著:野々村朔 先生

「いいか、いつも通り、普通にしてろ。」
そんなことを言いだしたのは真琴。
姉や母親に勘ぐられたり引っかき
回されたりするのを防ぐためか、
そんなことを言ってきた真琴に対し
普通でいようとするあきらだけど…
真琴のちょっとした態度や行動で
いろいろ考えてしまって、普通が
何より難しい状態になってた 笑
こういう所見てると、あきらも
ちゃんと女の子だなーと思った。
そしてこの真琴の表情の理由は
後に明らかになったんだけど‥
表向きはいつも通りの『日常』に
戻ったように振る舞ってるけど、
あきらの態度にはやはり戸惑いが
見えて、それが自分のために変化
してきているものだとわかるから
真琴はそれが嬉しくて仕方がない。
そんな、笑顔だったみたいだ 笑
それに対してあきらは動揺する。
きっと今はそれでいいんだろうな。
真琴がこれまで待った分、真琴の
ことであきらは心乱されればいい。
決して悪い意味ではなく、意識して
気持ちと向き合うべき時が来たんだ。
まあ、そんな堅苦しいことは関係なしに
2人を眺めてるのが1番微笑ましいが 笑

中学に入学したばかりの頃、突然
女子から『男子』を求められだした
あきらは戸惑いを隠せなかった。
でもそれに対して真琴は、あきらは
そのままでいいんだと言ってくれた。
変わらないことを認めてくれた真琴の
存在が何よりも救いになったんだろう。
真琴から想いを告げられた後も、
あきらの中で変化した部分だって
きっとあるのにそれに明確な答えを
出せずにいるのは、変わらないまま
真琴との関係に固執しているのかも。
今が心地よければよいほど、変化を
拒む気持ちはよくわかる。それでも
変わることを拒んだままではいけない
所までもう変わり始めてるだろうし。
怖くても、少しずつでも頑張れあきら。
どれだけ真琴があきらの気持ちを最優先
に考えてくれてるからって限界はあるし、
自分の中でちゃんと答え出せるといいな。

真琴とのデートの日がやってきた。
結局以前のように本格的なおしゃれ
はしてこなかったけど、前に真琴が
プレゼントしたパンプスを履いてきた。
とっておきのとき用だと中々
履かなかったそれを今日履いた。
それだけでも、きっと真琴にとって
はとても嬉しかったろうと思った。
デートとはいっても、そこまで
コテコテな感じではなくあきらが
あきらのままに楽しめるようにと
真琴も寄り添ったものに思えた。
「『後は押すだけ』って言った
けどさ、無理させたいわけじゃない
から。俺らのペースで行こうぜ。」
真琴は優しい、どこまでも優しい。
あきらを何より大切に思ってくれて
ゆっくりあきらのペースに合わせて
くれようとしてる、そんな真琴だから
あきらは今少しずつ頑張れてるんだ。
そんな真琴の心遣いや思いをやっと
自覚して、真琴が喜ぶことをしたいって
あきらの中でも気持ちが動いた気がした。

真琴とのデートの途中、真琴が少し
あきらのそばを離れた時偶然あきらは
オガと会った。真琴を待つ間少し話し、
「久慈ってさ、結局のとこ
真琴のことどう思ってんの?」
そう聞かれ、あきらは即答できなかった。
変わっていないのなら幼なじみが答えだ。
頭の中にはそれが浮かぶのに、そう口に
出すことを躊躇してしまうあきらがいた。
その後のデートも、なんだかんだ楽しい
時間を過ごすも、時折何か考え込んでいる
表情を見せるあきらを真琴は見逃さない。
「お前があれこれ考えて……それが
しんどくていつもみたいに笑え
ないっていうならこないだ言った
ことは忘れてくれていい--」
真琴にそうに受け取らせてしまった。
あきらは慌てて言葉を遮って話し出す。
そして、オガに言われたことに対し
即答出来なかった、自分の気持ちが
変化しているようなわからないような‥
まだまだ自分の気持ちすら自覚
出来ていない、それを少しずつ
だけど理解しようと考えている。
ずっと一人考えていたことを伝えた。
待っててほしい、その結果振られる
ってこともないとは言い切れない。
それでも真琴はあきらの言葉に対し
少しだけ嬉しそうにわかったと答えた。
考えるのってきっと大変だともう。
でもそんなあきらのことをいつまでも
待ってくれてる真琴はもっと怖い。
不安を抱えながらも待ってくれてる。
ちゃんと、あきらなりの答えが
出せるといいね、頑張れあきら!!

あきらは真琴にバレンタインチョコを
渡そうと思って、さすがに店の売り場で
買う度胸はなかったようでネット購入。
そんなタイミングで友人達と鍋パーティ
をすることになったあきらだけど‥
「彼氏ってケンカ別れでもしたらそれ
っきり他人だもん、付き合う前の関係
に戻るのもやっぱ難しいしね。」
望美(友人)が彼氏とケンカ中だという
話から、そんな話題になってしまった。
まあ、そういうものなんだろうな。
友達に戻れるって人も中にはいるけど、
個人的にも難しいものと思ってしまう。
恋愛初心者で変化を恐れているふうな
あきらがこんな話を聞いてしまったら、
そりゃあ余計に怯んでしまうだろう。
そうしてバレンタイン当日、何とか
チョコを渡すことは出来たし真琴は
予想外の出来事にとっても喜んだ
表情を見せてくれたんだけど、直後。
そこからの変化を恐れて友チョコだ
などと後付けしてしまうあきらだった。

後輩達やコーチからも連絡をもらった
とかで、あきらは久々に高校時代の
バレー部の練習試合に顔を出した。
コーチとあきらが随分と仲が良さそうに
見えたようで、それを不安がってか真琴
も一緒に行くと言い出し女装で行った。
真琴は後輩たちからも随分人気があった。
そして中にはちょっと危ない雰囲気の子も。
バレンタインの日、あきらの家まで
押しかけてチョコを持ってきていた
女子達の中に彼女もいて、そこに
ちょうどサヤカ姿の真琴が現れた
ものだからチェックされたんだろう。
突然サヤカに話しかけてきたと思ったら、
なぜかコーチとも仲を押してくるんだ。
ちょっと本気で意味がわからない 苦笑
まるであなたのつけ入るすきはない
と釘を刺しに来ているように見えた。
真琴の態度に怯えたようで、彼女は
さっさと立ち去っていったんだけど、
彼女の目的はほんと何なんだろうか。
真琴ではなくあくまで女の格好をした
サヤカに釘を刺す必要なんてないよね。
そこは結局わからないままだった。
でもちょっと‥雲行き怪しいわ。

後輩ちゃん達の中には、コーチと
あきらの中を疑う者もいたようだ。
それで興味本位に問いただされる。
それに対して少しきつく反論した
あきらの言葉は、そばにいた真琴
にまで酷く突き刺さる言葉だった。
好きな人もいない、真琴のことも
好きなんかじゃないみたいにね。
翌日から、真琴は父親に会うために
ロスへ旅立っていってしまった。
いろいろ余計なことを考えすぎて
出てしまったあの言葉、傷ついた
表情をさせてしまったことも挽回
したいのに何も出来ないままに。
ケンカ別れなんかじゃないけど、
でもこのままじゃあ付き合うことも
幼なじみで居続けることもできない。
真琴が帰ってくるまでの間、
あきらは何を考えるだろうか。
真琴は大丈夫なんだろうか。
~ひとこと~
から回ってしまったね、いろいろと。
こんな気まずい状態からしばらくの間
会えない、状況はすごくよろしくない。
この先の彼らの物語がすぐに読めない
のがホントしんどいけど、次巻が
出るのを頑張ってまとうと思います。
多少時間はかかってしまってもいい、
お互いに気持ちを整理してちゃんと
向き合い話せるようになりますように。