさかのあやめだった。不思議な縁。

この時にはもうお嬢様では
なくなっていたあやめ。

ヒロくんとの約束の少し後、
大きな借金を背負うことになった
あやめは、ヒロくんに会いたくても
ヒロくんの親に拒絶されてしまい
会うことを許されなくなってしまい、
ヒロくんに甘えることも出来たの
かもしれないけど、危ないことに
巻き込みたくなくて、何も言わず
に離れた。それが、真実だった。

そんな事情を知った優奈は、助けて
くれた恩人あやめに対しヒロくんの
ことを知らないと嘘をついてしまう。
とっさのことだったしそれは仕方
ないかもとは思ってたんだけど…

あやめと優奈が会っていたと知った
ヒロくんはあやめを探しに行くが、
あやめはもう引っ越してしまうこと
を知る。一足遅くて会えなかったのだ。

悪いことは重なるもので、いい役
をもらえるかもしれないと期待
していた話、その役をまた恭之助
に取られてしまったことを知る。

その落ち込みようにつけ
こんだのは優奈だった。

「あやめちゃんは…ヒィくんが
歌舞伎やってるの知らなかったよ。」
そんな、嘘をついたのだった。
「きっともっと有名にならな
きゃ気づいてもらえない。
でも私ならヒィくんに
歌舞伎界の地位をあげられる」

あやめを繋ぎ止めたい…その一心で
ヒロくんはこの誘惑にすがった。
これじゃ…本末転倒じゃないか…。

ぴんとこな2-6

その後も、歌舞伎を学ぶため、
歌舞伎の演技をより良くするため、
御曹司(恭之助)を超えるため。

優奈と身体の関係を持ったり
なんだり…いろいろ大事に
しなきゃいけないもんが何か
わからなくなってきてる。

それでも、上を目指してずっと
歌舞伎と向き合ってきた。

でもおかげで、大きな役を
貰えるまでに至った。そして
素晴らしい演技を完成させ
轟屋の名を轟かせた一弥。

やり方が正しかったかはやはり
わからない。それでも、あやめを
思って頑張ってきた歌舞伎が少し
違う者になり始めているようだ。

優奈への思いは恋ではない。
それでも、大切な存在には
なってきている。だから、
少しずつ小さくなっていく
あやめの記憶が思い出になって
そのうち消えていっても大丈夫。

そんなふうに感じていたようだ。
それなのに、あやめと再会
することになるなんて。

~ひとこと~

2巻。ヒロくんの過去をメイン
としてお話しが明らかに…。
うわ~なんかすっごいつらい。

どっちが悪いわけでもないんだ。
ただ、いろいろ悪いことが重なった。
相手を大事に思うがゆえに繋がる
ことがない縁になってしまった。

最終的には、弱さだったのかも。
それでも、やっぱりすれ違いは
人を弱くするものだと思うし、
それによって生まれた寂しさと
彼女への思いの強さが手段を
選ばせたのかもなと思った。

でもその結果、過去のしがらみから
抜け出せるかもと思えるようになった
矢先…まさかの再会だったんだね。

それじゃあ、追いかけらんないよね。
いろいろ、手遅れだったのかな?

これから、どうお話が進むのか。
楽しみなような、少し怖いような。

それでは、また3巻で。