著:池ジュン子 先生

師範の正体はやはり仙石の父親だ
ということがわりとすぐ判明した。
ある日姫の引っ越しの時のお礼だと
晩ごはんに誘われた藤くんだったが
そこには何とも不自然な空間が 笑
姫親子、仙石親子、そこに藤くん。
ほとんど会話のない食事で師範が
たまに口を開き会話を試みるが
仙石はぎこちない反応をした。
むしろ師範の会話の持っていき方も
ものすごく不自然で驚いたけど 笑
これまでも、師範としての彼には
しっぽを振って喜ぶ子犬のように
眩しい眼差しを向ける仙石なのに
彼を父親と認識するような発言を
すると酷くぎこちない反応だった。
あの感じだと、父親の方こそ娘と
どう接したらいいかわからないけど
仲良くしたくて頑張っているような
‥でもから回ってしまってその結果
ぎこちなくなってる気もしなくも
ないのだけれど、実際どうだろう。
もし想像通りなのだとしたら、
もしかしたら藤くんの存在が2人の
間のいい感じのクッションになって
良好な親子関係を築き直せないか‥
嫌い合っているわけではないのだから
きっと少しのきっかけとその気があれば
そんな変化も有り得るんじゃないかな。

師範が倒れた。本当はずっと
体調が良くなかったらしい。
ほとんどの原因がストレスのようだが
姫の父・怜人は師範にムリをさせない
ためそばで見張ってくれていたのかも。
でも結局倒れ入院することになった。
師範を心配した仙石は師範に対して
仕事をやめ療養に専念することを
提案するも、師範の方は仕事は関係
ないと言って聞く耳を持たなかった。
そんなふうにムリをして、いつか
母親のように突然死んでしまったら
なんて怖くなったのかもしれない。
あんなに強い師範でも、母親を死
から守ることが出来なかったのだ。
仙石も強くなったかもしれない。
けど、それでも怖いことがある。
一人ではどうにもできず苦しんで
しまうことだって沢山あるだろう。
失ってしまうのが怖いからこそ、
大切な存在をつくるということに
臆病になってしまってたみたい。
だから、藤くんに対して隠しようの
ないくらい恋心を抱いてしまってても
そこから先に進む覚悟が出来なかった
って部分も少なからずあったのかもね。
藤くんは無理に構おうとはしない、
でもそばにいる、1人じゃないって
教えてくれるみたいにずっとそばに。
仙石にとって藤くんの存在は大切
すぎて何より失うのが怖い存在に
なってしまってるのかもしれない。
でもそんな不安にならなくても
大丈夫なんだと教えてくれる人
でもあるんじゃないだろうか。
師範もなあ‥やっぱり何考えてるか
よくわからないけど大事な一人娘で
あることに違いはないんだと思うし、
もう少し向き合ってくれないかな‥

師範はあっという間に退院して、
すぐに日本を経つことになった。
「ねえ仙石さん、このままお別れ
でいいの? 親子として話したい
ことだってあるんじゃない?」
背中を押してくれたのは藤くんだった。
「あの、は…話したい事が、
ある…2人で………っ、パパ。」
パパ!!?笑
仙石さんの口から出るのは
全く想像しなかった言葉だ。
「エンジェル。」
すると更に予想外な言葉が
師範の口から出てくることに。
実はまだ仙石が幼い頃からの話、パパと
呼んでくれないと拗ねると師範は言った。
そしてその頃から娘のことをエンジェル
と呼んでいたらしく、師範としてでは
なく父親として接しようとすると彼と
してはこれが標準なのかもしれない。
仙石には受け入れが難しかった標準 笑
それを恥を覚悟で頑張って、ようやく
親子として会話をするに至れたようだ。
「臆病になるのはやめなさい。
怖い事なんて何もない、大事な
人が増えただけだ。そういう
不器用さは私そっくりだな。」
そう言って彼は娘を抱きしめた。
はっきりと、何か答えを求めての
会話ではなかったけれど、ようやく
親子として会話ができたことで
少しは仙石の気持ちにも整理が
ついたんじゃないかと思う。
それにきっと前に進む勇気も。
‥パパ呼びしなくとも、たまには
こうして会話できる親子になれたら
仙石としてはありがたいんだろうが、
まあそんな関係もあるんだろうね 笑

告白すると心に決めて、藤くんがして
くれたのと同じ方法での告白を用意
した‥その日はクリスマスでした。
藤宅で開かれるパーティーに呼ばれ
遊びに行ったものの、いつもの騒がしい
メンツでの集まりになったので中々
告白なんてする余裕もなく‥結局何も
できないままに帰宅することになった。
これまでの仙石さんなら今回もまた
だめだったと後悔して終わってたかも。
でもずっとそうやって先延ばしにして
きてしまったものを、今動かなきゃと
考えられるようになったのは、一体
何があったおかげだったろうね。
藤くんに会いたくて雪の中を走って、
すると不思議なことに走って向かう
先で滑って転んでいる藤くん発見 笑
パーティーでは渡しそびれていた
プレゼントを渡しに来たみたい。
手編みの白い手袋、それを見て
仙石さんは藤くんに告白‥という名の
宣戦布告をされた時のことを思い出す。
あの頃は恋愛なんてよくわからなかった。
だから未来自分が藤くんに恋をするなんて
想像することもなかったかもしれない。
でも仙石さんは勝負に負けた。
仙石さんは藤くんに恋をした。
「私は藤君が好きだ。」
‥やっと言えたね。
やっと、届いたね。

思いが通じ合って交際開始という
お話になると思っていたんですが、
「私は藤君の恋人ではないが。
だって君は七緒先輩と交際中だろう。」
まさかその話今も有効だったとは 笑
そんな理由で今の関係でも傍にいられる
から十分なんて仙石さんは言い出した。
でも藤くんはもちろん納得いかないし
仙石さんときちんとお付き合いがしたい。
そんな話をしている所に口を
挟んで来たのは問題の、七緒。
「そういう事なら、勝負だ。藤。」
そんなこんなで勝負の内容的には
藤くんの方が不利なものだったし
途中不安にもなったけど、七緒は
最初から藤くんを勝たせるために
勝負を挑んだのかもしれなかった。
悪ノリのようなきっかけで初めて
しまった名前だけの交際関係を解消
するための、けじめをつけるために。
藤くんが勝負に勝ったら七緒が一つ
命令を聞くという約束で始まって
藤くんが出した命令がこれだった。
‥なんて微笑ましいんだろう 笑
七緒ってすごく面倒なことが多い
人だとは思うけど、良い奴なんだ。
そういうところをきっと藤くんも
認めてるからこその言葉だろうな。
藤くんの言葉を聞くと、七緒と
仙石さんは顔を見合わせるとすごく
優しく嬉しそうな笑顔を見せた。
これで、一件落着ですね 笑

七緒との交際(?)関係は終わった
ものの、それじゃあお付き合いを
初めましょうって流れではない 笑
両想いだけど付き合ってはいない、
そんな状況で2人は初詣に来ていた。
そんな中でいろいろあり、仙石さん
なりに考えたことがあったみたい。
仙石さんは強い、でも強さではどう
にも出来ないことがたくさんあって
そんな時いつも藤くんに助けられて、
ずっと守られていたんだなって。
逆に藤くんが守られている時も
もちろんたくさんあったと思う。
そしてこれからも、どちらかでは
なくお互いに守り合える関係に。
今度こそ藤くんの告白は仙石さんに
受け入れられ交際が始まりました。
本当に少しずつ、2人のペースで、
時には回り道したって大丈夫だから
お互いの納得いく形で幸せであれ。
ところで、どうして2人がこんな体勢に
なっているかはぜひ、本編でご確認を 笑

お互いに恋愛初心者同士でこれから
どうしたらいいのか、どういうのが
恋人同士なのかと考えて迷走して
一瞬別れ話にまで発展しかけた 笑
今は仙石さんにとっては傍にいたいが
何より優先される気持ちのようだし、
こうやって藤くんのしたいことを少し
ずつしてみるのもいいかもしれない。
相変わらず男より男らしい仙石さんで
ちょっと笑ってしまったシーンだけど、
そう‥きっと少しずつでいいんです。
そのうち‥という憧れに近いものであろう
藤くんの発言を真顔で受け止める仙石さん。
‥男前すぎて困ったものだね 笑
このあとちょっとおもしろかったけど
結局キスはまだ少し先になりそうです。
それで良かったと思う、仙石さんは
こんな感じだし、藤くんだってまだ
早いと思ってることみたいだしね。
2人の進展を邪魔しそうな人も何人か
思いつくけど、この2人は本当に少し
ずつゆっくりがちょうどいいだろう。
2人で考えて、2人のペースで。
ゆっくり幸せを噛み締めたら良い。
~ひとこと~
めでたしめでたし~ってこの時点で
言いたくなってる私がおります 笑
だって長かったですよ、これまでが。
やっとお付き合いが始まったんです。
次巻で最終巻になりますが、一体
どんな終わり方をするんでしょう?
よかったらまたお付き合い下さい。