著:空木かける 先生

空くんが立秋家に到着すると
そこには確かにバクがいて、
以前空くん宅に現れた時には
ものすごい速さで逃げてったのに
今日は全く逃げようとしない。
まじまじとバクを眺めたり
抱っこして大興奮の空くん。
立秋は最初はビクビク怯えてた
けど、嬉しそうな空くんを見て
多少は安心したようだった。
ここで不思議なのが、立秋は今まで
そういう生き物と面識があったわけ
ではないのにバクがこんなにそばに
現れてずっと大人しくしてること。
そういう生き物の中で共有されてる
という「姿を見せても大丈夫な人間」
には含まれてないってことだよね?
それを言ってしまうと、いさおが
モギちゃんの家に現れたことも
個人的にずっと疑問なのだけど。
そんな謎も残しつつ、初めて知る
種族に戸惑いを隠せない立秋だけど
また仲間が1人と1匹増えそうだ。

立秋はバクが現れたあの日以降3日ほど
学校を休んでいるようで空くんはずっと
心配で仕方がない様子だったんだけど、
3日経って登校してきた立秋は以前とは
随分印象が変わっていて、もはや別人
と思えてしまう程明るくなっていた。
最初はあれだけ暗くて怖い印象だった
けど、そうなった原因を取り除いて
しまえば素直で明るくてよく笑う人、
きっと元はこういう人だったんだ。
解決して本当に良かったと思ったね!!
屋上でのことの謝罪やお礼など改めて
伝えてわだかまりも解消‥となる予定
だったんだけど、立秋が他月に対して
だけめっちゃビクついててぎこちない。
最初の時、自分の行動が原因とは言え
めっちゃ怖い顔できつい怒られ方したし
構えちゃうのも仕方ないのかもだけど、
他月は他月で少々人見知り気味みたいで
2人の間に流れる空気はどこまでも硬い。
2人だけにされた時なんて、なんでか
お見合いみたいになってて笑ったよ。
でもそんな2人を見てたミーくんは仲良く
してほしいって思ったのか、他月の手を
立秋の手のところに持っていこうとして、
多分握手させようとしたんだろうね 笑
意図が伝わらず手を払われてしまう
けど、ミーくんは諦めないで他月の
手にしがみついてわんわんっと鳴く。
「もしかして握手しろって言ってる…?」
ミーくんの様子を見てそう言った空くん。
でも他月も立秋もワケがわからないという
様子で‥握手しそうにないのを察知してか
また鳴き出すミーくんに押し切られる形で
ようやく2人は、形ばかりの握手をした。
それを見て満足したのか、ミーくんは
嬉しそうに2人の手にすり寄った。
ミーくんによる仲良しプロデュースは
ほぼほぼミーくんの可愛さで成立した
ようなものだったけど、いい仕事した 笑
この後2人は、お互いにいい感じに
緊張もほぐれたようでわりと自然に
会話できるようになってた気がする。
せっかく仲良くなれた素敵な出会い。
みんないい奴ばかりだから、これから
もっと仲良くなっていけたらいいね。

今日は立秋が初めて友達の家、
空くんの家に遊びに来ていた。
結構幼い頃からあの悪夢に悩まされ
続けてきたんだろうし、これまでは
家を行き来し合えるような友達は
いなかったかもしれないものね。
どこか落ち着かない立秋だったけど、
家に見知らぬ自分より大きい生き物が
いることでミーくんもそわそわして、
最初は固まってたけど少しずつ距離を
詰めて様子を見たりして‥突っ込む!!
その拍子にバクはすごい速度で跳んで
‥どうして立秋の頭の上に降りたの 笑
無理、無理すぎる、絶対笑っちゃう‥
立秋はびっくりしただろうしきっと
空くんもめちゃくちゃ驚いたろうけど、
どうしても笑ってしまって仕方がない。
でもこれ、音速より早いという速度で
頭上から来たらさ、首やばいくない??
あと思いきりコーヒーかぶってるのと
おでこにカップ強打したっぽいのと‥
地味にダメージくらってそうですよ。
このシーン以外にも、ちょいちょい
思うことがあったんだけど、バクよ、
きみ立秋の扱いが結構雑だよね 笑
立秋平気そうにしてたからいいけど
ここの1人と1匹は1匹の方が主導権
握ってる関係にさえ思えてきた 笑
そんなバクはまだ、名前が決まって
なかったんだけど無事決まりました。
「五右衛門」「武蔵」「喜左衛門」
これらは候補として立秋が考えてた
名前だけど、どれもめっちゃ強そう‥
今まで仮に「ムクムク」って呼んでたと
話したら、空くんも他月もモギちゃんも
ムクムクの方に票を入れたのだった 笑
‥心から良かったと思いました。
1人で決めてしまわずにみんなの
いる時にその話をしてくれて 笑
ムクムク以外だと印象変わるわ‥
いさお以上に衝撃的だったな 笑

他月が家にいない間、コニーも
よく出かけてると思っていたら
ほとんど毎日モギちゃん宅に行き
いさおと遊んでいたらしかった。
それを知った他月が、全ては口には
しなかったがコレクターの目につく
ことを心配してこんな提案をした。
「一時的に預かってくれる
場所があればいいんだがな。」
その言葉に空くんも思うところが
あったようで話をした2日後、今回
頼る知り合いのもとへ行ってみると‥
凹十津(おうとつ)神社のお地蔵様で
空くんはジイちゃんと呼んでいた。
他月も昔から知っている仲みたい。
東の桜凸(おうとつ)神社って
とこにはジイちゃんと兄弟の
お地蔵さまもいるんだとか‥
モギ・立秋(兄弟とかいるんだ…!!)
それ私もすっっごい思った 笑
ここにはジイちゃんの他に神様もいて
今後学校に行ってる間ミーくん達は
ここで預かってもらうことになった。
初めましてのモギちゃんと立秋が
挨拶をした時、ジイちゃんは少し
気になったことを口にしかけて‥
立秋の様子にやめることにした。
少し前にコニーといさおが立秋の
背後をじーっと見てる描写があった
けど、やっぱりジイちゃんにも立秋
の周りにある黒いのが見えてるね。
これ、呪いらしい。
きっとそういう生き物達にだけ
見えてるものなのかもしれない。
ムクムクにも見えてるんかな。
詳細はまだ明かされないし、きっと
本人に伝えても怖がってしまうだけ
だろうから伝えなかったのはいいけど
現状のままで例の悪夢以上の災いが
降りかかることがなければいいな。
ちょっとそれだけが心配。

空くんはたまにバアちゃんと
呼ぶ存在の話をするんだけど、
決まって悲しそうな顔をする。
幼い頃空くんに裁縫や料理などを
教えてくれた存在なんだけど‥
バアちゃんの正体は山姥だった。
あの、会ってはいけない種族と
言われていた中に存在する山姥。
まだ幼い空くんは母親を亡くして、
きっと父・モクレンさんも仕事が
忙しくてあまり一緒にいることは
できずほとんどポチと2人きりで、
やっぱりすごく寂しかっただろう。
そんな頃、たまに空くんの家に
やってきてはいろいろ世話を
焼いてくれたのがバアちゃんだ。
空くんもバアちゃんが山姥だって
知ってたけど、バアちゃんは以前
他月が言ってたように人が好きな
山姥だったんだろうなって思う。
空くんに対して本当の孫に接する
みたいに優しく愛情を注いでくれた。
でも、それでもやっぱり山姥だから、
モクレンさんに見つかったらきっと
一緒に仲良くなんて出来なかったろう。
それもわかってるから、モクレン
さんが帰ってくればバアちゃんは
サッと目の前から消えてしまう。
空くんはバアちゃんが大好きで
やっぱり寂しそうにしてたけど、
涙を隠してモクレンさんの前に
笑顔でおかえりと言いに行った。
そんな生活も、モクレンさんが仕事で
1人日本を発つことが決まると残される
空くんは叔母・カエデさんの家で世話
になることになって変わってしまう。
父親にわがままを言うことも
引き止めようとすることも、
空くんは決してしなかった。
「カッコ悪いだろ、
いちいち浸るのも疲れるし。」
暗い表情を浮かべながらも、
そうやって幼い頃から諦める
ことばかり覚えてきたのかな。
ちょっと、悲しすぎるよね。
カエデさんの住む家に行く少し前、
寝ていると襖の向こうに人影を見た
気がして空くんは起き上がった。
バアちゃんだと思ったんだ。
引っ越すことを伝えたくて、
良い山姥だからとしっかり説明
して一緒に暮らす選択をしたくて。
追いかけて、捜し回って‥でも
バアちゃんはどこにもいなくて
空くんの言葉がバアちゃんに
届いていたかもわからない。
それっきり、バアちゃんとの
関係は切れてしまったんだね。
もしかしたらバアちゃんの存在は
空くんにとって心の支えみたいな
ものだったのかもしれない。
カエデさんのとこに来て、ポチも
一緒だけど空くんは暗い表情を
していることが多いように思えた。

ポチは元々、空くんの母親の
そばにいた犬だったみたい。
「空を頼むわね、私になにか
あったら次のあなたの主人は空よ。
私の代わりに側にいてあげてね。」
ご主人さまが大好きで、そんな
ご主人さまの亡くなる前の言葉を
ポチは今もしっかり守り続けてる。
最初はご主人さまの言葉に
ぷいっと顔を逸してしまったけど、
あの時応えられなかった分まで
しっかり約束は守るというように、
ずっと新しいご主人のそばにいる。
笑ってくれるように、楽しく
いられるようにと願いながら。
空くんが本当に小さい、赤ちゃん
の頃からポチはずっと一緒にいて、
空くんが笑う顔も悲しむ顔も隣で
ずっと見守ってきたんだろうね。
それでも自分にできることが
わからなくて、何も出来なくて。
一番辛いのは空くんだったかも
しれないけど、幸せであることを
諦めてしまってるようなご主人を
見続けてるポチも辛かったろうな。
仕方がなかった、もしかしたら
本当にそうなのかもしれない。
でも空くんを大事に思う人達は
そんな空くんを見て辛いんだよ。
ポチも、他月も、辛いんだよ。
空くんには笑っててほしいんだよ。

ポチが空くんを見守りながら
過ごしながらも何もできないと
感じていたある日転機は訪れる。
ポチいわく白くてへんなの 笑
ミーくんがやってきたのだ。
最初は送り返そうとしてた空くん
だけど、ミーくんがやって来てから
の空くんはちょっぴり楽しそう。
ミーくんが来てからはコニー、
モギちゃんといさお、立秋と
ムクムクとも関わりが出てきて
空くんはさらに笑顔が増えた。
ずっと空くんを見守ってきたポチ。
昔はモクレンさんが仕事で帰って
来られず一人ぼっちで誕生日を
過ごし寂しそうにしてた空くんも
今はお祝いしてくれる友人達が
いてすごく嬉しそうに笑ってる。
良かったね、本当に良かったね。
これから先暗くなることだって
あるかもしれないけど、空くんの
ことを大事に思う仲間がいるって
ことだけは忘れないでほしいね。
~ひとこと~
立秋の住むマンションのすぐそばに
ある『泣く電柱』と呼ばれる電柱や
立秋の悪夢の中に出てきたパックと
呼ばれる兎のような黒い生き物。
この先のお話を知ってるので少し
触れたくなったんですが、たぶん
だいぶ先のお話になると思うのと、
今はその他に書きたいこともあり
今回は触れないことにしました。
今のうちはまだ、可愛くてほっこり
するお話でもいいと思いまして 笑
この先辛いお話や怖いお話も結構
出てきて、個人的には可愛いだけで
なくとても深い物語と思ってます。
そんなストーリーも大好きですが
不思議な生き物たちの可愛らしい
部分を眺めてるのも大好きなので !!
今回は空くんと山姥のバアちゃんに
ついて回想の中で少しだけ描かれてた
程度ですが、バアちゃんと過ごした
時間はすごく楽しかったはずなのに
空くんの中では悲しい思い出として
残ってしまっているように感じます。
大好きなバアちゃんとのことなのに、
山姥という種族もきっと影響しての
こと‥どんなきっかけでもいいから、
空くんが大好きな人を思い浮かべて
笑顔になれる日がいつか来たらいいな。
まだまだこの物語の大好きなところを
伝えきれてませんが少しでも興味を
持ってもらえていたら嬉しいです。