その着せ替え人形は恋をする 第5巻

著:福田晋一 先生

「俺は遠慮しておきます。
喜多川さん一人でしてください。」

ベロニカたゃのコス、いつやるか
という話が出ると新菜は暗い顔で
俯くとそんなことを言いだした。

これまでずっと一緒にやってきた
のに突然そんなことを言われたら
海夢はそりゃあ戸惑っただろう。

格ゲーのキャラクターなことも
あってか、あれだけ少ない布面積
でもいやらしさを感じなかった。

でもそれはあくまで二次元の話。
リアルに三次元で海夢があの衣装を
着るのを新菜がそばでサポートする
のにはかなり無理があっただろう。

そばにいたとしても、海夢から目を
背けたまま言葉通りいるだけになる。

「今までの衣装と比べて、む、胸の
部分の面積が少ないので…見れません。」

急に一緒にやれないって言われて
顔面蒼白だった海夢は、その理由
を知って顔を真っ赤にしていた 笑

最初は新菜をぽかぽか叩きながら
安心したように笑っていたけど、
ようやく落ち着くと照れくさい
ようなちょっと気まずい空気に。

でも自分のことで意識してこんな
顔真っ赤にしてくれるのさ、その
相手が好きな人なんだから海夢は
きっと嬉しかったんじゃないかな。

決してそれがまだ恋じゃなくても。

『超売れっ子高校生ラノベ作家の俺が
毎晩サキュバスに迫られて困っています』
略して『サバこま』っていう日常系4コマ
漫画に出てくるサキュバスのリズきゅん。

海夢はそのリズきゅんが可愛くて
大好きでコスしたいって思うけど、
ハーフツインは可愛すぎてキャラじゃ
ないと言って諦めているようだった。

でも新菜の言葉でやってみようと
思ったみたい‥嬉しかったんだろう。

照れてるのかニヤけちゃわないよう
必死に隠してるのかわかんないけど、
すごく可愛らしい反応をしてた 笑

とはいえ前回ベロニカたゃで布面積が
少なすぎるって話をしたばかりだった
けど、今回のリズきゅんもベロニカたゃ
程ではないにしろ布面積かなり少ない。

さらにちまっとした感じのあまり
細かいところが描かれてない描写の
漫画なので衣装作りも苦労しそうだ。

新菜のセンスの見せ所かもしれない!!

いい撮影スタジオを見つけたと
言う海夢に新菜が連れてこられた
場所は、まさかのラブホテル。

確かに内装は今回のコスの背景
にはピッタリの場所に思えたけど
その内装だけ見て、スタジオだと
勘違いしてしまったようだった 笑

ここはスタジオだと思おうとしても、
そういう空気感が漂う場所で海夢と
2人きりという状況にどうしても
意識してしまう新菜だった 笑

でも当初の予定通り撮影するため
海夢がコス衣装に着替えてくると
そんな動揺は落ち着いたものの‥

海夢はすごく喜んでくれてたけど
これは所詮自分の想像で原作とは
違う間違った衣装だと言う新菜。

確かに原作通りではない‥むしろ
原作通りに作ったら人は着れない
物になってしまう可能性が高い。

そもそも見えない箇所が多い服で
完璧に同じ物をつくるのは無理だ。

だからこそ、レイヤーさんは原作を
研究しつつ想像して作り込むんだね。

「そんな自由なところが
コスの楽しいところじゃん。
だからこの衣装はごじょー君
の解釈って事でいいんだよ!」

海夢の作りっ気のないまっすぐな
笑顔ってほんと救われるなと思った。

こんなふうに言われてこんないい
笑顔見せられて嬉しくない人いない。

めちゃくちゃ楽しい撮影でした。
撮ってる新菜が合わせの時撮影
してた心寿みたいなテンションで
新菜もすごく楽しいのがわかった。

海夢も大興奮で、本当にすごく
楽しそうな撮影だったんだし
いい写真も撮れたと思うんだ。

でも‥新菜は忘れていたんだ、
ここがラブホだってことを 笑

突如聞こえてくる隣の部屋からの
声にその事実を思い出した新菜は
今の状況が非常にまずいと気づき
海夢を自分の上から下ろそうと
したことでこんな状況です。

一切布がない状態で腰、好きな
人に触られるんはクるだろうな 笑

この直後に時間終了の電話が
鳴ったことで2人は離れるけど、
鳴らなかったらどうにかなった
可能性も少しはあったのか‥。

2人とも、可愛いなあ‥♡♡
と思いながら眺めたシーン。

新菜にとって海夢は今でも、ただ
の憧れの人でしかないんだろうか。

もしそれ以上の感情を持ってても
釣り合わないとか自分なんてって
自信のないことを理由にその感情を
自分で否定しちゃいそうだけどね。

これまで海夢と一緒にいろんな
ことに挑戦してきたことで新菜は
成長したし変われてるとは思う。

それでも自分の気持ちに自信持って
好きだと言えるほどには、きっと
まだ自信を持ててはいない気がする。

なんで2人とも水浸しかって話は
説明するとちょっと長くなりそう
なので割愛しますが、できない
のに好きっていう話について。

好きだったけどできなすぎて好き
じゃなくなってしまうってことも
きっとあって、そんな中でできない
ままでもずっと好きなものがある
のってすごいことだと思うんです。

できるから楽しいってのもあって、
できないと辛くなってくることも
あるのに、それでも好きだって
ことはよっぽど大好きなんだろう。

海夢にとっての海も、コスも、
新菜にとっての雛人形もそうだ。

もしかしたら私みたいな考えじゃ
ない人も多いかもしれないけど、
それでもやはり私はそんなにまで
好きになれるものを見つけられる
のはとても幸せなことだと思った。

これから先もずっと2人とも好きな
ものを好きでい続けられたらいいね。

「海夢今すぐやりなさい。
それまで遊ぶの禁止だからね。」

溜まりに溜まった夏休みの宿題を
一切やっていなかったことが父親に
バレた海夢は行こうと思っていた
夏祭りにも行けず缶詰状態だった。

でも新菜に教えてもらったりしながら
なんとか全ての宿題を終わらせ、まだ
やっている花火を調べて遊びに来た。

海夢は可愛い浴衣に髪もセットして
新菜も以前海夢に連れられ服屋廻りを
した時に買ったであろう甚平を着て。

海夢の浴衣姿のうなじにドキッと
した新菜のドギマギっぷりは可愛くて、
そんな若菜の様子に気づいた海夢の
浮かれっぷりも最高に可愛かった ♪

そんなこんなで2人はたっぷり花火を
満喫していたんだけど、歩き回った
せいで海夢の足はひどい靴ずれ状態。

絆創膏を買いに近くのコンビニまで
行こうとする新菜、海夢も連れてって
くれればと言い出したことでこの状況。

すごく楽しい時間だったからこそ
最後こんなふうになったから微妙な
感じにしてしまったと謝る海夢。

でもその謝罪に続け他言葉で来年も
当たり前のように一緒に花火を見に
くるつもりでいるんだとわかった。

それを聞いた新菜は、すごく
優しく嬉しそうな顔をしてた。

こんな感じになったことよりも、
これでもう終わっちゃうのかなって
気持ちのが強かったかもしれない。

でもまたこんなふうに2人で花火を
見に来られるってわかって、安心と
嬉しさでいっぱいになっただろう。

そんな若菜の表情を見てたら、
やっぱりもう新菜は海夢のこと
大好きなんじゃないかなって
思えてしまって仕方がなかった。

付き合ってるわけでもないし告白
なんてもってのほか、それでもこの
2人はもう既に両想いな気がした。

海夢と2人でホラー映画を観たら、
新菜は衣装やら特殊メイクの方に
興味を持って大興奮だったけど
内容がかなり怖かったようで、夜
海夢は一人で眠れなくなってた 笑

少しの間でいいから通話しててと
言って、どれくらい話していたか
海夢の恐怖が落ち着いてきた頃
新菜は先に値落ちしていた。

「今年、は…楽しかったです…。」

そんな言葉を最後に眠りについて
いい夢でも見るかもしれないね。

新菜が寝たのを確認した後まりんは
新菜への気持ちを伝えてみるけど、
がっつり眠ってしまってる新菜には
その言葉は届かなかっただろうな 笑

いつかちゃんと耳に届くように
気持ちを伝える日が来るのかな。

来たら来たでそうスムーズに
付き合いましょうとはなれない
気もするけど、どんな形でも
2人には一緒にいてほしいと思う。

一緒にいる2人がすごく楽しそうで
見てるこっちまで幸せになるから。

~ひとこと~

うん‥今巻もすっごくよかったです。

今回はこれまでに比べてコスプレに
関する内容が浅めな分、がっつり
ラブコメ要素が詰まってました。

これまではコスに関する行動が
主だったけど、コスとは無関係の
買い物デートや花火デートなど
すっかり2人の仲が近くなった
ことを嬉しく感じてました。

ラブハプニングもちょいちょい
あって、これまでは海夢の方が
新菜がテンパってる理由に全く
気付いてないことが多かったけど
今回はそうでなく2人とも真っ赤に
なってて最高に可愛かったんです。

これからの2人が楽しみです。