星野、目をつぶって。 第5巻

著:永椎晃平 先生

弓削先生は、結局自分の今後の
ことは何も言わずに去っていった。

「私が私だけの価値を見つけ
られたらその時話していいかな。
それまでは…ごめんね。」

そんなことを小早川に言って。

「…そういうのよくわかんないです
…好きだの付き合うだの…そういう
のは俺とは別世界の話ですよ…。」

あの日遠くまで星野を迎えに来た
小早川に対して付き合っちゃえば
なんて言ってくる弓削先生の言葉に
消極的な反応を見せた小早川だった。

弓削先生がいなくなってしまって
から妙な態度をとるようになった
星野、その態度の理由は不安だった。

「お姉ちゃんがどっか行っちゃ
って…これで小早川にまでメイク
しないって言われたらもうどう
したらいいかわかんない…。」

弓削先生の言葉もあっただろう。
付き合うとかそういうのはよく
わからない‥でも、それでも今
自分にとって星野がすごく大事な
存在であることに変わりなかった。

まだ大きな変化はないかもしれない。
それでもこれからきっと少しずつ、
何かが変わっていくんだろうと思う。

ある時突然星野のもとにやってきた
同高に通う鍔生木春(つばきこはる)。

彼女は星野を見つけて開口一発。

「アンタジャージ女ッスよね。
協力して欲しいことがあるんス
けど、話聞いてくれますよね?」

こんな脅しみたいなことを言って
きた彼女は人気のアイドルグループ
『スタリリ』のセンターらしい。

彼女からの依頼はなんてことない、
ウサギ小屋から逃げたウサギ探し。

無事それは解決したものの、まだ
大きな問題を抱えている様子で‥
それは、悪質なストーカー被害。

「これは警告です。今年の粧之浦
高校文化祭でステージに立たな
ければ、次のスタリリのライブで
事件が起こることになります。」

無視し続けた手紙に、こんな内容の
物がやってくるようになってしまう。

加納‥少しずつ前に進んでる。
彼女のやってること、やっぱり
全て正しいわけではないかも
しれない‥それでも人として
強い信念を持った素敵な人だと
思うことが多くなってきた。

加納のこんな真っ直ぐな態度は、
ある迷いを抱えていた小早川に
大きな勇気を与えることになる。

彼は西村、スタリリの大ファン。
鍔生のもとに届いた手紙と同じ
ものが彼の机に入っているのを
見つけてしまった小早川は確認
しようとしただけだったんだが‥

「お前……ストーカー
とかしてないよな。」

ひどく動揺して逃げるようにそこを
離れていった、そんな態度から犯人
は彼だろうと目星をつけた小早川。

でも西村、実は1巻からいたんだけど
人と関わろうとしない小早川に根気
強く挨拶してくるようなやつだった。
きっと星野達と関わりを持つ前までは
唯一の友人的存在だったろうと思う。

どうするべきか迷っていたところで
加納の行動や思いを聞いて、小早川は
誰にも話さず自分の手でやめさせよう
と思い動き出したわけだったが‥

…あんだけ怪しい態度をとっていた
ものの、犯人ではないんだという。

偶然、あの悪質なストーカー被害を
知って解決しようと動いていた。
でもその行動を小早川に知られずに
1人で解決したかったんだとか‥。

ただ力になりたいと思って言った
言葉だったと思うのに‥西村は
素直にそう受け取ってくれる
ことはなく‥少々険悪な空気に。

西村は‥経緯は酷いもんだった
けど鍔生の涙を知っていた。

今の学校には転校してきた
という彼女は、前の学校にいた
頃随分寂しい思いをしたようだ。

文化祭でライブをやって‥すると
その圧倒的なパフォーマンスに
誰もが圧倒されてしまうのだ。
それによって、住む世界が違うと
言って友達は寄ってこなくなる。

そうして、文化祭を一緒に回る
約束をなくされてしまったようだ。

「あの子がもっと有名になったら
自慢できるね、友達だったって。」

自分が目指す夢のために、遠巻き
にされてしまうことはきっとこれ
までも多くあったことで‥でも
急に手のひらを返すようなことを
され随分つらい思いをしただろう。

「もう二度と学校で
アイドルなんてしない。」

そんな鍔生の思いを知ってるから、
聞いてしまったから自分がなんとか
して助けてあげたいと思ったらしい。

でも小早川だって乗りかかった船だ。
どれだけ西村に拒絶されたところで、
助けたい気持ちはきっと同じだった。

正直言ってこれまでの西村の行動は
助ける努力をしている自分に酔ってる
程度のものに思えた‥でも小早川は
違う‥人と話すことになれていない
彼が大人数に向けて語りかけるとか
すごく頑張ったことなんだろうな。

顔を真赤にして、そこまでして
情報を集めようと必死だったんだ。

文化祭の直前、校内に鍔生が
ライブをやるというチラシが
勝手に貼られるようになった。
もちろん、デマ情報だけど。

情報を集めつつ、手近なところ
にはデマだということを伝えて
回りながら文化祭に備えていて‥

当日、問題発生により小早川と
鍔生が一緒に回ることになった。

「踏み出した先にしかこれ
までと違う景色はないんだよ。」

そこで‥鍔生のクラスに彼女を
つれて言って小早川はこう言った。

勇気のある一歩だったと思う。
それでも彼女にとってはとても
大きな一歩になったと思うから‥

頑張れ、きっと大丈夫。

クラスの出し物に参加して
丸く収まる‥こともなかった。
突然の職員室への呼び出し‥どこ
から情報が流れたのかテレビ局まで
やってきてしまったみたいだった。

そしてすべての現況‥生徒会。
犯人を見つけ目的を知った時には
もう、ライブを待っている人達を
止めることは出来なくなっていた。

そこで西村は頑張ったんだろうな。
これまでいろいろ半端なことしか
してこなかった自分を奮い立たせた。

彼の行動に‥決心したみたい。
鍔生は自らステージに登って
ライブパフォーマンスを見せた。

~ひとこと~

いろいろと慌ただしい5巻でした。
今回も結果的には何も阻止できず
終わってしまったことになります‥

なんだかんだと、毎度そういう話
だけど、それでもそこに関わった
人達の心には大きく変化がある
ことが多いな~と感じています。

だからきっと今回も、西村や鍔生の
心に良い変化があることを願います。

ところで‥最後おもしろいことが
ありました。星野、ミスコンに出て
いたんですけど、決勝まで残ってて。
でもそこで自分でメイクをしようと
してそれはそれはひどい有様で 笑

鍔生のことで手一杯な小早川には
頼めなかったのかもしれないね。

そんな偶然現状に気付いた加納がね、
いつものメイクをしていない状態で
参加したんだよ‥飛び入りだったのに
ミス粧之浦になってそのまま逃走 笑

結果的に助けてくれたんだよね。
さて‥そんな流れからの5巻ラスト。
松方とまなピーにまた変化の予兆!?

‥というわけで、また次巻で!!