星野、目をつぶって。 第10巻

著:永椎晃平 先生

これまで、加納はいろいろと努力して
‥というか性格なのかもしれないけど
気がつくと多くの人に囲まれ頼られる
人気者へと変化していた‥一見は。

加納を見習ってか、漫研の2人は誠意
を見せ松方の手伝いをするようになる。

少しずつだが悪くない変化を起こして
いっていたはずだけどそう甘くない。
もうちょっとくらい甘くてもいいと
思うんだけど‥嫌がらせが始まった。

下駄箱に詰め込まれるゴミ、ボロボロ
に破かれ汚されたノートや教科書、靴
の中には画鋲、ノートに描かれた暴言。

変わった‥もうあの頃とは違うんだ。
今はこんなことより向き合わないと
いけないことがあるんだからと自分
に言い聞かせても、過去のトラウマは
一度蘇ってしまえば足が竦んでしまう。

行く先々で嫌がらせをされ、それを
ただ片付けることしか出来なかった
加納‥口では強がりみたいなことを
言うくせにひどく凹んだ様子を見て‥

随分前に加納達に水をかけられた
あの日のように、今度は松方が
加納に思い切り水をぶっかけた。

さすがに反抗してくる加納だけど‥
これが自分が今までしてきたこと
だって、それだけは気づけたろうな。

「もし…本当にその気(漫画を手伝う気)
があるなら、新しい自分になったって
あの言葉、死んでも嘘にしないで。」

最後にそんな言葉を言い残して、
自分も水浸しになったまま松方は
その場を去っていった‥松方、
もう加納のこと認めてるんだろう。

好きとか嫌いなら嫌いかもしれない。
それでも互いに認めてる部分がある
から成り立つ関係ってのもあるよね。
加納‥やっと認められたのに、そんな
簡単にダメになったりしないよね?

加納に嫌がらせをしていたのは、
つい最近まで加納を取り巻いて
いた集団の一部だったようだ。

その理由も‥くだらないものだ。
単に気に入らなかったんだろう。
彼女の無駄に高そうなプライドを
パキッと折っちゃったんだろうな 笑

「テンチューよテンチュー。」

‥こんな理由で人をいじめる人、
ほんと何様なんだろうねって思う。

そいつの背後に突然現れた松方‥
何をするかと思えば突然墨汁を
そいつの頭上からぶっかけた 笑

うわぁああああああ wwwww
びっくりしたぁあああ www

松方‥随分強くなったな‥いや、
最初っからこっちが素なのか。
自分のためだったらきっとこんな
面倒なことしなかったと思うんだ。

自分が認めた相手のためだから‥
あとは素直に何も反抗しない加納に
ムカついた分の怒りもぶつけてる
ように見えてちょっと笑ったけど 笑

こんな形で‥加納は初めて松方の
漫画を手伝うことを許可された。

いろいろあったけど、ほんと‥
良かった。加納にとっては、昔誰も
助けてくれなかったあの日の自分の
ことも守ってくれたように感じた
かも知れない‥もう大丈夫だね。

同日、墨汁をかぶった彼女は帰り道
人を集めて仕返ししようなんて企む
彼女の頭上から一発ごつんっ!!!笑

殴ったんかな?笑
元加納グループの2人だった。

昔同じようなことをしていた。
でも今はそれを反省してるって、
だからこそ手を出したんだって。

加納が松方の近くにいるように
なって、このグループの子達とは
全然一緒にいることがなくなって‥

それを寂しいと思いつつも今も
仲間だって思っているんだろうな。

過去は変わらない‥でもその後の
加納の努力は、みんなにちゃんと
届いてるってわかって嬉しかった。

小早川がバイトをしていることは
学校に許可をもらってないから
内緒なんだけど、生徒連中の中
では大分広まってる話のようで‥

ある日随分と大人数が小早川が
働いてるのを見に‥なんて理由
でこのファミレスに来てくれた。

関わったことがあるやつも、直接は
なくとも関わってみたいと思った
やつらも‥ほんとたくさん集まった。

「終業式の日に俺らクリスマス会
やるんだけど、小早川もどうよ?」

わざわざバイト先まで来て、そんな
誘いをしてくれるひとがいるくらい‥
小早川の周りは多くの人で溢れた。

小早川にとっては、慣れなくていろいろ
恥ずかしいのかも知れないけどいいこと。
でもこれは星野にとっては‥不安の原因、
心を乱すことでしかなかったんだろうな。

「別れたら?小早川くんと。」

八つ当たりだったように思う。
小早川は星野のことを、メイクを
理由に他の連中と過ごせる時間に
消極的な態度を取ることが多い。

小早川は言い訳みたいに言うけど、
自分のそのポジションを絶対嬉しく
思ってると思うんだよ‥足枷だとか
まったくもって思ってないだろう。

彼女だから、そうでなくともメイク
があるから星野と一緒にいられる
くらいに思ってるとこもきっとある。

でもそうやって周りから好かれても
それ以上に深く関わろうとしない
彼を小宮は可哀想だなんて言う。

その上星野にこんなこと言って‥
星野にとっては、もしかしたら
小宮の言うことは的を射てる部分も
あったのかもしれない‥それでも
そこに小早川の気持ちはないよね?

2人が一緒にいない時に、半端に
ちょっかい出して口出して仲を
引っ掻き回すのはやめてほしい。

終業式前日‥バイト先外で連絡もせず
凍えながら小早川を待っていた星野。
その日の星野の行動はおかしかった。
焦って空回っての繰り返しみたいな‥

何もない自分、外面ばかりでいつも
逃げていて‥そんな自分を小早川に
知られてしまうのが怖くて仕方ない。
そうやって焦れば焦るほど空回った。

「何にそんな悩んでんのか知らねぇ
けど…明日の終業式終わったら冬休み
なんだし…お待ちかねのクリスマス
だぞ。まぁ…なんていうか悩むのは
その後でもいいんじゃねぇの?」

小早川の言葉に、優しさに‥このまま
甘えてちゃダメだって考えたんだろう。
そんなふうに思って動いてしまったのは
きっと抑えきれない不安が原因だろう。

でも、様子がおかしいのは気付いてても
それ以上は何も知らないまま事は起こる。

その日星野はメイクを頼みに小早川宅に
寄ることなく、1人学校に登校していた。

そう、すっぴんのままで学校へ。
教室直前まで行って、怖くなり
逃げて隠れてしまったりしながら
‥勇気を出して、きっと大丈夫だと
元気に教室に入ったのだけど…

莉穂は固まってすごい顔してるし、
詐欺じゃんなんて言葉が聞こえる。
高橋が異変に気付いて星野を帰して
くれたけど‥これはまずいだろ。

この騒ぎは星野のすっぴんがまるで
別モンっていうことに対する批判
なんだろうか、それともジャージ女
=星野っていうのを含めてだろうか。

どちらにせよ、この後星野は泣く
のをムリに我慢したような表情を
見せて家に帰っていってしまい‥

その後、クリスマスデートの待ち
合わせ場所にもやって来なかった。

終業式の日、星野の一件とは
別にある事件が発生していた。

それは松方の原稿‥やったのは
墨汁を懸けられたやつだろう。

漫画を書くのに使っていた教室に
墨汁を撒かれていて、そこにあった
‥おそらくすでに完成していた原稿
数枚が墨汁まみれになってしまった。

「クソッッだらぁ!!あの
バカどもォ!!あいつらも修正
不可能な顔にしてやるァ!!」

わー、クチの悪いヤンキー加納だ 笑
落ち込んだり騒いだりするけど、
松方は結構冷静に考えていた。

ありがとう‥更にこう続ける。

「手伝って貰って…助かった。
結果はどうなるかわからない
けど…絶対に描き上げるから。」

最初はぎこちなかったり対抗
したりしながらの関係だった。

でも今はもう‥いいチームだな。
これはそれぞれが努力をしたからだ。

ほんと‥良かったなって思った。
でも、松方ちょいちょい素を出す
ようになってきてその口の悪さが
加納といい勝負で‥おもしろい 笑

小宮が星野の様子がおかしい原因、
自分の発言を小早川に教えてくれた
おかげでようやく状況を把握して、
小早川は星野の家を目指し最寄り駅へ。

偶然そこで星野に会えたけど、
随分の大荷物を抱えていた。

いろいろと、安心させ引き止めようと
必死に言葉をかける小早川だったが‥

「…優しくしないで…別れよう小早川。」

こんなふうに言わせてしまうまでに
星野を追い詰めてしまったんだよね。

小宮の言葉はきっかけだったけど、
もしかしたら今それがなくとも
いつかはぶつかった壁だったの
かもしれない。乗り越えなきゃ‥
2人は本当にだめになってしまう。

逃げる途中、星野の荷物の中に
東京行きの切符があった。星野との
デート代として稼いだバイト代で
小早川は星野を追いかけていく。

‥そして同じ頃‥東京に向かおうと
する松方のもとには加納がいた。

「…最後まで手伝わせろ。
私もついていくよ。」

~ひとこと~

随分と大変なことになってきました。
この後、松方と加納は星野に会えず
金も底付きそうになっていた小早川と
遭遇。星野は目的地にもたどり着けず
酔っぱらいに声はかけられるわ警察に
補導されそうになるわで‥逃げた先、

「お巡りさ~ん、お騒がせして
すみませんね、その子私の身内
なんですよ。ね?みーちゃん。」

そこには弓削先生がいた…ってとこで
10巻はおしまいになってました。

1人じゃなくなったから、小早川が
その辺でくたばることはないだろう。
星野も一先ずは‥弓削先生に会えたし
どこかで危ない目には合わないと思う。

でも‥星野と小早川はこのままじゃ
だめだよね?それに小早川には何か
ちゃんと伝えたいことがあるようだ。

小宮や星野の言葉に対して小早川は
違うって言ってることがよくあった。
何が違うのかはっきり言ってくれない。
でもそういうのも全部引っくるめて、
星野とちゃんと話をしないといけない。

このまま終わりたくないんだったら、
絶対に逃げないで話してほしいと思う。