君に届け 第30巻【完】

著:椎名軽穂 先生

風早が合格、続いて爽子とくるみも
無事合格した。その知らせを聞いて、
風早は直接おめでとうを言いに来た。

そして、龍の家でみんなでお祝い
したがってるという話を聞いて、
爽子はここでくるみを誘った。

くるみと爽子、くるみとあやねの間
では昔のわだかまりは既に終わった
ことになっていたかもしれないけど、
ちづとはそういう話をしたことは
ないままだったんじゃないだろうか。

いろいろ気まずい気持ちはあったろう。
それでも、爽子や風早の言葉、そして
こんな温かい視線向けられちゃったら、
行きたいって思っちゃうんじゃない?

きっと‥その気まずさを終わらせる
絶好のチャンスだとも思うから。

風早が爽子を連れてくる予定だった
のにそこにはなぜかくるみまでいる?
なんて状態で、最初はやだやだと
拒絶の態度をとったちづだったけど、
一緒に合格して爽子が嬉しくて強引に
連れてきてしまったという話をすると
しぶしぶ、二階にあげようとする(笑)

でもその前に、あやねを呼んでほしいと
くるみが言う。改めて合格おめでとうと
お祝いの言葉をあやねに伝えた後に‥

「あやねちゃんちづちゃん
…悪かったわ。」

無事‥やっと和解出来たみたい。
勇気出せて本当に良かったと思う。

悪いことしちゃったって、ちゃんと
気持ちを込めて謝罪をすれば、反省
してるって伝わればちづもあやねも
ここらの子達は絶対に許してくれる。

そういう、いい子たちだものね。
卒業式を終えて、それぞれがまた
新しい道へ、少し離れた場所で
新しい生活を始めてしまったら
こんなふうに伝えるきっかけも
無いままで終わってたろうと思う。

だから‥ほんと良かったなって。
これで気持ちよく前に進めるよね?
後悔したっていい、自分の中で
ちゃんとケジメつけられるように
くるみは成長したんだろうな。

今では大切な友達で良きライバルで
ある爽子とくるみだけど‥そうなる
まではほんっといろいろあったね。

最初は暗い感情だらけだったくるみ
だけどそれは爽子を知って変化した。

「風早がわたしに爽子ちゃんをくれた。」

風早を好きになったから爽子を知って、
やってしまったことは酷かったけど
それを経て噂せはなく本当の爽子を
知り関わり仲良くなることが出来た。

おかげで嫌な自分と向き合って自分を
変えることだってできたんだろうし。

「…わたし、恋愛じゃなくなっても
やっぱり風早のことは一生すきだわ。」

もしかしたら恩人‥みたいなものかも。
こういうくるみの変化は、この物語の
中でも大きな変化のひとつだったろう。

龍が旅立つ日・・ちづはきっと無理
して笑顔を作って送ろうとしたんだ。
ちょっと不自然なくらいな笑顔でね‥

「いてら!!」

でも龍にはそんなの全部お見通し。
卒業したら結婚‥プロポーズ予告(笑)

頑張れちづ、頑張れ龍。
これから先の未来のために。

龍は本当にかっこいいよね。
でもこういう男としての一面、
かっこいいとこ見せるのって
ちづにだけだと思うんだよ。

そういうとこがまた‥この2人は
一生かけて幸せになってほしい。

あやねが旅立つ日‥日取りを爽子達に
教えないままで行こうとしたあやね。
それは、絶対に泣いてしまうとわかり
切ってしまっていたから‥教えてない
のにちづはあやねの家に電話をして
ちゃっかり聞いてしまっていた。

あやねが駅につくと既に二人が来てた。
泣いてしまう程別れ惜しい存在、何度
ありがとうと伝えても足りないと感じて
しまうような存在、そんな大切な友人が
出来たことは何よりも幸せだろうな。

これでお別れじゃない、きっとこういう
関係はこの先ずっと支えになるだろう。
そしてまた時間が出来たら遊べばいい。

そんな‥温かい繋がりになればいいな。

爽子の引っ越しの前に、風早の
新しい場所での一人暮らしが
始まる。まだ荷物が片付かない
その部屋、爽子を部屋に呼んだ。

2人で部屋を片付けて、買い物
して一緒にご飯を作って食べて。

まるで新婚さんみたいな時間を
過ごして‥気付くと21時過ぎ。
そろそろ帰らせないとと駅まで
爽子とやってきた風早だったけど、
中々電車に乗りたがらない爽子。

「……帰りたくない…。」

そんなことを言われたら、きっと
風早だって本心では帰らせたく
なかったろうし、元いた部屋に
連れて帰りたくなってしまった。

そんな本心と理性が戦った末‥

「てゆーか!……………
俺なにするかわかんないし……。」

もう、逃げて~くらいの気持ちも
あったのかもしれないけれど、

「………そうしてほしい…。」

爽子は、お母さんに電話で伝えた。

「今日…帰らない。
JR……乗らなかったの。」

「…乗れなかった…わけじゃない
のね?…『帰らない』のね?」

それを確認すると、何も追求せず
爽子の行動を許してくれた。父親を
混乱させないために嘘をついて(笑)
お母さん‥ほんといい人だよね(泣)

(名前を呼ばれて「私」になって
手をつなぐことが自然になって

ぎゅってすることに 戸惑わなくなって
キスすることに 安心感をおぼえて

ちゃんと時間が流れた ……私たちは
もう不安な時には不安だと言える
ケンカをしたら バカって言える)

ゆっくりかもしれないけど、2人の
恋の道も前へ進んでいくんだろう。

お互い不慣れで、時に間違ったり
時にすれ違ってしまったりしても、
2人でゆっくり進んでいけばいい。

一瞬一瞬の幸せっていう気持ちを
大事に大事にしていけたらいいよね。

最後に旅立ったのは爽子。
それを見送ってくれたちづ。

少し遅れてきた風早‥あやねの
声が聞こえた気がして気を利かせ
風早と爽子2人にしてあげたちづ‥
笑えるくらい不自然だったけど(笑)

爽子とちづ、あやねを見送る時だって
結局泣いてしまっていたけど、風早に
見送られる今‥やはり涙は溢れた。

それでも、風早から受け取った手紙。

「黒沼が持ってて!」

そう言って渡してくれたのは鍵。
風早の部屋の合鍵だったんだろう。

「爽子!!……だいすきだ!
なにがあっても!!」

「…………しょうたく……
しょうた、私も。」

少しずつ、いろんなことが変わる。
それでも風早を好きになった気持ちは
変わらないし、きっとこれからもっと
大きくなっていくんじゃないかな。

それに、ちづやあやねやくるみ。
出会ってきた大切な友達やライバル
との関係や想いだって変わらない。

そういう、変わらないものを支えに
いろんな変化に向き合っていくんだ。
頑張れ、頑張れみんな‥ほんと、この
子達は全力で応援したくなるよね。

~ひとこと~

君に届け30巻‥ついに最終巻でした!!!
ついに‥終わってしまったんですね。
アニメやってた時期もありましたが、
それでは伝わりきらないくらいに
深くて素敵なお話だったと思います。

高校を卒業して旅立つ彼らを見送り
終わってしまったこのお話ですが‥
実感まだまだ湧きませんね~(笑)

ほんとにほんとに大好きな作品だった
ので、なにより彼らのこれからをもう
見られないんだというのが悲しいです。

でも、最後まで本当に素敵なお話
だったと思います‥これから先は
描かれないとしても、素敵な作品に
出会えたこと心から嬉しく思います。

それでは、また別のお話で。