著:三次マキ 先生

おとお学園、カコがボランティアを
している施設のお話から始まる14巻。
そこには、体こそ小さいけれど立派
に成人している男性職員さんがいる。
決して愛想がいいわけではないし、
少々言葉選びが下手なイメージはある
けど決して悪い人な感じではなかった。
おとお学園のお花見だとかで、妹の様子
でも見に来たのかやってきた大神さん。
ちょうどすぐ近くで喧嘩を始めてしまう
子供たちを止めようと大きな声をあげた。
「なにしてんだコラ!!」
そんな大神さんに対して、子供たちは
怯えて萎縮してしまったようだった。
そんな様子に気付いて、止めに入った
のはその男性職員だった。周りからは
『ちい先生』と呼ばれているらしい。
「ちぃ先生…いい先生だね。」
ちい先生のそんな様子を見て、カコ
は素直にそんな印象を受けていた。

別に聞かれたわけでもないんだけど、
カコはちい先生に今のボランティアを
初めた理由なんかをいろいろ話した。
子供を救う仕事がしたくてって。
「子供を救う仕事ってなに?別に
僕は救ってないよ。保護者の代わり
に世話をしてるだけ。人を救おう
だなんて誇大にすぎるよ。」
きっと悪い人じゃないんだと思う。
ただちょっと物言いが極端だったり、
不器用なんだろうなという感じだけど。
ほんと、決して悪いイメージはなかった。
だからこそ、この後カコは結構大きな
問題に直面することになってしまう。

おとお学園までカコを迎えに来た功太くん、
ちい先生の姿を見た途端彼は顔色を変えた。
カコが怯えてしまう程酷く冷たい目をした。
そして功太くんが自分にとって何者かに
気付いたちい先生は土下座しながら震え、
頭を下げたまま反省と謝罪を述べ続けた。
ちい先生と呼ばれた彼は、功太くんの
父親を殺した犯人だったんだという。
(どうしよう、どうしよう、怖い。
ちい先生じゃなくて、一方的に
人を傷つける功太くんが。)
カコは功太くんに対して恐怖を覚えた。
彼は被害者でちい先生は加害者、殺人犯。
そういう事実が言葉として頭では理解
出来ても、少しかもしれないけど自分が
知ったちい先生という存在とは繋がらず
戸惑ってしまった面もあったんだろう。
カコがポジティブに受け取り過ぎな面は
あるけど‥関わりが出来て少なからずその
人のいい面を見つけると、無条件にその人
を信じたいと思ってしまうフシがある。
それは彼女のいい所でもあるけど、今回に
限っては大事な人を傷つけることになる。
きちんと現状と功太くんの想いを考えて
動いてくれるといいんだけど‥不安だね。

「もうボランティアはやめてくれ。」
「あいつと関わってほしくないんだ。」
ボランティアをやめてほしい、あの男
と会わないでほしいという功太くんに、
やめたくない意思を示してさらには
ちい先生を擁護するような言い方を
するカコに、功太くんもついきつい
‥脅すような態度をとる功太くん。
「君はあいつのなにを知ってるんだ。
あいつが俺を刺そうとした時の顔を
知ってるのか、親父を殺したときの顔
を知ってんのか、知らねえだろなにも。」
そんな言葉や表情に怯えてしまいつつ、
わかってほしいと一生懸命伝えようと
するカコだったけど、それはなんの
解決にもならない言葉だったみたい。
無意識なのか大神さんとちい先生を
重ねてしまうカコ、頑張ってる大神
さんのことを支えて応援してくれた
功太くんに対し、ちい先生に対しても
似たような対応をと願うんだろうか。
赤の他人ならまだしも、当事者、
被害者にその加害者に向けてそう
考えろというのはあまりに酷い話だ。
功太くんからしたら、裏切られた
ような気持ちが大きかったと思う。
カコの気持ちが100%理解できない
わけではないけど、功太くんの経験や
気持ちを知った上でまだこんな態度を
取ってしまうのはワガママがすぎる。
きっと今功太くんは誰よりもカコに
味方でいてほしいと思うんだろうし。
功太くんを支えたい気持ち、ちい先生を
信じたい気持ち‥どっちも捨てられない。
結果功太くんを傷つけることになってる
って、どっちもなんて無理な時もある
って‥カコいい加減気付いてほしいよ。
ちょっとほんとにさ、今回は功太くん
しんどすぎて、つらすぎてきっつい。
JKにこれを理解しろって、そんなに
難しいことなんだろうか‥わかんね。

誰にも相談出来ず、自分の中で決着を
つけようとしたカコ、やめるって言いに
行くんだと言い聞かせておとお学園に
行くも、子供たちから必要とされれば
嬉しくて気付いたら普通に働いてた。
そんな中で、ちい先生が先日のことで
ここをやめようとしている話を聞く。
すぐすぐは無理でも、被害者の思いを
考えたらここに、近くにはいられない。
ちい先生はそう考えてこの場所から
消えようとしてくれているようだった。
加害者としては、そうするべきだろう。
というかそうしてくれるとありがたい。
今これはちい先生が悪い人かどうかと
いう以前の問題。彼がこんなふうに
被害者の気持ちを理解出来る存在で
心底良かったと思うけど、カコから
したらやっぱりいい人ってなるかな?
被害者が自分の大切な人で今苦しんでる
ってことに、カコはいつ気付くんだろう。
気付いてもまだ、ちい先生を擁護するの?
その日ボランティアから帰ったカコは
功太くんに電話をする。やめる話をしに
行ってきたこと、でもできなかったこと。
最終的に、もう少し考えさせてほしい
という結論を出したことを伝えた。
わざわざ傷つけるために連絡を入れた
ようなものになってしまったよね。
ああああ、上手くいかないなぁ‥
見てるこっちがイライラする 苦笑

「おかえりぃ!びっくりしたべ~?
お姉ちゃん恒例ドッキリ訪問だよ。」
話があると言って突然姉がやってきた。
結婚するって報告しに来たらしかった。
めでたい報告に来たのに弟は酷い顔色。
「功太どうした?なにがあったの。」
功太くんの顔を見ると、お姉さんは
真剣な表情になってそう聞いた。
「……ねーちゃん、眠い…眠りたい…。」
それから姉のいる家で功太くんは爆睡した。
きっとあの一件からずっと眠れない日々が
続いていたんだと思う。仕事の休憩中に
仮眠を取ろうとするも、父が殺された日の
悪夢を見てしまって目を覚ましてしまう。
姉がそばにいてくれるということで、
やっと安心して眠れたのかもしれない。
今の自分の状況を、いっぱいいっぱいに
なってしまってるってことすら認めたく
ないような‥仮に認めてしまったとして
嫁すら味方になってくれない現状で、
大丈夫だって言い聞かせるしか今の
功太くんには出来なかったのかもね。
「まだ許せない?」
そうお姉さんは問う。
答える描写はなかったけど、きっと
肯定、まだ許せないから苦しんでる。
事故でも事件でも、きっと被害者は
そう簡単に加害者を許せはしないだろう。
ましてや肉親を亡くしてしまったんだから。
そこに多くの後悔があったら余計にそうだ。
こういうのはすごく難しい問題だと思う。
遠く離れた所で生きているかもわからない
状況ならまだしも、すぐ近くで生きている
って知ってしまったら絶対辛いだろう。

ある時、おとお学園近隣からの苦情で
ちい先生が殺人犯だという苦情が入り
嫌がらせをされるようになってしまう。
ちい先生は事実を認め、早急に退所する
ことになった。心配になってか、大急ぎ
で施設に向かうと、ちょうど入り口から
ちい先生が出てきたところだった。
施設外の壁にはたくさんの張り紙と
『人殺しは出ていけ』とスプレーか
何かで大きく書かれていた。
その惨状に許せないと叫んだカコ。
でもそれに対してちい先生が言うのは、
カコがこれをした人たちにそう思うと
同じように、これをした人たちは自分
に対して許せないからしてるんだと言う。
正直なとこ悪意の有無はわからないけど、
子供たちを守ろうとしてることだろうと。
殺人は許されてはいけないことだと思う。
仮に刑務所に入り償っても、本人だけは
絶対に忘れてはいけない罪だと思うし、
被害者が許せないのも仕方のないこと。
特にちい先生のような場合なら、彼は
きっと心から反省してるんだろうけど、
これから先の人生でずっと背負い続けて
いかなきゃいけない過去だろうと思う。
無実のような扱いじゃ余計、遺族は
許せないって気持ち強そうだよね。
功太くん、どれだけ苦しんだらいい?
お願いだから、カコはいい加減今の
功太くんを理解し寄り添ってほしい。
~ひとこと~
功太くんが辛すぎて、14巻読んでる
間終始胃がもやもやしてしまってた。
そして申し訳ないことに、カコに対して
ちょっと殴りたくなった私を許して ←
功太くんの気持ちを知ってて、ちい先生
から話を聞いた上でもまだカコは続ける
っていう結論を出して功太くんに伝えた。
ちい先生はもういないかもしれないけど、
それでもカコがあの場所でボランティア
を続けていくってのは功太くんにとって
気分の悪い意外なにものでもないだろう。
ボランティアをやめることすら出来ない
のに、ちゃんと受け止めるから思ってる
こととかちゃんと言って、なんてカコは
言う‥残酷だ、なんて残酷な子なんだ。
カコの出した決断に対して諦めた
ような態度をとった功太くんに対し、
「わたしが…できることはないってこと…?」
そんなふうに言うカコに功太くんは
「…じゃあ、俺のものになれる?」
そう言ってた。どういう意味だろうね。
15巻はまだ先になるんで、しばらくは
この先のお話が読めなくてもやもや
した気持ちが続くと思うと心底辛い 笑
一体どんな結末が待っているのか‥
今はすごく苦しいけど、最終的には
2人のわだかまりが解け安心して笑い
合える2人に落ち着くことを願います。