著:一井かずみ 先生

貰ったピン(プレゼント)を
返して、告白を断ったけど、
こんなふうに言われてしまっ
たら返すのも悪いのかもって
思ってしまうのかもだね。
余さんも必死なんだよな。
それにすごく優しい人なんだ。
だから、それを知ってるから
断る側もきつかったろうな。
告白は一応断ったけど、結局
ピンは返せなかったみたい。

「俺、人を好きに
なったことないから」
「会社の人間とは
ムリだろ、やっぱ」
「あんたの髪は好きだ
けど、それだけみたい」
向坂さんは、一体何から
逃げようとしているんだろう。
何に、そんなに怯えてるんだろ。
…これから先、なほは何度
泣くことになるんだろう…
なほは幸せにはなれないの?
向坂さんはどうしてこんなに
苦しそうなんだろうか…。
『好きな人と3度目の
キスをしました』
『そして
振られました』
でも、距離を置かれるんだろうと
不安になりながら行った
職場には、どうしてかいつも
通りの向坂さんがいました。

「拓己はいつだって
女の子と終わる時は
必ず怒らせて終わるんだ
後腐れのないように」
「キスなんか絶対にしない
…なほちゃん、諦めないで」
なほの異変に気づいてか、あの
現場に実は居合わせていたことで
何か助けられないかとでも考えたのか。
馨さんはまたなほをご飯に
連れて行ってくれて、話を
聞いてくれたのだけれど…
馨さんの心にあるのは向坂さんを
助けて欲しいって思いだったり
するのかもしれないなと思った。
なほへの態度は、なほから
したらまだ全然わからない
ままかもしれないし…
きっと馨さんの言葉を
なほに聞かせたところで
今は何にもならないから…
あえてごまかして、なほが
気を使わなくていいように
いつも通りの態度を取った
んじゃないかって言ったんだ。
多分、今の向坂さんは自分から
なほの元へ行くことが出来ない
状態なんじゃないのかな。
忘れないでほしい。でも、
気持ち答えられなくてごめん。
そんなふうに苦しんでるのかも。

「しかしあっほだなー
あんた。俺から離れる
いいチャンスだったのに」
「俺のそばにいると死ぬよ?」
なほに引き抜き?の話があった。
でも、丁重にお断りした。
髪が好きなだけと言われたから、
髪もバッサリ切った。
失恋したからって。
それでいつも通りに
仕事をするなほに向坂さんは
チャンスだったのになんて言う。
そばにいたら死ぬなんて言う。
でもなほは即答した。
死にませんよって。
向坂さんの過去にあった何か。
誰か、大切な人が死んだの?
もしかして、前に馨さんが
言っていた…
また同じことを繰り返すのが
怖くて、彼は壁を作るの…?
まだ真実はわからない。
けど、この笑顔を見たら、
きっとそういうことなのかも
って思えてしまったんだ。
今はただ、向坂さんの本当の
笑顔を少しでも多く見る
ことが出来たらって思った。
だからなほは死なないって決意。

余さんは本当にいい人で、
きっとなほは余さんを1人の人
としてすごく好きだと感じてる。
まだ今は向坂さんを好きだけれど、
自分をすごく大事に思ってくれる
仕事に対する熱意とかもすごくて
見てていいなって思う余さん。
余さんを好きになりたい。
そんなふうに思ったなほ。
そんな彼女に、余さんは
向坂さんの最後の作品を
見せてくれた。きっと見せたく
なんかなかったろうと思うのに。
「待ってるから 考えて
野田蔵さん その上で
ちゃんと選んで」
余さん、本当にいい人なんだよ。
いい人止まりとかそういうのじゃ
なくって、ほんとに好きになる
要素なんていくらでもあるだろう。
でも、好きになりたいって思って
なれる程人の思いは単純じゃない。

「頼む、粕谷とは縁を切ってくれ」
そう言って頭を下げた向坂さん。
最初は冗談のように言っていた
彼だったけど、今度は頭を下げた。
向坂さんがこんなことを言い
出したのには理由があって…
実は粕谷さんになほ絡みのことで
脅されていた…なほは知らないけど。
それでなほを粕谷さんから守る
ために縁を切れなんて言い出した。
そのタイミングで鳴った携帯の着信。
なほは、それを着信拒否に設定。
こんな状態じゃ、諦めようにも、
余さんを好きになろうにも…
ムリだよね。どんなにあがいても
1度会ってしまえば引き戻される。
ほんの少しのきっかけですぐに
引き戻されるくらい大好きなんだ。
~ひとこと~
3巻でした。
未だに粕谷さんを悪く
思おうとしないなほだけど、
実際粕谷さんはなほを駒に
使おうとしている…正直
最低な人だと感じている。
そんな粕谷さんからなほを
必死に守ろうとする向坂さん。
向坂さんを思うなほを、
本気で思っている余さん。
余さんを好きになりたいと思っても
結局は向坂さんから離れられない、
気持ちが動かないと気付くなほ。
どう頑張ったってなほを好きな
ようにしか見えないのに…
失うのが、過去にあった何かの
ようになるのが怖いのかなほの
気持ちに答えられない向坂さん。
なんかもう…切ない。