死神坊ちゃんと黒メイド 第5巻

著:イノウエ 先生

まだアリスが幼く、母・シャロンが
メイド長として働いていた頃のお話。

シャロンはメイド長としての風格は
ないものの、みんなから信頼されて
母親としても申し分ない‥ちょっと
茶目っ気もある素敵な女性だった。

身体が弱かったアリスは部屋で寝て
いるように言われていたんだけど、
大好きな坊ちゃんに会いたくて屋敷
内をウロウロしてしまうような少女。

可愛すぎてつらいですアリスさん♡
そんな幼いアリスに向けた母の言葉
に深い意味があったかはわからない。

わからないけど‥自分を守ると言った
母親は若くして亡くなってしまった。
原因がいまだにわからないんだけど、
何か危険を及ぼそうとする存在がいて
それからアリスを守ろうとしたのかも。

もしかしたらそれが、魔女と関係
あったりするんじゃないだろうか?

あくまで憶測だし、考えすぎかも
しれないけど‥集会にいたダレスが
シャロンを知っていたことも含め、
何かしらの繋がりはあると思うんだ。

ある日ザインが屋敷にやってくる。
ダレスからの伝言を預かってきた。

「仲良くしましょう。」

魔女達の「仲良し」は鑑賞し合わないと
いう意味合いになるらしく、もう関わるな
という警告を意味するのかもしれない。

その後は好き放題遊んでいたザイン
だったけど、彼には別の目的があった。

少し前に、ヴィオラが使用人達が書いた
日誌を持ってきてくれていた。坊ちゃん
が呪いにかけられた頃のものだという。

呪いを解く手がかりになるかもと持って
きてアリスにくれたそれだったが、ダレス
がそれに気付いて抹消しようとしてきた。

その使いが、ザインだったようだ。
もちろんザインは坊ちゃん達の友人で
理由もなく彼らを裏切ったりしない。

ただ今回は、カフを脅しに使われて
断ることが出来なかったみたいだ。
日誌を見つけ、魔法で消そうとした
その時‥坊ちゃんに見つかるザイン。

カフのためとはいえ、ずっと迷いが
あったのかもしれない。日誌の中には
ダレスが知られたくない何かが書かれて
いる可能性が高い。だから坊ちゃんには
必要な何かが書かれている気がする。

お前は読むべきだと言ってくれるザイン。
でも事情を知って坊ちゃんは燃やしていい
とそれをザインに手渡した。大事な友人に
迷惑はかけられないから‥そう言って。

坊ちゃんは本当に優しすぎるんだ。
でもだからこそ‥魅力的な人だ。
こんな彼だからこそ、ザインも
友人でいたいと思ったんだろう。

ダレスは動物などの目を通していつも
坊ちゃん達を監視している、そして
きっと今もどこかから見ているだろう。
でも会話を聞かれているわけではない。

「ここからが秘密のお話。」

そう言うと、日誌を粉砕にしてみせた。
そしてその切れ端を大事に懐にしまう。
切れ端があればいつでも復元出来るらしい。

彼が自分の魔法について秘密にしたがる
理由はよくわからないけれど、ダレスの
監視が解かれたその時は、元の形で
日誌を返すとザインは約束してくれた。

‥今はどこにもない日誌、魔法のことも
話してはいけないので結果的にアリスに
日誌を借りていると嘘を付くことになり
ちょっとつらそうな坊ちゃんだったけど‥

「君は、僕が絶対に守るから。」

坊ちゃんはアリスにそう言った。
彼なりの決意だったのかもしれない。
でもアリスにはその言葉が今は亡き
母親の言葉と重なったのかもしれない。

「とても嬉しいのですけれど、坊ちゃん
はあまり遠くへ行かないで下さいね。」

大切に想う人を失うのは怖いし辛い。
母親を亡くした時の思い、もう二度と
アリスが味わうことのないように‥。

ある時坊ちゃんは本邸へ呼び出される。
ヴィオラが度々旧邸に通っていることが
母親にバレてしまったのがきっかけとか。
まあそれ以外にも、いろいろと理由は
あるのかもしれないけど‥久々の本邸。

久々に母親に会うということに、酷く
恐怖してしまっている坊ちゃんに対し、
アリスなりに元気づけたかったろう。

今できる限りのことで坊ちゃんを
楽しませたりしてみたアリスだけど‥

きっと触れるだけ、手を握ったり
抱きしめたりするだけでも出来たら
随分安心させられたかもしれない。

それが出来ないもどかしさのような
ものは、きっとアリスの中にずっと
あったんじゃないかなと思った。

呪い‥早く解けたらいいな。
何も気にせず触れ合えるように。

アリスの提案で、本邸にアリスも
一緒に行くことになったはいいが‥

家族だけで話したいということで
アリスとは離れ離れになってしまう。
とはいえ、同じ屋敷内でメイド達の
仕事を手伝うことにしたアリスは
それはそれで楽しそうだったけど。

まあなんというか‥お母様怖かった。
特に坊ちゃんに対しては、随分と
当たりがきついような気がしたし。

魔女の呪いに関しては坊ちゃんが
1番の被害者だろうに、まるでこの
家の汚点だと言わんばかりの扱いだ。

威圧がすごかったけど‥

「ちゃんと、呪いは解きます。」

怖かったろう‥でも坊ちゃんは母親の
顔をまっすぐ見てそう宣言してみせた。
そんな日の夜‥坊ちゃんはアリスに
用意された部屋まで会いに行った。
寝ているアリスを起こしたけれど 笑

ほんの数時間のことだったけど、不安な
思いでいっぱいだった彼にとってこの
数時間は随分長く感じたかもしれない。

寂しかったせいか、いつもなら自分
から距離を縮めるなんてこと絶対
しない坊ちゃんがやたら近く感じる。

坊ちゃんが可愛くて、アリスが可愛くて、
2人が可愛すぎて私の理性が飛びそう 笑

家族で食事中‥お酒が入っている
せいか、これまでの印象よりは随分
柔らかい印象を見せた母親だった。

そこでアリスの話題になって、その流れ
でアリスを好きなことを告げた坊ちゃん。
将来は一緒になりたい‥なんて赤面して
話す彼に対し母親は笑いながらこう言う。

「フフ…冗談でしょう?」

昔の坊ちゃんなら、ここでもう怯んで
しまっていたかもしれないと思った。
でも‥きっと強く成長したんだろうな。

「じょ…冗談なんかじゃない。」

反論し、自分の強い意志を主張した。
母親からの視線にはさすがに怯んだ
ようでそこからは逃げ帰ってきたけど‥

「おどろいたわ。あんなに優しくて
弱かった子が私に口答えするなんて。」

坊ちゃんが立ち去った後、お母様は
そんなことを言っていた。酷く冷たい
印象を受けた彼女だったけど、決して
息子への愛情がないわけではないの
かもしれない‥少し嬉しそうに見えた。
呪いの影響か‥親子間のギスギスした
ものもいつかは解決できたらいいな。

「春までに呪いを解いて帰ってきなさい。」

本邸で、お母様から出された条件は
これだ。それまで呪いを解けなければ
家長を次ぐのはウォルターになるらしい。

旧邸に戻ってきてから、坊ちゃんは
アリスに母親に話したことを伝える。
アリスとの将来を考えているという話。

坊ちゃんの想いにアリスはいつも
明確な答えを出さない。大好きなのに
身分違い、自分が望んではいけないと
言う気持ちが強いのか坊ちゃんの前で
決して気持ちを口にしないんだよね。

坊ちゃんには聞こえないところで

「大好き…坊ちゃん。春なんて
ずっと、来なければいいのに。」

そんなことを口にするアリスでした。
春なんて来なければっていうのは、
どういう意味があったんだろう。

呪いが解けたら、解けなかったら‥
その結果によって今と大きく変わる
ことってあるんだろうか。本邸に
帰ってしまったらアリスはそばに
いられなくなるかもしれない‥と
いう程度は少し考えられるけど。

アリス、大好きなのに最初から全て
諦めてしまっているように感じるよ。

~ひとこと~

レビュー内で触れられなかったけど、
気になる内容はたくさんあった5巻。

坊ちゃんが本邸に行った時屋敷内で
お母様とアリスが遭遇したことがあって、
アリスを見てシャロンと見間違えた
お母様‥服装がにているようだった。

シャロンとお母様は仲が良かったらしく
亡くなってからお母様は少し変わって
しまったとかメイド達が話していた。
シャロンが亡くなったのは事故という
ことが書かれていたけれど、その詳細
についてはやはりわからないままでした。

そしてもう一つ、幼い頃のアリスは
ロブの鋭い目つきが苦手だったらしい。
今のロブからはイメージ出来なかった、
タバコを吸っているシーンがあって‥

それがやけにこれまでのイメージに
合わない描かれ方をしていて、何か
意味があるかはわからないけれど、
やけに気になってしまう部分だった。

ほんの少し答えに近づいたようで、
でもまだ何もわからない現状のまま。

そんな中でも、坊ちゃんの呪いを
解くことに掛ける思いはどんどん
強くなっているように感じる。

全ては、アリスのためだろうか。
跡継ぎの話もあるけど、やっぱり
アリスの存在は大きいと思った。

これからの状況が、少しでもいい方へ
進んでいってくれることを願います。

それではまた6巻で !!