著:チカ 先生

遥に詰め寄った杉田は、
冗談だよ…なんて言うけど
その後に続いた言葉や態度は
全てが冗談なんて思ってない
んじゃないかと思えてしまう。
「このままでいいってのは
本当に本心?思い合ってても
絶対に関係は進まないなんて
なんの意味があんの?」
意味を求めてそばにいるわけでは
ないだろう。好きだからそばに
いたいからいるんだろう。でも、
今の遥には随分ひどい言葉だ。
最後にこう言って
杉田は立ち去った。
「森本の気持ちも変わってない
かもしれないけど、俺の気持ちも
変わってないから、また来るな。」
杉田が真一の家に来なくなって
数年…数年ぶりにやって来た彼は
随分大人びた雰囲気に変わってた。
そして…大人な真一には太刀打ち
出来ない…なんて悔し涙を流して
いた杉田は今、本格的に真一から
遥を奪いに来たのかもしれない。
詩子が杉田に、杉田が遥に
恋心を抱いている状態で、
あの頃と同じように戻るの
はもう無理なことかもな…。

「詩子ちゃん…やっぱり変?私たち…」
杉田に言われた言葉たちから、
遥は自分と真一の関係は変なの
かと悩んでしまったようだった。
デートも何もない、それ以外にも
恋人同士のようなことは一切ない。
そんな関係の中で、真一自身も
何もなかったように振る舞う。
きっとすごく寂しかっただろうし、
不安にも、たくさんなったろう。
でも、この問い掛けに対して
詩子がくれた言葉は、今の遥に
とって自分を…自分と真一の
関係を認めてもらえたようで
すごく嬉しかったんでないかな。
詩子…ほんと第一印象がひどい
感じだった分余計今好きだわw

「これはいつまで続きますか?
いつになれば普通の…」
詩子の言葉に勇気をもらったの
かもしれない。それで一度真一
に聞いてみようと思ったのかも。
こんなお互い何も出来ないような
関係は一体いつまで続くのかと。
真一から帰ってきた言葉は酷だ。
「付き合うとかそーいう言葉で括った
としても、俺たちはなにもない。」
でも真一は心から自分の発言を
正しいと思っていったわけでは
なかったんじゃないかなと思う。
(先のことなんて今はわから
ない。約束もできない。
今の俺には、こうするしか。)
他に方法がわからなかった。
他に言葉が出てこなかった。
ただ、これから先の遥の負担に
なるような無責任なことを
言ってはいけない…そんな
ふうに思ってる気さえした。
でもそんな言葉で、遥は涙する。
それを見つけた遥は、いつもなら
断っていたであろう杉田の誘いに
乗って真一の家を飛び出していった。

杉田の誘いに乗ってしまった
遥は、次の日学校を休んだ。
携帯電話すら真一の家に置いた
ままの状態で連絡すらつかない。
そんな状態でもしかしたら…
と杉田に連絡を入れた詩子。
そこで杉田と一緒にいるとわかり、
大慌てで遥を探しに走った真一。
無事合流し帰り道を歩く時、杉田
が真一にこんな質問を投げかけた。
「さっきの慌てようは保護者
として?それとも…嫉妬?」
質問には答えずに質問を返す真一。
「おまえいつからそんな
根性悪くなったんだ?」
「こっちもマジなんで。」
杉田…これからもガツガツ来そうね。
遥の隙をついて、確かに昔みたいな
やり方では遥は揺らがなかったろう。
でもやっぱりすごく…寂しいかも。
でもこれが杉田の本気の示し方
だっていうんなら…やっぱり
遥には逆効果な気がしてる。
今回の件で酷く嫉妬した真一。
寂しさや不安を覚えつつも、
それでも真一を好きでいる遥。
一件邪魔してるようにみえる
杉田だけど…結果的には2人の
絆を深めているように思えた。

真一は遥に手を出さない。
保護者だから。何よりも
年齢的に手を出せない。
だから今まで本当に何も
しないままでやってきた。
でも本当はね、きっと衝動が
わいてきたって我慢するしか
出来ない状況なんだと思う。
手を出してはいけないから。
そんな関係虚しいかもしれない。
それでも、他に方法がない。
その程度の軽い気持ちだとか
言うことでは絶対ないだろう。
でも…それで事実遥がとても不安に
なっている…そんな遥をこのままで
いさせるのは嫌だったんだろうな。
だから、こんな強引なことを
してしまってるのかもしれない。
杉田の思いだってきっと本物。
遥を思って、遥を心配してる。
だけど、それは結局遥と真一を
引っ掻き回してるだけなのだよね。

番外編、詩子と杉田がメインのお話が
描かれていました。本編の方で杉田が
変わり果ててしまったと悲しく思って
いた私ですが…どうやらそんなことは
なかったのかもしれませんね…w
高校生になって、変に大人ぶっている
最近の彼だけど、昔と変わっていない
所も実はたくさんあったりして。
大人ぶっていたって、変にかっこ
つけていたってあの頃の杉田はまだ
彼の中にちゃんと残っていたみたい。
なんてお話が描かれている
番外編になってるわけですが…
そんな様子を見て、一安心。詩子も
きっと安心とともに好きだって気持ち
も再確認したんじゃなかったろうか。
叶わぬ恋を追いかけるのはやめて
新しい恋をするんだと思っていた
詩子だったが…今も杉田を好きだ。
そして杉田も遥を好きなまま。
いろいろ変わってしまったようで、
変わらないままのものもあった。
いつか…振り向かせられたらいい。
頑張れ詩子。諦めないで欲しい。
~ひとこと~
杉田が昔のままで安心した番外編w
そしてちゃっかり登場してたのが
大垣親子…そう、娘かほりちゃん。
ちゃっかりでてきましたよ笑ったw
もう2人目が舞穂のお腹にいるみたい。
そしてそして本編の方ですが、ついに
いろいろと精神に問題のあるという
母親が動き出したようでございます。
亡くなった兄のことばかりだという
母親でしたが、最近になって遥に
会いたいといい出したようなんです。
それで家に帰りたがっているという
話を遥の父から連絡を受けた真一。
遥にその話はしないままに、遥を
なるべく一人にしないようにと動き
出した真一を始めとする大人達。
でも、本編最後の杉田の行動で家を
飛び出していってしまった遥…実は
母親に見つかってしまっていたよう。
次巻で最終巻ですが、まだまだ不安な
要素が山積みなままのこれは恋のはなし。
最終巻、どのように描かれるのか。
それでは、11巻でお会いしましょう。