兄の嫁と暮らしています。 第6巻

著:くずしろ 先生

あれから希母は無事退院した。

「…やっぱ私家戻った方が
いいと思うんだけど…。」

数日経ってもすっきりしないまま
モヤつく志乃は友人にそうもらす。

希さんはきっと心配だからダメだと
言うだろうけど、志乃はそんなふうに
一人で何でも頑張ってしまう希さんの
ことが心配で仕方がなかったみたいだ。

自分が家に戻ればきっと負担が減る。
そう思って、直接伝えてみるものの
希さんは気にするな、私は大丈夫と
笑って済ませ聞く耳を持たなかった。

「ちがうじゃん、希さんのばかっ。」

そこからはお互い大爆発したように
叫び合いの口喧嘩に発展してしまった。
希母が来たことでその場は止まった。

でもお互いに気持ちは晴れないまま。
余計にもやもやした気持ちが増えて
しまっただけだったかもしれないね。

「なんでわかってくれないの。」

わかってほしいのに伝わらない。
姉妹だろうとそうでなかろうと、
きっと人と人ってそういうもの。
でもそれが自分のこととなると
思うようにいかないものよね。

希さんの志乃への態度を見て希母は
志乃を味方するような態度をとった。
多分味方というより、今の志乃が昔の
希さんに重なって見えたんだと思う。
そして最後に、こんなことを言う。

「そうやって自分の気持ちばっか押し
つけてたら、志乃ちゃんだって距離を
とるかもしれない。あの子はまたあんた
のところに戻るとは限らないんだからね。」

希さんは怒ってるとかじゃなく、
怯えているに近いような気がした。
何にってのはよくわかんないけど、
もしかしたらそばで見てないと
また急にいなくなっちゃう、とか。

「それでも私は帰るから。」

希さんの気持ちだって考えてるけど、
やはり最後まで意見を通す志乃に対し
向き合うことを拒む態度の希さん。

口喧嘩になったら、または志乃が遠慮して
しまったらきっとこうはならなかったろう。
不安がる希さんを安心させるかのように、
志乃は大丈夫だ、すぐだからと伝えた。

そして最終的に、希さんが折れた。

「お言葉に甘えて一人で頑張って
みてくれるかな。ちょっとの間
だけ…私も、頑張るから…。」

そう言って、志乃の前では笑顔を
見せる希さんだったけど‥心配ね。

その後、翌日かな?

希さんは志乃を家まで送り届けた。
無事見送ってドアの外に、まるで
取り残されたような希さんの表情は
酷く辛く苦しそうなものに見えた。

希さんの気持ちってホントのとこ
なんなんだろう、自分でもちゃんと
わかってないような状況なのかな?

志乃はまだ、友人達に相談したり
するから何考えてるかわかるんだ。

でも希さんは一人で溜め込むから、
そういう顔されるとホント心配なる。

一人暮らし状態の志乃宅に
友人達で集まった時のこと。

翔太郎、志乃のこと好きなのね。
志乃にとっては一友人であって、
異性として見てないんだろうな‥

だから、希さんの影響かやたらと
距離が近くて、隠してはいるけど
それにかなり動揺してしまった。

この子も、苦労するねほんと。
でも実際、志乃は恋愛でも出来たら
心の拠り所と言うか、1つだけじゃ
なくなったらもう少し気持ち楽に
なれたりするんじゃないかって思う。

希さんに関しては大志くんのことも
あるしそう簡単なことではないと
思うけど、志乃は出来なくないだろ。

なんて、ちょっと翔太郎を応援
したくなったお話だった 笑

でもほんとに彼氏作っちゃったら
希さんの方が落ち込みそうね 笑

志乃がそばにいない時の希さんは、仕事
こそちゃんとやるもののそれ以外では
なんだか無気力っぽい感じに見えた。

職場の飲み会でなんかやけ酒みたいに
顔が真っ赤になるような飲み方するし。

志乃が修学旅行に行っている間、希さんが
仕事の時間は律子が大佐を見ててくれた。
仕事後、様子を見に来た希さんはそこで
気が抜けたのかやる気の無さ大放出 笑

そんな時、旅行先の志乃からの着信。
っでこの顔、さっきまでの無気力は
どこへ行ったのかめっちゃ嬉しそう。

この電話で、一体何を話したのかは
ここでは明かされなかったんだけど
電話を終えた希さんはやたら幸せ
いっぱいな笑顔を律子に見せてきた。

「ぜったいおしえない。律子は笑うから。」

なんて言いながらも話したそう 笑
学生時代、恋人の話でのろけてきた
ように、今は義妹のことでのろける 笑

希さんはほんと志乃が大好きだよね。
希さん、もしかしたら辛い時よりも
嬉しいことがあった時友人に聞いて
ほしい、頼りたいって人なんかな?

大志くんが亡くなった頃、律子は
希さんのそばにはいなかった。
それを翔太郎は責めていたんだけど、
律子はそれを、希はきっとそばにいる
ことを望まないって言っていたんだ。

実際、そうかも知れないなと思った。
希さんのことわかってくれてる友人が
いる、それだけでも少し安心した。

志乃が修学旅行から帰ってくる日、
希さんは一足先に家に帰って志乃を
出迎えるため夕飯の準備を進めていた。

そして帰宅‥やっと2人で家に帰宅。
志乃、希さん、おかえりなさい。

志乃の帰りを待ちわびていた希さん、
に対して志乃はなぜか帰りたがらない。

そんな態度の理由が旅行中のあの
電話で話した内容だったみたい。

そっかーお姉ちゃんって呼んだか ♡
希さんめっちゃ嬉しかったんだな~。
志乃は気恥ずかしさとか、希さんが
どんな態度に出るか予想できたから
帰りにくいって感じたんだろう。

ほんとお主ら、かわいいわ !! 笑

志乃と希さんは、その後お姉ちゃんと
呼んでもらえないことに少々の不満を
持ちつつも楽しそうに毎日過ごしてた。

そんな中、志乃はバイト先の人たちと
ファミレスでご飯を食べることになる。

初戦バイト仲間、志乃の家のことを
知らない人のほうが多いのが事実で、
例の一件から立花さんは多少は把握
してるだろうけど、そんなことは
知らずに無神経なことを言う人も
そりゃあいる、悪気なんてない。
だが深くも考えてない他愛ない話。

家族にいなくなってほしい…なんて
思うわけがない、いなくなんか
なってほしくなかったに決まってる。

こんな話を振られ一瞬固まる志乃、
同時に立花さんも冷や汗をかき俯く。

そして、全く関係のない嫌がらせで
その話を断ち切ってくれたのだった。
後でお礼を言う志乃、でもそれに対し
なんのこと?ととぼけて誤魔化した。

知ってるからこそ出来たことだけど、
立花さんはいい人なんだろうと思った。

バイト仲間でのご飯会が終わった後
志乃が立ち去るのを見送った立花さん
の表情は酷くつらそうなものだった。

志乃を大志くんと重ねてしまった
ようで、昔を思い出したのかな。

詳しいことは全然わからない。
大志くんと立花さんのこと。

彼が一体何を抱えているのか。
ただ、志乃と希さんは一緒に
いることで少しずつ前に進む
ことができてると思うけど、
そういう支え合える誰かが
いないまま過ごしてきたのか、
立花さんが随分もろく見えた。

辛い思いを誰にも言えず、きっと
知らない人には話せないし、志乃に
話すなんてきっと彼には出来ない。

前に進んでる彼女の記憶を辛い過去へ
引っ張り戻すなんてきっと出来ない。

一人で溜め込む人はすごく心配だ。
立花さん、大丈夫なんだろうか。

~ひとこと~

志乃は大丈夫かなって思ってます。
あと頑張って誕生日プレゼントさえ
渡せば、その勇気を出せれば !! 笑
彼女もまだ脆い部分が多いけど、友人
もいる、希さんもいる、翔太郎もいる、
立花さんもいる、だからきっと大丈夫。

でも希さんはまだ脆さが目立つ。
志乃との元の生活に戻ったから
一先ずは大丈夫かなと思うけど。
たまに見せる絶望みたいな表情が
酷く不安をかりたててくる。

そして今一番心配なのが立花さん。
彼が何を抱えているのか、まだ
彼の死を受け入れられてないのか。

わからないことが多いけど、きっと
彼は胸の内を話せる相手がいない。
なんでもとは言わなくても、心の
中に溜まったものを吐き出さないと
そのうち崩れ落ちてしまいそうだ。

‥まだまだ不安なことが多いです。
少しでも早く、辛い思いを減らせたら、
乗り越えることが出来たらと願います。