死神坊ちゃんと黒メイド 第14巻

著:イノウエ 先生

ある日ザインがくれた様々な魔法道具は
ザインが自腹を切って買ってくれていた
と知った坊ちゃんはアリスと一緒に
アルバイトをしてお金を払おうと思った。

魔界で見つけたアルバイトというか
依頼のようなもので、洞窟の奥に
いる怪物が独占しているクリスタル
を奪ってくるという内容だった。

後になって、そんな内容を出した
のはダレスだとわかるんだけど、
そのクリスタルも人間になるため
必要な道具の一つだったんだろう。

ケトちんとアリス、坊ちゃんの3人で
その場所に辿り着いたはいいけれど、
そいつはアリスを気に入った様子で

「それは置いていけ…その女も
わしのものだ。ここで保管する。」

クリスタルを渡す気がないどころか
アリスをモノ扱いしてくる始末‥
そんなやつに坊ちゃんは怒った。

怒った通り越してキレてますよね。

坊ちゃんはこういう、大事なものを
守るための度胸がほんっとすごい。

何の躊躇もせずこんなふうに動ける。
普段はそんなにはっきりものを言う
タイプでもないし強そうでもない。

それでも大切なアリスのために
こんなふうに動ける坊ちゃんは
やっぱりすごくかっこいいよね。

おかげでアリスも助かったし
無事クリスタルも入手できた。

翌日はシャーデーに会いにいく
なんて信じられないくらい、
その日のお屋敷は穏やかだった。

ヴィオラとアリスは四ツ葉を
探しながらお喋りをしていて、
そんな中アリスがふと口を開く。

「ヴィオラ様、私の告白を
聞いていただけませんか。」

ヴィオラは全く想像してなかった
アリスの好きな人に戸惑うけど、
そんなことよりアリスがそれを
話してくれた覚悟だったり抱えて
いるであろう様々な気持ちを思い
優しくアリスを抱きしめてくれた。

アリスがヴィオラのこともすごく
大切で大好きだからこそ、黙って
おきたくなかったのかもしれない。

そしてヴィオラもこの子は普段
バカみたいに明るくて無邪気で、
それでもあの家に生まれていろんな
ことを考えながら生きてきたんだ。

そして今こんなに優しくて
人の気持ちに心から寄り添える
魅力的な女性になっている。

アリスの思いが今後どうなって
いくかは何とも言えないけれど‥

それでもこんな思いを大事に持ち
続けるアリスが、優しく抱きしめて
くれるヴィオラが、みんなが無事
元気に戻ってこられるといいな。

ヴィオラとあんな話をして
抱きしめてもらったことで
いろいろ思ったんだろうね。

ヴィオラがしてくれたことがすごく
嬉しいと感じた反面、本当はヴィオラ
じゃなく坊ちゃんにしてもらいたいって
気持ちが大きくなったんじゃないかな。

無事呪いが解けたら‥

アリスは無事全てが成功として終わり
帰ってこられた後の話をしていた。

これまで、お互い大好きなのに全然
してこられなかったたくさんのこと。

ちゃんと呪いが解けて触れられる
ようになったらいいよね‥ほんと。

シャーデーが全くもって心がない魔女
とは思ってないけど、話の通じなさに
感じては結構ひどいと思うから‥

話し合って、友達にってのはほんと
奇跡的なことだって思ってる。

でも本当に坊ちゃんの呪いが解けて
幸せになれる未来に向かうためには
その方法しかないとも思うんだ。

‥なんとかなりますように。
彼らが幸せになれますように。

そして当日‥作戦を決めチームを
わけて、まずは1つ目のチームの
坊ちゃん、アリス、ザイン、ダレス、
ウォルター、フリーが過去に来た。

坊ちゃんが呪いをかけられる数時間前だ。

残ったニコ、イチ、カフ達は戦闘要員、
最終手段として上級生4人も集まってる。

最初に過去に行った6人は話し合いで
説得して解決するための要因だった。

最初にシャーデーを見つけたのはザイン。

未来に一緒に来て呪いを解いてくれる
よう説得を試みるが、時間を操るザイン
の魔法には興味を持つもののそれ以上の
話し合いをさせてくれる様子は一切なく
仕方がなくシャーデーを拘束した。

自力で簡単に抜け出せると言いつつ
シャーデーは少しの間、そのまま
坊ちゃんの話を聞いてくれた。

未来でヴィクトルとリズが無事
会えたこと、幸せそうだったことを
聞いたシャーデーは、ほんの一瞬
だったかもしれないけどどこか安心
したような優しい表情を見せていた。

これまでは本当に何を考えてるか
読めない表情ばかりだったけど、
やはりヴィクトルを愛する気持ちは
本物で何より彼の幸せを願っている
ことに違いないんだろうね。

ほんの少し話をさせてくれたものの
やはり解呪に関しては興味がないと
いう態度のままでまたザインの魔法に
意識は移りザインを追いかけ回す。

シャーデーがザインを追っている
間、それ以外の全員を帰らせるよう
言われて呼ばれたのは過去のダレス。

初めは姉に逆らうこともなく
幻覚で追い返そうとした。

でも、自分が負けたら全員未来に
撤退するという約束で自分1人だけに
幻覚をかけるよう言ったウォルター
からの提案を彼女は受けてくれた。

結構しんどそうな幻覚ではあった
けどウォルターは耐え続けていて‥
過去のダレスは疑問を投げかけた。

「貴方私のなんなの?」

未来の自分がウォルターを
大事そうに見て、心配しながら
涙を流すのを見たからだろうか。

それに対して、ウォルターは自分に
とってダレスがどんな存在か伝えた。

ずっと姉の存在に囚われ続けたダレスを
救い今のようにしたのはウォルターだ。
ウォルターだからこそ、彼女の心を
動かすことができたんだと思う。

「僕はダレスのことが好きなんだ。
僕の立場的に未来の君にはまだ内緒。」

過去のダレスもやっぱりダレスだね。
純粋で、あまり素直じゃないけど
可愛らしいただ1人の女性だった。

そうして、ウォルターは
無事幻覚から抜け出した。

このままではシャーデーは死ぬことに
なるということを伝え、そうさせない
ためにも今自分達が来ていると話した。

酷いことをたくさんされても、歪んでる
けど妹として愛してくれてると思うから。

だからシャーデーが死ぬことは
ダレスも阻止したいと思っていた。

だからこそ過去のダレスはその場から
立ち去ることを選んでくれたみたい。
シャーデーはブチ切れてたけどね 怖

過去のダレスのためにもシャーデーの
ためにも、そして自分達のためにも‥
なんとしてでも現状を変えないとね。

ザインは時間を止める魔法を
使いながら必死にシャーデーに
話を聞いてもらおうと頑張った。

でもやはり話は聞いてもらえず、
未来からのゲートを維持したまま
時間を操る魔法を何度も使った
ザインは魔力を消耗しすぎたことで
シャーデーの攻撃に耐えきれず
気絶させられてしまっていた。

魔法で時間を止めている間、何度も
シャーデーを殺すチャンスはあった
ようだけどザインは殺せなかった。

でも多分それで良かったと思う。

傷つくだけ傷ついてまだ現状を
変えることはできていないけど、
殺して解決するというのは多くを
諦めることになるんだろうから。

過去のダレスとの約束も破って
しまうことになるだろうしね。

でも一先ず話し合いで解決は失敗、
戦ってなんとかするために2つ目の
作戦に移行することになるだろう。

屋敷を破壊しないよう場所を移して
次はカフやニコ、イチ達の出番だ。

戦って何かが解決するかわからない。
わからないけど、少しでも望むものに
近い未来に繋がっていたらいいな。

愛したヴィクトルを失って
寂しくて悲しくて苦しくて、
そんな自分がつらくて仕方が
なかったのかもしれないね。

でもこの時のシャーデーはどうして
自分が坊ちゃんにあんなことを伝え
魔法をかけたのかわからなかった。

でもその時伝えた言葉は
自分自身のことだった。

1人は寂しい、孤独は苦しいから。
誰のことも信じられないだなんて
私ならきっと耐えられないと思う。

相変わらず解呪の話に頷いてくれる
様子はないけど、シャーデーなりに
いろいろ考えてくれてる気がする。

少しずつでもいいから、彼女の心が
変わっていってくれたらいいと願う。
そうして坊ちゃんが望んでいるように
友達になれたら‥頑張ってほしいな。

まだ話すこと以外何もできていない
坊ちゃんは、過去のダレスの魔法で
動けなくなっているウォルターから
刀身のないレイピアを託されていた。

それを使うのか使わないのか。
坊ちゃんにもいろいろ頑張って
もらわないといけないよね。

そしてアリスの存在も、傷ついている
シャーデーを本気で案じている心は
シャーデーにもしっかり届いている。

シャロンに似たアリスを敵視するのは
仕方がないかもしれないけど‥私的には
アリスと坊ちゃんが頼りと思ってる。

シャーデーの心を救うために
みんな、頑張れ。

~ひとこと~

いよいよ決戦の日です。
シャーデーが本当に心のない魔女
だとしたらきっと殺すという手段
以外なかったんじゃないかと思う。

でもきっとそんなことないから、
今も過去もダレスはシャーデーが
死んでしまうことは望んでないし
シャロンだって望まないかもしれない。

本当にできるのなら‥殺さず和解して
仲良くなれる未来がやっぱり一番いい。

不安でいっぱいですが、抱える不安や
これまでどうにもできなかったことを
きちんと解決して、みんなの心からの
笑顔を見られる日が来たらいいと思う。

そのために諦めず頑張って欲しいですね。