著:椎名軽穂 先生

ストーカー男のせいで怖い思いを
して一人では怖くてえーじくんに
帰らないでと言った梅だったけど、
知らないことばかりでどうしたら
いいのかわからず不安でいっぱい。
それでも一緒にいたい気持ちも
あって、すごく緊張しながらも
梅はえーじくんを家に招いた。
男女が一つの部屋、暗黙の了解的な
ことも少し不安になった梅だったけど
「今日いっぱい喋ろーぜ!梅!
楽しーな梅。知らないことだらけでさ。
雑なことしたらもったいねーよ。」
いろんな不安なんて吹き飛んでしまう
くらいえーじくんは本当に楽しそうで、
そして何より梅の気持ちをちゃんと
大事にしてくれる‥彼はそういう人だ。
でもまだ梅は、えーじくんとの
距離感をはかりかねていた。
間違って近づきすぎて、これは
爽子ちゃんとの距離だって焦って
離れてみたり‥心を許した途端に
いっきに距離をなくす子みたい。
それくらい、これまで人と距離を
あけることを当たり前にしてきた
反動みたいなものかもしれない。
それでも、もう既にいろいろ気に
なって知りたいって思う所までは
心は持ってかれてんだけどな 笑
前に、「言いたくねーな」って
言われてしまった時の話をした。
知りたいのに、訊いてそんなふうに
言われてしまったら怖くて何も
訊けなくなってしまうって。
めんどくさいこと言ってるって
わかってると言いながら梅は
そんな話をしたんだけど‥??
なぜかニヤけるえーじくん 笑
「重い?てゆーか本音でしょ?梅の、
梅にとっての大事な話でしょ?」
‥これは勝手に嬉しくなったな。
ほんとね、えーじくんは不器用で
怖がりな梅のペースにゆっっくり
合わせて並んで歩いてくれるの。
言われて初めて気づくこともあるから
すれ違いも多いかもしれないけど、
そうやって少しずつ梅の警戒だったり
不安を取り除いていってくれてる。
梅がまだまだ不安でいっぱいなの
わかるけどそれでも、2人には
一緒にいてほしいなと思った。

梅とえーじくんは一晩一緒にいた
けど大丈夫、何も起こらなかった。
でもどっちもどっちで寝ぼけてた
時はやったら可愛かったです 笑
その後も一緒にコンビニ行って
ご飯食べてその間もいろいろ話を
して‥すごく心がポカポカした。
梅が、好きになるの怖いって
思いながらも、好きで仕方ない
気持ちを抑えられなくなってく
気持ちのあったかさみたいに。
しばらくしてえーじくんが梅の
家を出ると、その後行ったのは
例のストーカーの家だった。
梅が不安にならないように、万が一
にもまた怖い思いをしなくていい
ようにしてくれてるんだろうな。
その後もいろんな時いろんな場所で
見張ってくれてたのでストーカーも
ビビって今後何かすることはなさそう。
ほんと、梅のことばっかりだよ。
こんな人に好かれるって幸せだよ。
でもちょっと気になるやりとりが‥
友人の雄平と電話で話してた内容で
出てきたさっちゃんって子の名前。
多分女の子だよね。
梅と一緒の時に話してたことだけど、
今までは告白されてつきあった人は
いたけど自分から好きになったのは
一人だけって言ってた子がいて‥
フラれたって言ってたんだけどね。
それでも梅はやきもちをやいてた 笑
で、もしかしてその子なんじゃ
って思えてしまって仕方なかった。
昔大好きだった子に会うんかな?

大事に大事にしてたのに、警戒
して気を張らなくていいように
無理しなくていいようにって。
それなのに‥疲れてたんだろうね。
バイトに大学にストーカーの見張り、
そしてその他はきっと梅のとこ。
一人でゆっくりできる時間なんて
あまりなかったのかもしれない。
疲れて、梅が焼きそばを作って
くれてる間に眠ってしまってて、
寝ぼけたえーじくんはキスをした。
前も寝ぼけて危うかったけども
堪えたのに今回は無理だったね。
でも、それで間違えたって 笑
決して誰かと間違えたわけではない
だろうけど梅は完璧誤解して大泣き。
その後は何を言っても悪い方にばかり
受け取られてしまい家を追い出された。
きっと梅は、嫌だったわけではない。
それでもびっくりはしただろうし、
今はまだ急にキスされてただ嬉しい
と思えるところまで言ってなかった。
それだけなんだろうけどね、
またちょっと心を閉ざしたり
してないといいんだけど‥。

えーじくんのキス以降、梅は気持ちが
追いつかずえーじくんからの連絡を
無視するようになってしまっていた。
梅は意識しすぎてずっとえーじくんの
ことばかり考えてしまってるのが
悔しかったんだって、えーじくんにも
自分のこと考えてほしかったんだって。
そんなこと言ってたけど、ただただ
恥ずかしくて、でも嬉しくて、でも
わかんなくて会ってもどんな顔を
したらいいかわからなくなってた
だけなんじゃないかなとも思った。
そんなこんなでえーじくんからの
連絡に応じることはできなくても
えーじくんのことが気になって
仕方がなかった梅は爽子に頼んだ。
「しばらくは私が連絡の
窓口になろうかなと。」
梅は爽子を通してえーじくんの都合や
様子を伺い、逆にえーじくんも爽子を
通して梅の様子を教えてもらうことに。
ちょっとばかり誤解が生まれてそうで
えーじくんは可哀相だったんだけど、
爽子は「ダブルスパイ?」だなんて
考えててちょっと楽しそうだった。
そんな中、えーじくんに頼まれて
梅の写真を送ることになったんだけど
これまでの『くるみ』からは中々想像
できなかった表情の梅ちゃんショット。
爽子はものすっごい動揺してるし
えーじくんは吹き出してるし 笑
でもその後すごく優しい笑顔になった。
このショットは『くるみ』じゃなくて
素のままの梅って感じの可愛さよね。

えーじくんはSNSしてないんだけど
何でもえーじくんのことが知りたい
梅はついついSNSでえーじくんの情報を
探して探して…これ梅の日常なのかも。
そこで雄平のSNSの投稿にえーじくんの
すごく優しい笑顔の写真を見つけた。
これ梅の写真見た時の笑顔なんだけど、
さすがにそこまでは気づけないよね 笑
でも梅はこの投稿で気になるコメントを
見つけてしまって、爽子に詰め寄った。
「お、お願い、この飲み会の日時と場所
知りたい……わたしも……ここに行く!!」
えーじくんも参加するであろう飲み会に
朱美って人も来るって、それだけの内容
なんだけど梅の勘がこの人がえーじくんが
昔好きだった人なんじゃと警鐘を鳴らす。
朱美‥あれ、じゃあさっちゃんは?
また別の繋がりの子なんだろうか。
朱美がどんな人なのか確認したい。
梅は爽子にそう言ったけど、最終的に
爽子が梅のお願いを受けてくれたのは
えーじに会いたいかという質問に対して
梅が素直に頷いてくれたからだった。
「梅ちゃんがバシャーてやりそうな
時は私が全力で止めます。」
もし昔の悪い癖みたいのが間違って
出てしまいそうな時は爽子が止めて
くれるって、ほんと‥なんかほんと、
爽子と梅のやりとり好きだなぁ‥ 笑
——————————
そんなこんなで飲み会当日。
こっそり覗く程度の予定だったろうに、
一応うっすい壁が間にあるもののすぐ
隣の席でその飲み会が行われていて、
いろいろいっぱいいっぱいでちょっと
暴走した2人の存在はすぐにバレ合流 笑
いっぱいいっぱいだからこそだろうか、
梅は久々にあの懐かしの『くるみ』に 笑
雄平は、えーじくんに送られてきてた
梅の写真見てたからぼんやり覚えてた
みたいでやたら梅のことを気にするから
ちょっと朱美とバチバチしてたんだけど‥
そう、雄平が梅を気にするから朱美が
バチバチ‥朱美は雄平のことが好きで
えーじくんと恋愛云々は一切なかった。
勘が外れて、じゃあ誰?ってちょっと
混乱していたら‥全然気づかなかった、
隣にずっといたらしいもう一人の女の子。
人の良さそうな、明るくニコニコして
裏表なんてなさそうな‥幸っていう子。
そうだよ、さっちゃんって言ってたわ。
梅は今でも、前に好きだった子と間違えて
キスしたって思ってるのね‥違うのにな。

素直で、嫌味を言っても通じず
キラキラした目でまっすぐ見てくる。
まるでヒロインみたいで、さすがに
飲み物をぶっかけるようなことは
しなかったけどすごく性格の悪い
子になってたのは見てたらわかる。
「わたしの絶対勝てないタイプ……。」
梅は幸のことをそう言っていた。
自分がこれまでしてしまったことは
もちろんだけど多分今も、そういう
自分で気持ち悪いって思ってしまう
行動をやめられないのもあってかな。
梅は自分を好きになれないんかもね。
そんな自分だから嫌われてしまう
のが怖くて仕方がないし、自分と
違う『いい子』には敵わないって
えーじくんの今の気持ちを確認する
ことも自分のえーじくんへの気持ちを
認めることもできずに諦めたくなる。
「爽子、交代。梅、貸して?」
朱美と雄平はちょっとあって先に
帰っていって、梅も余裕がなくなり
席を離れて爽子と話していた所を
えーじくんに見つかり交代された。
普通に話してたはずなのに気づいたら
喧嘩してる‥自分のことも自分の行動も
悪で嫌で自信がなくて‥梅ってそんな子。
だからきっとちょっとしたことで
不安でいっぱいになるんだろう。
この子と一緒にいる人はきっと大変
だろうなって思う‥思うけどそれでも
梅が可愛くて仕方ないんだろうな。
可愛くて、甘やかしたくて、自分の
そばでくらいは安心しててほしくて。
そういう気持ち、これから何度も
言葉や態度で伝え続けていけば届く
かな‥安心できるようになるかな?
きっとまだ梅には時間がかかる。
また間違えたりするかもしれない。
それでも‥怖がるんじゃなくて
えーじくんの今の気持ちだけは
信じられるようになるといいな。

えーじくんに言われた言葉に、
思いに‥素直になりたいのに
やっぱり怖くて恥ずかしくて
何も言えないまま席に戻った。
頭ではぐるぐる考え事が続いてて
そんな時えーじくんをフッてないと
言ってた梅に気を使ってくれたのか
幸はえーじくんの隣に梅を座らせよう
と飲み物を移動させようと持ち上げる。
焦って、ただでさえテンパってる時
だったのもあって梅は更に焦って‥
これはほんとただの事故だったよ。
飲み物を持ち上げた幸、それを止めよう
とした梅‥梅の足元と幸の服に思い切り
真っ赤なトマトジュースが溢れてしまう。
謝りたいのに、すぐに声を出せずに
固まってしまっているすきに幸は
簡単に謝罪の言葉を口にしていた。
梅はほんと‥不器用すぎるんだよ。
自分はそんなふうにできないからって、
汚くて、悪いやつだからって‥こんな
だから自分はまた大好きな人の1番には
なれず嫌われてしまうんだってまた1人
殻にこもってしまいそうで不安になった。
~ひとこと~
梅の不安な気持ちは少し理解できる。
私も自分に自信がなく自分のことを
好きではないから、こんな自分を好きで
いてくれるはずないって考えてしまう。
それでも好きな人のことが気になって
だめと思いつつもあれこれやってしまう
自分が気持ち悪いって‥きっとそういう
衝動がわく人間ってだけで梅は自分を
汚いって思ってしまうんじゃないかな。
恋って、綺麗なだけじゃないんよね。
温かい感情も幸せな気持ちもあるだろう。
でもきっとどろどろの暗い気持ちも多い。
そんなのに飲み込まれたら苦しいばかりで
自分を好きだって今は言ってくれてる人を
いざ本当に好きになって一緒になってから
やっぱり『いい子』の方がいいやなんて
離れていくことを想像したら‥きつい。
でもほんの少しずつでも、えーじくんの
言葉は梅の背負った暗い気持ちや過去を
軽くしてくれてるし爽子の存在も大きな
支えになってるんじゃないかなと思う。
梅は可愛い、一生懸命で、案外素直。
ただひどく不器用で間違ってしまう
ことも多いから‥きっといろいろと
考えて悩んでしまう前にもっと2人で
たくさん話をしていけばいいと思う。
えーじくんはきっと聞いてくれるから。
だからそんなに1人で考え込まないで、
1人になろうとなんかしないでほしい。
‥そんな気持ちでいっぱいでした。
君届の時から感じていたことですが
椎名先生の作品は2ページじゃ素敵な
シーンも感情も伝えるのが難しい 笑
何ページも使って少しずつ心が動いたり
流れを通して気持ちをぐっと掴んでくる
シーンの作り方がとても素敵な作品なので
大好きでついレビューを書いてしまうも
私では、このサイトでは力不足だなと
日々感じております、すみません 笑
それでも頑張って書かせて頂いてるので、
読んで下さった方がこの作品に興味を持つ
きっかけに少しでもなれたら嬉しいです。