僕等がいた 第13巻

著:小畑友紀 先生

僕等がいた13-1

そうやって、山本さんはまた
矢野の優しさにつけこんだの
かもしれないね。私は矢野が
いないと生きていけないって。

恋愛じゃない、依存。

そんな関係は、誰も幸せになんか
出来ないよ、矢野も、ナナも
山本さんも、幸せになれない。

ナナは1人で泳げるんじゃない。
矢野のために、矢野との未来の
ために1人で泳げるように
努力して努力して、生きてきた。

山本さんは、矢野の優しさに甘えて
努力する気もなく、溺れてれば
助けてもらえるって思ってる。

なんで、矢野はこんなに優しくて
弱い人になってしまったんだろう。

最愛の人を失って、唯一の肉親
母親をも失って…人の死に
臆病になってしまってる。

山本さんは、最低だ。

僕等がいた13-2

「ごめんなさい、受け取れません」

これで、ここで決断したらやっと
17歳の矢野と、記憶と決別できる。
そう、思っていたはずなのに、
その思いとは全く違う言葉が
口から出てしまっていた。

やっぱり、出来ないんだ。
ナナの記憶に、心にいる矢野は
決して薄れることはないだろう。

僕等がいた13-3

「だって彼は、嘘をつきとおすから。」

矢野のことだ、嫌いかどうかは
よくわからないけど、
愛情は一切無いだろう。

それでも今は山本さんといる。
そんな状況で、ナナに合わせる
顔なんてなかったのかもしれない。
それでも、心の中にあるのは、いつ
だってあの頃のナナだけなんだろう。
いつの間にか、奈々さんではなくて
ナナでいっぱいになってたね、矢野。

お互いこんなに大好きで大切で、
なのにどうしてここまですれ違って
上手く行かないんだろうね…。

僕等がいた13-4

「お別れの言葉をちょうだい。
キレイに終わろう。」

旅行にいく矢野を探して
空港まで来て、やっと再会して
最後の、けじめをつけようと
したのかもしれない…。
矢野は、やっぱり変わらない。

ただ少し本音が言えなくなって、
本音を隠すことが上手になって、
自分を犠牲にすることを
覚えてしまっただけ…。

このままで、いいわけない。
2人の間で終わらせようと
したって、矢野はまた本音を
全く言ってくれていないのだ。

昔みたいに、奈々さんを思い続けた
あの頃のように、ちゃんと
本音で話さなきゃ意味が無い。

僕等がいた13-5

うん、嘘ついてるんだ。

ナナの願いかもしれない。
でも実際そうなんだよね。
お願い、決して諦めないで欲しい。
山本さんとナナは違うんだ。
ナナなら、矢野を幸せに出来る。

~ひとこと~

本心と自分の行動なんて
結構裏腹なもので、こう
したいってのがあっても
こうしてはいけないって
理性がストップを掛ける。

矢野は、大きすぎる罪悪感と
共に生きているせいで、
自分の意志なんて、思い
なんて二の次三の次…。

ナナは昔からかわんないね。
どこまでも真っ直ぐだよね。

ナナ、どうか、あの頃のように
また矢野の心を開いてあげて。