著:空木かける 先生

悪夢を通して、空くんは何度も
パックが経験してきた怖い思いを
体験して恐怖を知っていたから‥
この時の空くんはどう見たって
冷静ではなかったように思う。
でも冷静であるようずっと自分に
言い聞かせていたような立秋は
いつだって冷静に考え判断した。
ムクムクの助けもあり部屋にいた
コレクター達のスキをつくと、
2人は屋根裏から部屋に降りた。
箱の中にいたのはやはりパック。
血まみれで、わずかに意識はあった
もののどう頑張っても助けることは
できないような状態だったのだろう。
そんな死んでしまう際にムクムクは
白いモヤのようなものを吐き出す。
今回コレクターのスキをつく時も
以前山姥に襲われた時もムクムクは
黒いモヤを出してて、それは悪夢を
吹き出して見せているようだった。
じゃあこの白いモヤは‥たぶん
パックの記憶だったんだと思う。
パックがムクムクに立秋を助けて
ほしいとお願いしてたこととか、
お札のせいで部屋に入れなかった
頃はいろんな生物達にいい方法は
ないか聞きまわっていたこととか。
バクの力で助けられないのなら
呪いを解く方法はないかと考えて
聞きまわっていたこともあった。
ムクムクはそんな過去の記憶を立秋に
しっかり伝えておきたかったんだろう。
ムクムクのおかげでパックの
気持ちとかこれまでずっと自分を
思ってくれてたことを知った立秋は
「待ってるから!お前になら
何回呪われてもいいし次はっ
…次は絶対一緒に暮らそうな。」
立秋の優しい表情や温かい
言葉を聞いて、パックは最後に
嬉しそうに笑顔をみせて頷くと
そのまま黒い煙になって消えた。
結果的に助けられなかったのは
やっぱりすごく悲しいと思うけど、
それでもまたパックと立秋が再会
できて今度は誤解もなく笑顔で
お別れできたのは良かったと思う。
お別れ、せずに済んだらそりゃ
1番良かったとは思うけどね。
もう一度転生してきて再会する。
そんな未来が‥早く来たらいいな。
その時はこんな傷だらけ血まみれ
じゃなくて、嬉しそうな笑顔で
一緒に過ごしていけたらいいのに。
悪魔だからそう簡単ではないかも
しれないけど、きっと立秋とパック
ならそれもできてしまう気がする。

きっと気持ちの面では立秋だって
しんどくて仕方がなかったろうけど、
今は気を張って冷静にいなければ
危険だからと頑張ったんだろうな。
沈んだ表情を浮かべたままの空くんを
励ましながら、立秋はその場を離れる
準備終え2人立ち去ろうとしたその時、
意識を取り戻したコレクターの1人が
彼らの背後から銃を向けてきている。
「背後に気をつけて」
神様からのお告げにはそんな言葉が
あったのに、今の今まで空くんの
頭からは抜けてしまってたんだろう。
動揺する空くんを庇うようにして
立秋は空くんの前に壁になった。
銃声はした‥けど2人ともケガも
なく無事で、ケガをしているのは
そのコレクターの方だと気づく。
銃を持っていた手を何者かに撃たれた
のか銃を落としていて、空くんはまた
狙われることがないようにと銃を
奪おうとしたんだと思うけど‥
そいつはすぐに反対の手に銃を
握り直すと近づいた空くんの方へ
銃口を向け‥そこからは何が起きて
いるのかよくわからなかった。
突然現れたニワトリの頭を被った人、
彼が空くんを守ってくれたみたい。
銃を奪い、蹴って? 殴って?
あまりに動きが早かったのか、
見えたのは弾き飛ばされて気を
失ったコレクターだけだった。
先程コレクターの腕を撃ったのも
多分このニワトリの人だったと思う。
‥いや、一先ず無事で良かったん
だけど‥一体どちら様でしょう 笑

突然のことにちょっと固まってしまう
空くん、状況的に助けてくれたとは
いえ怪しすぎて警戒してしまう立秋。
そんな2人に対して、ニワトリの人が
最初にしたのは空くんへの注意と心配。
銃を持った相手に突っ込んだことを
怒られ、ケガがないかと心配された。
2人とも無事だと確認するとニワトリ
の人は2人を出口まで送って‥消えた。
彼の正体は教えてくれなくて、
通りすがりの鳥だなんて答えた
彼だったけど、そういう生物に
関しては詳しい人のようだった。
立秋は彼の正体をもしかして程度
には予想できているようだった。
他月からコレクターのことを聞いた時
一緒に保護官のことも聞いてたからね。
出口まで辿り着くとそこには心配した
山田さんがかけつけてくれてて、お礼を
言いたいと空くんが振り返った時には
もうニワトリの人はいなくなっていた。

山田さんは空くんと立秋を柏木家まで
送り届けてくれて、そこでモギちゃんを
除いた3人はみんなの無事を確認した。
モギちゃんだけ自宅待機で、もう大丈夫
と連絡はもらっていたがそれでも直接
会うまで不安な気持ちは消えてくれず、
彼女がようやく安心できたのは翌朝柏木家
に行って元気そうな3人を見た時だった。
話は戻って柏木家‥もう3時を
回っていたため立秋はそのまま
柏木家に泊まることになった。
部屋に2人になった立秋とムクムクは
悪夢をあげたりもしないとだろうけど
それ以上に大事なことを話していた。
これまでのことと、これからのこと。
立秋の言葉にムクムクはブブブブって
めっちゃ震えた後、立秋が抱き上げる
とぽろっと涙をこぼして何度も頷いた。
呪いがあるからとか、パックのお願い
だからとか、ムクムクと立秋が出会った
きっかけは理由があったかもしれない。
最初はその理由がなければ一緒に
いられないなんて考えてた立秋
だけど、もう大丈夫そうだね。
一緒にいたいから一緒にいるんだ。
ムクムクも、きっかけは何であっても
ただ一緒にいたかったのかもしれない。
同じように思ってもらえてないことが
悲しくて、ぷいってすぐに顔逸したり
立秋の言葉無視したりしてたのかも。
「初めて反応してくれた。」
立秋がそう言っていた。
パックを救えはしなかったけど、
今回の一件でパックが幸せな気持ちで
最期を迎えられたおかげか立秋の
呪いは綺麗に消えたようだった。
もうきっかけだった理由はないけど、
そういうのが全部すっきりしたことで
関係は良い方に変わっていくだろう。

一度家に帰ってから登校したから遅刻
して授業中に学校に到着した立秋は、
授業が終わるまで屋上で休んでいた。
そんな立秋を見かけた空くんは授業を
サボって様子を見に来て、今まで話す
ことができなかったことを伝えていた。
ムクムクに悪夢を見せられたことで
ムクムクの事情を知ったこと、悪魔の
性質の話など、その話の中にはこれ
まで描かれなかった内容もあった。
悪魔の転生とお腹の模様について‥
いつか天使になれるかもしれないのか。
悪魔は弱くてすぐ死んでしまうとは
いっても、きっと次転生して立秋の
そばにいるようになったら今までより
ずっと安全な生活ができる気がする。
だからこそそう何度も死んでしまうことは
ないだろうけど、これまで何度も殺されて
怖い目にばかりあってきたパックだから、
今後はそんな思いをせず幸せになれたら
いつか遠い未来で天使になってるかもね。
なんて、明るい未来を想像した。
でも確認されている天使の数ってほんと
わずかみたいで‥天使という存在が全て
悪魔が転生を繰り返した結果に生まれる
存在なのだとしたら、悪魔はそれほどに
つらい思いをしてる子ばかりなんだろう。
ほんと‥酷いことしてくれるよな。
保護官が頑張ったってそれでも限界
はあるし今回のように助けられない
ことの方が多いのかもしれない。
現実は厳しいかもしれないけど、
少しでもそういう子達が安全に
幸せに暮らせる環境が増えたら良い。

「お札の前に…もっと
欲しいものあげるる。」
他月は夢を見ていた。
以前パックに貼るお札をもらえるよう
神様にお願いしに行った時、他の子と
同じお札ではダメだと言われたらしい。
闇の者には闇のお札でなければ
いけなくて、それを頼みに行った
のがこの禍々しい生き物だった。
人形神(ひんながみ)というらしい。
人形神は憑き物の一種で、祀ると
どんな願いも叶う代わりに死ぬまで、
死んだ後、地獄までも憑いてくる。
そんな恐ろしい存在だったみたい。
身代わりの人形を作ってもらって
行ったから憑かれることなく無事に
済んだと他月は言ってたけど‥
めっちゃ危ないことしてたのね。
(会ったのがあの時じゃなく
「今」だったらきっと俺は
取り憑かれてただろうけど…。)
そう感じたのは、大事な仲間達がすごく
危ない目にあってるってわかってたのに
自分には力がなく何もできなかったから。
力のある山田さんに頼ることしか
できなかった、お告げを頂いた
空くんに任せるしかできなかった。
それがすごくもどかしかったんだろう。
それと似た気持ちを、空くんも
感じていたような気がする。
工場跡地でニワトリの人に助けられた
時、彼はすごく強くすごく詳しかった。
もっとしっかり知っていれば、
もっと自分に力があればって
空くんも考えたんじゃないかな。
それによって憑かれてしまうとしても
他月は今願いを問われたら力を欲して
しまいそうだって、そう考えるほどに
今回のことは大きかったんだろうな。
ほんと、予言の一件も人形神の一件も
無事済んで良かったと心から思ったよ。

柳さんや七星さんの正体、もっと
前に明かされてたんだけどやはり
モクレンさんと同じ保護官だった。
そして七星さんは空くんのことを柏木
ジュニアって呼んでて、多分本人達には
気付かれないように空くん達を護衛する
ことをモクレンさんから頼まれてたり
するんじゃないかなーと勝手に推測。
だから偶然顔を合わせてしまった時は
認識されてはまずいと焦ったのだろう。
全然、コレクターなんかじゃなかった。
空くんがお告げを受けたってことを
ジイちゃんから教えてもらってたから
あの場所に辿り着けたみたいだった。
あの場所で山田さんはニワトリの頭を
被った柳さんをバッチリ見てたけど
山田さんは何も見なかったふりをした。
コレクターという存在については
知ってしまったから、知らないまま
では危険だからと他月が伝えたけど
保護官に関しては一切伝えてないし
その約束はまだ続いてるようだから。
予言の件は一件落着、やっといつもの
日常に戻りつつあるという状況だけど
そんな平和はそう長くは続かなそう。
一番山に来るという何か、それが
何者なのかはわからないんだけど‥
空くん達に危険がないことを願う。
~ひとこと~
パックを助けられなかったことは
やっぱりつらいし残念だったけど、
まずみんな無事に予言の日を終えて
パックも笑顔で最期を迎えられた
のはすごく良かったなと思います。
怪しい行動が多かった柳さんと七星さん
は、保護官で空くん達を守るために彼ら
付近の情報を調べていたなら納得だった。
紹介できなかった内容でもいさおや
ムクムクの可愛すぎるお話だったり、
無事異国で転生を果たしたパックが
少しずつ日本に向かうお話だったり。
今回はすごく怖かったり悲しいお話も
多くて、最後もちょっと不安が残る
ような感じで終わってしまってたけど、
そんな中でも可愛すぎてときめくお話も
描かれているのでぜひ読んでほしいです。
これから彼らはどうなっていくのか、
きっと楽しいこともあれば怖いことも
きっとまた起きてしまう気はしている。
それでも彼らが仲間を信じて、仲間と
一緒に、最後には笑顔になれる日々を
過ごしていけたら良いなと願ってます。
それではまた次巻で!!