その着せ替え人形は恋をする 第3巻

著:福田晋一 先生

突然五条家を訪ねてきたのは、
乾 紗寿叶(いぬい さじゅな)
という‥
ちっさくて最初子供かと思ったけれど
新菜とは違う高校の2年生、先輩だ 笑

いろんな勘違いもあって少々遠回りも
したけど、彼女がここを訪れた目的は
新菜が作ったコス衣装に関すること。

「私はコスプレ衣装の
オーダーをしに来たの!」

海夢のコス写真を見て、海夢以上の
行動力でこの家を突き止めたらしい 笑

あくまで海夢に頼まれて衣装を作って
いるだけの新菜は、外部からのオーダー
を受ける気などなかったのだけれど、
ちょっと断れる空気でもなかった 笑

あと、彼女はジュジュと名乗ったのだ。

紹介しそびれてたけど、海夢がジュジュと
いうコスネームのレイヤーさんのことが
大好きで写真を見せてくれたことがある。

バイトを終えて新菜宅にやってきた
海夢が大興奮して喜ぶのはすぐ後の話。

ジュジュがオーダーしたい衣装と
いうのは、フラワープリンセス烈!!
という女児向けアニメのシオンたん。
そのブラックリリィ衣装だった。

魔法少女であるシオンたんが変身した
姿がプリンセスリリィで、ある原因で
悪堕ちしてブラックリリィになるとか。

ジュジュにとってすごく思い入れが
あって一番大好きなキャラみたい。

海夢も大好きなキャラだそうで
衣装ができる前から大興奮だった。

そんな海夢を見てジュジュは、自分も
すればいいと言うけど海夢は即否定。

好きだから結果的にイメージが壊れる
ことになってもキャラになりきるって
人もきっといるしそれも楽しみ方だ。

でも海夢の場合は、何より大好きな
キャラのイメージを大事にしたいから
幼女キャラであるシオンたんコスは
最初からやる気がなかったのだろう。

新菜の衣装に興味を持ってここまで来た
けど、コスしてる海夢に対してジュジュ
はあまりいい印象を持っていなかった。

見た目が可愛いからとアニメのお話や
キャラのことなんてろくに知らないで
コスしてるんじゃないかとか ‥ 笑

でも話せば話すほど全然そんなことない
ってわかってきて、アニメやキャラを
本当に大好きでコスする時の考え方も
ジュジュが一番好きなタイプだったって。

だからといって急に仲良くなれる
感じでもなさそうだけど‥海夢は
このチャンスをみすみす逃すような
ことはきっとしないんだろうね~♪

最近はコス衣装のことで時間を割く
ことも増えて今までより全然雛人形
の方の練習時間は減ってしまってた。

だから、久々におじいちゃんに雛人形の
顔を描いたものを見てもらおうとした時
下手になってるよな絶対、と不安だった。

でも実際かけられた言葉は真逆だった。

「前より良くなったなぁ。」

「前は線が強張ってたもんだが
少し柔らかくなってる。」

似ていることはしていても、きっと
全然違うことだって認識してた。

でもコス衣装作りも海夢にするメイクも
しっかり自分の夢に繋がっていたみたい。

海夢に出会うまでは閉じこもるように
1人雛人形にばかり向かっていたけど、
海夢と出会っていろんな場所に言って
いろんなものを見て経験したこと全てが
自分の成長に繋がっていくんだろうね。

これからも、頭師になるための努力も
衣装作りやメイク、そのための研究も
楽しみながら頑張ってけたらいいよね。

「”烈!!”合わせしましょーよっ♡」

時は少し遡るが、ジュジュが五条家に
来た時、海夢はそんな提案をしていた。

同じ作品のキャラで衣装を揃えて
撮影するってことらしいんですけど、
ジュジュは他のレイヤーさんとつるむ
つもりはないと初めは拒否っていた。

もちろん海夢だって無理強いする
気なんてなかったんだけど‥先に
折れたのはジュジュの方だった。

お金の問題は切実だった‥って話。
人数いて割り勘にすればスタジオも
安く借りられてお金も浮きますから。

そうして・・・

ブラックリリィ衣装の打ち合わせ連絡
をとっている時、カメラの話題になる。

今まで撮影はスマホのカメラのみで
やってきたけどしっかりしたカメラを
使えば出来ることの幅もぐっと広がる。

ジュジュの写真はカメラを使ってると
聞いて、撮影担当のジュジュの妹に
カメラのことを教えてもらうために
4人で顔を合わせることになった。

「きっと全体的にジュジュサマ
ちっさくした感じでー
くっそ可愛いんだろーな~♡」

なんて言ってた海夢だけど、なんか
いろいろ‥ほんといろいろでかい 笑

中学生の乾 心寿(いぬい しんじゅ)

聞いてみればジュジュって名前をつけた
のもアカウントを作って公開してるのも
心寿がしてるということがわかってくる。

最初は緊張している様子だったけど、
ジュジュの話を始めたらよく喋るし、
本当にお姉ちゃんが大好きみたいで
そんなふうにジュジュを思う心寿の
撮影だからこそいい写真なのかもな
と思ったらなんだか嬉しくなった。

今回スタジオを借りるって話だったけど
それはジュジュ達にとっても初の試みな
ため4人で下見に行くことになった。

場所は廃病院スタジオ‥普通に怖い 笑

自分で選んだ場所でアニメの内容や
シーン的にもピッタリだったのは
いいけど‥想像してたより怖かった
みたいでジュジュは1人暗い表情。

海夢と心寿はどんどん先に行って
しまうし、予報通りとはいえ大雨が
降ってきて更に怖かっただろうね。

本人は否定してたけど明らかに
怖がってて、それでもいい写真を
撮るためには大事なことだった。

そこでジュジュが話してくれたのは
コスを始めたきっかけの話だった。

まだ幼かった頃、彼女は本気で
魔法少女になりたいと夢見ていた。
でもそれが絶対に叶わないことは
ある程度成長すれば分かることで、
相当ショック受けたんだろうね。

でもそんな時コスプレってものを
知って、たとえ全てが作り物でも
夢は叶えられるって思ったんだ。

どんな形でも叶えたい夢のために
まっすぐ前を向けるのはすごいよ。

ジュジュはこの先少しでも長く、
コスができるうちはずっとこうして
夢を叶え続けていくんだろうね。

ジュジュの夢を聞いた新菜は、
どうして衣装を自分にオーダー
したのか余計に気になりだした。

きっと理屈じゃないんだろうね。
海夢が着たその衣装に一目惚れ。

こんなふうに言ってもらえるのは
もの作りをする人にとって物凄く
嬉しいことなんじゃないかなと思う。

特に新菜にとっては。

きっかけは幼い頃、おじいちゃん
の雛人形を見た時の話だったけど、
自分がその雛人形に一目惚れした
ように、自分も誰かに一目惚れして
もらえるものを作りたいと思った。

今回は雛人形ではなかったけど、
あのコス衣装だって心を込めて
一生懸命に作ったものだから。

泣くほど嬉しかったんだろう。
いい話だったんだよ、でもね。

外は雷、薄暗く怖い空間で怯える
ジュジュにとって、雷を背景に
感動で大泣きしている新菜の姿は
怖ろしく映っていた気がする 笑

さらには泣きながら近寄って
くるんだもの、感動してお礼を
伝えたくて手を握っただけだ。

でもずっと女子校通いで同年代の
異性に一切慣れていないらしい
ジュジュにそれは衝撃が強かった。

恐怖で気を張ってたのも相まってか
その場でジュジュは気を失った 笑

時は少し飛んで海夢達の学校は
期末テストが終わって、海夢の
提案で新菜と2人海にやってきた。

突然のことに戸惑うも、心寿に
オススメされた逆光での撮影の
ため映える海に来たと考える新菜。

でも海夢は全然そこまでは考えて
なくて、テストも終わったし夏だし
海行こーと‥相変わらずの行動力 笑

でも海ってチョイスは正解だった。
幼い頃から雛人形に夢中だったから
新菜は海に来たことがなかったのだ。

テレビとか写真とかでは見たことが
あったかもしれないけど、やはり
実物を目の前で見れば違ったろう。

奇麗って口にしながら海を見る
新菜に、海夢は自分といろんな
ところに行こうと誘っていた。

「も、もーすぐ夏休みじゃん!
あたし…っ、めっちゃ誘うし!
だからあたしと、ふっ、二人で…っ!」

これ、もうデートのお誘いだったし
海夢は結構緊張したんだろうな。

でもそんな海夢の気持ちに気付かない
新菜は素直に友人からの誘いを喜んだ。

言った後に恥ずかしくなって理由を
つけて新菜のそばを離れた海夢は、
ふと心寿からの教えを思い出して
新菜の方にスマホカメラを向けた。

逆光で撮った、新菜の写真。
本当に大好きになってるんだろうね。

好きな男子の前で全く意識なんて
してないような態度をとってるかと
思えば、好きで仕方がないっていう
熱い視線を送ってることもあって。

その時夢中なものしか見えなく
なるタイプなんだろうね、海夢。

でもそういうところも、眩しくて
可愛い海夢の大好きなところです。

~ひとこと~

3巻でした、ジュジュと心寿登場です!!

海夢は恋に大好きなレイヤーさんにで
メンタル忙しそうでしたが、それでも
すごく楽しそうで見ているこちらまで
明るい気持ちをもらえるほどでした。

ジュジュがロケハンでぶっ倒れた
時はちょっと心配になりましたが、
その後のことは描かれておらず‥
いっきにいろいろありすぎて
キャパーオーバーになっちゃった
だけだろうしきっと大丈夫でしょう 笑

烈!!コスの衣装のことも合わせ
のことも、どんな感じになるか
すっごく楽しみなところですね。

それとコスに関する豆知識じゃない
ですが、私がコスに関して無知なので
勉強になることも多く描かれてます。

レイヤーさんにとっては基本なこと
なのかもしれないし私では説明力
不足なので、読んでてすごーいって
なることがあっても紹介は省いて
しまってますが、少なくとも私に
とってはすごく勉強になってます。

自分でコスする予定はないんですが
大好きなレイヤーさんがいるので、
こういうことしながら頑張っていい
コスを完成させてくれてるのかなとか
思ってより尊みが増してたりします。

普通にラブコメとしても楽しめるし
コスに関するお話も十分楽しめる。

さらには自信を持てない人が少し
ずつ成長していくって意味では
勇気をもらえる作品でもあります。

どれか一つでも興味を持ってくれた人
なら絶対楽しめる作品だと思うので、
素敵な作品を知り興味を持ってもらえる
きっかけになれていたら嬉しいです。