著:麦芋 先生

片倉はようやく出来た同性のオタク仲間に
確認しておきたいことがあって質問した。
「シルヴィオはその…どんな
漫画でも読む……のか?」
本当に聞きたかったのはBLも
読むのかってことだろう。
「あ、しかしオレは
ヤオイは読むしません!」
片倉の仲間への憧れみたいのが
ガラガラと崩れていく音がした 笑
そこまでならどんまいってだけで
終わっちゃう話だったんだけどね。
片倉が質問してきた意図に気づいた
シルヴィオは優しい表情で語りだす。
彼の考え方や感情がすごく優しくて
温かくて彼の人間性が本当に魅力的だと
いうのがわかって、泣きそうになった。
まあ‥日本語で話すには難しすぎて
イタリア語だったんだろうね、全部 笑
だから桃も幸音も片倉も誰もシルヴィオの
話したことを理解してはいなかったけど。
もしちゃんと理解できたら、BL作品を
好む彼らなら泣いてしまいそうになる
ほど嬉しいんじゃないかなと思った。
読者にだけはしっかりと伝わる
最高のシーンを描いてくれた
麦芋先生に心から感謝した。

幸音は、一見流されやすそうに
見えるけれど実は全然そんなこと
なくてびっくりする程流されない。
幸音のそんな頑固さは私から見たら
決してぶれない芯があるからこそで
すごくかっこいいものに思えた。
でもずっとそうだった幸音が、
最近は盛大に振り回されている。
イタリアで出会ったあの日から
ずーっと振り回され続けてる 笑
最初は、イタリアで出会った日本人
だからってだけだと思ってたんだけど
日本に来てからもどうやら幸音に対して
だけ他の人への態度と少し違う気がする。
耐性がないから、余計に意識する部分も
あるのかもしれないけど‥でもやっぱり
幸音に対しては特別スキンシップが多い。
恥じらいもなく素直に伝えてくれる
女性への褒め言葉なんかも、なんだか
幸音に対してだけなんか多いんよね 笑
あれか?黒髪ロングが好きなのか?
ほむほむ大好きだったものね 笑
まだこの時点では私の勝手な想像です。
幸音からすると慣れてなすぎてテンパる
からやめてーって感じてるのかもだし。
でもシルヴィオはすごくいいヤツで幸音
もとても魅力的な女性だから、そんな2人
ならきっと素敵な関係になれると思った。

2.5次元の舞台当たったら最初は幸音を
誘うつもりでいた桃だけど、幸音は原作
を読んでなくて片倉は読んでるから誘う
なら片倉の方が‥と幸音にも言われて
片倉を誘って一緒に行くことになった。
でもこういう舞台、俳優さんを追って
原作知らない人が観に来ることも多いし
ほとんどが女性ファンだろうからって、
「物販にまで付き合わせるのも
悪いし…片倉は開場時間に間に合う
ように来てくれたらいいから。」
桃は最初そう言ってて、でも片倉には
すっごい嫌そうな顔されて断られた。
しっかり物販も並びたいって、ほんと
どこまでもしっかりオタクだよね 笑
‥というわけで女性客だらけの物販列
に並ぶことになって今に至るわけだが、
そんなタイミングで桃に母親から着信。
かけ直すためにほんの少し桃が片倉の
そばを離れていた間のことだった‥
「ねえアレ、男の人がいる~。」
「一人できたのかな?」
「もしかしてさぁ、グッズの転売ヤー?」
その後も散々酷いこと言われてた。
散々言われて‥片倉何も悪くないし
場違いも何もがっつりファンなのに。
片倉は優しすぎんよ‥悔しかった。
何も言えないし、でも悔しくて、
居心地悪くてしんどくて‥そうして
ようやく桃が戻って来た時、片倉は
ものすごく情緒不安定になってた。
その理由を周囲から聞こえてきた
声で把握すると、桃はそこまで配慮
できずそばを離れたことを後悔した。
周りの人にわかってほしくて
桃は片倉に舞台の話題を振る。
原作ファンなんだって伝わるように、
片倉がちゃんと舞台を楽しめるように。
周囲の誤解もとけたようだし、片倉も
元気を取り戻してくれたように思う。
桃‥めっちゃくちゃかっこいいなあ。
こんな同士をもてたらきっと幸せだ。
しんどいし苦しい経験だったと思うけど
桃がいる、すごく心強い同士がいるから
好きなものを好きでいることが辛いなんて
思わずに好きでい続けられたら良いな。
オタクとして‥ほんとそう思ったんだけど
それとは別に、このすぐ後に照れてるのか
なんなのか頬を赤くしてすごく複雑そうな
表情をしている片倉が描かれてるんです。
その意味がわかってくるのはまだ先で、
彼自身もわかってないみたいだった。
桃、すごくかっこよかったものね、
ものすごーく魅力的だったものね。
自分の好きなものに誇りを持ってるから
それを自分が好きなことにも誇りを持つ。
周りが何言ったって決してぶれない
芯があるのは桃も同じだなと思った。

いろいろありつつも無事観終わった舞台は
2人にとって最高のもので、終わった後は
お互いものすっごい弾丸トークしてた 笑
それから帰り道‥も桃はいろいろと思う
ところがあったんだけど失敗しちゃって、
いい加減ちゃんと謝りたかった学生時代の
ことは結局謝れないままで終わっていた。
この日そばを離れてしまったことは
謝ってたんだけどね、タイミングの
神様はちょっと意地悪なようでした。
桃が何を言いたかったか片倉は気づいて
ないだろうと思うけど、その後解散して
一人になった片倉が大騒ぎしてます 笑
高校時代2人が付き合ってた時は、多分
周りから言われてノリでみたいな部分が
大きかったと思うしきっと本当に好きで
付き合ってたわけじゃないからお互いに
程よい距離でいようとしてたと思うんだ。
だからこそ相手のことを知る機会だって
全然なかったろう‥知るきっかけになった
かもしれないところで自然消滅だったし。
大人になってから再会したからこそ、
それも当時桃が隠したかった趣味を把握
したところがスタートだったからこそ今
みたいな関係になれたわけで、お互いに
大好きなものを語る様子や嬉しそうな
表情も真剣な表情も知ることが出来た。
それを嬉しいって思って顔を真っ赤に
してしまうのはきっと友情以上の感情も
存在してるからだろうと思うけど。
ほんと‥あの時あの場所で再会する
ことができて幸運だったと思うよ。
さてね、この2人はこの先どうなるか。

舞台を観たあの日から、片倉は一週間
経ってもどこかすっきりしないモヤモヤ
した気持ちを抱えていて、もう一体何に
モヤついてるのかわからなくなってた 笑
そんな様子を見た同僚がつついたのか
片倉から話したのかはわからないけど、
昼休みそのモヤモヤの話をしたらしい。
「え~それもう好きなのでは?」
楽しくて嬉しくて、それだけなら
きっと何も悩む必要はないんだ。
「だからね、それでそんなに悩む
ことはないと思わない?その子だから
じゃないの?よく考えてみなよ。」
そう言われて一応考えてはみるも
わからん、とその時は答えが出なくて
ポンコツ発言しただけの片倉だった。
でもその後4人でコラボカラオケに
行った時気付かされることになる。
この日のコラボカラオケはシルヴィオ
以外の3人が好きな作品とのコラボで、
ソフトドリンクにランダムでキャラの
描かれたコースターがついてくる仕様。
推しが出るまで金を落とし続けるぞー
っていう日だったんだけど、片倉と幸音
は推しを引けたのに桃だけ全然引けず、
盛大に物欲センサーを察知されていた。
推しも何もないシルヴィオが代わりに
飲んでくれるも引けず、それとは別に
自分が飲みたかったソフトドリンクを
注文していた片倉がまさか‥引いた!!
そしてここに至る。
それはそれは嬉しかったんだろうよ。
でもこのタイミングで片倉に「すき」は
響きすぎるくらい響き渡ってしまった。
好きって言われて、こんなになる
のはもう好きってことなんだろう。
自覚しちゃったね、これから先、
彼は普通にいられるんだろうか。
ただでさえ桃は過去のことの申し訳なさ
から恋愛関連のワードに対してちょっと
テンパっちゃうしさ、片倉は今後違う
意味でテンパることになるのかな。
恋愛とは、非常に厄介なものである。
それだけじゃないのはわかるけど、
恋したことによって今まで友人と
して本気で楽しめていたことが
楽しめなくなるようなことだけは
ないといいなと、切実に願った。

気持ちを自覚した後も、なんや
かんやと彼らの集まりは続いてて
特に大きな変化はなくて安心した。
何も知らないシルヴィオがたまーに
恋愛に関する話題とか爆弾を投下して
ひやひやさせることはあったけど 笑
季節は冬、冬コミのために原稿を
進めながら桃は幸音に話していた。
「冬コミ終わったら『モモ』の
こととかをちゃんと…あの…
本当のことを言おうかなと…。」
好きなものに対してすごく真っ直ぐな
片倉を騙し続けるの、辛かったろうよ。
ちゃんと伝えなきゃいけないなって
桃なりに覚悟を決めたんだろうね。
そして昔のこともきちんと謝ろうって。
でもきっとこじらせすぎたんよね。
すごくわかるけど、そういう気持ち。
謝って後になってみれば、謝罪は
ただの自己満で相手からしたら余計
なことでしかなかったとかあるしさ。
片倉も結構こじらせるけど桃も大概。
これから先もオタ友として付き合って
いきたいなら、やっぱどちらの話も
ケリをつけておく必要はあると思う。
それで相手を傷つけてしまうってのは
きっと逃げたり騙したりしてしまった
時点でもう避けようのないことだろう。
傷つけてしまうのは辛いけど、その
辛さは自分が背負わないとだろうね。
嫌われても、避けられることになっても、
誠実に付き合いたいなら向き合うべきだ。
‥頑張れ桃、サークル活動に関して桃が
謝る時は幸音も一緒に謝ることになる。
片倉、行き止まりだけでなくて
シンメトリーのファンでもあるから
こちらもやっぱ不安はあるよね。
‥ずっと悩み続けて言い出せなかった
こと言い出す覚悟を決めたんだから、
片倉もう少しだけ待ってくれるかな。

待ってくれなかったーーーーー!!! 笑
いい加減コミケに行きたくて仕方ない
片倉は、シルヴィオに一緒に冬コミに
行ってくれないかとお願いしていた。
今回も相変わらず桃と幸音に上手く
言いくるめられた片倉は冬コミに行く
ことを断念せざるを得なくなって‥
ただ、シルヴィオと一緒だったら
「観光の付き添いって言える…
ということに俺は気付いた…。」
とか言い出しちゃってね、そんな
片倉にシルヴィオは優しかった。
外道、とか言いつつも一緒に行くと、
「オレがスズヤを守るしてみせます!!」
‥かっこいいかよシルヴィオ !! 笑
というわけでね、来ちゃったんです。
「東ホールだ!!行き止まり
さんのスペースに行くんだ!!」
そしてまっすぐに桃達の
いる場所を目指していた。
片倉の作家さんを想う気持ち、
すごく素敵だなって思ったんだ。
だから辿り着かせてあげたいと
思う気持ちも確かにあったけど、
それよりも会ってしまう‥って。
その頃桃と幸音は片倉の話をしてて
ちゃんと話さないとって言ってて、
でもこのコミケが終わる前にきっと
会ってしまう、覚悟やっと決めたのに。
本当にタイミングの神様は意地悪だ。
この後、向かった先で片倉は
桃を見つけてしまうことになる。
そのシーン、何度見ても心が痛くて
痛すぎて‥全然私のことじゃないのに
しんどくて逃げ出したくなっていた。
どうなっちゃうんかな、話をしたら
きっと最後まで聞いてくれただろう。
でもその前にバレてしまった現状で
何を言ってももうただの言いわけに
しか聞こえないんじゃないだろうか。
一番最悪な形になってしまった気がする。
~ひとこと~
わー‥‥逃げたい‥すみません
思いきりシーン引きずりました。
バレてしまった分には仕方がない。
やることはコミケが終わったら話す、
何も変わってないけど片倉は聞いて
くれるだろうか‥最後までちゃんと。
聞いてくれたら良いと思うけど、
それはもう桃達目線からの無茶な
ワガママでしかないのかもしれない。
どうなっても、もう桃達にはそれを
受け入れることしか出来ないのかな。
片倉にとってはいろんな意味でショック
というか、混乱が大きいだろうなと思う。
きっとすぐはまとまらないし、しばらく
の間は今まで通りとか絶対無理だろう。
時間がかかってもいいから、できるなら
前みたいに全力で好きなものを楽しんで
笑い合える彼らが戻ってこられるように。
それでは、また次巻までお待ち下さい。