著:永椎晃平 先生

付き合ってはじめてのデートは、
わざわざ隣町までやってきた。
お互い慣れないことで、ついつい
暴走してしまう星野、がっつり
リサーチしてきたけれど何一つ
上手くいかずに焦る小早川‥。
焦りすぎてリサーチしてまとめて
いたメモを落としてしまって‥
恥ずかしさに逃げてきてしまった。
お互い思うように上手くなんて
できないかもしれない‥それでも
2人のペースで、ありのままの2人で
何事も楽しめたらそれでいいと思う。
最初は失敗だらけだったかも
知れないけど、ゆっくり行こう。
きっとお互い、そう思えた素敵な
初デートになったんじゃないかな。
そしてもう1つ、小早川は重大な
問題に直面することになった。
(付き合うって…
お金がいるな…!!)

デート資金を稼ぐため、小早川は
初めてアルバイトに挑戦することに。
ちょうど募集をしていた飲食店に
面接に行き、相当人手不足で困って
いたとかで面接もそこそこ即採用。
働いてみると、それはそれは忙しく
ただでさえ慣れない小早川は初日
から教育係の小宮に怒鳴られてた。
小宮 涼子(こみや りょうこ)
彼女の指導は手厳しい‥無駄がなく
的確なだけかも知れないが、心の
弱い人相手だと音を上げてしまう
人もきっと随分と多いんだろう。
小早川も沈んだ表情で帰り道を
歩く‥途中で星野と偶然会った。
バイトをしていることは学校には
もちろん星野にも秘密にしていた。
だから中途半端に誤魔化すハメに
なったけど‥小早川がしんどくても
頑張ろうって思えるのは、星野が
いて、笑ってくれるからっていう
のがすごく大きいんだろうと思う。
負けんなよ、頑張れ小早川。

バイト先で教育係をしてくれている
小宮‥彼女、実は同じ学校で所構わず
いろんな男子といちゃいちゃ…随分と
ただれた生活を送る女子生徒がいて、
まさかの彼女と同一人物だったのだ 笑
バイト中は厳しい先輩であって、
学校での彼女とは別人に見えてた
から全くそれに気づかなかった。
学校で、偶然星野と一緒にいた時に
小宮のただれた現場に遭遇してしまって
いた小早川‥小宮はその時のことを
覚えていて、あの子って彼女??なんて
聞いてくるも、秘密にしてほしいと
言われている内容‥誤魔化そうとする。
でもそれが裏目に出たと言うか、
どちらでも関係なかったと言うか‥
「ねぇ、小早川くんがもし
よかったらさぁ、えっちする?」
抑えきれず星野と付き合ってると
口にしてしまう小早川だったが、
それでもお構いなしに乗っかって
くる小宮‥えええ‥何この子怖い。
危機一髪の所で休憩終了のアラームが
鳴り小早川は逃げることが出来たけど‥
こんな小宮に気に入られてしまったら
今後が不安で仕方ないんだけども 苦笑

学校では嫌われ者‥思い切りハブに
されてるのにそれさえ楽しんでいる
ような素振りを見せている彼女。
そしてバイト先では真面目に厳しく
働き‥家庭がいろいろ大変‥なんて
噂をあえてそのままにしているような
正直言って‥ものすごい変わり者だ。
疲れないのかな~って思う。
でも彼女は、その場に合わせて
ころころ自分を変える生き方が
楽しいと思っているみたいだ。
そうすれば‥基本的にどこでも
浅い付き合いしかすることがなく
傷つくことも減るのかも知れない。
人と真面目に深く付き合えば付き合う
ほど、何かあった時の傷は大きいから。
小宮本人がそれでいいと思ってるなら
彼女にはそれが正解なのかも知れない。
私には、そういう考え方は出来ないし
したいとも到底思えないけれど‥
1人でそういう生き方をしてるのは
構わないけど‥多分これ小早川もう
巻き込まれかけてる‥大丈夫かな?

修旅を終えてテストを終えて‥また
日常に戻りだした頃突然、加納は
学校にこの姿で来るようになった。
そしてすっごい嫌がる顔をされつつ
しつこく松方につきまとうようになる。
その理由は‥松方と仲直りするため。
これは小早川が加納を半端な嘘で
告白を断ったことが原因だった。
仲直りのため漫画を手伝わせて
ほしいと、漫画について勉強して
彼女なりの努力をしているようだ。
そんな加納の努力を受け入れはしない
ものの、松方は羨ましいと言った。
松方は小早川のために漫画に全力を
注ごうと思った、でもそれはただの
一人相撲で小早川は自力で変わって
いって自分のしてきたことは無駄
だったって‥そんなことを話す。
「自分の拠り所だと思ってたものも…
どこかに預けてないと不確かなんて…
自覚しちゃうと…ああ…なんて
情けないんだろう……って…。」
そんなふうに、どんどん自分を
下げるように下を向く松方の
言葉に対して、加納は叫んだ。
ちがうって、情けなくないって。
加納の真っ直ぐな言葉はきっと
今のどこまでも不安定だった松方
の心にちゃんと届いたんだと思う。
相変わらず毒を吐いて去っていく松方
だったが‥その表情は少し照れたような
喜んでいるようなものに見えて‥次の日
今まで近づくとすぐイヤホンをして何も
聞かないぞって態度をとっていた松方が
イヤホンをせずに作業を続けていた。
手伝わせるかどうかは別としても、
話を聞くきにはなったみたいね 笑
ほんの少しの変化、でも大きな進歩。

いざ手伝おうにも、加納にはまだ
まだ知識も経験も足りなかった。
そんな時、加納に寄ってきたのは
例の漫研の連中‥漫画テクを教えて
くれた彼女たちだったけど、目的は
松方との仲を取り持ってもらうこと
だったみたい‥なんてやつら 苦笑
でもそんな2人のお願いを拒絶した。
加納のこういうはっきりモノを言う
とこ、すごく好きなとこだな 笑
自分の中でちゃんと思いがあるんなら、
自分でケリを付けにいかないとダメ。
加納は、お願いを断りはしつつも2人
の背中を押してくれたように思えた。

加納の言葉を聞いて、真剣に努力
し続ける松方を知って、自分達は
一体どこに向かってるんだろうと
考え込んでしまった様子の2人‥。
強い風が吹いて持っていた原稿が
飛ばされてしまった時‥彼女は
簡単に諦めたような顔をした。
でも、それを慌てた様子で掴み
集めて、怒ってくれたのは加納。
きっかけは下心かも知れない。
それでも今漫画に対する加納は
すごく真剣に向き合っている。
その気持ちは本物だと思った。
~ひとこと~
9巻でした‥修旅後、加納や松方に
向き合うという小早川の覚悟とは
裏腹に、関わりをほとんど見せる
ことがないまま松方と加納の関係
が少しだけ修復されていってる。
この変化はいいことだけど‥そんな
真剣な彼女たちに小早川はちゃんと
向き合わないといけないよね。
今は小宮なんかも出てきてほんと
いろいろ厄介だなって思うけど、
決して悪い方に話は進んでない。
少しずつでもいいから‥良い変化を。