マリーミー! 第10巻

著:夕希実久 先生

ここ最近、陽茉梨さんは知らない
女の子が出てくる夢をたまに見る。

陽茉梨さんにとって夢というのは、
戻りたい時間に戻してくれるもの‥
そういうものだったようで、そんな
彼女にとっては気になる内容だった。

ずっと同じ、昔の幸せな時間の夢。
それを毎日繰り返し見ていたらしい。

「皆さんはいつもいろんな夢を見る
んですか…?いつも同じ夢を見てる
わたしは変なんですかねぇ…。」

つばめとの会話から、陽茉梨さんは秋保
にもずっと同じ夢を見ていた話をした。
そこにはちょっと不安な思いも込めて。

秋保がそこでなんと答えたのかは
描かれていなかったけど、後になって
偶然居合わせた和歌にこう話している。

「やっぱ今でもあの頃が一番幸せ
だったってことなんだろうな…。」

「どうすれば今が一番幸せって
思ってもらえるんだろう…。」

秋保としてはきっと何より陽茉梨さんに
幸せだと感じてもらいたかったろうね。

なんとも、難しいところだよね。

でもそんなある時、‥小学生の子供達、
翔と林さん、最後には山田と和歌まで
偶然なのか勢揃いすることになった。

秋保はあんなふうにちょっと悩んでる
感じにも見えたけど、陽茉梨さんは
大丈夫なんじゃないかなと思えた。

(今夜目をつむったら、一面のひまわり
が夢に出てくる気がします。)

いろいろ不安なことはあるだろう。
でも陽茉梨さんさんは一人じゃない。
たくさんの友達、彼女を思ってくれる
人はこんなにたくさんいるんだもの。

「ニート保護法可決したの知ってるだろ。
今試験段階でな。公務員とニートを実際
結婚させたって話でな。撮ってこい。」

これだから、私マスコミは苦手である。
ある週刊誌の編集者、中々いい記事を
書けずにいたフリーの記者桜谷にこんな
無茶振りをしてきたのはそこの編集長。

特にこのニート保護法に関して変な
噂があるとかそういうのではなかった。

そんなターゲットにされた陽茉梨さん。
実際に被験者の家まで行ってみると、
それはそれは働き者な彼女がせっせと
働いている様子が伺えた‥のだけれど
一先ずパシャパシャとシャッターを押す。

「何してんの?」

それを偶然陽茉梨さんの所に来た
拓海に見つかり、思い切りバレた。

そんなタイミングで突然降ってきた
雨に慌てて洗濯物を取り込もうとする
陽茉梨さんと拓海‥を見ていてつい
手伝ってしまう桜谷さんは、決して
悪い人ではないんだろうと思った 笑

そんな桜谷を純粋すぎる陽茉梨さんは
何の疑いもなくいい方だと口にする、
そんなふうに言われてしまったらもう
罪悪感に押し潰されそうになるだろう。

逃げた、名乗らずに走り去った 笑
きっと決して悪い人ではないと思う。
いい人かどうかはまだわかんないけど。

職場に戻って編集長にどやされるも、
写真を撮ったことは言わなかった。

「めっちゃいい人だったし…揶揄する
ような記事なんて絶対書けねぇよ…。」

先輩記者さんに思い切りカメラ目線の
写真見つかってしまっていたけど、
桜谷はそう言っていたし大丈夫かな?

桜谷が訪れた日のその日、陽茉梨さんは
家の中でふらつくとその後気を失った。

意識を取り戻して、ただの貧血だから
大丈夫だと言う陽茉梨さんだったけど
ある可能性に気がついたようでそこから
しばらくぼーっとすることが増えた。

ご近所さんから話しかけられていることにも
気づかずとぼとぼ向かった先は春子さん宅。

実は女の子が出てくる夢って所から、
もしかしたらと秋保は勘付いていたよう
だったけど、妊娠してるのかもって。

体調のこともあるし、多分そういうこと
なんだろう。春子さんに話をするとすごい
勢いで病院に連れて行かれそうになる 笑

その可能性に、喜ぶでもなく陽茉梨さんは
随分と不安そうな表情を見せて言った。

「本当に…赤ちゃんできてたら…
どうしたらいいんですか…!!?」

陽茉梨さんが気を失った時、思い出したく
なかったであろう過去を思い出していた。
母親に捨てられてしまったんだって。

そんな自分が母親になれるのか、
ちゃんと育てられるのか不安で
不安で仕方がないんだって。

「陽茉梨ちゃんだけの子供じゃないのよ。
秋保くんと陽茉梨ちゃんの子供なの。」

春子さんは一生懸命言葉をかけてくれた。

「陽茉梨ちゃんのお母さんだって、
陽茉梨ちゃんのこといらなくなったんじゃ
ないよ。子供を手放すなんてきっと
辛かったはずだよ。色んな事情が
あったんだよ。絶対そうだよ。」

少しして陽茉梨さんは家に帰った。
秋保に話してみる、そう言って。

陽茉梨さんが帰っていった後、その
やりとりを聞いてしまっていたらしい
梅村さんと春子さんが話していた。

「ああやって…言ってあげるしかない
じゃない…ほんとは…子供を捨てる
親の気持ちなんてわかんないわよ。」

ほんと‥苦しい。

陽茉梨さんの気持ちは、どれだけ
考えても平凡な私にはわからないけど
やっぱり苦しくてつらくて、母親に
なったら自分も繰り返すんじゃなんて
考えてしまったら不安で仕方がない。

でもその後、秋保と一緒に病院に
行って妊娠が発覚して、大喜びする
秋保を見て、この先の話をして‥

きっと不安はまだまだあると思う。
それでもきっと前に進んでいける。
一人じゃ不安なことも、今はもう
頼れる人がたくさんいるんだから。

「大丈夫だよ。あなたが生まれて
くる世界は明るくてあたたかいよ。」

陽茉梨さん、秋保、おめでとう。

ある雨の日、桜谷が陽茉梨さんの
家を尋ねてきた、謝罪をするために。

あの写真、結局彼自身が記事にする
ことはなかったけれど、写真を見た
先輩ががっつり記事にしてしまった
らしいということで‥人権とは‥。

記事のタイトルはこう。

『結婚してもニートは続行の図太さ
激写 ! パラサイトニート ! 』

ってなんやねん。
被験者に人権はないのか?

内容的には、かなりディスってる
ような書き方をされていたんだけど
陽茉梨さんは全く怒るようなことは
なく、むしろ大体あってますなんて
言いながら感心してるようだった。
ほんと、いい子すぎるよあなた 笑

秋保も、こういうことを書かれる
可能性はあった、と怒るよりかは
対策しきれなかったことを反省
していると言った様子で‥ただ、
書かれるだけで終われば良かった。

直後、外から窓ガラスが割られる。
桜谷が外を見ると、そこには例の
週刊誌を持って走り去る少年がいた。

石を投げ窓を割ったのは彼だった。

(どこにも発散できないストレス
の捌け口にされたりする)

心無い記事によって、ネタにされた
対象がこんな目に合う可能性なんて
記事を書いた本人は考えてるかな?

まあ、加害者にも問題大だけども。

そういう業界のことはわからない
けど、このお話を読んで改めて
恐ろしいと思えて仕方なかった。

桜谷と少年のこのやり取りの頃、急に
外へ行ってしまった桜谷を心配してか
陽茉梨さんは後を追ってきたらしく、
陽茉梨さんは桜谷のすぐ後ろ、歩道橋の
階段まで登ってきているところだった。

‥そこでちょっとあって、陽茉梨さんが
足を滑らせ階段から落ちそうになった。

梅村さんから陽茉梨さんが階段から
落ちて病院に運ばれた的な連絡で
大慌てで病院に駆けつけると、
そこには見知らぬ男性がベッドに
いて陽茉梨さんは看病していた 笑

そう、多分あのままなら陽茉梨さんが
落ちてお腹の子も無事ではなかったかも。
でもそこで陽茉梨さんを庇ってくれた
らしい桜谷の方が階段から落ちたのだ。

陽茉梨さんから事情を聞き、その後
桜谷からも話を聞いた秋保。他にも
陽茉梨さんを心配してかなりの人数
が集まってきてて、そのほとんどが
桜谷の素性を知らないままだった
けど、名乗って謝罪しよとしたで
あろう彼を秋保はそっと止めた。

秋保すごいな、陽茉梨さんもすごい。
強い、心が、気持ちが強いんだな。

今回の事故は、言ってしまえば
少年からの八つ当たりで陽茉梨さんは
まったくもって無関係、被害者だった。
怪我をせずに済んだのは良かったし
桜谷のおかげだけど、こんなことに
なる原因を作ったのは桜谷だった。

おおもとまで辿れば、ニート保護法
での結婚ってのが出てきてしまうけど。
でもこの状況で誰を攻めることもせず、
多くの人の心が晴れることを願える。

あの少年にだって、陽茉梨さんとは
無関係だったかもしれないけどどう
にも出来ない悩みがあってあの行動
に出たんだろうと、被害者の立場で
考えられるのはすごいことだと思う。

なんて温かい心の持ち主だろう。
度を超えると、ひたすら損をする
人になってしまいそうだけども 笑

彼らのように、強く温かい心の
持ち主になりたいななんて思った。

今回の雑誌の記事の件も、石を投げた
少年についても、ニート保護法に関しても
少しずつでも改善していけたらいいね。

難しいけど、そこに陽茉梨さんが
いる限り秋保はそういう未来のために
頑張っていけるんじゃないかと思えた。

あれから秋保は、被験者登録の
抹消は勿論、それ以外にも色々
と仕事が忙しくなりそうだった。

あまり無理は出来ない陽茉梨さんの
元には秋保のお母さんとお祖母さん
しばらく泊まりに来てくれている。

いろいろあったけど、陽茉梨さんは
今回のことをきっかけとして自分は
幸せだということに気づけたという。

そして、今現在苦しい思いをしている
人達、特に子供が少しでも減るように。

仕事の面からそういう改善もできる
限りはかっていこうとする秋保同様、
陽茉梨さんもそうなる未来を願った。

ほんとこの夫婦、すごいな‥。
秋保が今みたいに人を思って仕事を
するようになれたのも陽茉梨さんと
出逢えたからこその変化だと思う。

漫画のフィクションのお話でなくとも
こんなふうに行き場のない思いを抱えて
苦しみ続けている人はきっといるだろう。

今の世の中がそういう人に対して
どこまで手を差し伸べてくれるのか
わからないけど、そういう対策が
少しでもなされていればと思った。

この物語は、読めば読むほど自分も
こんなふうな人になりたい、優しい人
になりたいと思わされるお話でした 笑

いろいろあったし、忙しすぎたのも
あってか秋保は一応覚えていたはず
だったのにすっかり忘れてしまってた
陽茉梨さんとの結婚記念日‥当日。

本人たちの知らないところでみんなで
準備してくれていた、1年目の記念日は
小さな庭での2人の結婚式になった。

直前まで秘密にしてサプライズになる
はずだったそれは、つい口走った
拓海の一言で明かされることになる 笑

びっくりするくらいたくさんの
人に囲まれてお祝いしました。

いつもの子供達や梅村さん達、和歌や
山田まではわかるけど和歌のお祖母さん
と‥最近また連絡を取り出していると
いう和歌の元旦那・隆則さんまでいる 笑

沢山の人に集まってもらって、前々
からいろいろ考えて準備してくれてて。

ほんと、嬉しかったんだろうな‥
秋保も陽茉梨さんも幸せそうだ。

‥ところで陽茉梨さんはいつまで、
秋保を名字で呼び続けるんだろう 笑

~ひとこと~

毎度のことかもしれないけど、
このお話は1話1話、シーン一つ
一つに本当にたくさんのことが
詰め込まれていて‥全くまとめる
ことができず大半端折りました。

1番大きかったのは梅村さんの本の
話、結構内容あったのに全く、
触れず、ほんと申し訳ない 笑

そして最後、無事梅村家には男の子が
秋保家には女の子が生まれました。

すみませんほんとすみません 笑
紹介しきれてないけど本当にどこ
までも素敵なお話だと思います。

そういう部分、少しでも読んで
頂けた方に伝えられたら嬉しいです。
そしてぜひ、この物語をお手に
とって読んで頂けたらと思います。

10巻で本編は完結、11巻はそれぞれの
その後のお話が描かれているようです。

よかったら次回もお付き合い下さいね。