僕が僕であるために。 第7巻

著:葉月抹茶 先生

覚悟をした所で偶然にも会って
しまい焦るも駿は勇気を出す。

「今…少し時間いいかな…?」

でも真剣な様子に嫌な予感でも
感じ取ったのか、紗奈は話を
逸らしたがる素振りを見せた。

そこに強引になんてことは
しなかったけれど、駿だって
もう諦めないと決めていた。

今から用事があって、その後も
文化祭の準備とか頑張らなきゃと
言ってくる紗奈に対し、それならと
文化祭が終わった後に約束をした。

きっと大丈夫、きっとちゃんと
前に進めるよね?‥頑張れ駿。

どこの学校も文化祭シーズン。
最初にやってきたのは美雪と
千尋が通う女子校の文化祭。

2人のクラスでは男装喫茶という
のをやってて2人ともとても素敵。
特に美雪は似合い過ぎと思う 笑

文化祭もクラスでの出し物も、
全体的に楽しそうにしている中
康平だけは1人でイライラしてた。

自分本位‥確かにある意味みんな
自分本位なのかもしれないね。
自分の好きなこと、好きな人、
好きなモノのためにまっすぐに。

康平は優しいし、誰かのために
お節介を焼いてくれるいいヤツ
っていう印象が強いんだけど‥

彼は自分のためにはそういうの
頑張れない人だったりするのか?
一体何に、康平はそんなイライラ
してしまっているんだろうか。

次は優の学校の文化祭‥ギリギリまで
ずっと来るなと言ってた理由はこれ‥
女装する姿を見られたくなかったのか 笑

そんな女装姿の優をいち早く見つけた
のが歩だった、それも優じゃなくて
遥さんだと思って追いかけたのだ。

「ねーちゃんじゃねーよ
俺だよば----か!」

歩は思い切り蹴りをくらいました 笑

美雪の男装も優の女装もすごく
似合ってて同じだと言う紗奈に、

「美雪のは誰が見ても美人な
女子がやってる『男装』なの!
俺のはもはやただの『女』なの!」

なんとも切ない‥けど納得でした 笑
そんな優を、美雪はまっすぐに見て

「でも私は優のその可愛い顔好きだよ?」

そんなことを言われた優は、美雪に
対してこんなふうになりたいって
憧れなのか、それとも美雪に対して
恋愛的な好意を持っているのか‥

どっちなのか、もしかしたら両方
なのかすごく複雑そうな顔してた 笑

ついに駿達の学校の文化祭の日‥
当日は役目がなく遊びに来る美雪達
の案内をする予定だった康平だけど、
康平のクラスでやる劇に出る予定の
生徒が体調不良で出られなくなって
第約を探しているというのだった。

衣装のサイズ的に康平くらいしか
合う人がいないと頼まれ、無理だ
と断ろうとする康平だったけど‥

「康平なら出来るでしょ?それくらい。」

もう当日、それも数時間前で今から
セリフや動きを覚えるのは絶対難しい。
でもそれを話に割って入ってきた
美雪は出来るでしょと言ってきて、
康平も顔をそらしながらも頷いて
代役を康平がやることになった。

主人公の友人兼ライバル役、随分
いい役だったようだ。あの出来事は
開演30分前のことだったみたいで、
よくそんな短期間で覚えたよね。

お節介だったかもと後悔した
美雪だったけど良かったみたい。
ありがとなってお礼を言われた。

その言葉にか、表情にか顔を赤らめる
美雪だったけど、その後劇を褒めると
今度は康平が照れたように顔をそらす。

‥まだまだ2人の心には距離がある
のかもしれないけど、こうやって
たまにはお互い素直になっていれば
いつかは明るい未来もあるかもね。

駿との約束はあるけれど、紗奈は
文化祭をすごく楽しめだようだ。

さらには、駿が戻ってきてくれたから
なんて言われたら嬉しかったろうね。

この先伝えることを思えば、
申し訳ない気持ちもあったろう。

だからこそ本当は伝えたくない
と感じてしまう部分もあると思う。
それでも逃げないって決めたから
ちゃんと前に進むって決めたから。

今だけはこうして笑ってて欲しい。
もう少しだけ楽しい気持ちのまま。

告白をする前に、入れ替わって
いたことがあることを伝えた。

それを伝えると、紗奈はいつ入れ替わって
いたか詳細を聞きたがったけど、駿は全部
は思い出せずきちんと答えられなかった。

紗奈の中で、歩のフリをしている
駿にときめいたことが何度もあった。
その何度かが、本当は駿だったのか
歩だったのか知りたかったんだろう。

事細かに覚えていて答えられたの
ならまた違ったのかもしれないね。

でもそれもできず、結果的に紗奈を
余計混乱させてしまっただけだった。
そんな状況で告白も勿論出来てない。

なんというか最悪の状況な気がする。

そうして紗奈と別れ家に帰ると、
父の転勤が決まりまた引っ越しを
しなければいけなくなりそうで‥

いろんなことが全然上手く行かない。

紗奈に入れ替わりのことを伝えた翌日‥
紗奈は長かった髪を短く切っていた。
まるで昔駿がここにいた頃のように。

紗奈の変化に焦り様子を伺う駿‥
一緒に帰っている途中、紗奈の
方から話題を振ってきてくれた。

もう大丈夫だから気にしないでと、
駿を嫌いになってないし、話して
くれて良かったとも言ってくれた。

言葉ではそう言ってくれていても、
不安とかすっきりしない気持ちが
まだ紗奈の中にあるかもしれない。

それでも大丈夫と言ってくれた
紗奈に、駿も精一杯想いを伝える。

「俺紗奈のこともう絶対不安にさせない
から。あんなことしておいて信用でき
ないかもしれないけど、でもこれが
俺の今の本心だから、もう少しだけ
俺のこと見ていてくれないかな。」

そう言う駿に紗奈が笑顔で頷くと、
駿はすごく柔らかい笑顔で笑った。

そんな駿の笑顔を見ていつかの歩を
思い出す、その当時は歩だと思って
接していたその人はもしかしたら、
やっぱり駿だったのかもしれないと。

そうだよ、全部駿だったんだよ。
わかんないよね、不安だよね。

もう少しだけ‥駿はやっぱり
引っ越してしまうのかな。
こんな状況で紗奈をおいて。

引っ越さずに済む方法があればきっと
時間と駿の誠意がいろんなこと解決
してくれると思うんだけど‥難しいね。

~ひとこと~

康平が紗奈は極度に変化を恐れている
んだって言っていた。そんな紗奈が昔
くらいの長さに髪を切ったというのは、
あの頃に戻りたいと思うようなことが
あったということなんじゃないかとも。

問い詰められ、駿が紗奈に話したことを
康平にも伝えると康平に随分と怒られた。

紗奈が傷つくと分かって何故わざわざ
話したのかと‥駿の中で前に進むため
には伝えなければいけないことだった。

傷つけて、嫌われてしまったとしても
伝えないまま告白なんて騙し続ける
ようなこと駿には出来なかったろう。

康平も駿の気持ちを理解してくれた
ようだったけど、俺もそろそろどう
にかすべきかなんて康平が言ってて
言葉の意味がすごく気になってます。

駿と紗奈の関係は一応修復できてる。
まだ告白は出来ていないけれど‥
いずれは伝えるつもりなんだろうか。

引っ越してしまう、それはもう
変えられないことなんだろうか。

進んでいる、確実に進んでいる
けれど進む先がどこなのかよく
わからなくてやっぱり不安です。

どうか、彼らが進む先が明るい
未来に繋がっていますように。