著:三次マキ 先生

仙道を保護し始めてからのこと‥
これでもかってくらい仙道に対し
構い倒し、優しくしてくる彼らに、
どうしていいかわからないのかな?
時に嬉しそうな表情を見せることも
あるのに、どこか距離を作りたがる。
思えば‥最初の頃の仙道の印象は
悪い以外の何物でもなかったし、
周囲の態度だって厳しかったろう。
それが今みたいに変化したのは
確かに大神さんがこれまでたくさん
努力して変わってきたからだった。
そんな彼の思いを通して、カコ達
は行動に出ようと考えたんだから。
彼らの思いを素直に受け取れずに
いた仙道だけど、功太くんの言葉で
少し‥考え方が変わったようだった。
「あたし、なにを返せばいいんだろ…。」
彼らの思いに対しても、大神さんに
対しても何かを返したいと思う。
もしかしたら、何も返せないのに
受け取り続けるのが不安っていう
のも少なからずあったかもだけど‥
素直に受け取るだけでも、きっと
彼らは喜んでくれると思うんだ。
こうやってやっと人の優しさを
知って‥変わっていけたらいいな。

結構強引に巻き込まれるという形
だったかもしれないけど、カコ達
と一緒に過ごす仙道は何だかんだ
楽しいと感じている気がした。
でも‥仙道の誕生日会をやった
その日の夜、いや朝方かな??
仙道はカコに黙って家を出た。
「けっこう楽しかった」
そんな内容を大神さん宛に送った仙道。
それで嫌な予感でもしたのか‥大神さん
は仙道に電話をかける、でも繋がらない。
確認のためカコに電話をかけたことで、
初めて仙道が出ていったことを把握した。
父親に見張られていることも、きっと
わかった上で出てったんだろう。多分
決着をつけようとしたんじゃないかな。
「……もう関わらないでください…。
し、親権も放棄してください。わたし
を1人にしてくださいお願いします。」
でもそんな仙道の必死の言葉、この男
からしたら面倒なわがまま程度にしか
受け取ってもらえてないんだろうか。
強引に連れて行かれそうになって
恐怖や不安のせいか過呼吸気味に
なった仙道に対してこの男は‥
「…なんだ、まだそんなマネ
してるのか。そんな演技で人の
気を引こうとして浅ましい。
おまえの母親もそんな女だったよ。」
この男の言い分‥どこまでもクズ。
間違っても娘に対して言う言葉じゃ
ないだろうに‥ 私この場にいたら
この男に殴りかかってそうだわ 苦笑
恐怖のせいか、謝罪の言葉を口に
しようとした時、防犯アラームの
音が周囲に響いて、そこにいた
のは仙道を探しに来たカコだった。

カコは仙道を助けたかったんだろう。
助けられるつもりであの男の前に
出た‥でもカコはあの男に叩かれ
その拍子に壁に頭をぶつけ倒れた。
さらに迫ってくるその男を止めたのは
仙道だったらしい。言うことを聞く
からこの子は連れて行かないでと。
仙道はそのまま連れて
いかれてしまったようだ。
怪我をして病院に運ばれたカコは、
功太くんにそのことを伝える。
自分のせいだと、後悔しながら。
「わたしが被害届を出せば
あいつを逮捕できるよね?」
そう確認すると、自分にできる
ことなら何でもするというよう
に、堅く決心した表情を見せた。
明確な悪意に触れて、とても怖い思い
をした‥それでも仙道を助けたいと
いう思いでまっすぐ動けるのは、
カコの強さなんだろうなと思った。
仙道‥無事だといいんだけど。

捕まって、酷いことを言われ
髪まで切られ閉じ込められる。
それでも仙道は諦めていない。
でも‥もう大神さんに頼っちゃ
ダメだって思ってしまってた。
「平ちゃんの作った人生の邪魔だけ
はしちゃいけない。それがあたし
にできる一番の『お返し』だ。」
一体どうするつもりなんだろう。
まだわからないけど、あの男が
逮捕されて親子関係が切れるのが
きっと今出来うる最善だろうか。
でもそうするにもまずは、仙道が
この場所から逃げられるかだね。

この男も、最初は普通の父親だった。
でもそれが少しずつ壊れていった。
親子としてもとには戻れないけど‥
もしかしたら仙道の中ではわずかな
希望を持ち続けたかったのかな。
閉じ込められた部屋に火をつけた。
このまま閉じ込められていたら、
自分の命が危ない状況だった。
でも‥この男は彼女を助けること
なく、外に逃げていってしまった。

母親から話を聞いて、仙道が
いそうな場所に目処を付けた。
それを功太くんに連絡する大神さん。
「…痛くてつらくて死んだほうが
マシだって思ったときに思い浮かぶ
顔ってのがあるんだ。あいつが思い
浮かべるのはきっと俺なんだよ。」
その場にいくことを功太くんは止めた
けど、大神さんはそう言い電話を切る。
そして1人でその場所へ行ってしまう。
目的地の近くまで来るとそこにはあの
男がいて、勢いで殴りかかろうとして
しまう大神さんを止めたのは功太くん。
大慌てでそこに駆けつけたんだろうな。
「…自分の築いたものを無駄に
するな。すぐ警察が来る。」
‥そうしてすぐに、警察が駆けつけ
その男・仙道夏彦を無事逮捕した。
部屋から煙が出ているのを見つけ、
仙道も功太くんに無事救出された。
結果としては‥良かったんだけど、
大神さんはなんだか自分を責めたり
後悔やらなにやらで沈んでいる様子。
「心配される筋合いねえよ。
俺なんの役にも立ってねんだから。
…何もできねえ。いっつもそうだ。
なにもできなくて周りに迷惑かけて、
それなのにみんな俺を優しいって言う。
…俺は、いつも間違える。」
そんな大神さんに対して、功太くんは
まっすぐに言葉を、思いを伝える。
「負けるな。」
大神さんはボソボソとお礼を口にする
と、功太くんにお願いがあると言う。
その内容がわかるのは少し先 笑
でも大神さんはもう前を向いてる。

あの事件以降、仙道は一時的に
保護施設に入ることになった。
その後は養護施設に移動っていう
話だったけど‥もう移れたのかな?
事件が起きる前、みんなで遊園地に
行こうなんて話をしてたことがある。
カコも元気になり、仙道の方も
落ち着いたんだろう。みんなで
遊園地‥ではなくなったけど、
遊ぶことになり集まった。
テニスをしたり、セグウェイ乗ったり
‥そして最後にやってきたのが観覧車。
さすがに5人じゃ乗れないからと
3:2 、大神さんと仙道が乗った。
「平ちゃん、もうお兄ちゃん
やめてもいいよ。」
そこで、仙道がこう言った。
兄妹という形が彼を縛ってる
とか、そういう思いもあって
言ったことだったかもしれない。
「もう自由になって、自分
の幸せのために生きて。」
でもその言葉に、大神さんは
すごく優しい表情でこう返す。
「俺は俺なりにじぶんのために
生きてるよ。俺は幸せだよ。
おまえが助かって幸せだ。」
「血とか戸籍とか関係ねえよ。
もう妹だって認識しちまってんだ。
悪いけど一生変わんねえよ。」
大神さんの言葉を聞いて、仙道は
今度こそちゃんと前に進めるかも
しれないね。今度こそ自分のために
生きて、幸せになってもらわないと。
だから見ててと言って‥顔を隠す
ようにうつむいた仙道は、もしか
したら泣いていたのかもしれない。
ほんとにほんとに良かった !!
~ひとこと~
12巻でした。仙道のこと、ほんと
いろいろあったけどやっと解決だな
って‥ちょっと泣きそうになった。
多分親子の縁も切れて、これから
先はもう危ないことはないだろう。
少しでもその危険があるなら、きっと
また警察が警戒して助けてくれる。
仙道も大神さんも、そんな不安のない
日々を全力で楽しんでほしいと思う。
やっとスタートですね。
次巻はどういう話に繋がるのか、
またほんわかに戻るのかな‥?
心温まるお話が待っていることを願い
続けて13巻紹介させて頂きますね。