兄の嫁と暮らしています。 第5巻

著:くずしろ 先生

「大志くんに『合わせる』んじゃ
なくて、染まっていくような感覚。」

今は亡くなってしまった兄の
存在が、今も義姉の中にずっと
残っていることが嬉しかった。
多分‥そういうことなんだと思う。

(“うれしい”でいいのか)

希さんも志乃も、彼の死を頭では
理解していてもまだどこか受け入れ
きれてない部分が多くある気がする。

きっと大切な人の死ってそういう
もので‥遺された側の辛さはかなりの
ものだと思うけど‥それでも、ここに
まだ残ってる、生きてるって思える
ことはとても嬉しいことなんだね。

志乃のバイト先での出来事‥ちょっと
した会話から、志乃に兄がいるという
話になる。姉がいることは知っていた
らしい周囲も、兄のことは知らない。

そりゃあ‥亡くなってしまっている
存在を紹介することはないだろうし。
自然なことだったのかもしれないけど‥

姉の年齢はすんなり今年で25だと
答えるのに、兄の年齢を聞いたら
24くらい‥と曖昧な回答をした。

「なんで実のお兄さんが24くらいで
お義姉さんは24ってハッキリ言えるの?」

聞いてしまってから後悔したらしい。
バイト先の彼・立花健吾という人。

もしかして‥の先に一体なんと
続けようとしていたんだろうか。

その内容は、後に描かれることから
想像することが出来るんだけど‥

だいぶ無神経なことをしたね、彼。
兄の存在、死を整理しきれていない
彼女には随分と酷な内容に思えた。

バイト中からどうにも具合が悪そう
だった志乃は、その後体調を崩して
学校も休んだ。高熱が出てしまった。

具合が悪いせいもきっとあったろう。
でもそれ以前に、いろいろともやもや
した気持ちが晴れないままでいた。

変わってしまうこと、その変化を
受け入れることを怖がってるのかも。

希さんは仕事に行かなきゃで志乃を
看ることは出来ないからと、彼女は
りっちゃんに看病を頼んだようだった。

世話を焼きすぎず、でも必要なときは
いつでも話しかけて年ごとを始める
りっちゃんに、志乃は話をしてという。
余計なことを考えてしまい寝れないと。

立花さんに言われたことを含め、
変化や兄のことじゃないかな。
どうしても考えてしまうこと。

本当に忘れてしまえるのなら確かに
気持ちとしては楽になるかもしれない。
でも‥志乃自身忘れてしまいたいわけ
ではないと思うし、決して忘れては
いけないことなんだろうとも思う。

だからこそ、りっちゃんが言ってくれた
言葉は志乃の心に刺さったんじゃないかな。

時間がかかるかもしれない、それまで
苦しい思いだってするかもしれない。
それでもいつか、自分にとって最善の
落とし所を見つけられるようになる。

だから大丈夫だよって、そう思える。

立花さん‥志乃に対して言ってしまった
ことを後悔して謝罪したいと思っていた。
でも何からどう謝ったらいいのか自分の
中でも整理がついていなかい状態で‥

その日はシフトが合わず、次バイトで
会った時に‥なんて考えたんだろう。
まさかの、客として来て会ってしまう
なんて思いもしなかったんだろうな 笑

テンパってめっちゃキョドる立花さん
だったけど、なんとか言葉を振り絞る
ようにして謝罪の言葉を伝えると‥

「…あーー…あれ…あれは…。」

暗い表情をしながら溜めて喋る志乃に、
ビクついてしまう立花さんだったけど‥

「別に、もう全然大丈夫です。」

志乃は笑顔を見せてそうに言った。
そこには希さんも一緒に来ていた
ようで、志乃は義姉だと紹介する。

大志くんと立花さん‥知り合い
だったんだね。それで希さんの
話を聞いたことがあったんだろう。

大志くんと同じ名字の志乃、そして
年齢、兄の嫁だと紹介された女性の
名前‥きっと勘付いていたんだろう。

亡くなった友人の妹かもしれないと。

希さんの誕生日が翌日に迫った。
思い切り喜んでほしい‥ただその
気持ちだけで一生懸命プレゼントを
考えて、渡し方にも悩んでいる志乃。

いろんな人に相談を持ちかけるも、
中々自分の中で答えは出せずにいて‥

立花さんに話した時、志乃の中で
やっと納得いく答えが出たようだ。

この時、もしかしたら立花さんは
希さんのこと‥俺の知り合いの彼女
って言おうとしたのかもしれない。

志乃が言葉を遮って完全復活した
からその先は聞けなかったけどね。

ただ去り際、立花さんはこう言った。

「プレゼント…ちゃんと渡せると
いいね。おねえさん絶対喜ぶから。」

言葉で伝えたのはそれだけだけど‥

(…渡さないと、喜ぶ
ものも喜べないし…ね。)

そんな思いとともに、
陰った表情を見せていた。

立花さん、大志くんのことを思い
出してそんなことを考えてるのかも
しれないけど‥その表情の意味は
一体何だと言うんだろうか。

お祝いしたかっただろうに、もう
プレゼントを渡すことも出来ない
大志くんを思ってだったのかな。

希さんの誕生日当日、学校の
帰り道にケーキを買いに行って
普通にプレゼントを渡すことに。

そうやって学校が終わるのを楽しみ
にしていた時予期せぬ連絡が入る。

それは、希さんの母親が事故に逢って
病院に運ばれたという内容だった。
大慌てで病院に行く希さんだけど‥

そこには、随分といつも通りで平気
そうな母親がそこにいた。骨折した
らしいが、入院の理由は盲腸だとか。

母親がこのままいなくなってしまう
かもしれない‥という漠然とした
不安にかられてしまったのかもね。

血相変えて来たのに、母親の方は
全然何でもないような態度だし‥

さらっと誕生日おめでとうなんて言う。
昔から、お母さんはいついなくなるか
わからないんだからといろんなことを
希さん自身で出来るよう教えてきた。

一人でも大丈夫なように‥大事だから
こそそう育ててきたのかもしれない。
でも希さんからしたら、そんな母親の
言葉が嫌で嫌で仕方なかったみたい。

冗談でも、いなくなってしまうかも
しれないようなことを言われるのは
辛いと感じてしまってたんだろう。

それはきっと、大志くんが亡くなって
からは余計に悪化したんじゃないかな。

お母さんとの仲、あまり良好ではない
ふうだったけど‥こうやって見ていると
ただ愛情を上手く伝えるのが苦手なだけ
で心から娘を思っているように見えた。

「私しばらく実家帰るから、いいよね?」

母の入院をきっかけとしたことだと思う
けど‥希さんは急にそう宣言し、志乃を
連れてしばらく実家に帰ることにした。

「お邪魔してよかったんですかね。私は
…てっきり希さん一人で戻るものかと…。」

そんな志乃の言葉に、希さんは
志乃を優しく抱きしめて伝える。

「バカねぇ、私が志乃ちゃんを置いて
どこか行くわけないでしょー?」

ちょっと安心したような、照れた
ような表情を見せる志乃だったけど‥

きっと志乃は希さんと2人の生活に
やっと落ち着ける場所を見つけられた
ばかりだったんじゃないかと思う。

突然希さんの実家での暮らしで落ち着く
場所を見つけられるわけなかった。
逆に希さんにとって‥きっとここは
どこより気が抜ける場所かもしれない。

この日、希さんに誕生日プレゼントを
渡すこともおめでとうを言うことも
出来ないままに終わってしまった。

「希さん、やっぱり私たち別々に暮らした
方がいいと思うんだけどどうかな……。」

寝落ちてしまった希さんのすぐ横
で、志乃はそんな言葉を口にした。
きっとそうしたいって意志じゃない。

でも希さんにはその方がいいんじゃ
って、思ってしまったんだろうね。

自分がいるから希さんは自分との
生活をしなければいけない状況に
なってるんだって‥やっとそういう
不安も落ち着いてきたと思ってた。

でもここまで気の抜けた希さんを見て
しまったら、やっぱ無理させてたかも
と思ってしまうのかもしれない。

‥難しいよね、ほんと。

~ひとこと~

私には異性の兄弟はいないから、この
物語の2人のようなことを経験することは
絶対にないと思うし、だからこそ理解が
出来ない部分もちょいちょいあります。

だからこそ、そういう感じなのかな‥と
想像しながら読み勧めているお話です。

兄弟が亡くなる、恋人‥旦那様が
亡くなってしまう経験もありません。

改めて幸せなことだと感じています。
遺された側の辛さ‥それを抱えながら
支え合って生きていく人たちの思い。

なんだか雲行きが怪しいところで
ちょっとモヤついてしまいますが、
互いの気持ちを伝えあってほしい。

この2人はいつもいつも、本当に思って
いることを口にしなすぎると思うから。