著:豊田悠 先生

ある時、晴海のトラウマともなって
いた山代先生が編集社を訪れた。
例の包丁が怖くなった原因の人。
晴海不在時だったようで、それを
聞いた晴海はしばらく考え込む。
アプリやWEBの配信の相談だろうと
考えつつ、それはわざわざ編集社に
来るほどのものではないのだろう。
どうしてわざわざやってきたのか。
晴海はそれを千石に相談してみた。
「んなもん、漫画にまだ未練があるから
じゃねーのか。事件起こした手前顔
出せなかったんだろ。契約は口実で
仕事の話したかったんじゃねーの。」
「20年もやってた仕事なんだろ。
そうそう簡単に諦められねえって。」
あくまでも可能性の話だったけど、
晴海としてはそうだったらいいと
願ってしまう内容だったんだろう。
連絡を取って会うことになったその日、
山代先生から出たのは諦めと謝罪の言葉。
「俺、地元に戻ることにしたよ。もう
会うこともないだろうと思って、最後に
あんたに謝りたかったんだ。…すまん、
あんたの期待に応えられなくて。」
山代先生の心の奥底にあるものはまだ
わからないけど、彼は諦めを選んだ。
それでもまだ晴海は諦めたくなかった。
「…僕は、僕はまだ諦められない。」
ふざけるな、とその場で山代先生は
帰ってしまったけどやはり諦めない。
家を訪ねる、拒絶されるもまた来ると。
漫画に関する道具や資料を一式処分し、
地元に帰る準備を進めている所だった。
そこに晴海はまた資料を追加する 笑
山代先生の本当の心はどこにあるのか、
本当にまだ、彼自身未練があるのなら
晴海の努力がいい方に繋がるといいね。

晴海が持ってきた資料が地味に高額で
捨てるにも気が引けた山代先生は晴海の
家のポストに突っ込んで返そうと考えた。
でも千石に見つかり不審者扱いされる 笑
まあいろいろあって、家に上げることに。
漫画家さんなのだと話をすると、子供達
は絵を描いてほしそうにして寄ってきた。
魚が好きだという清一郎にその場で
クラゲを描いてみせると、キラキラ
した目で嬉しそうに笑ってくれる。
自分の絵を見てくれる人の笑顔、
きっとこれって作家さん的には
すごい嬉しいんじゃないかな ?
わかんないけど、清一郎を見る
山代先生の表情が随分と優しくて
そうなんじゃないかなと感じた。
もしかしたら、そういう気持ちを
思い出すきっかけになれたかもね。

一緒に賑やかな夕食を済ませてから
山代先生を見送る晴海。相変わらず
漫画家を続けることには消極的な
発言をする山代先生だったけど、
そんな彼の言葉を晴海は否定する。
「何も描いてないなんて嘘ですよね。
何も描いてなかった人があんな絵を
描ける訳ないじゃないですか。本当は
変わろうとしていたんじゃないですか。」
晴海は諦めない、しつこすぎるって
くらいに諦めず、先生が描くという
日をずっと待ってると言ってのけた。
そんな担当編集相手に、山代先生も
きっと心動かされる所があったんだ。
その後、WEBでの漫画評価は上々。
山代先生は地元に帰り仕事も始めた
ようだけど、そんな中でも彼は地道
に漫画のネタを集め続けている様子。
晴海が信じてるように、きっとまた
漫画を書き始めてくれる日がいつか‥
ちなみに、ツイ○ター的な何かで
このコスプレ婆ちゃんのネタを
書いたらバズったらしいです 笑

テレビの影響か、愛梨がおつかいに
行きたいと言い出した、しつこく 笑
しばらくはダメだと言い続けたけど
諦める様子もなく、商店街の人達を
巻き込み、自分達も変装して見守り
ながらおつかいを実行することに。
愛梨と清一郎初めてのおつかいである。
基本的には愛梨はしっかりしてて
引っ張ってく感じで進む買い物。
でも途中たい焼きの誘惑に負けて
買い食いをしてお金が足りなくなり‥
既に食べかけのたい焼きを返して
来るなんて言い出す愛梨に対して、
お店のおばちゃんはおまけして
あげると気を利かせてくれるけど
「だっ、だめっ。いっかいおみせ
かえっておかねもらってこよ。」
いいじゃん、と言いはる愛梨に清一郎は
おばちゃんが気を利かせてくれたのは、
子供だから許されることだったろうね。
ちゃんとおつかいするつもりがある
なら、清一郎が正しい選択だろう。
愛梨一人だと突っ走り過ぎちゃうし、
清一郎1人だと進むのに慎重すぎる
ところが出てくるかもしれないけど
2人だから出来たことってきっとある。
こうやって、成長してくんだろうな‥
この後、千石の店に1度戻ってちゃんと
謝って、追加でお金をもらいおつかい
は無事やり遂げることが出来ました。

千石の整体も随分客が増え、店に
子供達2人を置いておくのは随分
手狭になってきてしまったこの頃。
パパ友?のアイディアでいくつか
習い事の見学に行ってみる4人。
そんな中の1つ、英会話でこんな
ことを言ってくれる先生がいた。
「セイイチローは友達と仲良くなるのに
チョット時間がかかるんだネ。だけど
セイイチローが仲良くなりたい!思う
ナラゆっくりしてなればいいんダヨ。」
清一郎の気持ちと、愛梨も英語話せたら
ママに会いに行ける?って考えていて、
2人は英会話をやることに決めたみたい。
手狭っていうのがきっかけだったけど
2人にとって大きな成長に繋がることと
出会えた、気持ちの変化も大切だね。
愛梨の気持ちを受けて、千石も
こっそり英会話を学び始めたとか 笑

ここから先は壇姉妹のお話です。
進路、やりたいことが見つからない
茜は、友人の助言で自分が何してる
時が1番楽しいかを考えてみた。
そこで頭に浮かんだのが、姉や
料理教室のみんなと料理してる時。
「…私卒業したら料理の専門学校
行ってお姉ちゃんのお店手伝う!」
茜なりに一生懸命考えて出した答えだろう。
でも姉はそれに対して即答、ダメだと言う。
「受験が嫌だからって
そんなこと言わないの。」
決してそんな理由ではなかったけど、
ゆかりさんは茜の話には聞く耳を
持たず、一方的に否定するばかり。
茜はもういい、と逃げてしまった。
茜には、姉に言えていないことが
いろいろあった。やりたいことが
はっきりしていないのに大学に行く
のはお金が勿体ないんじゃないか。
姉には姉なりの考えがあるかもだし。
千石があの整体を継ぐまでの話を
少ししてくれたんだけど、それぞれ
思う所があるからぶつかるんだろう。
姉妹なんだから、きちんと互いの
想いを伝えあってけばいいよね。
頑張れ、茜。ゆかりさんも心配
なのかもだけど話聞いてやって。

その後、互いに何を考えてその
選択をしたのか、否定をしたのか
壇姉妹は話をすることが出来た。
妹なりの心配や気遣いも、姉で
経験や苦労をしてきたなりの
気遣いもやっぱりあったようだ。
茜も茜で、多少なりとも姉に
甘えてしまう部分はあった。
今はまだわからないでいても、
茜が自分の本当にやりたいこと
見つけられる日が来るといいね。
好きなこと、やりたいことって
結構見つけるの難しいと思う。
それでも、こうやって茜のことを
思って支えてくれる人がいるから、
きっといつか何か見つけられるよ。
~ひとこと~
9巻ラスト、晴海が愛梨と清一郎を園
に送った後だろうか、園内を覗いて
いる女性がすぐ隣に立っていた。
その女性‥もしかして千石母かな?
あまりいい記憶としては残ってない。
そんな彼女が今園の前に、孫・愛梨
の顔でも見に来たというのだろうか。
少々の不安を残し10巻に続きます。
よかったらまたお付き合い下さい。