著:藤間麗 先生

ただの初恋の女の子。
それを思い出しただけのはず
だったのに、思い出した今では
一夏が凍冴さんと仲良くしてる
のを見ただけで嫉妬で一杯に。
この後、部屋の中が雪まつり
状態になりましたとさ(苦笑)
気持ちが昂ぶって力が暴走する。
それを止めることができるのは
一夏しかいないけど、暴走する
雪也近付いたらまた昔みたいに
一夏を傷つけてしまうかもと
思うと怖くて怖くて仕方ない。
そんなふうに1人葛藤する雪也。
一夏に勉強を教えることにした
雪也だったけど、無理をして
暖房器具を使った部屋で勉強を
教えていたら途中で倒れてしまう。
「……いいよな。兄貴は…
あったかいのも平気で
……強いから…。」
「……まぁね?」
「……ずるい。」
実際は雪男としての力が弱いから
平気なんだけどもね、凍冴さんも
雪也もお互いにないものねだり。
確かに人間と一緒に生きていく
ってのに関しては凍冴さんの方が
上手く生きていけるんだろうと思う。
それでも凍冴さんは雪也を羨ましい
と思っている所が結構あったりする。
凍冴さんのこと、雪也は誤解してるけど
凍冴さんも本当のことを話す気はない
みたい…気付かれたくないんだろうな。
この兄弟は…いろいろ難しいね。

「…俺、無理だし、
兄貴が勉強教えて。」
そう言った雪也だったけど…
「ホッカイロも貼ってきたし!超厚着
したから!ストーブなくて大丈夫!」
これでもかってくらい厚着をして勉強を
教えてもらいにやってきた一夏だった。
ほんと…ものすごく嬉しかったんだろう。
雪也は顔を真赤にしてうつむいた。
ただの初恋、昔好きだっただけ。
そんなふうに思おうとしても、
それでもやっぱり好きだって自覚
してしまったのかもしれないね。
さて、これからが楽しみだわw

何をするにも一日のことばかり
考えて、それでも全然思うように
出来なくて失敗して迷惑かけて。
そんなことばかり続いてる。
でも自分達のことをいまだに
化け物扱いして嫌がる一夏に
好きなんて、言えるわけない。
いろいろ怖くて、伝えるのも
すごく苦手で、その上雪也は
思い切りツンデレさんのようで
すごくに優しくするのが下手。
難儀な性格してますよね。

「雪降らせられるんだよね?
ウチの庭にさ、降らせてよ!」
一夏の気まぐれに近い言葉だった
のかもしれないけれど、雪也は
それを聞いて庭に雪を降らせた。
ツリーの飾りも全部氷で出来た
雪也が生み出したもの達だった。
それを見た一夏は、満面
の笑みを雪也に向けた。
そしてそれを見た雪也も。
きっと、初めて見せた笑顔。
雪也はずっと、一夏に笑って
欲しかっただけなのかもなって
思った。自分に笑顔を向けて
ほしいって思ってたのかも。

家で、突然一夏が倒れた。
とは言っても倒れる寸前に
凍冴さんに抱きとめられたから
それでケガをしたとかそういう
のは一切なかったのだけれど。
これは、幼いころの話と、婚約
の話にも関係のあることだった。
幼いころの雪也の暴走は、実は
子供の嫉妬心を煽るようなことを
凍冴さんがしてしまったことで
起きてしまったことだった。
それで死にかけた時に、一夏の
命を繋いだのは2人の母親の雪女。
雪女の妖力を注ぐことで生き延びた。
だからその力が尽きてしまうと
一夏はまた危ない…だからその
力を注ぐためにとやってきた
のが凍冴さんと雪也らしいのだ。
そしてその手段として一番効率が
いいのがキスだとか。だったら
恋人とか夫婦とかそういう関係に
なるのが良心的だよねって話。
この諸々の事情は、雪也は知らない。
それでも中々素直になれないけど
雪也が一夏を大好きなのは見てれば
わかるし、2人を炊きつけて雪也に
やってもらおうと思っていたらしい。
らしいのだが…今、凍冴さん自身
無意識的な行動だったのだろう。
気付いたら、一夏にキスしてた。
しちゃって真っ青になって、その
後は真っ赤になって…みたいな。
凍冴さんのこんな焦ってんの
初めて見たんじゃないだろうかw
『(ずっとこの女の子のことを
考えてきた。あの子はどう
してるか。元気だろうか。
力が尽きていたらどうしよう。
もうすぐ会いに行く。そう
したらせめて、幸せにして
あげなくちゃいけない。
幸せになってほしい。そうやって
ずっと。よく考えたらそれは
愛に似てるかもしれない。)』
自覚がなかっただけで、もしかしたら
凍冴さんも一夏のことをすごく愛おしく
思い続けていたのかもしれないな。

雪也が一夏に力を与える存在に
なればいい。ずっとそう思って
そうなるように振る舞ってきた
つもりでいた凍冴さんだった。
でも、キスしてしまってから、
自分の気持ちに気付いてしまって
からは否定しようとしても簡単に
消えてくれない気持ちと嫉妬心。
いろんな思いでごちゃごちゃ。
そんな中、また力の暴走で一夏
に悲しい顔をさせてしまう雪也。
それを見て、自分でもいいんじゃ
って…気付いてしまったらもう、
気持ちって大きくなる一方だ。
一夏の思いは全く別の方向を
向いたままだけれど、最初は
全然義務的な気持ちでここに
来たであろう2人の気持ちは
いつのまにか一夏を好きって
気持ちに変わってしまった。

「――うん、好き。」
今までどうにも素直になれなかった
雪也だったけれど、彼もいろいろ
変化していたようだった。人混み
も女の人も、大分慣れて暴走せず
に済むようになってきていた。
それでも、いともたやすく一夏を
連れて行ってしまう凍冴さんを、
楽しそうにしてる2人を見ること
だけはどうしても受け入れらる
ことが出来なくて、大暴走した。
一夏への思い、制御できない
自分の感情、暴走する力。
いろんなものを悔しく思う。
でもそんな雪也に、一夏は
側にいた凍冴をほっぽって
すぐ駆け寄って抱きしめて、
大丈夫?と声をかけてくれた。
恐怖とか、いろいろあったろう。
でもそれい所に伝えたいって
思えたのかもしれないね。
一夏は、どう思ったんだろう。
~ひとこと~
化け物、なんて扱いをする
こともある一夏だけれど、
そんなでも凍冴さんと雪也
のことはもう大事な家族
くらいには感じていると思う。
逆に、恋愛感情的な意味では
全然な感じがしているけれど。
さらっと凍冴さんが一夏を
デートに誘うと、当たり前の
ように雪也も一緒だと考えて
動こうとしているし…いろんな
行動の中で人間と同じように
行動できることが多い凍冴さん
と違っていろいろ不便の多い
雪也のことは結構気遣ってる。
なんて言えばいいのかな?
凍冴さんにも雪也にも平等で、
同じように大事に扱ってる。
そりゃ、嫌がることもいろいろ
あるだろうけどそれも平等w
そういう行動は、雪也にはすごく
嬉しく感じることも多かったろう。
逆にそんな一夏の気遣いが器用な
凍冴さんを寂しくさせることも。
…次で最終巻です。2人の思いは、
一夏の心はどこへ向かうのか!?