著:コダ 先生

包丁を持って襲ってきた男は
以前金を貸していた奴らしい。
吾妻さんに一直線にやってきて
簡単に返り討ちにあったけど、
脇腹に浅ーい切り傷ができた。
吾妻さんの立場だったらそういう
ことには慣れていたかもしれない。
でも累にとってはきっと初めてで、
それで自分の大切な人が下手したら
死んでしまってたかもしれないと
思ったら不安で仕方がなかったろう。
累を落ち着かせるためにも、その日
吾妻さんは累の家に泊まってくれた。
中野さんが調べてみた結果、龍吾さん
の指示ではなさそうにしても龍吾派の
誰かの指示である可能性が高いという。
若頭候補の件が落ち着くまでは、
きっと安心できない案件だろう。
そしてこのままでは最悪また累は
怖い思いをすることになるかも。
吾妻さんとしてもそれだけは
避けたいんじゃないだろうか。
吾妻さん、そして龍吾さんも、
今後どんな決断をするだろう。

その後すぐ今回の事件が龍吾さんでは
なく龍吾派の者の企てだと判明した。
龍吾さんは謝罪と、自分は若頭候補
から降りると言いに吾妻さんの元へ
やってきたんだけど、吾妻さんの中で
もう自分の答えを出していたようだ。
「今回のことは昔の客に逆恨みされた
ってことでいいだろ。お前がやらせた
訳じゃないってのもわかってる。
それと候補のことだけどな、辞退
するって前から決めてたんだ。」
その後吾妻さんは、組長の元へ直接
赴き頭を下げ若頭候補の件を断った。
今後も組をやめるつもりはないが、
若頭になるのは自分には無理だと。
組長(父親)や龍吾さん(義弟)、明日美
さん(義妹)に対してこれまでは居心地
が悪いからと避けて逃げ続けてきた。
でも覚悟を決め組長と話し、やはり
家族とは思えないと正直な思いを
伝えてみたら、吾妻さんは随分と
すっきりした様子を見せていた。
「家族じゃなくなってからの方が優しい
なんて、私達のこと重荷になってるの
わかってたけど気付かないフリして
迷惑かけてたし、なんかもういいかー。」
そんなふうに明日美さんは少し
寂しそうに笑っていたけど‥
きっとこれでよかったんだよね。
こんなふうに苦手なものに向き合って
前に進む覚悟ができたのは累のため。
累がいたからなんだろうって思うと、
惚れた女の存在って大きいよね 笑
組を辞めたわけではない、だから
今回のような事件が絶対起きない
とは言い切れないけど、しばらくは
心配しなくてもいいんじゃないかな。

吾妻さんの抱えていた1番大きな
もやもやが無事解決して、それを
累は優しい笑顔で喜んでくれた。
(累と一緒だとほっとするし安心
する。ちゃんと自分のにしてえよな。)
そう思って、改めて想いを伝える。
でもいつもの調子で自分の気持ちを
伝えようとしない累に、吾妻さんは
改めて累だけが特別なんだと告げる。
累はきっとすごくすごく嬉しかった。
でも累には引っかかるものがあった。
吾妻さんの職業‥きっとこれから先も
トラブルがないとは言い切れないし、
そんな彼と一緒になるということは
累の家族にも迷惑がかかってくるかも
しれない‥そもそも彼の正体を家族に
話したところで全力で反対されそう。
‥吾妻さんと一緒になるなら、累は
最悪の場合家族を捨てるって選択を
しなきゃいけなくなるかもしれない。
‥考えなければいけないことは山程。
累は吾妻さんの真っ直ぐな気持ちに
すぐ返事を出すことが出来なかった。

答えを出せないまま、吾妻さんを
避けるような形になっていた累は
ある日突然実家に帰ってしまう。
その理由は明かされないまま、ただ
しばらく忙しいから連絡も取れない
なんて言われてしまい落ち込み気味な
吾妻さんに中野さんはある提案をした。
「会いたいなら会いに
行けばいいじゃないですか。」
「顔見るくらいならいいんじゃない
ですか?それでさっさと帰れば。」
行くという決断は早かったけど行き先
も行き方もわからない吾妻さん‥中野
さんもついてきてくれることになった。
実際家に着くとそこにいたのは累の
お婆ちゃんだけで累はいなかった。
でもここでようやく事情を理解する。
‥一先ず、中野さんいてくれて
本当に良かったなと思った 笑
もし吾妻さん1人で来てたとしたら、
バカ正直に自分の正体を明かしたか
または答えられなくて不審者扱い
されてしまった可能性もあったろう。
ちゃんと、会えるといいけど。

無事葬式の手伝いを終えお婆ちゃん
のいる方の家へ戻るとそこには‥
累には予想できるはずもなかった
吾妻さんと中野さんがいて、中野
さんが晩御飯を作ってくれてた 笑
ごっそり採れたて野菜のお土産を
もらって累は吾妻さん達と一緒に
帰ることになる。吾妻さんが来て
くれたことはすごく嬉しかった。
でもやっぱり、家族を捨てて
吾妻さんと一緒になるっていう
覚悟は出来なかったんだろうね。
その日自分の部屋に帰ってきて、
その後辛い答えを出すことになる。
「ずっとちゃんと言わなきゃって
思ってて…その…もう会うのやめる。」
それっきり終わってしまったのか。
寂しい‥すごく辛いけど、元から
難しい選択だったんだもの自分で
答えを出せただけでも頑張ったよ。
そう、言ってあげたい。

ちゃんと考えて悩んで出した答え。
お互いに、口では納得したような
ことを言ってても気持ちは違う。
累は昔の酷い生活に戻ってしまった。
まともに食事も摂らずにガリガリに、
仕事も全然思うようには進まない。
吾妻さんは吾妻さんで、もう会えない
ってわかっててもついつい習慣的に
累のことを考えてしまい落ち込む。
会いたいけど困らせたくない‥
ずっとそんな思考のループだった。
累が気分転換も兼ねて外に出ると
兄からの着信‥地元で結婚して、
家のことをやるって言っていた。
累の悩みの理由は知らないと思う
けど、ずっと暗く落ち込んだ様子の
妹に安心して好きなことしろって
そう元気づけてくれるお兄さん。
また自分勝手なことをして家族と
連絡とらなくなるかもと話す累に
お兄さんは今更だと言ってくれた。
確かに‥今更だったかもしれない 笑
事情は知らなくとも、こうやって
家族が背中を押してくれる。あとは
累が踏み出す勇気を持てるかだけ。
(いいのかな、でも
もう一度選べるなら…。)
答えを出せないまま家路につく。
途中であんなに会いたがっていた
吾妻さんとすれ違ってるんだけど
累は全然気付かなくて‥吾妻さん
の方が諦められず追いかけていた。
追ってきれくれたことに気付いて
すごく嬉しかったけど、答えを
出せない累に困らせてしまったと
思ったのかもう来ないと立ち去ろうと
した吾妻さんを今度は累が追った。
今度こそちゃんと気持ちを伝えた。
吾妻さんの涙これまであったっけ?
沈んでることはあっても泣いてる
のを見たのは初めてじゃないかな?
それくらい、累って存在が彼にとって
唯一無二の大切な存在だったんだろう。
これから先の不安はきっと消えない。
でももう覚悟決めて2人でいなよ。
そうしたら大変かもだけど幸せだよ。

いろいろあったけど、最終的に
一緒になった累と吾妻さんは、
2人で吾妻さんの部屋での生活を
始めたらしい‥家事のほとんどは
お隣(?)に住む中野さんの仕事 笑
累は漫画家を続けながらたまに
家事をやる程度になったみたい。
お父さんには認めないと言われ
お母さんにはもう関わらないと
言われてしまっていたんだけど、
それでも新鮮な野菜を送ってくれた。
きっと両親は心配だし表向きには
縁を切ったみたいになったのかも
しれないけど‥きっとこの親子は
ずっと親子なんじゃないかと思う。
いいご両親、良い家族だね。
じきに入籍する累と吾妻さんも
素敵な家族を作れたらいいね。
~ひとこと~
漫ヤク最終巻でしたー!!
いやあ‥良かったねぇ。
すっごい不安なこともあった、終わって
しまう危機もあった。それでもお互いが
お互いを思い続けてたからまた会えたし、
最後には一緒になることができたんだ。
どんなに危なかったり困難な状況でも
思い続ける、諦めないっていうのは
時に奇跡を起こすかもしれないね。
ほんとよかった、おめでとう。
そして長々と書いてしまいましたが
読んでくれた方心から感謝です。
お付き合い頂きありがとうございます。
少しでも楽しんで頂けてたら嬉しいです。