著:豊田悠 先生

晴海が担当編集をしている出雲先生。
彼女のところにアシスタントをしに
来ていたのは古くからの付き合いが
あるという、現在連載を持っている
栗山先生‥栗山先生は結婚を約束した
恋人がいたようだけど、連載が決まって
収入の安定しない漫画家を続けることに
なったことをきっかけに破局になった。
表向き、そういうことだったと思う。
そして栗山先生もそれ以外の理由は
ないつもりでの別れだったと思う。
でも栗山先生が描く料理マンガの
登場人物の2人はまるで栗山先生と
出雲先生のようで‥別れた恋人は
それに気付いて指摘してきたんだ。
栗山先生自身そんな気持ちの自覚は
きっとなかったんだと思う。でも、
彼の内側にはずっとそういう感情が
あってそれがマンガに出てしまった。
そう考えるとすごく納得できた。
たからこそ、恋人としては随分と
虚しい気持ちもあったかもしれない。
これからこの2人の関係に何か変化が
あるかはわからないけど、元彼女さん
きっとすごくいい人だったんだと思う。
彼女が幸せになれますように、そして
栗山先生と出雲先生も2人なりの幸せ
な未来を見つけられたらいいなと思った。
それがもし、漫画家仲間としての未来
だとしても‥それもいいかもしれない。
相変わらず曖昧な関係のまま、栗山先生
も忙しいはずなのに世話を焼き続ける。
そんな2人を眺めながら晴海は思ってた。
「もう一緒に住めばいいのに…。」
周囲から見てそれが成り立ってしまい
そうなくらい親密に見えてるんだよ。
なんかほんと、すごくじれったい 笑

ある日の園帰りの時刻、2人を迎えに
来た千石‥の背後でちらちらと隠れ
ながらこちらの様子を伺う者がいた。
彼は決して怪しい人ではなく、同じ園に
通うさくらちゃんのパパ・中村さん 笑
最近仕事をやめて主夫をしてるらしいが
初めての経験、ママさん達とも馴染めずに
いた時、料理がうまいパパさんがいると
千石の話を聞いて話したがってたらしい。
彼の話を聞いて、千石は愛梨がやって
きたばかりの頃のことを思い出して
激しく、とても激しく同意した 笑
奥様は仕事が大変で頼るのは難しい、
でもそんな状態で来週に親子遠足が
ありお弁当を作らないといけない。
「うちの子かわいいもの好きで
かわいい弁当がいいって言うん
ですけど、嫁さんその日出張で
キャラ弁とか作れる自信ないし。」
料理教室に通うというのも手だが
何よりそんなゆっくり時間がない。
「よかったら一緒に作りますか?」
考え込む中村山に向かって千石は提案。
最終的に、作ったのはサンドイッチ。
形や具を変えて結構可愛らしいものを
子どもたちも一緒になって作った。
1人で、誰に頼ったらいいのかも
わからなくなっていた頃に比べて、
こうやって言ってくれる人がいる
ってのはすごく幸せなことだよね。

それぞれが思い思いに作った
サンドイッチ達を詰め込み完成
したお弁当はとっても可愛くて、
子供達はみな大喜びなようだった。
可愛いだけでなく美味しい‥
ぜひ食べてみたいですね 笑
大事な我が子達の嬉しそうな、幸せ
そうな顔が見られるならちょっと
くらい大変だって頑張ろうと思える。
子供って、親にとってそういう存在
なのかもしれないです‥素敵だね。

「歯を磨かない悪い子は~虫歯に
なって歯が抜けてしまうんだお~。
歯が抜けたらご飯もお菓子も
もう食べられないんだお!」
ってテレビかな?で悪魔っぽいやつが
言っていたのを見せながら歯磨き
サボるなよって千石が言っていた。
そんなある日のこと‥愛梨がご飯を
食べようとすると歯がぐらついた。
(あいりのハ…ムシバ…!?)
焦ったんだろう、怖かったんだろう。
それからのこと、愛梨はご飯はもちろん
大好きなおやつさえも食べたがらない。
さすがにおかしいと思った千石は、
虫歯を疑って口の中を確認するが‥
「なんだ、生え変わりじゃねーか。」
虫歯じゃなく、めでたいことだった。
それがどういうことなのかをちゃんと
教えようとするが聞こうとせず、愛梨
はついにふて寝し始めてしまった。
「歯が抜けるのは成長の証で
おめでたいことだってお祝いすれば、
怖くなくなるんじゃないですか?」
一体何がそんなに嫌なのかも教えて
くれない愛梨だったけど、お祝いという
晴海の提案でケーキを作ることになった。
すごく頑なな様子だったけど‥大丈夫
だからね。怖がらずちゃんと食べて
くれるよう美味しいの作らないとね。

一緒に作るのも拒む愛梨だったけど
「あっ、ゼラチンまぜねえと。」
「あ~でも手が足りませんね~。」
チラッチラッて愛梨の様子伺い
ながらそんなことを言い出す2人に、
しょーがないななんて言いながら
結局愛梨もケーキ作りに参戦 笑
ほんと、このパパ達扱いうまい 笑
あとは冷やすだけってとこになって
「ケーキ作っちゃった…。」
ようやく気付いて項垂れる愛梨だけど
生え変わりの意味を教えてもらって、
今度こそ、安心できたようだった。
初めてのこと、知らないことって
やっぱり怖いよね。仕方がない。
その度親がちゃんと教えてあげる
必要がある。生きていく中で自然と
覚えた、できるようになったと感じる
ことってきっとたくさんあるけど、
それってこんなふうに教えてくれる
人がいたことも、少なくないはず。
愛梨は、自分が悪い子だから抜ける
のかもって思っちゃってたんだね。
でも‥
「あいり、つよくてかわいー
のがいいな~。ぴんくとか…。」
愛梨ピンクい歯がいいらしい‥
私は、そんな怖い歯は嫌です 笑

「ねえねえ、ランドセル
なにいろにした?」
そんなさくらちゃんの一言をきっかけに
ランドセルを買いに来た愛梨と清一郎。
同じ理由でやってきたてぃあらちゃん。
てぃあらちゃんと愛梨は仲良く2人で
ランドセル選びをしていたんだけど‥
「来年はてぃあらと愛梨ちゃん学区が
違うから別々の小学校になっちゃうの。」
おそろいのランドセルで、一緒に
小学校に行こうって話した時だった。
てぃあらママのそんな言葉で、きっと
すごくショックで悲しくて仕方なくて‥
無理なんだって分かってても駄々をこねた。
比べて物分りのいいていぃあらちゃんは
しょんぼりしながらも反抗を見せない。
「もーいい!てぃあらちゃん
なんかしらない!!がっこういくのも
やめる!ランドセルいらないし!」
そう言って、走り去ってしまったのだ。
ただただ、寂しかったんだと思うよ。
それでもそんな気持ちをてぃあらちゃんに
ぶつけてしまったことは、きっとすごく
後悔してたんじゃないかなって思う。
家に帰ってからも押入れにこもって泣き
始めてしまう愛梨に、千石が話しかけるも
すぐにどうこうできることでもなさそう。
差し入れに押入れの中へティッシュと
お菓子を入れてやると、愛梨はお菓子を
食べながら鼻をかんでいたんだそうな 笑
ちょっと時間かかってもいいからちゃんと
気持ちの整理して仲直りできたらいいな。

翌日、かな?園でてぃあらちゃんと
会ってもお互い気まずそうな雰囲気。
でもそこで、愛梨頑張ったね。
きっともう嫌われちゃってたらとか
怖い気持ちもたくさんあったと思う
のに、頑張って勇気出して謝った。
そうしたらてぃあらちゃんも本音
を言ってくれる。もしかしたら
喧嘩しちゃった時はすぐそばに
お母さんもいて、我儘言ったら
困らせちゃうって思ったりして
言えなかったのかもしれないね。
本音で話して、たくさん泣いて、
千石が迎えにきた時には2人とも
目が「3」の字になってしまってた
けどちゃんと仲直りできたみたい。
これまでは何かあった時親が口を
出してなんとかしてあげないとと
思ってたことも、こうやって少し
ずつ自分達で解決できるように
成長していく‥そんな愛娘を見て
千石は、嬉しそうだけどほんの
少し寂しそうな表情にも見えた。
子供の成長、きっと親からしたら
あっという間のことなんだろうな。
~ひとこと~
微笑ましいお話の最後に、嬉しい
ことなんだろうけど素直に喜ぶこと
が出来ない、そんな内容があった。
愛梨のママ、マキのことだ。
「やっと人を雇えそうなの。
これでもうすぐ日本に帰れるわ。」
そう言いながら嬉しそうにしている
マキが描かれているシーンがあって
これはいいこと‥でも帰ってきたら
愛梨はどうなる? 千石との生活は?
さらには晴海家との共同生活は?
いろんなことが変化するってこと。
愛梨はマキに会いたいと思うけど
そういう変化が急に起きるのなら
きっと受け入れるのに時間がかかる。
でもそれ以上に、愛梨と離れる
ってなったら絶えられないのは
きっと千石の方なんじゃないか?
不安な終わり方ですね。