著:宇仁田ゆみ 先生

祖父の家から実家に戻ると、
りんは両親や妹(カズミ)と
すっかり馴染んで笑顔。
帰り際に、また来ていい?
なんて思えるくらい、この
場所はりんにとって心地いい
場所に変わったようだった。
‥ずっと1人で孤独みたいな顔
してた最初の時の彼女を思えば、
今は随分いい方に変化したかな?
・ ・ ・ ・ ・
そんな中、家への帰り道。
大吉は探りを入れだした。
例の、モデムについてだ。
「じーさんちってさー、
パソコンあった?」
祖父が亡くなった後の遺品整理で
パソコンなんてものは出てきてない。
でもりんは確かにあったと答える。
「おじいちゃんもつかってたけどー、
ほとんどおてつだいさんがつかってた。」
「おてつだいさんのーまさこさん。」
りんの母子手帳に書かれていた
母親の名前…その名前の女性が
りんと祖父のもとへお手伝いさん
としてやって来ていたというのだ。
でもりんの中で彼女の存在は
忘れてしまいたい人なのかも。
…まだどんな人なのかは謎だ。
でも少なくともりんにとって
会いたい人ではないようだ。
…このまさこさんが、母親?

ある時大吉は、またお迎えの時間が
重なったコウキの母親と話をする。
他の子のママさん達は、習い事
なんかの話で盛り上がってた。
コウキママも大吉同様、そこまで
の余裕はないようだったけど…
「この子が本当に楽しいと思う
ことを見つけたらできる限り協力
してあげたいとは思ってます。」
「今はコウキにガマンばっかり
させてるから、お休みの日ぐらい
はふたりの時間を大切にしたい
なあ…って。まずは今のコウキを
しっかり見ていてあげたいんです。」
「あと2年もしたらこっちが
一緒にいてほしくてもイヤ
がるようになりますしね!」
コウキママのそんな話を聞いて、
大吉はりんが欲しがっていた子供用
の包丁を買っていくことにした。
自分が横にいる時しか使っちゃ
いかん、火も今まで通り勝手に
使わない。そんな約束をさせて
大吉は包丁を使うことを許した。
りん、ほんといい子に育ってるな。
最初からしっかりした子ではあるが、
ほんといい子に育ってってると思う。
そしてめちゃくちゃ可愛い…♡w
寂しいだろうね、大吉離れしたらw
このまままっすぐ育ってくれたら…
ほんと、見守っていたくなる子だ。

今日は小学校の説明会。
仕事を無理やり抜けてきて
説明会に参加するも、初めて
のこういう場にてんやわんや。
周りのママさん達からしたら、
当たり前に知っているべきことも
自分にはわからないことだらけで
少々焦りを感じる大吉だったけど、
そんな大吉にコウキママは嫌な顔
一つせずいろいろ教えてくれた。
そして大吉にとってすごく嬉しい、
安心できる言葉をくれていた。
一緒に生活を初めてまだ半年
経っていないような時期だ…
りんのことが少しはわかるように
なってきたなんて思いつつも、
まだまだ手探りな日々は続く。
そんな中で、どこから見ても家族だ
と言ってもらえたのはすごく嬉しい
言葉だったんだろうなと思った。
彼女のような存在が身近にいた
ことは大吉にとって今後大きな
救いになっていく気がしている。

小学校に提出する書類にこれまで
受けた予防接種を記入するために、
母子手帳を調べていた大吉の目に
止まった、ヨボヨボの字の…URL??
それはきっとじいさんの字だと
考えると、そのURLにはブログ?
そこに遺書を綴ろうとしたらしい。
が、パソコンを使いこなすには
いろいろ難しすぎたらしく、
最終的に続きは母子手帳に…と。
そうして母子手帳内を探ると、
よく探さないと出てこない
ような場所に確かに遺書が…。
そこに綴られている内容は、
あまりスッキリする内容では
なかった。りんの母親の正子。
彼女が誤解されやすい女性だが
悪い人ではないということ、りんの
1番の幸せを願い自分が母親であると
明かすことは今後もないだろうと。
正子という女性は、母親としてのりんへ
の愛情はあるが、人として親として成熟
しきっていない女性であるということ。
正子さんのことは本当によく
わからないままだったけど、
…今後いろいろわかるんだろう。
少し、怖いね。

りんに気付かれないように、
正子さんに電話をかけた大吉。
状況を説明して、一度会って
話がしたいウマを伝えた。
電話越しではあるが、どうにも
大人と会話している気分には
なれない…どこか足りていない
ようにすら感じる雰囲気だった。
大吉の気分は最悪だったが、
一先ず会う約束をこぎつけ
大吉は実家にりんを預けて
約束の場所に会いに行った。
改めて会話をしてみても、やはり
イライラするレベルにしっくり
来ない会話が続いただけだった。
自分の意志がどこにあるのか、
まるで、自分が嫌と思うこと以外は
祖父(宋一)に言われるままにやった
結果りんが生まれた…というふうに
すら取れる内容を話していた彼女。
漫画家をしているようで、当時
あまり売れていなかった彼女は
子育てとの両立は無理だからと、
祖父に進められた籍を入れると
言うこと自体断ったのだという。
りんのことは可愛らしい、愛しいと
思っているけれど自分が母親では
いけないという気持ちが強くあり…
こんな母親ではいけないとかいう
感じなのかな…?大人として、正直
見ていてイラつくレベルではあった。
最後に大吉が投げかけた質問にも、
どうしようもない返答が返ってくる。
(りんが自分で生きていけるように
なるまで絶対俺が面倒みよう。)
そんな決意が固まった大吉だった。

正子さんとの会話の中で、最後に
これだけはと言われたことがあった。
りんの苗字について、大吉と同じ
姓を名乗らせてほしいということ。
大吉はりんと相談したいと言うが、
正子さんや、大吉の母親は問答無用で
河地にするべきだと言ってきていた。
そこで大吉が言い出したのがこれ。
「じゃ、俺りんを養子にするよ。
あいつがイヤじゃなければ……。」
ぶっ飛んだ発想だったかもしれない。
それでも、りん自身の気持ちを何より
大事に考える大吉の考え方には、
すごく共感できるものがあった。
大吉は別に軽い気持ちでこんな
ことを言ったわけではない。
りんのためなら腹括る…そんな
覚悟の上でそう言ったのだった。
そうして、りんにその話をする。
「わたしかがりんっていう
なまえがいい。おじいちゃんと
おそろいのなまえ…だいじなの。」
そう言ったりんは最後にこう言う。
「ダイキチはダイキチでいい。」
こう言われて大吉は、少し
泣きそうになってしまった。
父親とかそういうのではない。
大吉は大吉、いまのままで
いいんだろう、りんにとって。
りんにとっての父親はじいさん
だけだけど、きっと彼女の中で
ダイキチという存在もきっと
特別大事な人なんだろうな。
もうちゃんと、家族なんだろう。

前は当たり前のように大吉の
布団に潜り込んできたり、
すぐ甘えて抱きついてきたりと
いうことがあったのに、ここ
最近はなぜかそれを我慢してる?
不思議に思う大吉だったが、
その理由が明らかになった。
「もうわたしいちねんせい
だから!だっこはきんしなの!」
「おともだちもみんなそういうよ。
だっこはあかちゃんだけだよ。」
なるほど、女の子はきっと男の子
よりも更に早くマセだすからね。
そういうふうに思うものなのね。
でも大吉が言う。大人だってだっこ
されたい時があるんだって。だから
1年生になるからってだっこがダメ
だなんてこと、そんなことないって。
なんだ、まだいいんだ…そうなると
りんは今までの我慢がウソのように
笑顔になって大吉に抱きついた。
ほんと…なんでこんな可愛いの♡♡w
前に大吉が泣きそうになっていた
ことをりんは忘れていなかった。
大吉が泣きそうになってたら今度は
りんがだっこしてくれるんだって♡
もう、ほんと可愛い何この子可愛い♡w
この時大吉は、こんなこと思っていた。
(俺がりんを育ててるのか
俺がりんに育てられてるのか、
ちょいちょいわからなくなる。)
でも子育てってそういうものだと
思うんですよね。子供を育てる中で
親も一緒に育っていくものだろうって。
立場としては違っても、すっかり
りんの父親的存在な大吉でした。
~ひとこと~
うさぎドロップ2巻でした。
母親…出てきましたね~。
正直見ていて苛つきますw
でもね、じいさんの遺書の内容
も少し気になるとこですよね。
勘違いされやすい女性だって。
もしかしたら今受けたままの
印象とは少し違ったりするのか…
これから先、そういう所も何か
明らかになっていくのなら、
すごく気になるところです。
とはいえ、今のりんにとって1番大事
なのはきっとそこではない。今は大吉
という家族がいて、コウキという友達も
いて、大吉の実家に行けば気を許せる
ようになった大人達もいる。そんな、
環境の中で少しずつ成長してってる。
もうじき小学校の入学式だ。
これから先、りんはどんなふう
に成長していくんだろうか。
りんと一緒に生きて、大吉には
どんな変化が訪れるんだろうか。
きっと立ちはだかる問題だって
出てくるんだろう…知らないけど、
子育てって大変なものだろうし。
では、また次巻で!!