死神坊ちゃんと黒メイド 第9巻

著:イノウエ 先生

これはちょっとしたきっかけから
アメリアと座長が再会できるお話。

普段の姿では地上に出ても長く動き回る
のは厳しいし、旦那を探すためにも魔女
の力を借りて人の姿にしてもらったのだ。

「完全に人間になるので魔法は
使えないし、効力も0時までと
決まってるんだけどね。」

もう10年近く会っていなくて、自分を
覚えてくれてるか不安だというアメリア
だったけど‥そんなのいらぬ心配だ。

ちょうど同じ頃座長の方でもアメリアの
話題が出ていて‥ザインとカフが再会
させてやると意気込んでいた所だった。

再会できるまではいろいろ遠回りして
少々じれったくも、切なくもあった。
でもやっと会えた時のアメリアは
すっごく可愛い女の子だったなあ‥

バーで飲みながら話をした。
結婚する前に話していたらしい夢
(サーカスの立ち上げ)を叶えたって
ジェミニ座まで連れて行ったり‥

本当はいつまでだって一緒に、そばに
いて離れたくなんかなかったろうね。
でも時間はもうそんなになくて人魚に
戻ってしまう前に海までやってきた。

あっという間の再会だった‥きっと
見送る側も、見送られて帰らなきゃ
いけない側だってすごく寂しいよね。

アメリアも座長も、最初は会うって
ことに対して少し消極的だったのは
また別れた後に今まで以上に寂しい
気持ちで一杯になってしまうのが
辛いからだったのかもしれないね。

今回会えたのだって偶然だった。
次いつ会えるかなんてわからない。
それでも一途に愛し続けるって
本当にすごいことだって思う。

アメリアと座長がまた‥いつかは
気軽に会ったり一緒に過ごしたり
できる日々が訪れたら良いのにと、
どうしても願いたくなった。

アリスはロブに、白いシスター服の
二人組・ダレスとシャーデーについて
知っていることを教えてほしいと話す。

するとその中で話題に上がったのが
旦那様・坊ちゃんのお祖父様のこと。

ダレス達はある頃突然現れ、よく
本邸に出入りするようになった。

旦那様が病気で亡くなってからは
2人を見かけることもなくなった。
シスターの1人がシャロンを抱えて
出ていった時が最後だったみたい。

その間何をしていただとかそういう
話は一切なかったけど‥シャロンは
旦那様ととても仲が良かったという
ことと、シャロンが呪われて連れて
いかれたのとは関係があったり‥

坊ちゃんが呪いをかけられたのも
ちょうどその頃のことのようだ。

旦那仲が良かったシャロン、
旦那様の孫でありシャロンの
娘とも仲がいい坊ちゃん。

無関係ではないかもしれない。

わからないけど、呪いの解き方に
繋がるかは不明だが呪いをかけられた
理由になら辿り着けそうな気がした。

思いもよらぬきっかけで魔女のケト
(植物使い)と仲良くなったアリスは

「人間でも飛べる魔法の
ほうきになるっすよ♪」

と、ケトからもらった木で
魔法のほうきを作ったみたい。

アリスの後ろに乗せてもらいながら
坊ちゃんは随分恐ろしいことを考えた。

自分にかけられた呪いで、こんな
呪いをかけた魔女を‥それが可能な
ことはどうかは今は問題ではない。

一瞬でもそんなことを考えて
しまった自分にぞっとしたんだ。

それくらいの気持ちを持ってしまう
のは仕方がないことかもしれない。
でももし本当にシャーデーに対面
するような状況になったとしても、
坊ちゃんはそんなことしないだろう。

彼は本当に優しい人だから、どんなに
恨んでいる相手にだってそんなこと
出来ないんじゃないかなって思う。

もし勢いでしてしまったら、この
呪い以上の苦しみを一生抱える
ことになるだけだと思うから。

呪いをかけた主はもう亡くなってて
解呪の方法もわからなくて‥何を
どうすることが最善なんだろう。
坊ちゃんはどんな選択をするだろう。

ある日街でヒューゴに声をかけて
きた子供達‥そいつらはヒューゴが
ジェミニ座に入団する前の仲間達。

仲間と言っても、決して良き友人
みたいな関係ではなかったのかも
しれないけど、声をかけてきたと
思ったらサーカスの悪口ばかり。

終いには石を投げつけてくるような
どうしようもない奴らだった。
言いたいことを言って石を投げて
逃げてってしまう奴らを相手に
ヒューゴは何も言えなかった。

「俺やっぱり…あいつら殴ってくる!!」

何も言えなかったヒューゴにそんな
勇気を与えたのはザインの言葉だが
ザインの言葉にはそんな意味はなく
あったのはカフへの下心のみ‥ 笑

きっかけはともかく言い返そうと
そいつらの後を追うと‥なぜか
みんな水浸しになっててそのそば
にはなんだか怪しいのが2人いた。

長身のおばさまと小柄な少年。

「あ、ちょっとおどかしただけだよ。
こいつら俺のカバン盗もうとしたから。」

ヒューゴはしっかり仕返しして、
言いたいことも伝えられたけど
その頃には2人の姿はなかった。

魔女、なのかな?
悪いやつなんだろうか。

ザインとカフ、大丈夫かな。

ヒューゴが見つけた2人は、ザインを
捜しているとサーカスを訪ねたけど
やっぱり不審に感じて座長は知らない
ふりをして2人を追い返していた。

しばらく隠そうと坊ちゃん達の屋敷に
2人を行かせたんだけど、この2人実は
死神と呼ばれていた坊ちゃんのことも
捜してたようで結局は全員が集まる
屋敷に辿り着いてしまったみたい。

2人が危ないやつなんだったら‥
と不安になっていたんだけど、
多分危ないやつらではなさそう。

一先ず2人は魔女じゃなく人間、
魔術師らしいことがわかった。

ニコ(♂)とイチ(♀)‥ニコイチって
すごく相性のいいお名前ね 笑
ニコとイチは恋人同士らしい。

ちょっといきなり情報過多だったけど
シャーデーを倒したのは彼ららしい。
彼らというか魔術師が集団で倒した。

その時からニコは不老不死の呪いを
かけられてしまい、見た目こそ子供
だが実年齢は60を超えているとか。

不老不死の呪いが坊ちゃんの呪いで
解けないかって考えたみたいだけど、
ニコが坊ちゃんに触れるとお互いの
呪いが反発し合っているようだった。

死んだりしなくて良かったけど
あまりに躊躇なすぎて焦ったよ。

ニコ達がザインと坊ちゃんを捜して
いたのは、この呪いを解く手伝いを
してほしいと考えたからだった。

坊ちゃんの方は反発するだけで
解呪にはならなそうだったけど、
ザインの方は‥時間を操る魔法で
呪いをかけられる前に時間を戻し、
またみんなでシャーデーを殺す
という恐ろしい方法だった。

ニコとイチで運営してる学校においで
と誘うだけ誘って、少々険悪な空気を
残し魔術師達は学校へ帰って行った。

シャーデーを殺すという話を聞いて
ずっと考えていたのかもしれない。

ここは上空、空飛ぶ馬車の車輪に
しがみついた坊ちゃんです‥(危)

もし坊ちゃんの呪いでシャーデーを
簡単に殺すことが出来るとしても、
そんなこと絶対にしたくなかった。

「僕……シャーデーと友達になる。」

他人同士なら争って殺すことでしか
解決できないこともあるかもしれない。

でももし友達になれたとしたら‥
それが可能かなんてわからない。
ダレスと違って話が通じる相手か
どうかも怪しいところだろうし。

それでも僅かな可能性にかけてでも
殺さず済む方法を考えたんだろう。

この坊ちゃんの優しく強い心で、
良い方に転がればいいと思った。

騒ぎが静まるとカフとザインも
サーカスに帰って行き、そこには
アリスと坊ちゃんだけが残った。

最近は多くの人がこの屋敷を訪ねて
くる、友人だってたくさん出来た。

ずっとなかったものが、今は
当たり前のようにそばにある。

「この有り難みを忘れずに生きたいな。」

そんなふうに話す坊ちゃんに

「――今は、私が坊ちゃん
を一人じめです。」

なんて可愛いことを言ってくる。
可愛い、けどそれだけじゃなく、
アリスは今の現状が嬉しいのと
同じくらい寂しくもあったろう。

そういう気持ちまで、坊ちゃんは
しっかり汲み取って伝えてくれる。

どこまでも優しくて、まっすぐで
仲間思いで、家族思いで‥そして
とってもかっこいい坊ちゃんだ。

ほんと‥この2人好きだなあ。

~ひとこと~

魔術師という存在が出てきました。
何より大きいのはシャーデーを倒した
人達と繋がりができたということ。

でももし魔術師達の手をとったら
ダレスとの関係はどうなるだろう。
ダレスはシャーデーに対して恐怖
を感じてはいるけど仮にも姉だ。

姉を殺した集団の存在を知ったら
ダレスは何を考えるんだろう。

ケトが話してた、昔魔女は人間による
魔女狩りにあって多くの命を奪われた。

もしかしたらこの話に魔術師は関係
しているってこともあるかもだし‥
不安になる要素はすごく多いけど、
争いになってしまわないといいな。

出来る限り穏便に話がつけばいい。
そして‥呪いが解けますように。