星野、目をつぶって。 第11巻

著:永椎晃平 先生

金もなく行く宛も定まらない
小早川に加納と松方何も聞かずに
ホテルの同室に一晩泊めた。

いろいろと考えたんだと思う。
部屋の隅で涙を流しながら
小早川は眠りについていた。

朝になると松方は出かけていて
小早川は加納と2人残される。

一切の事情を話していない状態
だったけど、こんな所まで来た
理由は星野だってことくらいは
言い当てられてしまって‥加納は
一緒に星野を捜し回ってくれた。

そんな中‥何があったのかを話す。

「自分で選んでるつもりだったのに…
星野…の…秘密にしようって言葉に
甘えてた。ずっと…ひとの言葉に
乗っかることしかしてこなかった…。」

小早川の『違う』はこういうことを
感じていたから出た言葉だったのかな。

星野の言葉に甘えていろいろと
ちゃんとしなきゃいけないことを
後回しにしてきたんだろう‥その
つけが今回ってきてるんだと思う。
それも‥最悪な内容に変化して。

一通り事情を話した後、松方や
加納を傷付けたくなかったのは
本心‥なんて言葉に加納は反応。

思いっきり殴りかかった。

「バーーーーーッカじゃねーーーの!?」

全ては甘え‥確かにそうだわ。
後悔してるんだったら今こんな
とこで落ち込んでないで本気で
考えて動き回るべきだろうな。

有耶無耶にしてきた返事だって、
ちゃんと答えを出さないといけない。

逃げて甘えてはもうやめよう。
向き合わなきゃ何も変わらない。

加納の立場でこんな話聞かさせるん
絶対辛かったと思うんだよ‥それ
でもこーやって喝入れて背中押して
くれる‥ほんといいやつなんだよね。

加納との話がついた頃に‥突然
知らない番号からの着信があった。
その相手は、いなくなってから一切
連絡が取れなくなっていた弓削先生。

彼女からの呼び出しであって話を
することになると、星野が先生の
元にいるということがわかった。

でも会わせてという話をすると
次から次へと話をそらして‥

「そんなまでして……
小早川くんがみーちゃんを
必要とする理由って………何?」

「帰ってくれないかな。
みーちゃんのことは諦めて。」

その理由は先生の星野への依存。
このままではいけないと離れて
頑張ってみることにしたけど、
やっぱり全然上手くいかない。

だから返してほしいなんて言う。
確かに星野は今苦しんでる。
このまま先生の所にいれば余計な
ことも考えること悩むことなく楽
に生きていられるかも知れない。

でもきっとそれだけじゃないよね。
星野は小早川を嫌いで離れたわけ
じゃないんだ、このまま一緒にいて
小早川の足を引っ張りたくなくて
離れた‥きっと好きなままだった。

学校で過ごした時間には楽しい
時間だって山ほどあったと思う。

それら全てを捨てて逃げて‥星野は
そんなんで幸せになれると思えない。

でも‥きっと小早川はこれ以上
星野を苦しめたくなかったんだね。
自分が出来ることは、もうこのまま
会わずに去っていくことって考えた。

「星野に…………よろしく
言っておいてください。」

これじゃきっと何も解決しないのに。

弓削先生との話を終えると、先生が
連絡して迎えに来てくれた松方に
言われるがままに付いてった先‥
そこは彼女の担当がいる編集社だ。

今から原稿を持ってきたんだろう。
1人にすると暴走しそうだからと
心配されて連れてこられたらしい。

「…厳しい…と思います。」

担当さんにはそう言われ、今は
学生生活を大事にしてまた未来に
もっと面白い作品を‥なんてこと
まで言われて‥しばらく黙ってた
松方は突然立ち上がって叫んだ。

編集さんは困った様子を見せただけ‥

「僕にも読ませてくれる?」

松方の声を聞いて、ひょいっと横
から台本を取り上げた男性がいた。

彼は原稿を読んで、少し話をして‥

「とても面白かった!これから
もいい漫画を描いて下さい。」

この漫画を面白いと受け取ってくれた。
これまでの松方の漫画には、強烈な
メッセージ性が感じられたらしい。

昔雑誌に乗ったのは、虐められてた
頃だったろうから随分と残酷な内容
が多かったんだろうけど‥今回のは
小早川のためだって言ってたよね。

実際に審査にかけてどうなるかは
まだわからない‥それでも、松方
の必死な思いを受けて、面白いと
評価してくれることがきっとこの時
必要だったんだろう‥彼・編集長は
それに応えてくれたのかも知れない。

編集長の言葉を受けて、先に社を
出てしまった小早川を大急ぎで
追いかけていった松方は言った。

「やった!!私!!掲載!!春…
私の漫画!!載るからっ!!!」

「すごい!?私は!!すごい!?」

松方の言動の意味がよくわからず混乱
しつつも心から『すごい‥』と答えた。

全ては小早川の背中を押すためだった。
彼女のしてきたことの意味はこれだった。

「キミは…すごい!!他人の顔色
なんて!!都合なんて考えるな!!
自分を信じて……走れ!!!」

ほんとだよ、負けてんじゃないよ。

小早川‥ほんと彼は幸せものだ。
へこたれそうな時怒ってくれる人、
背中を強く押してくれる人がいる。

自分の気持ちにモヤを懸けて隠し
たって、きっとずっと心に残る。
それこそ、小学校の時の加納との
話みたいにずっと後悔は残る。

もう‥そんなのダメでしょ。
思い切り、ぶつかってこいよ。

加納が弓削先生を尾行して居場所
を突き止めてくれた。2人に背中を
押されて、小早川はその場所へ走る。

松方は、泣き顔を見せないように
必死に我慢して彼を見送った。

彼女の部屋に、星野はいた。でも
窓から逃げられて走って走って…

「来ないでッ!!!」

そう叫びながら橋から川に飛ぼう
とする体勢をとった星野を見て‥

小早川のほうが川に飛び込んだ 笑
そしてそれを見て星野も飛び込んだ。

飛び込んでもなお‥ネガティブな
発言を続けた星野だったけど‥

「付き合ってやるよ、どこ
まで逃げ回っても最後まで。」

彼の言葉にしばらくバカバカ言った末‥

「……小早川……ありがとう。」

きっとまだまだ不安はあるだろう。
それでも、小早川の言葉、思いは
星野にとって強い力になるはず。

怖いよね‥でも大丈夫だから、
絶対1人になんてならないから。

小早川と弓削先生‥どうして彼は先生の
言うことだからと言って頼まれたことを
受けてたか、先生と小早川に何があった
のか‥実は描かれてたんだけどこれまで
ちゃんと説明はしてこなかったですね。

ただただつまらなくて居場所がなかった
学校に、先生が声をかけてくれて話を
してくれたことで居場所ができたんだよ。

小早川にとって彼女は恩人だった。
きっと憧れていた部分もあったろう。

そういうこと、面と向かっていう
ことなんてなかったんだろうけど‥

「ありがとう…ございました…!」

そう言って、頭を下げた。

~ひとこと~

弓削先生にちょっと睨まれながらも、
無事小早川は星野を連れて帰ることに。

‥きっと大変なのはこれからだろう。
正直‥莉穂に関してが1番不安。あんな
顔するとまでは思ってなかったから。

星野と小早川‥そしてそれ以外にだって
解ってくれる人はたくさんいるはず。

星野は1人なんかにはならないよ。
大丈夫だから‥諦めず戦って!!

それではまた次巻で☆