君に届け 第23巻

著:椎名軽穂 先生

君に届け23-1

あれから、ケントに言われた。

「もう考えないで、留学。
行かないでオレを選んで。」

真剣に考えてそうやって
言ってくれたことなんて、
あやねは気付いてたろう。

でも、拒絶してしまった。
本気の言葉に対して冗談で
かわすことしか出来なかった。

「オレのこと、少し
でも頭にあった?」

ケントのまっすぐな問いかけに
肯定することさえ出来なかった。
大事にしたいって思ったのに、
また本気じゃなかったのかって
自分の気持ちを否定するあやね。

…これ、どうなるんよ。
あやね、ケント…。

君に届け23-2

ケントにしてしまったこと、
後悔して、悩んで苦しんで
雨の降る中傘もささずに
立ち尽くしていたあやねを
見つけたのはピンだった。

タオルを買ってきてくれて
これ以上濡れないようにと
なぜかゴミ袋?のような
ビニール袋をかぶせられた。

「間違った」と後悔する
あやねにピンはこう言うの。

ほんとに頑張ってきた
人だから言えること
なんだろうなって思う。
そういう人なんだなって。

言うだけ言って去るピン。
風早に連絡を入れてくれた
らしく、少し後爽子とちづが
2人で迎えに来てくれた。

君に届け23-3

ずっと、自分のことしか
考えてなかった。ケントに
あぁ言われるまで自分でも
気が付かないほどに、全部
自分のことばかりで、ケント
のことが全然頭になかった。

やさしくていいやつで、
すごく大事にしてくれたのに
そんなケントに対して自分は
こんなひどいことをした。

そう後悔し続けるあやね。
こんな状況で、ほっとけば
いいじゃんって1度は突き
放したんだよ、2人の迎えを。

それでもほっとけるか!!って
ほっとかないでくれた2人。
こんないい友達そういない。

失敗した、傷つけたけど、
今から出来ることを本気で
やっていくしかないね。

…頑張れ、あやね。

君に届け23-4

ケントがずっと望んだこと。
あやねを楽にさせたげたい。
その気持ち、ちゃんと届いてた。
だから大事にしたいってあやね
だって思ってたんだよね。

ケント、拒否られて傷ついて
落ち込んで、あやねのいろいろ
思ってたこととか気持ちとか
そういうのまで全部なかった
ものみたいに思ってしまって…

だから爽子が師匠呼びを一瞬
やめた。三浦くん、だって。

あやねが後悔してたこと。
ケントを傷つけたってすごく
苦しんでることを話した。

あやねは、ちゃんとケントを
思っていたのに、同じくらいの
好きではなかったかもしれない
けど、彼女なりに精一杯に
大事にしようとしてたのに。

そんな気持ちまで否定は
してほしくなかったんだろう。

爽子、言ってくれてよかった。
ケント、今はつらいだろうけど
自分の思いがちゃんと届いてた
ってわかったんだもん…何も
なかったわけじゃなかったんだ。

あぁ、上手く言葉にならない…。

君に届け23-5

これだけの人がいて
まだ あたしはあたし
を信じられないの…?

「でも あたしは………
東京の大学に行きたい。」

誰かのせいにする
のはもうやめたい

自分を否定するのも
もう やめたい

やっと、決心ついたんだね。
きっとケントを悲しませる。
それでも、曖昧な状態で
逃げてたら何も変わらない。

今度こそ、ちゃんと本気で
ぶつかってかなきゃだね。

君に届け23-6

「忘れないでね……
ちゃんと覚えてるんだよ。」

自分1人で、東京の大学に
行くことを決めたあやね。

ケントに気持ちを伝えて
謝って、ちゃんと別れて…

1人で甘えずに頑張ると決め、
決心を必死に伝えたら、
ちゃんと分かってくれた。

ケント、ちゃんとあやねを
楽にさせてあげれてたんだって…

「オレがいた意味…あったわ…」

終わちゃったって悲しむ
反面、安心したような、
優しい表情をしていた。

しばらくはこの気持を引きずる
かもしれないけれど、これから
自分の未来の為にお互いに
頑張っていけたらいいな。

ケントは、あやねと同じ大学に
行くってずっと言っていたけど、
これからどうするんだろうね。

特に目標もない感じだったし、
インテリアだったかな?興味は
あるふうなこと言ってた気がする。

ケントも、自分の将来をちゃんと
考えられるようになるといいな。

君に届け23-7

「頑張れ!」

目指す所は高い。
物凄く頑張って、
努力してかなきゃ
いけなくなるだろう。

けど、もう逃げない。
もう迷ったりしない。
あとは頑張るだけだ。

~ひとこと~

いろいろ悩んだ。
いろいろ苦しんだ。

そしてようやく出した答え。

結果的にまたケントには
ほんと辛い思いをさせて
しまっただろう…それでも、
彼に貰った愛情を、この先の
糧にして頑張ってけたらいい。

みんな、頑張れっ!!