パパと親父のウチご飯 第13巻【完】

著:豊田悠 先生

年越しの挨拶もそこそこに、千石は晴海
にマキが帰ってくるということを話した。

その時千石は自分の気持ちを
口にすることはなかったけど‥

マキは愛梨を海外につれて帰りたいと
思っていて、その結果今の4人の生活は
勿論千石と愛梨だって離れ離れになる。

愛梨を預かったばかりの頃は問題
ばかりで少しでも早くマキのもとへ
愛梨を返したいと思っていた千石。

たかが1年、されど1年。

でもその時間を一緒に過ごしながら
一緒に成長し続けてきた時間はとても
大切なものになっていて、そう簡単に
離れる覚悟なんて決められないだろう。

それでも、海外に言ってしまったら
食べられないだろうからとお正月に
おせちを作ってみたり‥しっかり
愛梨のために今できることをする。

そんな行動をとりながらもいつまでも
一緒にいたい気持ちは拭えないまま。

すごく泣きたくなってしまった。
でも今この時間も、愛梨のこんな
笑顔を見られたら千石は幸せな
気持ちでいっぱいになるんだろう。

「色々考えたけど、やっぱり
これからも愛梨と暮らしたい。
と思ってる。…でも愛梨にとって
俺がいい父親かは自信がねぇ。」

愛梨にとっては母親のそばにいる方が
いいんじゃないか‥そんな弱気なことを
晴海に話している千石を茜は見かけた。

茜にとって千石の第一印象は酷かった。
でも千石家晴海家と一緒に過ごす中で
そんな印象はそうかからず好転する。
すごくいい父親だってわかったから。

自分の父親が大嫌いだったからこそ
千石という存在は茜を救ったんだろう。

そんな千石に、大丈夫だよって
背中を押したかったんだろうね。

茜なりの一生懸命な思いに千石は
嬉しいような照れくさいような
‥そんな顔をして笑ってた。

きっとちゃんと届いたよね。

「バレンタインは1年に1回好きな
人にチョコをあげる日のことだよ。」

そう茜に教えてもらった愛梨は、
バレンタインをしたいとゆかりさんの
所で手作りチョコを作ることにした。

女の子だけの聖域だと言わんばかりに
千石・晴海・清一郎の3人を追い返す。
その手作りチョコをまさか自分が貰える
なんて、千石は全く予想できておらず‥

無事完成したチョコをあげると言われた
時は「えっ」と間の抜けた反応をした後、
あまりの嬉しさにしばらく固まってた 笑

愛梨が大好きな親父達のために一生懸命
作ったバレンタインチョコは、きっと
市販のどのチョコより美味しかったろう。

茜の言葉に、愛梨からのチョコ。
それらは千石に自分の気持ちに
正直になる勇気をくれた気がする。

最後に決めるのはきっと愛梨。
でも千石が我慢する必要はない、
マキが帰ってきたら千石の気持ち
ちゃんと伝えないといけないね。

千石と愛梨の笑顔を見ていたら、
すごく嬉しくて泣きそうになった。

マキが帰ってきたその日、空港まで
迎えに行った千石はマキと一緒に
幼稚園まで愛梨達を迎えに行った。

でもそこで愛梨は、母親から逃げる
ように無言で立ち去ろうとした。

千石が引き止めるも、マキから
逃げるような態度を取り続けて
千石から離れようとしなかった。

これはね、ショックが大きいよね。
でもその原因は、決して母親のことを
嫌いとかそういうのではなさそうで‥

家に帰ってもマキを避ける態度の愛梨
に千石はママが料理をするお手伝いを
してくれるようにとお願いしてみる。

良かったような、少しだけ切ない
ようなそんな気持ちになった 笑

愛梨は千石のことが大好きだ。
でもマキのことも大好きなんだ。

だからこそ、どちらか一方しか選べない
選択肢なんて与えたくないなと思った。

千石の気持ちをマキに伝えると、
マキの口から出たのは千石が全く
想像していなかった言葉だった。

「私ハワイのお店諦めて日本に帰る。」

愛梨にとっては日本にいた方がいい
んじゃないかとマキなりに考えて
出した答えだったのかもしれない。

それでも千石にとっては簡単に納得
できる決断ではなかったんだろう。
多分悪い判断ではないんだと思う。

大切なものが増えれば増えるほど、
時にはこうやって何かを諦める
ことをしなければいけなくなる
ことも多いのかもしれないね。

でもこのまま決断したらどこかしら
わだかまりや後悔が残りそうで‥
愛梨はそんな中で幸せになれるのか
考えると、少しだけ不安になった。

今後どうしていくか、まずは愛梨が
どうしたいかを聞く必要があると
千石・マキ・愛梨の3人で話をした。

「ママとハワイに行くか、日本でお友達と
一緒の学校にいくか、どっちがいい?」

でも愛梨はどちらか一方だけを
諦めるつもりなんてないみたい 笑

そんな娘の言葉に、マキも仕事を
諦めるのではなくどちらも諦めない
という選択をすることにしたようだ。

きっと金銭的にはかなりかかるし、
マキの体力的にも大変そうだけど
それでもこれが最善かもしれない。

どちらも捨てないための覚悟だから、
きっとどこまでも頑張れる気がした。

大変なこともあるだろう、それでも
マキも愛梨も千石も、みんなが幸せだ
と感じられる未来になりますように。

それからいろいろ…ほんといろいろ
あって愛梨達は中学生になりました。
そのいろいろは本編を御覧ください 笑

でも大きな変化が一つあって、ずっと
晴海宅で4人で生活していたのを解消
して今は父子2人での生活をしている。

ただ、つい最近まで4人で暮らして
いた名残は相変わらずで清一郎と
愛梨は今も兄弟のように仲がいい。

この日は晴海も千石も仕事で帰りが
遅いらしく清一郎と愛梨がご飯を作る。

決して約束していたわけでもないけど
2人ともそういう状況だと偶然会った
スーパーで把握して、一緒にご飯を
作ることにしたようだ(in 晴海家)。

まだ愛梨の料理の腕は不安なことも
多いようだけど、2人で作ったカレーは
千石にも晴海にも大好評の出来だった。

生活が変わっても、この4人はずっと
こんな距離感で生きていく気がしてる。
それが彼らの望む居心地のいい場所に
なったんじゃないかなって‥いいね。

どんどん成長していく子供達にパパと
親父はまた驚き続けていくんだろうけど
きっとこれからも一緒に成長してって
あったかい家族であり続けるだろう。

~ひとこと~

終わってしまった、終わってしまったよ!!
‥寂しいような素敵な終わり方を見れて
嬉しいような、少し複雑な気持ちです 笑

でも本当に心温まる素敵なお話に
出会えたことを嬉しく思います。

幼い頃から周囲の目は相変わらずで、
関わって知ってくれれば態度は変わる
もののそれ以前の関係の人からは

・変な家庭 ・大丈夫なのか心配

というデリカシーのない言葉は今も
変わらず続いているようだったけど、
愛梨は嬉しそうに答えるんです。

「そうなんだよね~ウチ変わってるの。
だから色々あって楽しーんだよね。」

愛梨が満面の笑みでそう言える日々が
今もちゃんと送れているということに、
あの選択は間違っていなかったんだなと
改めて嬉しい気持ちにさせられました。

清一郎も相変わらず口数はそんなに
多くないながらもまっすぐないい子に
成長していて、千石や晴海も父親として
しっかり子育てできている証拠ですね。

これは勝手な妄想ですが、将来的に
愛梨と清一郎が結婚なんてことも100%
なくはないのでは?なんて考えたり 笑

兄弟のような感覚のままで、恋愛に
発展するかは微妙なところですが、
清一郎も愛梨もお互い以上に居心地の
いい異性はいないんじゃと思って 笑

以上、私の勝手な独り言でした。

大好きな作品のレビュー記事にここまで
お付き合い頂きありがとうございました。