どうせもう逃げられない 第8巻

どうせもう逃げられない8

著:一井かずみ 先生

どうせもう逃げられない8-1

向坂さんの兄、柾己さんは
再婚を決めた。きっと今まで
柾己さんだってちはるさんの
死を悔やみ続け、自分を
攻め続けてきたんだろう。

ハル(犬)が死んでから
新しく犬を飼いはじめた。
名前はナツ…でも名前はほんと
偶然で、再婚相手の家の犬を
貰ったらナツって名前だった。

『春』『夏』『秋』『冬』
の2番めだからナツだって。

「ちはるはもうどこにも
いない…忘れたいんだ。
――拓己もそうなんだろう?」

ちはるさんという存在に
縛られ続けていたのはきっと
向坂さんだけではなかったろう。

兄は、もう忘れたいという。
いなくなってしまった存在は
どこにも残っていないという。

向坂さん、本当は決着をつけに
名古屋に行ったのはあったろう。
だけど、こんなふうに言う兄、
ちはるさんの旦那の言葉を聞き、
決心が鈍ってしまったんだろう。

…タイミング、悪いなぁ。
向坂さん、大丈夫だろうか。

どうせもう逃げられない8-2

翼へのプレゼントとして、
ナツをすごく気に入っている
からとナツへのプレゼントを
名古屋に行く前日になほと
2人で勝った向坂さん…。

兄の話を聞いて、結局
おみやげを渡すこともなく
持ってきてしまったんだろう。

駅のごみ箱へ捨ててしまう。
いろいろと、名古屋へ向かう
時に抱えてきた思いごと、なほ
への思いごと捨ててしまおうと
捨ててしまったように思えた。

どうせもう逃げられない8-3

名古屋から帰ってきて、
向坂さんがなほに告げた
言葉はきっと思いもよらぬ
言葉だったんではなかろうか。

「…あんたとならって思った。
でも無理だ。ごめん。俺は
ちはるを二度も殺したんだ。」

「俺だけは、すべて覚えて
いなきゃいけないんだ。」

名古屋に行って、兄の言葉を聞いて
向坂さんが出した答えはこうだった。
なんだか…前に、なほを拒み続けた
過去に戻ってしまったように感じた。

自分の思い、なほの思い、全部を
諦めてしまったような…そんな感じ。

自分を犠牲にして、自分がこの先
幸せになるなんてあってはならない
みたいな考え方して…そんなの、
きっと誰1人望んでいないのに。

一緒にいるのはつらいだろうと、
転職先なんかの話もされて…

「あ…改めてでいいですか…?」

すぐには、何も答えることが
出来ず、こう言い残してなほは
その場を離れることにした。

…向坂さんは今までもこうやって
自分の幸せを諦めてきたんだろう。
今まで何度も振られ続けたなほ。
それでも諦めずに向坂さんに
ついてきた…もう、ダメなの?
諦めないで、向坂さんの幸せを
まだ諦めないで欲しい…。

どうせもう逃げられない8-4

…結局向坂さんへの思いは
消えないまま、でもこれ以上
向坂さんを苦しめる存在には
なりたくない、そんな一心で
諦めようと決意したなほ。

…向坂さんは優しいから、
なほの存在で自分を責めさせて
しまうなら…そんなふうに思う
なほだけれど、本当にこれで
いいんだろうか。なほが今
諦めたら、向坂さんは本当に
1人になってしまう気がする。

そんなんで、いいわけないのに。
向坂さんを幸せに出来るのは
なほしかいないって思うのに。

どうせもう逃げられない8-5

向坂さんはソロ・デザインを
閉じようと考えていた…。
しっかり転職先の案まで
まとめた状態での提案だった。

後になってわかるのは、
余さんのN.Y.行きを見越して、
あと、なほとの関係のことも
大きかったんだろうと思うけど…

そんな話を聞いて、1度は断った
N.Y.行きをなほを連れて行きたい
と考えるようになった余さん。

まぁ…これは取引先の辻田さんと
いろいろあった余さんが固めた
思いだったのだろうけれど…

「向坂さんは野田蔵さんのこと
なんか考えてない!!あの人の頭の
中は死んだ女性のことだけだ!!」

向坂さんが、本当は自分のこと
なんてそっちのけで余さんや
なほ、ソロ・デザインのみんなの
この先のために自分を犠牲にして
でも頑張ろうとしている時に、
何も知らないとはいえ余さんが
こんなふうに言ったのは辛かった。

知らないんだ、何も。それで
こんなふうに言われてしまっても
仕方がない言動をしているのは
確かに向坂さんだけれどね…。

向坂さんは、ソロ・デザインの
みんなの転職先のために、今まで
拒み続けたデザインをすること、
自分がデザイナーに復帰するという
条件で転職先を確保しようとしていた。

どうせもう逃げられない8-6

余さんに告白されて、キスされて、
向坂さん、ソロ・デザイン、余さん、
いろんなことがぐるぐるして…

向坂さんのことを諦めて、また
職場が変わってしまうんだ…と
慣れてる、大丈夫、と諦めようと
するも結局は頭の中は向坂さんで
いっぱいで、どうにも出来なくて。

そんな状態のなほに、偶然
会った馨さんは、今自分に
出来る最大限を託そうとした
のかもしれない…向坂さんとなほ
を救いたいっていう願いのために。

~ひとこと~

ぐぁあああ!!!!!
なんかもういろいろつらい。

向坂さん…苦しみから
解放してあげたいね。

馨さんは、ずっと向坂さんと
一緒にいて、ちはるさんの
ことも知っていて、ずっと
見てきて…向坂さんを救いたい
気持ちはずっとあっただろう。

でも自分にはどうにも出来なくて
突然現れたなほの存在。彼女なら
救えるのかもしれないって…。

願いを託したくなったのかもね。
向坂さんを救うためには、きっと
関わるなほも向坂さん自身も
たくさん辛い思いをするだろう。

それを乗り越えられた時やっと
本当の意味で救われると思う。
だから…もう少し、頑張って。

…あと2巻で完結です。