シニガミ×ドクター 第3巻【完】

著:唐々煙 先生

院内にいた多くの者は、小舟で
院の外に出て治療を受けている。

宗馬先生は、たとえ自分が死んで
しまったとしても一人でも多くの
患者を助けようとするだろう。

文字通り命に代えてもってやつ。
それを償いに思っているっていう
こともあるのかもしれないし…
そこまでしても決して自分は
許されていい人間じゃないと
感じてしまってるのかもしれない。

命がけで患者を守るっていうのは
すごいことだと思う、本当に。
でもそうやって自分を粗末にして
宗馬先生を心から心配してる人の
気持ちには‥気づけてないよね。

彼の罪の意識、どうにも出来ない
ことかもしれないけどもう少し、
和らげること出来ないのかな‥。

敵が盗んでいった極楽苑の
データが編集され、誤った
情報がニュースに流された。

極楽苑という団体はきっとまだ
知名度が低く、シニガミもまだ
そこまで世間に知られてる病では
ないのだろう‥それをいいことに
極楽苑がシニガミの病原菌りの
ドラックを売りさばいていると
いう内容のニュースが流れたのだ。

敵と戦うため広報室で戦い続けた
広報部‥でも気づけばもうそこまで
シニガミは広がってきてしまった。

命に変えても敵にウイルスを
送り込み内側から攻撃を続け
ようとした梶原だったけど‥

それを止めたのは部長だった。
広報室から梶原を追い出すと、

「聞け梶原、この船を
10分後に爆破させる。」

極楽苑を守るために、既に感染
してしまった部長達は最後まで
広報室で戦うんだろう‥そして
その爆発とともに‥その先は、
広報部のエースである梶原が
彼らの意思を継いでいくんだ。

だから、彼が追い出された。
大事な仲間を犠牲にしなければ
ならないなんて辛い選択だろう。

それでも、前に進まなければ
きっとこの世界はシニガミに
食い尽くされて滅んでしまう
かもしれないんだものね‥。

この後、無事梶原は船を脱出。
そして‥13年前の悲劇が再来。

敵の情報がわかってきた。主犯は
一之瀬宝良、元極楽苑スタッフ沢村、
数年前に妹を亡くし今は宝良に忠誠
を誓っているという黛、三谷田、
最後の一人は素性不明で年齢や
外見も何一つ確認できていないが、
おそらく宗馬に化けていた張本人。

‥そう考えられていた。それで
間違ってはいないのだけれど、
三谷田は意図的にテロリストを
院に招き入れたわけではなかった。

IDを盗まれたらしい‥元々は
三谷田も彼らと同じ意志をもち
極楽苑を恨んでいた存在だった。
でも途中で裏切ったと言われてる。

一体何があって、そこに
どんな誤解があったのか‥

昔同じ施設で育った三谷田と宝良と
名無し男(カオナシ‥と呼ばれてた)。
その施設に突然シニガミが現れたらしい。

そこである大人達がしていた会話‥
それをを聞いて‥今回のシニガミ
被害は極楽苑が知名度を上げる
ための自作自演だったと思った。

確かに、この状況ではそう思う。
でも三谷田は‥勘違いだったと
言うような内容を告げていた。

宝良は兄に両親を奪われ、この時
施設という居場所も奪われ‥全て
兄のせいとひたすら宝良を恨んだ。

この事件で、元々身体が弱い宝良は
大量に花粉を吸い、1年以上生死を
さまよったあげく、ドクター以上
の強い血清を手に入れたらしい。

それによって、定期的に気を失う
ほどの発作を起こしシニガミが暴走
するため一人隔離された場所で人に
触れることも出来ず孤独に生きていた。

宝良が抱えるもの、そして他の3人が
抱えるもの、三谷田が伝えようとして
いた誤解とは一体なんだったろう‥!?

つらい思いを経て今回の犯行に及んだの
だとしても、きっとこの行為は誰一人
救わない。復讐は何も生み出さない。

つらすぎるよね、ほんと。

彼女‥ドラックを売っていた女性
は敵グループの一人である沢村だ。
彼女はわりと新入りらしいんだけど、
入ってきた理由が極楽苑にいた際に
恋人を殺されたのだと言っていた。

「わざと花をばら撒いて自作自演する
極楽苑の実態を!彼はそれに気づいて
殺されたのよ、あんたたち極楽苑にね!!」

でも真実はそうではなかったみたい。
自作自演をしていた側の1人だった。
だから、亡くなることになったのか。

ごく一部だとしても、そういう存在
がいた事実は変わらないんだろう。

「それでも生きていかなきゃいけ
ないんですよ。僕にしか救えない
人がいる。ドクターですから。」

でもそんな世界だからこそ‥彼、
三谷田のようなドクターは戦い続け
なければいけないのかもしれない。

恨むべきは極楽苑ではなく、その
ごく一部の連中っていうことだね。

隠れていた宝良達の居場所が判明した。
広報部が最後に送りこんだウイルスに
よってシールドが破られたのだろう。

それにより、彼らの目的が判明する。

「世界は破滅します。」

世界を破壊して、自分たちもそこで
死んでしまうつもりなんだろうか‥
自分がしたことの後始末をするため、
弟・宝良の元へやってきた宗馬先生。

それによって、彼らの目的が
仮定通りだったと判明する。

「シニガミの花粉を散らさないよう、
冷凍(コールド)ミサイルを撃ちます。」

ミサイルを撃つ先には宗馬先生もいる。
ミサイルを撃ったら‥先生が死んで
しまう‥ヒヨは必死で止めようとした。

でも宗馬先生はそれを望まなかった。
彼自身、自らを犠牲にしてでも全て
終わらせようと乗り込んだのかも‥。

「考えるまでもないだろ。大勢の命が
かかってる。いままで俺と一緒に
いたなら何を選択すべきかわかるな?」

その宗馬先生の言葉に、ヒヨは
震えながら反対する口を閉ざした。

「いい子だ、おまえは世界で
一番優秀な俺の助手だよ。」

ヒヨ、辛かったろう。
きっと北城さんだって辛い。

それでもその選択肢しかないなら、
宗馬先生が全て背負う気でいるなら
2人はそれを見送るしか出来ない‥

コールドミサイルが発射された。

(兄が憎い、ドクターが憎い、
極楽苑が憎い、けど、一番憎い
のはそれを作り出した死神の
花。いまのオレ、そのもの。)

宝良がずっと一人で抱えてきた思い。
どうにも出来ない現実、極楽苑や
兄を恨むことでしかきっと生きて
来られなかったんだろうって思う。

ずっと孤独で、寂しくて怖くて
‥そんなのを一人で抱えてた。

– – – – – – – – – – – – – –

この一件から、花・シニガミという
ものが世に知れ渡ることとなった。

近くにいた梶原は、凍傷がひどくて
しばらくベッド住まいになりそう
だが、命に別状はないようだった。

そして宗馬先生は‥見つかっていない。

「あの船で咲いた花は一つだけ。
どちらかは生きていると思いたい
のですが…あれだけの大輪ですし
二人分だとの見方もできます。」

そう話す北城さんにヒヨは笑顔で

「きっと生きています。
宗馬先生ですもの。」

そこから‥はっきりと生きていた
と言う描写はないまま完結した。
きっと生きているだろうって、
私も信じてみたいと思いました。

~ひとこと~

シニガミ×ドクター完結しました。
これは、悲しいバッドエンドかな?
だいぶ曖昧な終わり方をしている。

広報部の皆さんのことだったり、
宗馬先生に関してはハッピーエンド
とは言えないけれど、無事に世界を
守り極楽苑も守り抜くことが出来た。

そういう意味では、宗馬先生が
命を張って守りきったハッピー
エンドなのかもしれませんね。

唐々煙先生のお話は深くて、
心情が伝わってくる描写が
本当に上手くて‥泣けます。

それを上手くお伝えできているか
不安ではありますが、少しでも
この作品の素敵な所をより多くの
人にお伝えできたらと願います。