僕が僕であるために。 第9巻【完】

著:葉月抹茶 先生

優のやり方は少々強引ではあったけど、
優なりに歩のことを大切に思っている
からこそ前に進ませたかったのだろう。

数日後、歩は遥さんに自分の気持ちを
伝える覚悟で遥さん夫婦の家に行った。

でもそこで遥さんも話したいことが
あると言われてそちらを先に聞くと、
遥さんはお腹に赤ちゃんがいるという。

それでも気持ちを伝えようと思ったけど
そこで遥さんに言われた言葉で、歩は
何も言えなくなってしまったようだった。

「もしこの子が男の子だったら歩くん
みたいな子に育ってほしいなって。」

気持ちを伝えられなくなったと同時に、
自分にとって1番大切なものに気づく。
だからこそ、断ち切るでも進展を望む
でもなくこのままの関係性でいられる
未来を歩は選ぶことが出来たんだろう。

今は苦しい気持ちもあるだろう、時が
流れても簡単に気持ちは消えないだろう。

それでも、今までたくさんたくさん努力
してきた歩が決めた道なら、きっと彼が
幸せになれる未来に繋がると信じたいね。

歩は遥さん宅から預かってきたタイム
カプセルを渡すため、そして報告のため
優の他に駿と紗奈も呼び出していた。

一通り話を聞いてバカなやつ、なんて
言いながらも優は納得してくれた様子。
駿はいろいろ思う所はあったと思う、
そして最近遥さんとのことを知った
ばかりの紗奈は‥心配してたんだろう。

現状は何か変わったわけではなくとも
気持ちの面では前に進むことが出来た
様子の歩に泣きながら良かったと告げた。

駿は紗奈が歩を好きなんだと思っていた
から、歩を遥さん宅へ送り出す時も報告を
受けた時も紗奈が大丈夫か心配していた。

でも紗奈に大切な友人として心配したり
喜んだりしている以上の感情はないように
見えて‥つい確認してしまったんだろう。

「…紗奈さ、もしかして歩の
こと好きじゃなくなったの?」

相変わらず駿に対する自分の気持ちには
気付いてない様子の紗奈だけど、気付けば
歩に対するざわつくことはなくなってた。

駿はまた余計なことを言ってしまった
なんて後悔していたけど、紗奈は本当に
自分の気持ちにどこまでも鈍感みたいで、
一時的には怒らせたり困らせたりして
しまうこともあるけど紗奈に気持ちを
自覚してもらうにはきっと必要なこと。

だから紗奈、どうか自分のその気持ち
から逃げずに向き合ってやってほしい。
答えが出るまで、諦めないでほしい。

駿は相変わらず引っ越すことを誰にも
伝えられないまま時間ばかりが経過‥
そんな中、近いうちにみんなでタイム
カプセルを開けようという話になった。
約束の日はちょうど駿の引っ越しの日。

「俺…その日は無理かも。」

駿にそう言われ別の日にしようとする
紗奈だったけど、そんな紗奈に駿は
自分のタイムカプセルの鍵を渡した。

紗奈は何もわからないまま、ただ
駿がそう言うならと鍵を預かって、
週明け学校に持ってくると伝えた。

どこか様子がおかしいことにはずっと
気がついていたし気になってしたけど、
それでも何も言えなかったのは紗奈に
一歩踏み出す勇気がなかったのかも。

駿も紗奈もお互いを大切に思うのに
どうして何も言わない方向でしか
道を見つけられないんだろうって、
何だか少し寂しい気持ちになった。

伝えるのは怖い、それで相手が
悲しんだり傷ついたりする可能性も
あることなら尚更怖いと思う。

それでも、何も知らないままでいて
後悔する方がずっと苦しいと思うから‥
どうかこのまま終わってしまわないで。

そして週末‥紗奈、千尋、美雪、
優、康平の5人は公園に集まった。
それぞれのタイムカプセルを開け
後悔したり懐かしんだり‥そして
最後に紗奈は頼まれていた駿の
タイムカプセルの鍵を開けた。

中にあったのは手紙のようなもの。
そこに書かれていたのは、駿の
後悔やずっと抱えていた思い達。

泣きながらそれを読む紗奈、心配
する友人達‥でもそこに慌ててやって
きた歩によって、彼らの動揺は更に
大きなものへと変わっていった。

「駿がまた転校するって、
しかも今日が引っ越しだって。」

用事があって学校まで行っていた
歩を、駿の引越しのことを内緒に
してと頼まれていた先生が駿だと
間違えて話しかけたのが原因で歩
は駿の引っ越しを知ってしまった。

‥先生、ドジかよ 笑

でも手紙の内容もあって、誰よりも
動揺したのは紗奈だったかもしれない。

「私のせいだ。」

このタイミングで知ってしまったら
そう思ってしまうのは仕方なかった。
でも駿は、紗奈のことを責めたくて
こんな手紙を託したわけではない。

気持ちを伝えたくて覚悟を知って
ほしくて‥駿も優どころではなく
随分と不器用なんだと思うから‥

これまで駿が何かを伝えようと
する時に怖がって逃げてしまう
ことが多かった紗奈がちゃんと
話したいとやっと思ってくれた。

だからどうか駿と話せますように、
まだ間に合ってくれますように。

自分の覚悟が鈍ってしまわないよう
駿は紗奈だけではなく一緒にタイム
カプセルを埋めた仲間達全員からの
連絡先をブロックしてしまっていた。

でも歩のことはブロックしてなくて、
だからこそ、何かあったのかもと
歩からの電話には出てくれたんだ。

実際に電話をかけたのは歩から
スマホを借りた紗奈なんだけど。

出てくれてよかった‥会いたいと、
話したいと必死に伝えてくれる
紗奈に駿も向き会おうと決めた。

「もう逃げないって決めたの、何かが
変わっちゃうのはやっぱりまだこわい
けど、ちゃんと全部受け止めようって。

だからもし駿くんがまだ…
まだ私に言えてないことがある
なら教えてほしいなって……。」

駿の手紙の最後には、また戻って
来たその時には好きだと伝えたい
って言うことが書いてあったんだ。

結局今も駿は自分に自信が持ててない
から、気持ちを伝えることはできない。
それでも今の自分で伝えられることを
精一杯伝えておこうと思ったんだろう。

変わりたかったこと、紗奈の隣を
歩いても恥ずかしくない人間に
なりたくて、今のままじゃ自分で
自分が許せなくて‥だからもう少し
だけ待っていてほしいと伝えた。
自信をつけて帰ってくるからと。

もう伝えているようなものだった 笑
それでも紗奈は待ってると言ってくれた。

大丈夫、きっと大丈夫だよ。
ちゃんと話せてよかった。

駿が引っ越してから4年と半年が過ぎた。
駿はみんなに会いに東京に帰って来た。

現在就活中の歩は、忙しいながらも
空港まで駿に会いに来てくれていた。

すぐに面接に向かってしまうようだけど
この時歩がくれた言葉は、きっと何より
大切なものなんじゃないかと思えた。

この物語のタイトルにもなっている
『僕が僕であるために』何より大切
なのが自分に正直でいることだろう。

ほんとすごく上手くまとめてくれる(涙)
私も自分に自信が持てないことが多い
人なので、歩の言葉がすごくささった。

自分らしく、自分の気持ちに正直に。
忘れずにいたいと思えた大切な言葉です。

歩と入れ違いのタイミングで空港
まで来てくれたのは紗奈だった。

ここにはいないみんなの話をしながら
電車に乗りみんなの待つ公園へ向かう。

その途中で、駿は4年半前に話した
ことの続きのような話を持ち出す。

「こんなに年数が経ってしまった
けど、でもようやく自分に自信が
持てそうなんだ。だから、あともう
少しだけ待っててくれないかな。」

今回帰ってきたのは、就職希望先の人の
所へ会いに行くという目的があった。

大学は遠い所だけど、そこで興味を持った
分野で就職は東京で決めようとしている。
その時は本当にここに戻ってくる予定だ。

だから無事就職できた頃には、駿も
自信をつけて帰ってくるんだろう。

でも‥改めて話を持ち出したのにまだ
待てという‥お主鬼やなって思った 笑

そしたら紗奈はわかったって言いながら

「だけど私はその過程も含めて
駿くんのこと大好きだけどね。」

駿がいない間に自分の気持ちを自覚した
紗奈は、駿のような縛りがない分なんの
躊躇もなく気持ちをまっすぐ伝えてくる。

でもそこで、駿が何かを言おうとするも

「もうちょっと待ってなきゃだもんね。」

そう言って言わせてくれなかった 笑
紗奈なりの抵抗だったのかもしれない。

わかんないけど、近い将来この2人は
やっとちゃんと両想いになれるだろう。

その日まで‥待たないと 笑
頑張れ駿、全力で頑張れ !!

~ひとこと~

ほぼ両想い、でも頑固すぎる駿への
ちょっとした意地悪だったのかもね 笑

最後あんなふうに言っていたわりに
2人はみんなの待つ公園まで仲良く
手をつないで向かっていました。

いろいろあった、すごく長かったし
遠回りもかなりしてしまった気がする。

良かったね、本当に良かったです。

成長した他のみんなも、紹介
できなかったけどいい感じに成長
していて、特に優とか、その辺も
ぜひ読んで頂けたらと思います。

青春でしたね‥そんな中でも心に
響く内容もあり、このレビューを
読んで下さった人にもそんな気持ち
をお届け出来てたら嬉しいです。