著者
漫画:山口いづみ 先生
原作:谷瑞恵 先生

突然叔母から聞かされた話だった。
明里が幼い頃に母親と離婚した父親は
死んだと教えられてきたらしいのだが、
それを実は生きている‥と言われた。
付き合っている人がいるという話を
したからだろう。結婚を考えてるのか、
考えてるならそういうことは教えて
おいたほうがいいだろうから‥なんて。
明里の母親は既に再婚しているようで、
実の父親の話をされているんだろうが
明里には実感がわかなかっただろう。
今更、何を言い出すんだろうくらい
の感じだったんじゃないだろうか。
でも‥こういう話を秀司にする
べきなのかとか‥きっと明里は
考えてしまうのかもって思った。

秀司が高校の同窓会に参加した。
その中に、これまでは参加する
ことのなかった悪評の多い川添が
来ていたところからこの話は始まる。
10年近く昔‥彼らがまだ高校生
だった時、川添がよく電車で
乗り合わせる女性とがいた。
地味めな眼鏡の彼女は沢口という。
真相だけを話せば、沢口が痴漢に
遭い川添がその犯人を捕まえた。
その時に彼女が落とした時計を、
タイミング悪く返しそびれた川添は
悪評の多い自分ではなく好青年がある
横山(画像の彼)が助けたことにして
時計を返してもらえばいいと考えた。
そんなふうに思う時点で、川添が
本当はいい人だってことくらいは
ちゃんと考えればわかるよね。
でもこの横山って彼も良い奴で、
沢口のあまりの態度に怒って、
時計を返すことをやめたのだ。
時計は沢口のもの、それが大事な
ものだろうと思って川添が落とさ
ないようにとチェーンをつけた。
沢口は本当なら恩人でしか無い。
昔から見た目が少々怖いからか
悪評が多く、本当は悪いことなど
何一つしていないのに周りには
そういう目で見られ続けた川添。
それを沢口も同じ目で見て、
真実を知っても自分を守る
ために川添は時計を盗んだ
泥棒なんだと言って嫌った。
川添と、横山と、沢口と‥
あの頃のわだかまりを抱えた
まま今まで生きていた3人が
秀司と会い話したことで本当の
ことを、真実と後悔を語った。
川添と話せば話すほど、彼が
悪いやつでは全く無いことが
よくわかった‥偏見も噂も、
ほんとひどいものだと思った。

それぞれの思いを、真実を知って
ただ一人悪者みたいにされてた
川添まで彼らの思いや言葉が届く。
昔‥横山はちゃんと時計を返した
と伝えていたんだね。彼なりの
優しさだったのかもしれない。
昔から川添と横山は交流があって、
きっと友達だったんだろうと思う。
あの時計の思い出は良いことも悪い
ことも含め川添と横山共通の思い出。
大人になって失敗したりもして、
それでももう間違わないようにと
そのきっかけに動いたのかもね。
そして沢口も‥大人になって
2人の本当の思いに気がついて。
自分の弱さで川添を嫌ったことを
後悔‥していたのかもしれない。
「あのときはごめんなさい。」
直接はやはり無理だったけど、
そう謝罪の言葉を送ってきた。
昔から悪評ばかりつけられた川添‥
これから彼自身が変化するまでは
そういうのは続くのかもしれないけど
こうやってちゃんとわかってくれる
人もいたと、諦めなくて良いんだと
思えるいいきっかけになったと思う。
今度こそ‥自分を諦めないで
前に進める人になってほしいね。

“あかり”が描いた絵を拾ったと
太一に渡された明里だったが、
自分には一切見覚えのない絵。
「びっくりするわよね。
障害事件を起こしたなんて。」
先程、叔母からそんな話を
聞かされたばかりだった。
死んだと教えられた父親。
記憶から消してしまっていた
過去を全部思い出したとしても、
それくらい幼い頃のことなんて
きっと忘れていることは多い。
こういう‥わからないことが
あるのってすっきりしないよね。
これは明里の物なのか違うのか。

佐伯という男性が娘を探しているの
だという。武藤あかりという女性を‥
話を聞けば、明里と明里の実父の
過去と随分似ているように感じた。
そんな佐伯さんと会ってから、
こんな話を聞くことになる。
「実の子を捜してるっていう
詐欺師がいるらしいですよ。」
佐伯さんの話、詐欺師の噂。
明里の中では信じたくない噂
だったけど‥知ってしまったから
もう彼女は真相がわかるまで
関わろうとしてしまうんだろうな。

明里が10歳になる頃、母親は
この人と再婚して、明里には
お義父さんと言う存在が出来た。
「当時僕はお母さんに片想いしていて
ね、とはいえ僕もバツイチで臆病に
なっていたし海外勤務が決まっていて
気持ちを伝えることは出来なかった。」
明里が5歳くらいの頃、遊園地のコスモス
畑に行った時の思い出話をしてくれた。
あの絵はその時に明里が彼に贈ったもの。
お義父さんにとっての自分が
そんなふうに思ってもらえてた。
明里がキューピットだったんだね。
こんなふうに思ってもらえてた
ってすごく幸せに思うことだろう。
「よかった。あの記憶が
お義父さんとの記憶で。」
実父については相変わらず何も
知らないし、ちょっと危ない人
なのかもしれないことも変わらない。
でも、明里にはお義父さんがいる。
もう、きっと何も怖がることはない。
それにそのうち‥秀司をつれて家族の
もとに行けるんじゃないかなって思う。
胸を張って、自分の家族ですってね。

武藤あかりさんという人を探すが、
そんな名の人は存在しなかった。
でも、娘さんは本当に存在した。
明里の父親のように、いろいろと
問題のある人だったようで親族から
遠ざけられた存在だったようだが、
それでも佐伯さんが彼女に会いに
来たのは‥きっと父親としてただ
会いたかっただけだろうって思う。
娘さん‥父親は死んだって言ってた。
きっと明里と同じようにそう教えられ
そういうものなのだとこれまで生きて
来たんだろうなって思うけど‥でも
やっぱり忘れたことはなかったのかも。
父親をもう死んだ人、明里が会った
彼を幽霊‥なんて言ってくるけど、
幼い頃の父親とのやりとりをきっかけに
自分には欠かせないピアノに出会った。
そして今もずっと続けているもの。
そういう繋がりも、あるんだろうな。
いろいろと失敗して、ダメな所ばかり
だった彼でも、父親としての一面を
確かに持ち合わせていた‥娘への
愛情だってきっとあったんだから‥
これまでの後悔とかいろいろで
死んでしまおうなんて思った彼も
これからただの父親になれる日が‥
努力次第では人は変われるから。
5日はそんな未来‥きっと作れる。
~ひとこと~
今回は、秀司の同級生の話も出て
来ていたけれどそれ以上に親子、
や家族に関するお話がすごく
印象的に残った巻だと感じます。
過去、記憶、曖昧なものです。
でも明里にとって家族っていう
存在は今明確なものになった。
これからも、そんなふうに少しずつ
自分の居場所や大切な物を大切と
気付いていけたら良いなと思った。
5巻はまだ少し先になると思います。
良かったらまた、続きが出た際に
レビューさせていただきますので
お付き合いいただけたら嬉しいです。