著:石田拓実 先生

「…確かに私本行のことすきなの
やめるって言ったし今もそのつもり
だけど、そんなの『ハイやめます』
ってすぐにやめれるもんでもないし。
―なのにそこにこんな火力高めの
連続攻撃くらってたまったもんじゃ
ないっていうかさぁ!……いや、もう
ほんと無理。これであと数時間
とか耐えられる気が………。」
脱衣所、鍵が壊れて出られない。
そんな狭い空間に亜希と本行は
閉じ込められることになった。
亜希なりにいろいろ考えたろうし
この場を切り抜ける努力をしていた。
一先ず変な空気にならないようにと。
(さわりたいな………)
そんな衝動と戦いながら、自分は長谷と
付き合ってるからこんな気持ち持っちゃ
ダメ、触れようとしちゃダメなんだ。
心のなかではわかっててもいうことを
衝動を抑えられず、つい本行にその
想いをぶつける、でもこれが逆効果。
亜希はダメな理由に長谷の名前を出す。
きっとこの一言がダメだったんだろう。
すんでのところであかりが帰ってきて
なんとかこの場は何もなく収まった‥
けど、もう亜希さん気持ちぶれぶれ。
こういうハプニングで気持ちがぶれて
しまうくらいに、まだ彼女は本行の
こと好きだってことなんだろうなあ‥

(もしかしたら、今私が”そう
いう意味で求められること”に
ひどく飢えてるからなんじゃ)
本行に対してあそこまで触れたい
気持ちを抑えられなくなった理由、
長谷がそういう行為を拒絶すること、
そしてあの酷く酔って帰ってきた日の
噂のこともあってのことだったのかな。
ちゃんと長谷に確認しないといけない。
「やっぱり私は本行のこと好きなん
だと、改めて強く思い知りました。」
そう前フリした後で、亜希は長谷に
聞きたいことがあると話を続けた。
噂の内容は、長谷が女の子をお持ち
帰りしたというもので、それを広めた
のはそのお持ち帰りされた女性だった。
あの夜の様子に違和感を覚えたこと、
そんな女性の噂をあかりに聞いたこと。
その真実を聞きたいと伝えると‥
最初は誤魔化そうとしたのかもね。
でも、前に亜希を騙すようなこと
もうしないって約束していたから
そこはもう曲げたくなかったのかな。
長谷は、ただの排泄行為だと言った。
それが世間的に言う浮気だとしても
彼にとってはただの排泄行為だと。
そんなんじゃ彼女は納得しないと
わかってても、この時長谷にはそう
としか言いようがなかったのかもね。
長谷が何を思ってそんな行動に出た
かはやっぱりはっきりしていなくて、
でも亜希のことを好きなのは確かで。
なんだろう‥いろいろわかんない。

排泄行為排泄行為としつこいので
少々話の趣旨が脱線したけれど、
とにかく、亜希は言いたかった。
「長谷さん、私聖人でも
聖母でもないんです。」
最近亜希をまるでそんな存在のような
扱いをしている長谷に対して、亜希は
はっきりと現実を見てもらおうとした。
本当なら言いたくないであろう自分の
きれいじゃない部分、沢山伝えてた。
後になってうわーってなる程のね 笑
言葉にするとわりとろくでもなかった。
でもそれを自分で口にするのって結構
勇気のいることだっただろうとも思う。
でもそこまでして亜希は長谷に自分は
普通の女であると伝えた。まずそこから
ちゃんと気づいてくれないと長谷の亜希に
対する扱いは改善されることはないだろう。
言いたいこと言って、ほんと散々
言いまくった末亜希は判断を委ねた。
別れたとして、その後本行のところに
行くのかと聞かれた返事はわからない。
亜希、ほんとに全然その先のことまでは
考えてなかったみたい‥今後どうなるに
しろ、今この問題を解決しておかないと
って思って勇気を出したのかもしれない。
言いたいこと言って亜希は立ち去る。
彼女なりの考えがあってのことだけど
ここまでのことがあってまだ長谷を
好きでいられるのはすごいと思った。
それにやっぱり、これまで長谷に
群がってきてた女の子達とは違う、
そういう意味では特別なんだろう。
(寺田さん………
寺田さん、は……。)
長谷は散々言われて、少しずつだけど
自分が彼女を聖母みたいに思っていた
ことに気づいたかな?違うって気づいた?
きっとそこら辺のことを整理するには
ちょっと時間が必要かもしれないね。
ゆっくり時間がかかってもいいから、
長谷が正常な判断をできることを願う。

あの日から後長谷を見かけていない。
家にも全く帰ってきてないらしかった。
その間、本行が亜希をトランプ・UNO
・ジェンガなどをやろうと誘ってくる
謎行動なども見られたわけだが(断った)
そんなある日、本行の本の関係で
長谷の職場(出版社?)に行ったのかな?
そこで本行は長谷と偶然遭遇して‥
珍しく強引な行動に出た本行により
なぜか2人で居酒屋で話すことに 笑
本行も長谷のこと心配してたみたい
だし、話すいい機会だったろうね。
あとあの噂、お持ち帰り事件の
真相も気になっていたみたいだし
そこら辺の話とかをいろいろと。
「お前が小説できたとか言うから……。」
「そんでもう俺には
許可求めないとか………。」
きっかけはそれだったか。
亜希はそういう行為を求めていて、
本行に邪魔される前にちゃんとって。
それで、あの旅行の時とかも本当は
亜希とそういう行為に及ぶつもりで、
でもできなくて、どうしても無理で。
「だから、試した。他で
ならできるのかどうか。」
そういう行為に対しては勿論、それ
以外でも確実に亜希を繋ぎ止めておく
ために彼なりに必死に頑張ったけど、
それがちゃんと亜希に届くことはなく。
ただひたすら焦ってたんだろう。
焦って、疲れて、酔っ払って、
それで間違えてしまったのね。
いっぱいいっぱいだったんだな‥
その結果、亜希とは出来なかったのに
その女とは出来て最悪の気分になった。
「あんな奴とならできたっていう事実が
どうしようもなく気持ち悪くて、相手も自分
も何もかも気持ち悪くて吐きそうだった。」
‥焦り過ぎだよ、長谷。
もっときっと、いくらでも
方法なんてあっただろうに。

「とりあえずハセにとってはやる
ってことがよくない………悪いモノ
だってことは何となくわかった。」
「そういうハセ、そもそも
女のひと嫌いだもんね。」
お互いだいぶ酔っ払っているようだ。
そうでもなきゃ、こんな話長谷の口
から出たりはしなかっただろうしね。
でもそれを一通り聞くと本行は
そんなことを口にしていた。
女性に対して長谷が抱く感情は、何だ
ろうね‥本行いわく「不安」「脅威」
「蔑視」「こわい」「不快」とにかく
決してプラスではない感情なのだろう。
あくまでの上の発言は長谷の言葉から
本行が感じた客観的なものだったけど
きっとそういうことなんだと思った。
長谷自身気づいていないんだろうけど
そういうことだというなら納得だった。
この後、だいぶ酔いが回り始めていた
本行の話の方向は少しずつズレていき‥
「俺は寺田さんと親しくなりたい。」
付き合っていたこともそういう行為に
及んだこともあるのに親しくない 笑
現状はそういうことなんだろうか‥
この間のトランプとかのお誘いは、
自分が(あかりに)やってもらって
嬉しかったことを亜希にやることで
親しくなろうとしていたんだな 笑
一先ず話はそれて、居酒屋は閉店
時間になり、この会話は終了した。

その日長谷と別れて本行が家に帰ると玄関先
に亜希が倒れて‥性格には横たわっていた。
ぎっくり腰らしい、可哀相に。
一人ではどうも出来ずそのまま横になって
いたらしく、本行が帰ってきたことで支えて
もらってやっとベッドに辿りついた亜希。
玄関先からベッドまで小一時間 笑
いや、ほんと大変だなぎっくり腰。
「まことに遺憾ではあるんですが、
最低2日程すんませんが本行に
介助をお願いしたいです…!!」
あかりは仕事が忙しく、長谷は
家にすら帰ってこないという現状。
小説も書き終えしばらくは家にいて
時間もある本行は、介助役として
最適だったろう‥そんなお願いに
本行は心底嬉しそうな顔を見せた。
きっと長谷に話していた、親しく
なりたいの延長線上なのかもね。
数日経ち、なんとか立ち上がって、
動けるようになった亜希は本行に
助けてもらいながら料理を作った。
動けない間、小説の話になって
もしかして嫌われてる??なんて
思考に陥るも、親しくなりたい
とも言われ混乱する亜希だったが、
料理をしながらこれまでの恋人の
話なんかを聞いたりして、納得。
本行、長谷と亜希は親しいって
言ってた、本行の思う親しいって
一体どういうものなんだろうか。

「……………………何か嫌だった。」
他愛もない会話の中、昔の恋人って
話の中に出てきたのは亜希の前の
恋人の話だった。亜希は気づいては
いなかっただろうけど、本行は偶然
亜希とその人が一緒にいるのを目撃。
確かに、その頃の亜希はこんなふう
だったのかもしれない。へこへこ
して、相手を伺ってばかりの態度。
本行からしたら、そんな亜希は
自分の知ってる彼女じゃないって
違和感を持ってしまっただろうな。
そしてそれを見て、嫌だと感じた。
その理由が何だったのかはまだ
はっきりしないけど、でもその後
亜希は気になることに気がついた。
本行が言う、その目撃した時が2年前。
そして本行がたたなくなったって話を
していたのも、ここ2年ほどの話で。
その時期が重なっているのは偶然?
それとも、ずっとたたなかったのに
亜希に対しては反応する‥びっくり
するぐらい。原因が亜希に関する
ことだったんだというなら‥納得。
もしかしたら、本行自身気づいて
なかったかもだけどずっと亜希の
ことを好きでいたのかもしれない。
そんな彼女が、知らない男の隣で
へこへこしてて‥複雑な気持ちに
なってしまったのかもしれない。
なんて、ただ私が思っただけの
ことですが‥真相が気なります。
~ひとこと~
長谷はずっと自分の気持ちに答えを
出そうと考えていて、ここしばらく
ずっとホテル生活をしているらしい。
でも、ぎっくり腰の連絡をもらって
そろそろ帰ろうとはしているらしい。
そっちがまだ保留になってる状況で、
本行のことですごく気になるお話が
出てきてしまった‥続刊、はよ 笑
めっちゃ気になる所で終わりますね。
よかったらまたお付き合い下さい。