著:空木かける 先生

ある朝他月の妹・月夜が空くんから
もらったケーキをコニーが食べて
しまい月夜は泣きながら怒っていた。
月夜は昔から空くんのことが大好き
だから空くんからもらったものなら
きっとすごく特別だっただろうし、
それも最初の数回は許していたらしい
けど9回も続けばさすがに許せまい‥
コニーは空くん達に対してはちゃんと
大人しくしてるし言うことも聞いてた
から、言葉が通じてないことはない。
それなのに何度「それはダメなこと」と
教えても全然直そうとしないコニーに
対して他月は少々きついことを言った。
「郷に入れば郷に従え、それが
出来ないなら出ていけ、今すぐに。
俺はお前の親ではないし俺の
家族もお前の家族じゃない。
こういうことが続くと迷惑だ。」
その時は、ぷいっと顔をそむけて聞く
気がない態度だけで終わったと思って
たんだけど、その日の夜、学校と多分
バイトを終えて10時頃家に帰ってきた
他月の部屋に、コニーはいなかった。
夕飯も食べていない様子で、他月の
部屋の窓が開けっ放しになっていた。
それから深夜の1時を過ぎても帰って
こず、さすがに心配になった他月は
コニーを捜しに行こうとしたけど‥
自分の発言やこれまでの態度を
思い出し捜しに行くのをやめた。
ここに帰ってこいともここにいろとも
伝えてなくて、それどころか追い出す
ようなことを言ったのに捜しに行く
なんて他月にはできなかったんだろう。
もう少し素直になったらいいのに。
本当は心配で仕方がないはずなのに、
他月はそういうとこすごく不器用だ。

コニーが帰ってこなかった翌日、
明らかに様子がおかしい他月を
空くんが問いただすとようやく
コニーが出ていったことを話した。
態度からは心配で仕方ないのが
丸わかりなのに捜さなくていい、
俺には関係ないの一点張りで
空くんとモギちゃんが捜しに行く
ことさえも止めようとしていた。
なんでそこまで‥って思ったけど、
他月にも迷いがあったんだと思う。
初めてドラゴンを見つけた時のこと、
コレクターから逃げて自分を頼って
きたドラゴンを逃がそうとして他月は
少し高い場所からドラゴンを離した。
飛べるものだと思って逃がそうとした
だけだったけど、実際その子は飛べず
落下させることになってしまったのだ。
守りたいのに守れなくて、近くに
いたらまた同じ思いをするかもと
いう不安も大きいのかもしれない。
自分が苦しむだけでなく、大切だと
思ってしまったらその子が辛い思いを
するのが何より嫌なのかもしれない。
他月は態度にはそんなに出さないけど
すごく優しい、きっと優しすぎる程に。
空くんやモギちゃん、ミーくんやいさお。
カエデさんにモクレンさん‥もう既に
大切に思い守りたい存在はたくさんいて
もういっぱいいっぱいなんだろうね。
(それなのにどうして俺はこんなに
必死にあの子鬼を捜しているんだろう。)
きっともうコニーだって他月にとっては
大切な存在になってたのに、失うのが
怖くて傷つけるのが怖くてその事実を
認めまいと否定し続けてた気がする。
過去のことはきっとこれからも他月を
苦しめるかもしれないけど、コニーを
大切に思ったなら今度こそ傷つけない
ように他月なりに大切にすればいい。
独りじゃないんだから、心強い仲間
達がいるんだから‥負けるな他月。

いろいろあったけど、先に捜して
くれていた空くんとモギちゃん、
他月の3人で探し回ったその先で‥
コニーは壊れた壁の小さな隙間に
挟まって動けなくなっていた 笑
決して家でではなかったみたい。
コニーは桜の花とつくしを持って
いて、ケーキを食べてしまった
月夜へのお詫びの品だったみたい。
帰り道、他月は素直な気持ちを
コニーに伝えようと頑張っていた。
素直になるのも甘やかすのも
きっと他月は得意ではなくて、
それでも彼なりにできる限り
逃げずに伝えようとしていた。
謝罪の気持ちと一緒にいたいから
気をつけてほしいことのお願いと、
改めて、受け入れたい気持ちを。
空くんのように面倒見が良いわけ
でもないしモギちゃんみたいに
甘やかしてやることもできない。
「それでもよければウチにいろ。
迷子になれば見つかるまで捜すし
何かあれば迎えに行く。だから
帰ってこい。居候はもうやめよう。」
そう言われたコニーは、他月の方を
じーっと見たまましばらく固まった末
突然、ぼたぼたと涙をこぼしだした。
鬼だからね、豆まきの時期にはよく
追い出されるなんてこともあって
きっとこれまでたくさん嫌な思い
してきたんだろうな、コニーは。
そうやって自分を追い出す人達と
似たような言葉を他月に向けられた
時はきっとすごく嫌だっただろう。
でもその言葉は本気じゃないって、
ちゃんと帰ってこいと行ってくれた。
ずっと憧れていた、手を繋いで一緒に
家に帰っていく親子みたいに自分も
帰れる場所がちゃんとできたんだって。
安心しただろう、嬉しかっただろう。
もしかしたら今まではずっと
気を張っていたのかもしれない。
でも安心していいんだとわかって
やっと緊張の糸が切れたみたいな
‥コニー、本当に良かったね。
素直じゃない他月だけどコニーの
ことは大好きだから、もう大丈夫。
安心して甘えてったらいいよ。
コニーは涙をこぼしながら
コクッと頷いていた。

空くんと他月は知っていたけど、
怖がらせたくないからと空くんは
モギちゃんには伝えていなかった、
絶対に会っちゃいけない三種族。
話題に出したりすると寄ってきて
しまうからと、幽霊の話題が出た
時にちゃんと伝えることにした。
その三種族というのは悪魔と山姥と
幽霊で、もし会ってしまったらすぐ
逃げなければいけないと言われてる。
危険なやつが多いからこそそう
言われる種族なのに違いはないが、
全てが全て危険というわけでもない。
「人を呪わない悪魔とか、人間
好きの山姥とか、人に好意的な
幽霊とか、想像だが。そういう
幽霊がいたら会ってみたいな!
いたらな、いるかわからないぞ。」
他月は最後にそう付け加えた。
あくまでモギちゃんに危険性を
教えておくための話だったから
想像だと釘をさしたんだと思う。
でもそんな他月の言葉に、
空くんはちょっとだけ安心
したみたいに口元をゆるめた。
その理由がわかるのはもう少し先
だけど、危ない種族だと言われて
いても決してそれが全てではないと
わかってほしいことがあったんだ。
空くんにとって少し寂しい、
幼かった頃の大事な思い出。

空くんが家で夢を食べるバクの
ような生き物を見たと大興奮して
いたその日‥校内を歩いていたら
後ろから突然人が倒れ込んできた。
彼は立秋大地、キャラクター紹介
で載せた画像からは想像つかない
ほどに、最初の頃は目つきが悪く、
他の生徒からは怖がられていた。
倒れ込んできたのは寝ていただけ
で、ある理由から保健室は出禁に
されているらしい彼を寝かせるため
一先ずみんなで昼ごはんを食べる
ために集まってた屋上に立秋を
運んで寝せておいたんだけど‥
突然起き上がるとタオルケットを
かけなおそうとそばにいたモギちゃん
めがけて殴りかかってきたのだ。
途中で焦って殴りかかろうとした
手の方向を逸したようだったけど、
この後も謝罪もなく、いろいろと
挙動不審なまま逃げ去っていった。
そんな態度の立秋に他月は
怒っているようだったけど、
彼がこんな様子だった理由は
そう経たずわかることになる。
初登場もこのシーンも、どう見ても
危ないやつに見えていた彼だけど、
決して危ない奴ってわけではない。
それがわかるのは少し先だけどね。
この時ミーくんが立秋の方をじー
っと見ていて、何かあるのかなと
ちょっと気になったんだけど後に
描かれているシーンで立秋の周りに
黒いモヤみたいなのがあるんだ。
人には見えていないみたいだけど、
ミーくんにはそれが見えたんだろう。
一体ミーくんは、何を考えながら
その黒いもやを見てたんだろう。

立秋が立ち去った屋上に、おそらく
立秋のものであろう目玉のレプリカ
が落ちていて、空くんはそれを返す
ため立秋のクラスまでやってきた。
普通に話しかける空くん、立秋を
避けるように離れていく生徒達。
「場所…もうちょい向こうで。
俺がいると周り…怖がらせる
から、だから……。」
昼間の屋上での様子からは立秋が
こんなことを言うなんてきっと
想像できなかっただろうね。
でもこんな立秋を見て空くんは、
噂通りの人物ってわけでもないん
だろうと思ったんじゃないかな。
「じゃあ途中まで一緒に帰る?」
そんな提案をして、きっと今まで
そんなふうに言ってくれた人が
いなかったから、立秋はすごく
戸惑いつつも一緒に帰ることに。
帰り道、昼休みに謝れなかったことの
謝罪や自分について立秋は話してくれた。
親に家を追い出されて今は1人で
マンション暮らしをしていること、
その原因が、寝ている間に悪夢
ばかり見てしまうから寝起きに
寝ぼけて周りに攻撃してしまう。
高価な壺を割ってしまったらしく、
その癖が直るまで帰ってくるなと
言われてしまったんだとか‥。
目つきが悪いのもフラフラしてるのも
悪夢のせいでずっと寝不足だから。
昼休みの時すぐ謝れなかったのも、
寝不足で頭が働いてくれなかった
せいってのもあったんだと思う。
あと幽霊の噂とかをめちゃくちゃ
怖がってる様子だったから、噂が
あるらしい屋上で目を覚ましたことで
テンパったのもきっと原因だろうな。
小学校低学年からずーっと続く悪夢、
そりゃあしんどすぎておかしくなるわ。
それでも落ち着いてゆっくり話そうと、
向き合おうとすればきちんと話せる。
暴れる事実はあっても心から悪さを
したくてしてる行動じゃなかった。
外見で避けられてきた彼にとって
空くんが親身に向き合ってくれた
のは立秋にとってすごくありがたい
ことだったのかもしれないね。

立秋はこの苦しみをなくしたくて
お札を貼ってたんだけど、一つの
部屋に大量のお札をびっしりで
逆に呪われそうな光景だった 笑
「お札って貼り過ぎるとダメなんだよ。
守ってくれるのもお札と状況によって
違うし…大体は一年すぎると…っ。」
いっぱい貼ってるという言葉に焦った
空くんは部屋まで上がらせてもらって、
最終的にお札は全て剥がすことになる。
代わりに空くんはバクの絵を渡した。
「枕の下にバクの絵を入れて
寝るといい夢見られるんだって。」
あくまでそんな言い伝え‥みたいに
伝えて渡された絵だったけど、立秋は
素直に受け取って枕の下に入れた。
普段はきっと悪夢でろくに眠れて
ないんだろうけどこの日は気付いたら
眠ってしまっていて、ふと目を覚ます
とそこには見たことのない生物、が、
何か白いのをもぐもぐ食べていた。
この生き物、先日空くん宅に
現れたというバクっぽい生き物。
だからうん、きっと魂食ってる
わけじゃないと思うんだけど 笑
空くんや立秋などそういう生き物に
昔から馴染みがある人だったら他の
考え方をしたかもしれないけど、
馴染みがない人にとってはきっと
これが普通の反応なんだろうな 笑
~ひとこと~
コニーが他月の家に帰って来た頃、以前
コニーの他月への手紙「どうおもう?」に
「that’s good.」と書き加えられていた。
きっと他月もコニーもお互いに
あまり素直じゃないから、これ
くらいの距離でいいんだろう。
伝わるような伝わらないような、
でもお互いちゃんと大事に思ってて
必要とし合える素敵な関係だから。
あのお手紙のシーンは嬉しくて少し
泣きそうになる大好きなシーンです。
そしてそして、立秋出てきましたね!!
キャラクター紹介の時の明るい立秋に
なるまではもうちょっとかかりますが、
彼の変化も紹介していけたらと思います。
ミーくんやいさおの可愛すぎる様子も
たくさん描かれてるんですが正直好きな
描写が多すぎて紹介しきれないので 笑
ぜひご自身で読んでもらえたら嬉しいです。