カカフカカ 第12巻【完】

著:石田拓実 先生

本行の態度や言動からこれはもう
亜希のことを好きだろうって感じ
なのにまだ違うと否定する本行に

「むしろ何が違うか教えて欲しい!」

何が違うのか、本行にとって好きって
どういうのなのか‥はっきりしない
曖昧なことばかり言い続ける本行に
亜希ははっきりした答えを求めた。

「そういう”好き”とかってのはもっと
“いいもの”っていうイメージが………。」

本行の亜希に対するものは、決して
いいものではなく汚いんだと言った。
その理由、詳細は亜希に嫌われるのを
怖がって話したがらない本行だけど、

「…言わないならもう
本行と口きかない。」

これで効果があるのはきっと
本行だからだろーなって思う 笑

ほんと渋々、嫌がりながらって感じ
だったけど本行は口を開いてくれた。

中学の時の亜希との例の一件の後
亜希は本行を避けるようになって、
でも一件の時の興奮とか衝動とかは
ずーっと本行の頭から離れなくて。

言葉でくくるのは難しいかも
しれないけど、本行みたいな
気持ちだってきっと好きの中の
1つだったんじゃないかなと思う。

そして本行の消化しきれなかった
その感情達を文章にして発散して
いたら認められてしまったのが
あの本行の小説だったみたい。

確かにこれ、好きでも何でもない
人が自分のことでこんなことを
考えてしてたってなったら嫌がる
ものなのかもしれないけど‥亜希
は本行のことが好きなんだよね。

汚いも何も、気持ち悪いも何も、
亜希にとっては下手したらちょっと
嬉しいことだったんじゃないかな。

本行の執着は明らかに中学生の頃の
亜希に対するもので、再会してから
添い寝なんかを続けてたものだから
今の亜希でも成り立‥つ?みたいに
一応なってはいるもののそれは少し
勘違いにも近いものだったと思う。

でもそんなんで、ライバルは昔の
自分ですとか言われても亜希的には
意味わからんだろうし困るよね 笑

「いやでも私だし。どっちにしろ。」

後半はかなり強引だったと思う 笑
でも、そういう曖昧な部分まで
ひっくるめて受け止める覚悟は
亜希にはとっくに出来てたのかも。

「本行が私へのそういう色々を
“好き”だと思いたいなら思えば
いいし、思いたくないなら
思わなくていいんだよ。」

最後にそう伝えると、本行は
試しになんて言いながら

「寺田さん、好き。」

と口にして、亜希はきっと予期して
いなかった言葉に顔を真っ赤にした。
そんな亜希を見て、なんだか満足した
みたいに嬉しそうに本行は笑ってた。

きっとまだなにか明確な答えが出た
ってわけじゃないのかもしれない。

でも、これでようやく本行がずっと
言いたくなくて否定し続けた気持ちの
正体もわかったし、本行の亜希への
気持ちも好きに近づいた気がした。

「――やっぱりもう解散したいん
だけど、このシェアハウス。」

本行と話したその日、隠すこと
なく不機嫌オーラを出す長谷から
決定事項として告げられたのは
シェアハウス終了のお知らせ。

まだ金銭的余裕がない亜希は今後
住む場所をどうするか悩んで‥

「―――俺と一緒にとかは、なし?」

そんな亜希には嬉しすぎる
提案を本行がしてくれた。

いいことづくめ‥そう思うけど
何か引っかかる気持ちがあった。

その後偶然会って少し話をする
ことになる元カレとの会話を経て
いろいろ考えて本行に返事をした。

いま本行と一緒に住むなんてことに
なったら、そもそも付き合ってる
わけでもないのに金銭的には甘えて
しまうことになりかねないし、逆に
生活面に関してはものすごく世話を
焼いてしまうことになるだろう。

そんなことで負い目を感じたり
逆に感じられたりっていうの
なしに、流されるでもなしに、
亜希にとってちゃんと向き合う
ために必要なことだったのかも。

まあ確かに、この状況で一緒に
住むなんてのは流される道への
第一歩って感じがすごいしね 笑

自分の中で一度キレイにして
進み直すのもいいかもって思う。

「仲良くなってこう!」

って言葉が効いたのか、本行も
いい表情で納得してくれた 笑

ひと月後には出ていくようにという話で
それぞれがこのシェアハウスを旅立つ
準備を進めていた頃長谷が熱を出した。

それに気付いた亜希が率先して看病
していたんだけど、相変わらず長谷の
本行に対する態度は辛辣なままだし
今に至っては亜希に対してもきつい。

わりと高熱で看病せずに放ってたら
心配になる状況なのにお粥を用意して
くれた亜希を部屋から追い出したがる。

「病人に人権も発言権もないんで
放っといてほしかったらとっとと
元気になってください。」

長谷の気持ちもわからんでもないけど
正直この状況では亜希に賛成だった 笑

母親ともいろいろあるみたいだし、
そんなストレスもあっての熱かもな。

1年以内に結婚しないならここを出て
いけって言われてるとかいう話も
あったし、亜希との話は白紙だし。

「――まぁその辺はまた適当な女探すよ。」

一応お粥だけは食べながらも、拗ねた
ようないろいろこじらせてるみたいな
態度や言動を取り続ける長谷だった。

そんな長谷に亜希が伝えたことは、
長谷自身これまで考えたことも
なかったことのようだった。

母親はここに住まわせたくて、
でも結婚もさせたいからこんな
条件をつけてきてて、長谷は母親の
いいなりになんてって思いながらも
なんだかんだ乗せられたレールから
出ることが出来ずにいたってこと。

シェアハウスは解散して、適当な
女性を見つけて結婚してここに住む
っていうつもりだったのかもしれない
けど、亜希の一言で他の選択肢も
あったことに初めて気付かされた。

また誰かを好きになれるかも
しれない、先のことはわからない。

「――うん、だから、適当なの
探すとか言わないでほしいです。」

自由にやってるつもりで実は今も
縛られたままでいた長谷が本当の
意味で自分の道を歩くための道を
教えてくれるのはいつも亜希だな。

この先はわからないけど、いい
変化のきっかけになればいいね。

「寺田さんは健全よね?ミもココロも。」

この言葉の意味する真相は謎のまま
だが、金銭的に余裕のない亜希でも
住める金額の物件をあかりさんの
紹介で無事見つけることができた。

‥事故物件だったんだろうけど 笑
勝手にテレビがついたりするらしい
けど亜希はあまり気にしていない
ようで、まあ大丈夫そうだった。

引っ越し作業を本行とあかりさん
が手伝ってくれて‥あかりさんは
とっくに帰ったのに気付くとまだ
本行はそこにいて、その後のこと。

付き合ってなくても添い寝とかそう
いうのは今も続いているようで。
その最中、本当に突然本行は言う。

今回は試しでもなんでもなくて
心からの気持ちを伝えてくれた
んだと思う‥亜希を好きだって。

「終わっちゃった、寺田さんのせいで。」

なんて、本行に嫌な顔をされる
ことになる亜希だったけど、あの
タイミングでそんな亜希が喜ぶ
こと言った本行のせいと思う 笑

これで付き合うことになったとか
そういうわけではなさそうだけど
焦らなくてもきっと2人はずっと
一緒にいるんだろうとは思った。

お互いがお互いを好きでいるなら
きっと2人のペースでいいよね。

亜希の部屋はあかりさんの住む
場所とは結構近くなんだけど、
本行も同棲の話は断られたけど
亜希のそばにいたいんだよね。

シェアハウス解散期限ぎりぎりまで
粘って周辺の物件を探していた結果
亜希の部屋の真上に越してきた。

頑張ったわね本行、おめでとう 笑

そんなこんなで、あの家を出てからも
亜希とあかりさん、本行はそこそこな
頻度で会っては一緒にご飯を食べたり
してにぎやかに過ごす日々が続いていた。

ただ一人、亜希がこれ以上考えるべき
ではないかもしれないけど、やはり
長谷だけがいないってことは多少
なりとも亜希の心に引っかかってて‥

亜希がここに住み始めてから一月が
経ったある日のこと、アパート下で
すれ違ったのは見覚えのある人 笑

「一昨日越してきたから、
5階の角部屋に。」

亜希に言われた言葉を受けて長谷
なりにいろいろ考えたんだろうね。
本当にあの家を出ることにしたんだ。

でも、亜希や本行がここに住んでるって
知った上であえてここを選んだ長谷は
亜希を諦めるのはまだやめたみたい 笑

亜希に対しては普通の態度をとる
ようになった長谷だけど、相変わらず
本行に対して、きつい、こっわい。

亜希と本行が付き合って、結婚して
ってとこまでいかない限り‥いや
もしかしたらそれですら他に好きな
人ができない限りは亜希を好きで
い続けるつもりかもしれないね 笑

頑張れ本行~、負けんなよ 笑
そして長谷は長谷で、いつかは
自分の幸せをちゃんと見つけて
前に進めたらいいなって思います。

「おまえ自分からは何もしないでただ
ウジウジしてただけでそれで全部相手が
頑張って色々乗り越えて受け入れて
くれるとか、そんなヒロイン気取りが
いつまでも許されると思うなよ。」

そんな言葉の後に、長谷は本行の
耳元で「おまえはまたたたなくなる」
って呪いの言葉を告げられたらしい 笑

でもそんな悩みも解決は早そうだ。
亜希がそばにいて、亜希にだけ
反応するならそれで問題ないと
本行が言っているみたいだから。

特に深い意味はなかったんだろう
けどね、これから先もずっと亜希と
一緒にいるっていう、亜希以外ない
っていうプロポーズみたいに聞こえた。

この先どう変化するか、どう変えて
いくかは全て自分次第、可か不可か
亜希はもう流されるだけではなく
自分の意志で生きていけるだろう。

本行とも、幸せになってほしいね。

~ひとこと~

カカフカカ最終巻でしたーー!!

はっきり付き合うとかいう所まで進まない
タイプのお話だったけど、亜希と本行が
今の状況を「可」としたんだからこれは
これでいいんだろうなって思います。

キレイなばかりじゃない、欲だって
あるしそれだけじゃない気持ちもある。
流されてしまうことだってきっとある。

決してそれが間違いってわけじゃない。
でもそんな現状が自分にとって可なら
それでいいし、長谷の場合は不可だと
思いながらもそれを続けちゃったから
あんなふうにこじれたのかなと思った。

可も不可も自分次第、自分でこれで
いいんだって思える人生を歩んで
いきたいなと思えたお話でした。