著:小畑友紀 先生

矢野が、東京にいた。
実父の苗字に変えて、長倉元晴。
ナナが今の職場にいることも、
竹内くんと付き合ってることも、
全部知った上で会いに来なかった。
いや、会いにこれなかったのかな。
あの日、母親を失って、大切な物
全てを捨ててきた矢野は、なぜか
山本さんと一緒に暮らしていた。
なぜ?あの日また、こんな女に
逃げてしまったのだろうか。
わからない…分からないけれど、
気持ちの面では分からないけど、
結果的には、本当にナナを
手放し、裏切ってしまった。
ほんと、タイミング
なんて合ったことないよね。
タイミング良ければ、竹内くんが
結婚を申し込もうとしてる
前日なんかに矢野がいることを
知ったりなんてしないでしょ…。
それとも、それ自体が彼らの
タイミングだったんだろうか。
こんな人生になってたって、
矢野とナナは出会うべくして
出会うことになるんだろうか…
どーなるんかな。
でも一先ず、矢野が生きてて、
生活しててよかった。

夜のの身に起きた様々な不幸。
どうしようもなかったことも
そりゃあっただろう…けど、
ただでさえいっぱいいっぱいに
なりながら頑張ってた彼を、
悪い方へ悪い方へ引きずり
落としたのは…多分山本さんだ。
変わってしまった?何を
他人事のように言ってんだ…。
矢野の幸せを何よりも願え
なかった自己中行動で傷付け
続けたのはあなた自身だろうに…。
あぁ~、山本さん見てると嫌い
すぎて私とっても嫌な女
っすねww悪口ばっかww
気分害してたらすんません。

所は変わって山本さんと、
この綺麗な子は山本さんの
バイト先の宮下さんって子。
バイト仲間で合コンに行ったの
だけど…あぁ、いい子だわ。
本心なんてわかんないけど、これが
本心ならきっとすごいいい子だわ。
山本さん、暗くて卑屈で、
こんな子と仲良くしてる
だけでもすげぇと思うけど、
なんか、いい子だわ。
昔から知り合ってたら、
山本さんもこんなんに
ならずに済んだのかな…
なんて、今更だけどね。
山本さんには、彼女のあんな
態度を見た上で一緒にいてくれる
子がいなかったんだよね。

本気で現実を受け入れる気が
無いのかもしれないね、この女は。
矢野はそう言っている。間違い。
後悔でしか無いって言ってたよね。
それなのに、忘れたい過去なのかも?
って、過去を今更掘り返して
あの時は…なんてアホか。
よくしてくれる友達に対しても、
こんなことさせるようなやつだ。
宮下さんは人が良すぎるよな…。
山本さんは、ほんと根っこ
から終わってるみたい。

最初は、ただそれだけで、
けど不器用で、自身がなくて
気付いたらこんな馬鹿になって。
周りに愛情を求めるくせに
受け入れる気もないような子に。
母親もね、ちょっとおかしい。
けど娘も大概だわ…。
一体…どこで間違えたのか。
最初っから間違えてたかもね。
バカでも、下手でもいいんだよ。
けど、山本さんはきっと
矢野を愛してなんかいない。
大嫌いだった奈々さんのように、
自分のことも愛して欲しかった。
そんなような気持ちじゃない?
何を間違ってもいい。
好意を寄せる相手を
陥れようなんて考える
バカにだけはなりたくないね。

「…だから頼む、オレに
助けを求めるな」
矢野…病んでるね…。
ほんと、これ以上矢野に
負担かけないでよ…。
生きてるので手一杯みたい
じゃないの…。これ以上、
矢野を不幸になせないで。
~ひとこと~
矢野が…矢野の今に至るまでの話。
山本さん、ほんとどうして…。
アキちゃんはほんと優しくて
強い子だよね。みんな幸せに
なれたら、なんて、自分だって
矢野のこと好きだったのに、
今は他の人との幸せを願ってる。
矢野も、ナナも、竹内くんも、
みんな前に進んでいるようで、
実際は何も変われてない。
ただ少し、気持ちを隠すことが
上手になっただけなんだと思う。
矢野を本当の意味で救えるのも、
ナナを本当の意味で幸せに出来る
のも、この2人でないとダメな
気がしてしまうんだよな…。
では、また次巻!!