著:石田拓実 先生

中学2年生、桃花は結構モテる。
それはそれは、女にひがまれる程。
つい最近付き合い始めたという
大滝くんという彼氏だっている。
告白されて嬉しかいと思ったから、
その告白を受けることにしたらしい。
桃花は、真奈緒と同じバスケ部に
入っていて、ある日忘れ物を取りに
行った時に部の先輩達から陰口を
言われているのを聞いてしまう。
言われたことで、自分は周りから見て
そんなふうに見えていたのか、実は
調子に乗っていたのかもしれない。
そんなふうに考え始めてしまう。
別に今まで自覚してそういう態度を
とっていたわけではなかったろう。
大丈夫かな、桃花…。

桃花にとって、昔から真奈緒は
絶対的な存在だった。幼い頃から
お願いを桃花の聞いてくれるのは
母親ではなく真奈緒で、ほんと
どんなことでも彼女は完璧だった。
そんな姉への思いは、いつしか姉は
絶対、姉は全て正しい…なんて思考へ。
そんな考えのせいで、数年前にハルと
あった例の出来事のきっかけになって
しまったのだけれども…まあ仕方ない。
そんな、桃花にとって絶対だった真奈緒。
ここ最近初めて絶対じゃない真奈緒を知る。
与倉に恋をした真奈緒は、今までには
知らなかった顔を見せ、悩んでいて、
桃花にとっても不思議だったろうな。
でも案外知ってみれば、真奈緒は
ずっと桃花の姉として頑張っていた
というだけだったのかもしれない。

「一体いつからだったかな。
ハルくんの”全部好き”が”
私のどこも好きじゃない”
って言ってるみたいに
きこえるようになったのは。」
どこが好きかと尋ねたら、毎度のこと
全部好きという答えが返ってくる。
特に表情を変えることもなく、淡々と
答えるそれは桃花にとっては気持ちの
ないものと同じに感じたのかもしれない。
確かに…そういう意味で随分読みにくい
人ではあるよね、ハルって人はさ。

桃花とよく一緒にいるグループに、
森ちゃんって子がいる。桃花は
全然気付いてなかったようだけど、
彼女は桃花の彼氏・大滝を好きだ。
それに気付かず大滝と付き合い始め、
その後無神経にもこんなことを言った。
「……あー………た…たぶん……。」
森ちゃんが桃花に対し、大滝くんの
ことを好きなんだよね??と言った時、
なんとも煮え切らない答え方をした。
それを聞いて、同じグループの真鍋、
キミちんは桃花を無視するようになる。
でもそれすら中々気付かない桃花。
ようやく気付いても、無視されてる
理由には全く気付けていなかった。
しつこく粘る桃花に、真鍋は理由を話す。
先輩達に言われてるようなこと、確かに
自分から見てもそう感じることはあった。
無神経だなと感じる場面もたくさんあった。
それでも、ものいない所で陰口を言った
真鍋やキミちんに対して森ちゃんは、
桃花を悪くいうことはしなかったから…
森ちゃんほんとにいい子なんだろうね。
桃花は確かに無神経な所も多いのかも
しれないと思う。それでも、自分で
悩んで答えを出して立ち向かえる。
そういう所は彼女の強さだろう。
真鍋やキミちん、そして森ちゃんと、
また前みたいに戻れたらいいね。
ここからは桃花の努力次第だろう。

森ちゃん達との話をした後、
いろいろと思い悩んだままの
状態で帰宅した桃花が見たのは、
ハルと真奈緒がキスしている所。
これはハルにとって試しに…
というだけのものであって、
桃花への気持ちが本当かどうか
確認するために真奈緒を使った
という状況に過ぎなかったのだ
けど…その後真奈緒に叩かれたw
ハルも結構こういう所無神経
だったりするものね~困った。
でもこんな状況を突然見せられ
混乱することしかできなかった
桃花は、夜になっても一人で
公園(過去に週一で真奈緒が
通っていた例の公園だろう)に
行っていたのだけれど、それを
偶然見つけた与倉に危ないからと
保護してもらって与倉の部屋へ。
遅い時間だし女の子だし…と
ドアを開けたままにした彼の
行動は、本当に与倉らしかった。
そんな与倉の部屋には、びっくり
する程真奈緒の私物が溢れていた。
漫画を持ち込んで服を持ち込んで、
描写がなかっただけでそれくらいの
感じにはなっていたらしいこの2人。
とはいえ、恋人的な意味の進展は
きっと何もなかったろう。そんな
中で、与倉は隠し持っていた物が…
ゴム。
与倉がどんな人物かと怪しんだ
桃花が与倉が少し部屋を空けてる
間に家探しをしたら出てきたのだ。
追求してみると大慌ての与倉。
「も、ものすごく万が一の最悪の
場合の備えというか……………
本来使う予定は一切ないもんで
む、むしろ戒め的な……………。」
見つけた事自体奇跡だ。勉強机の
一番下の引き出しの最奥。本が
入っていた更に底に埋まってたw
与倉としては大慌てだったろう…
でもそんな様子の与倉を見て桃花は
真奈緒を羨ましく思ったようだ。
恋してる男の子はカワイイよね。
そんな思いが自分に向けられた
ものなら…そう思ったら、とても
幸せな気持ちになると思うんだ。
桃花が抱いた感情は、昔真奈緒が
与倉に対して抱いた感情ととても
似た物なんじゃないかと感じた。

ハル、真奈緒、与倉との一件から、
桃花は大滝くんに別れを切り出した。
自分の中のけじめだったんだろうな。
その後、少しずつ変化してしまって
はいたけど、一先ず真鍋とは前通り
の関係に戻れたような気がいしてる。
でも、問題はそれだけではなくて…
先輩たちに陰口を言われた日の
次の日朝練を無断欠勤した桃花。
それ以降、実は一度も部活に
顔を出していなかったらしい。
そこで、声をかけてきた部長の
平先輩。彼女、これまでもずっと
桃花達2年に対して随分と厳しい
態度を取り続けていたこともあり、
明らかに怯えた態度を取る桃花達。
また怒られる…そう身構えたのかも。
でも、平先輩から出てくる言葉は
決して桃花を責めることはなかった。
何故部活に来ないのか、その理由と
今後戻ってくる気があるのかという話。
理由を話してみれば、言われた陰口
のような内容、誰だってそうだろう
と言った内容の返事が帰ってきた。
「つか男に好かれてはしゃぐのも
当たり前じゃん、んなこと言ってたら
女子の9割が調子乗ってることになるし。」
ああ…この子、すごくまっすぐな子だ。
しっかりした芯の通った子なんだろう。
真奈緒の後輩で、真奈緒を慕っていた
子らしい…なんか凄くわかる気がした。
話してみれば、怒ると怖いけど
理不尽なわけではない、きっと
他の誰よりもまっすぐに桃花に
向き合ってくれようとしていた。
初めてちゃんと会話をして、今まで
自分が誰のことも見えていなかった
と気付く…大滝、森ちゃん、真奈緒、
平先輩、ハル、そして自分自身。
妙に息苦しさを感じていたこの頃、
そんなふうになることはなかったん
だとやっと気がつけた気がする。
きっと少しずつだけど、そうやって
桃花も成長していけたらいいな。

与倉の、慌てふためく表情を見た時、
桃花はハルに対して、そんな表情を
見せてほしかっただけなんだと感じた。
それは、例の2年前のお願い…真奈緒
から言わせると事件だったろうかw
あの時、ハルは表情一つ変えずに
ただ淡々と桃花のお願いを叶えた。
それを今になって聞いてみた桃花。
「ハルくんはどうしてあんな全然
いつも通りだったの?…ハルくんは
桃花とあーゆーことすんの平気なの?」
それに対してハルはこう答える。
「0か100なんだよ。」
ハルの恋心なんて関係ない。
ただの興味本位で持ちかけた
お願いだとハルは気付いてた。
だからきっと、途中でやめたいと
言い出すだろうと…そこで自分を
抑えて止められるようにするには
自分を0のまま保たなければダメ。
中学生男子…器用に0と100の間を
維持するのは無理だったんだろう。
だから、何としてでも0を保った。
桃花を怖がらせないように、桃花を
傷つけないように…きっとほんとに
その一心だったんだろうなと思う。
ハル…すごいわ。
ほんとに桃花が大事なんだね。
だから、理性を保つのすっごく
しんどかったろうに耐えたんだ。
そんなハルに対して残酷な…w
「見たかったかも、ハル
くんが”100″になるとこ。」
そんな言葉でさえ、ハルの必死の
理性を保ち続けるには難しいもの
だったらしく、ハルは突然桃花と
距離をおく…ほんと、不思議な人♡w
そんなハルに容赦な過ぎる桃花。
(何だ…簡単に見れた。)
こんな行動一つで、桃花はずっと
見たかったな表情を見ることに。
この後、面白いくらい遠くに
離れていったハルだったけれど…
「俺希望もっちゃった。たぶん
これからもっと欲張りになる。」
今まで桃花のことだけを考えて
行動し続けていたハルが、一方
通行ではない思いを求め出した。
この2人の恋も、今後が楽しみです♡
~ひとこと~
3巻はほぼハルと桃花のお話でした。
いろいろ明かされなかった過去の話
も少しずつ明かされはじめ、イマイチ
キャラを掴みきれていなかった桃花が
どんな子なのかも、ようやく分かった。
結構難しい子だとは思いつつ、
真奈緒やハル、与倉と関わること
でこれからゆっくり成長していくん
だろうとも思えるお話でした。
さて…真奈緒と与倉の話、3巻内
ではちょろっとしか触れていない
感じでしたが、次巻では戻るかな?
では、また4巻で☆