著:三次マキ 先生

「…カコちゃんしばらく距離置こう。」
「君を物みたいに扱おうとした。
…俺は今愛情からしたいと思った
わけじゃない。君を自分の思い
どおりにして安心したかっただけだ。
君が傷つこうが構わないと思った。」
前巻功太くんのじゃあ俺のものになれる?
って発言から、カコパパとの約束あるし
そういう身体の関係的なのはきっとまだ
先の話ってお互い思っていただろう。
そうまでして安心したいって考えに
至ってしまう程今の功太くんの心は
疲弊しきっているってことなんだろう。
疲弊というと語弊があるかもだけど、
自分の気持ちを伝えることも出来ず
カコはカコで心配して功太くんが
望むなら、それで楽になるならと
受け入れようとするけど、そういう
ことに対して怯えている様子だった。
初めてが、そんなんじゃ可哀想よね。
そんなこと功太くんが1番したくない
と思うだろうに..余裕ないんだろう。
難しいところだよね、本当に。
すごく辛そうな表情をして頼むよと
言ってくる功太くんに対しカコはムリ
に何か言うことは出来なかったろう。
「じゃ、またメールするね。」
メールくらいならしてもいいとOKを
もらうと、ムリに笑顔を作ってそう
言って、功太くんの家を後にした。
私がカコの立場だったらやっぱり
功太くんが大事だし、彼を傷つけて
までちい先生を肯定しようなんて
思うことはなかっただろうと思う。
だからこそ、施設をやめる選択を
していたんじゃないかと思うし..
だからこそカコの選択を否定的に
思ってしまう部分はあるんだけど。
もうそれは今更な部分で、きっと
やめるやめない以前にちい先生と
功太くんが再会してしまった時点で
功太くんの心は崩壊寸前だったろう。
..時間が解決してくれるならいい。
でも今回のことに関しては..難しい。

今功太くんにしてあげられることは
ないなら自分にできることを頑張る
しかない..カコはそうしてひたすら
勉強とか勉強とか勉強とか頑張った。
そうしながら、信じて待とうって。
たまにメールを送るも、功太くん
からの返事は感情の読み取りにくい
そっけないものだったように思う。
そんなある日、大神さんからカコに
連絡が入る。それは警察学校合格の
報告の連絡、実際会うと功太くんの
ことを気にしてる様子の大神さんに
「お礼!?お礼しに来たんだね!?
大神さぁ-----ん!!」
素直にそんなふうに言ってきたわけでは
ないけど、大神さんにもちゃんとお礼
言わなきゃって気持ちはあったろうね。
そうしてちょっと強引なカコに
引っ張られて功太くんの家まで
大神さんは連れていかれて‥
偶然、そこには功太くんの姉が‥
功太くんの様子を心配して話を
聞きに来たって感じなんだろう。
運良く2人に会えたお姉さんは
「…ちょっとさ、2人とも時間
くれない?情報交換しようぜ!!」
ちい先輩のこと、そこから今に
至るまでのことを話したんだろう。
ちい先生とのこと、功太くんは
お姉さんにも話してなかったのね。
誰にも話すつもりはなかったろうに、
大神さんに話すことになったカコは誰
にも、唯Pにも言わないでと釘を刺す。
「君から見て功太ってどう?
強くて立派な大人に見える?」
大神さんとカコにその質問を
投げかける。2人は頷いた。
「きっと功太はそんなふうに…
自分の父親みたいに思われたくて
ずっとがんばってきたんだと思う。」
カコ達に合って、きっと彼なりの努力
もあって本当に強くなった功太くん。
それなのにちい先生との再会により
昔の自分に戻ってしまったのかもって。
「今の功太に必要なのはあたしじゃ
ない、君たちは功太にとって特別な
2人だ、どうかあの子を助けて欲しい。」
どうしたらいいのかはわからない。
でも、変わるきっかけになれるなら
諦めないで向き合い続けてほしい。

お姉さんと話をした後、功太くん
の部屋に向かった大神さんとカコ。
距離を置こうと言われてしまった
から大神さんだけ行かせるつもり
だったろうけど、お姉さんの話を
聞いたらそうもいかなくなった。
玄関で話を済ませようとする功太
くんだけど、大神さんは強行突破。
すると室内は酷い散らかりようで
勝手に片付けてくれる大神さん。
「俺が無理しなくてどうするん
だよ。解決策なんてない、一生
続くんだ。君はなにも知らない。」
大神さんが掃除をしている間、話を
しようとするカコだったけど功太くん
はほとんど聞く耳を持たない状態。
そんな功太くんに活を入れてくれたのは
過去に、事情も気持ちも何も知らない
功太くんに助けられた大神さんだった。
いろいろ言われ、引っかかる部分は
あったろうにそれでもお前らには
関係ないって態度を取る功太くんに
先に手を上げたのは大神さん、勿論
やり返される前提の行動だったろう。
結果取っ組み合いになってしまった。
そこで大神さんが功太くんに伝えた
言葉は、全て過去に大神さんが功太
くんから言われた言葉ばかりだった。
「負けるな。」
大神さんは最後にそう言った。
本当は警察学校に受かったという
嬉しい報告をしに来たはずだった。
「人生最良の日になにさせてくれてん
だよ。合格自慢してやろうと思ったの
によ。なんだよこれ、クソが………せめて
俺の前ではそんな姿見せんじゃねえよ!」
功太くんは大神さんにとって憧れの
ような存在だったろう、だからこそ
大神さんはつらかったろうし功太くん
もそんな大神さんの気持ちを聞いて
悔しさを感じたんじゃないだろうか。

カコの言葉は、功太くんには全然
届いていない‥というか拒絶しよう
としているのかもとすら感じていた。
でも大神さんの言葉は、少なく
とも功太くんに届いてたと思う。
カコはそれを悔しく思ったんだ。
「大神さんみたいに強くて優しい
人になりたい。わたしは弱くて
ずるい…逃げ出したい…。」
カコは強くないしずるいとこ
だってあるのかもしれない。
それでも、諦めの悪さとか
お節介っぷりは人一倍だ 笑
そういうのに救われてる人は
いっぱいいるし、功太くんも
そういうカコがいたから変わった
部分もあったんじゃないかな。
諦めんな、頑張れカコ。

「いつ歩きだすのかは
功太くんが決めたらいい。
功太くんの人生だから。」
いつか乗り越えてくれると信じて
自己防衛もやめて、カコは伝える。
「背中を追いかけるんじゃなくて
手を引かれて歩くんじゃなくて
隣を並んで手を繋ぎたい。そう
できる自分になりたいってずっと…。」
助けたいのは本当、でもこれまで
自分の気持ちをここまではっきり
伝えては来なかったんだろうね。
カコの気持ちを伝えて、あとは
功太くんが覚悟を決めるのを、
歩き出すのを待つと決めたカコ。
カコの言葉を拒絶し続けてた
功太くんだけど、今度はちゃんと
気持ちが届いてくれたと思う。

「……あいつは犯行時の記憶がない
んだ。いわゆる心神耗弱状態って
やつ、ズルイだろ、あれを覚えて
ないなんて。だから俺は忘れない。
忘れたいけど忘れたくない。忘れちゃ
いけないんだ。あのときの光景も、
俺のせいで親父が死んだことも。」
功太くんが話してくれたこと、これ
が彼がずっと抱え続けたものだった。
こんな自分を認めるのが、知られて
しまうのが嫌だったと話してくれた。
功太くんを悩ませているのは、
ずっとこのことだったんだろう。
ずっとずっと不安だったろうな‥
それを聞いて、カコは何か気の
利いたことを言いはしなかった。
ただ、苦しそうな表情を見せて
ぎゅっと功太くんの手を握る。
すぐすぐ答えを出せるものでは
ないかもしれない、それでも
少しずつ、時間をかけてきっと
功太くんは前に進んでくれる。
そのきっかけは与えられたと思う。

ひょんなことからカコはちい先生
のフルネームを知ることになった。
せと こうた
漢字は違うようだったけど、
功太くんと同じ名前だった。
それが悪く作用したみたい。
「名前の漢字は幸福の『幸』
です。すごく皮肉ですよね。
そう名づけた親に虐げられてぶっ
壊れて挙げ句殺したんだから。」
犯罪者なんて一生迫害されて
りゃいい、その方が楽だから
なんてちい先生は言った。
「自分の罪と対峙してるより
他人から責められて反省してる
ほうがずっと簡単ですから。」
「…君は僕をいい人認定したい
みたいだけど冷静に考えりゃわかり
ますよね、そんなわけないって。いい
人が無関係の人間殺すと思います?」
‥ちい先生自身ずっと彼なりの
思いを抱えたままだろうとは思う。
それがどんなものなのかわからない。
本当に悪人なのか違うのかも謎。
でも‥カコはどうしてここまで
ちい先生に固執しているんだろう。
もういいじゃん、ほっときなよ
って思ってしまう私は薄情かな。
カコはしんどいし、功太くんも
彼のことで苦しみ続けてるのに。
この後、関係してるかはまだ
わからないけど功太くんのいる
音尾警察署に事件の情報が入る。
「西区において刃物を持った男の
目撃情報、男性は10代と思われ
〇〇の方向へ歩いていったとの
こと。発見確保にあたれ。」
この場所、おとお学園のそばらしい。
無関係ならいいけど‥ちょっと不安。
~ひとこと~
また妙なとこで終わりました。
功太くんのことは心配ではある
けどきっといい方に変わってる。
そう感じ始めた所だったのに最後、
めっさ不安なんですけど‥そんな
状態ですが次巻はまた少し先です。
良かったらまたお付き合い下さい。
怖いことには、ならないといいな。